補聴器購入で使える補助金の全て!国や市町村ごとの支援内容を徹底解説!

補聴器購入に役立つ補助金制度とは? 障害者手帳の有無や児童・成人・高齢者ごとに異なる支援内容をまとめ、自己負担額の目安もご紹介します!
中本 明日香

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補聴器購入で使える補助金

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

補聴器購入に役立つ補助金制度とは? 

補聴器の補助金制度は、大きく分けて「1.障害者手帳をお持ちの方向け」「2.障害者手帳をお持ちでない方向け」の2種類の制度があります。
その中でも児童、成人、高齢者などの対象者ごとに制度が設けられています。
補聴器補助金の種類
今回は、「高額な費用がネックとなり、補聴器の購入をためらっている方」「補聴器の補助制度が知りたい」という方に向けて、補聴器購入時に使える補助金を対象者ごとにわかりやすくご紹介します!

障害者手帳を持つ方への補聴器補助金

障害者手帳を持つ方への補聴器への補助金制度は、正式に「補装具費支給制度」といいます。 

この制度は、障害者や障害児が日常生活をより快適に送るために必要な補装具の費用を一部支援する制度です。 
障害者の生活の質を向上させることや、障害児が将来自立して生活できるようなサポートを提供することが目的です。 
障害者支援の目的

1. 補装具費支給制度の目的 

補装具費支給制度は、障害者や難病患者、障害児が生活や就労をより効率的に行えるようにするために、身体機能を補うための補装具の費用を補助する制度です。
補聴器や義肢、車椅子などが対象となります。 

2. 支給対象者 

  • 補装具が必要な障害者や障害児、特定の難病患者 

障害者手帳を持っている方が多く対象となります。 

3. 補装具費の支給方法 

実施主体: 市町村が実施し、申請は市町村に行います。 
申請手続き: 申請者は市町村に申請し、その後、専門機関の意見をもとに市町村が支給の決定を行います。 

4. 費用負担の仕組み 

公費負担

補装具の購入費用から利用者の自己負担額(原則として1割)を除いた額が補助されます。
この補助額は、国(50%)、都道府県(25%)、市町村(25%)が負担します。 

利用者負担

利用者は原則として1割を負担しますが、所得に応じて負担上限があります。 
生活保護世帯: 0円 
市町村民税非課税世帯: 0円 
市町村民税課税世帯: 37,200円が上限 

5. 対象となる補装具の種類 

  • 共通の補装具: 義肢、補聴器、車椅子、義眼、電動車椅子、歩行器など 
  • 子ども専用の補装具: 座位保持椅子、起立保持具、排便補助具など 

6. 支給対象外の条件 

障害者やその配偶者のうち、最も多く市町村民税を納めている人の納税額が46万円以上の場合、補装具費の支給対象外となります。 

7. 補装具費支給制度の背景 

この制度は、障害者自立支援法に基づいて、障害者や障害児が必要とする補装具の支援を一本化したもので、2006年に施行されました。 

両耳対象となるか? 

自治体によって両耳とも対象となる場合があります。申請先の自治体でご確認ください。

例:東京都の補装具費支給制度の概要 

目的: 障害のある方が、日常生活をより快適に送れるように、必要な補装具の費用を支援
対象者:
身体障害者手帳を持つ方難病患者等児童で、補装具を必要とする場合が対象
対象となる補装具: 補聴器、義肢、車椅子など、障害の種類や程度に応じて様々な補装具が対象
費用負担:利用者: 原則、費用の1割を負担(市町村民税非課税世帯や生活保護世帯は0円)
公費: 国、都、市区町村が残り9割を負担
手続き・申請: 区市町村の窓口で申請
判定: 専門機関で、必要な補装具の種類や費用などを判定
支給: 判定結果に基づき、補装具費が支給

東京都福祉局の公式サイト

障害者手帳の対象外でも使える補助金:軽度~中度難聴者向けの自治体支援 

障害手帳を持っていれば補聴器などの補助金制度の対象となりますが、身体障害者手帳の交付対象とならない軽度から中等度の難聴者でも、多くの自治体が補助金制度を行っています。

この支援は、特に児童、成人(65歳未満)、高齢者(65歳以上)向けに分けて行われていることが多く、それぞれのライフステージに合わせた支援内容となっています。

【例】
たとえば福岡県では、市町村が購入費用の3分の2を補助し、残りの部分の一部を県が補助する制度があり、自己負担は購入費用の6分の1(約16.7%)になります。 

参考:福岡県公式サイト

なぜ軽度難聴者向けの補助金があるのか? 

軽度・中度聴覚障害支援の目的
軽度・中等度の難聴は、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
子どもにとっては、言語の習得や発達に影響を与えるリスクがあり、早期に補聴器を使用することが重要です。
また、成人や高齢者にとっても、コミュニケーションが難しくなることで社会的な孤立感が高まり、仕事や日常生活に支障が生じることがあります。
特に高齢者の場合、聴力の低下が生活の質を低下させ、認知症のリスクを高めることも指摘されています。

こうした背景から、多くの自治体では、軽度・中等度の難聴児から成人、高齢者までを対象にした補聴器購入費の補助制度を設けています。
支援の対象者別制度の図

各自治体における助成制度の概要 

共通点 

  • 対象者: 身体障害者手帳を持っていない軽度・中等度の難聴児、成人、高齢者
  • 補助内容: 補聴器購入費の一定割合を補助 
  • 申請方法: 各自治体の福祉窓口へ申請 

自治体ごとの違い 

  • 補助率: 補助率は自治体によって異なりますが、多くの場合、購入費の1/3から2/3が補助
  • 対象となる補聴器: 補助対象となる補聴器の種類や価格に制限がある場合がある
  • 申請に必要な書類: 申請に必要な書類は、自治体によって異なる

1. 児童向けの補助金

  • 対象者:18歳未満の軽度~中等度の難聴児が対象で、身体障害者手帳の対象外となる場合でも補助が受けられる
  • 補助内容:補聴器購入費の一部を支援するもので、自治体によって補助率や上限額は異なります。例えば、東京都では補聴器の購入費用の9/10を補助し、自己負担は1/10
  • 申請手続き:市区町村の福祉窓口で申請し、耳鼻咽喉科の診断が必要

東京都の例:中等度難聴児発達支援補聴器購入費助成事業
この助成制度は、身体障害者手帳の対象外である中等度の難聴児が、言語の習得や健全な発達を支援するため、補聴器購入費用を一部補助するものです。 

1. 対象者 
次のいずれにも該当する児童
(1)東京都内に居住している18歳未満の児童
(2)両耳の聴力レベルが概ね30dB以上であり、身体障害者手帳(聴覚障害)交付の対象となる聴力ではないこと
(3)補聴器の装用により、言語の習得等一定の効果が期待できると医師が判断する者
※対象児童の属する世帯の最多区市町村民税所得割課税者の納税額が46万円以上の場合は対象外。
2. 補助対象 
新しく購入する補聴器の経費や、耐用年数が過ぎた補聴器の更新にかかる経費。 
3. 補助額と自己負担 
基準額と補聴器の購入費用を比較して少ない方の額の9/10
(生活保護、低所得世帯は10/10)
4. 申請手続き 
申請は各区市町村の福祉窓口で行い、補聴器の必要性を確認するための判定を受ける必要があります。 

補聴器等の基準額表
補聴器

種類1台当たりの基準価格
高度難聴用ポケット型


137,000円


高度難聴用耳かけ型
重度難聴用ポケット型
重度難聴用耳かけ型
耳あな型(レディメイド)
耳あな型(オーダーメイド)
骨導式ポケット型
骨導式眼鏡型


付属品

種類1台当たりの基準価格

補聴システム(FM型・デジタル方式)
ワイヤレスマイク98,000円
受信機80,000円
オーディオスキュー5,000円


自己負担額の例

補聴器の種類基準額購入価格助成額自己負担額
重度難聴用耳かけ型137,000円150,000円137,000円 × 0.9 = 123,300円150,000円 - 123,300円 = 26,700円
補聴システム(FM型・デジタル方式)98,000円(ワイヤレスマイク)110,000円98,000円 × 0.9 = 88,200円110,000円 - 88,200円 = 21,800円

東京都福祉局の公式サイト

 神戸市の軽度・中等度難聴児補聴器購入費助成事業の概要 
この制度は、身体障害者手帳の対象にならない軽度・中等度の難聴児が健全に発達できるよう、補聴器の購入費用を一部助成するものです。 

1. 対象者 
保護者が神戸市にお住まいの方で、次のすべてにあてはまる児童
・18歳に達する日(お誕生日前日)以降、最初の3月31日までの方
・両耳とも聴力が、30dB以上70dB未満の方(ただし、医師が補聴器の装用を必要と認めるときは、片方又は両方の耳の聴力レベルが30デシベル未満についても対象となる場合があります。)
・補聴器の装用により、一定の効果が期待できると医師が判断する方
2. 補助対象 
新規の補聴器購入、補聴システム購入費、耳あて等交換費など
3. 補助額と自己負担 
神戸市の補助:補聴器購入費用の3分の2 
自己負担額:購入費用の3分の1(約33.3%) 

例:補聴器の自己負担額シミュレーション 

例1: 46,400円の補聴器購入 → 自己負担:約15,467円 
例2: 144,900円の補聴器購入 → 自己負担:約48,300円 
※実際の自己負担額は、補聴器の種類や価格によって異なる場合があります。 
4. 申請手続き 
申請は市の窓口で行い、補聴器の必要性について専門機関の判定を受ける必要があります。 
神戸市の公式サイト


 神戸市 軽度・中等度難聴児補聴器購入費等助成事業 助成内容

項目名称助成額耐用年数医師意見書
補聴器購入費ポケット型・耳かけ型・耳穴型(レディメイド)・骨導式ポケット型40,000円5年必要
骨導式眼鏡型・耳穴型(オーダーメイド)100,000円5年必要
補聴システム購入費補聴システム(一式)100,000円5年必要
耳あて等交換費耳あて(イヤモールド)6,000円3ヶ月不要
耳穴型シェル(オーダーメイド)18,000円3ヶ月初回申請時は必要


多くの都道府県、自治体で同様の制度が行われています。お住まいの「自治体名+軽度・中度難聴児補聴器購入費助成事業」で検索することをおすすめします。 
 

2. 成人向け(65歳未満)の補助金

  • 対象者:成人で、身体障害者手帳の対象外となる軽度~中等度の難聴者。特に就労や社会生活における支援を目的としています。
  • 補助内容:補聴器の購入費用の一部を自治体が負担する場合があります。補助の内容や対象年齢、所得制限は自治体によって異なり、例えば、狛江市では上限40,000円の補助が行われています。
  • 申請手続き:市区町村の福祉担当窓口で申請。医師の診断書が必要です。

世田谷区の例:軽度・中等度難聴者向け補聴器購入費助成事業

1. 対象者
年齢:18歳以上の方
住民票:世田谷区内に住所があること
所得条件:住民税非課税世帯
難聴の程度:両耳の聴力レベルが40dB以上70dB未満の方、または医師が補聴器の装用を必要と認めた方
その他:身体障害者手帳の交付対象ではないこと
2. 補助内容
補助額:補聴器購入費用の9割を助成(上限50,000円/台)
助成対象:管理医療機器として認定された補聴器本体(イヤモールドや電池、充電器含む)
補助回数:1人1台限り
3. 申請方法
申請先:世田谷区の福祉担当窓口
必要書類:医師の意見書(聴力の状況を証明するもの)、購入費用の見積書など

自己負担額のイメージ

補聴器購入費用の例1:60,000円の補聴器を購入する場合
助成額:60,000円 × 90% = 54,000円
自己負担額:60,000円 - 54,000円 = 6,000円
補聴器購入費用の例2:80,000円の補聴器を購入する場合(補助額の上限に達する場合)
助成額:上限の50,000円
自己負担額:80,000円 - 50,000円 = 30,000円

世田谷区公式サイト

3. 高齢者向けの補助金

  • 対象者:65歳以上で、住民税非課税世帯などの所得制限が設定されていることが多いです。身体障害者手帳の対象とならない中等度難聴の高齢者が対象です。
  • 補助内容:多くの自治体では、補聴器購入費用の3万円から5万円程度を上限に補助が行われています。例として、世田谷区では補聴器購入費の最大50,000円が助成されます。
  • 申請手続き:高齢福祉課や地域包括支援センターなどで申請。耳鼻咽喉科医による診断が求められます。
4. 自治体支援を利用する際のポイント
  • 申請前に必ず確認:各自治体ごとに補助内容や申請条件が異なりますので、事前に自治体の公式サイトや窓口で最新情報を確認することが重要です。
  • 所得制限に注意:特に高齢者向けの補助金では、住民税非課税世帯であることが要件となることが多いため、所得制限についての確認も必要です。
  • 医師の診断が必須:多くの自治体で、耳鼻咽喉科医の診断書や意見書の提出が求められるため、医療機関での検査も事前に準備する必要があります。

練馬区の例:高齢者の補聴器購入費用助成事業

1. 対象者
以下の条件をすべて満たす方が対象です。
年齢:高年齢者(65歳以上など要件あり)
住民票:練馬区内に住所を有すること
所得条件:住民税非課税世帯、生活保護受給者、中国残留邦人等支援給付受給者
難聴の程度:両耳の聴力レベルが40デシベル以上70デシベル未満
その他:身体障害者手帳(聴覚障害)を所持していない方
2. 補助内容
補助額:補聴器本体および付属品の購入費用として、上限25,000円を助成。
助成回数:1人1回限り
対象外:集音器や修理・メンテナンス費用は助成の対象外です。

自己負担額のイメージ

補聴器購入費用の例1:20,000円の補聴器を購入する場合
助成額:20,000円(購入費用の全額)
自己負担額:0円
補聴器購入費用の例2:40,000円の補聴器を購入する場合
助成額:上限の25,000円
自己負担額:40,000円 - 25,000円 = 15,000円

申請から助成までの流れ

  1. 申請書を提出:区の窓口に申請書を提出し、住民税の課税状況や障害者手帳の有無を審査されます。
  2. 耳鼻咽喉科での診断:申請後に区から送付される医師の意見書を持参して耳鼻咽喉科を受診します。意見書作成料1,100円(税込)は自己負担です。
  3. 意見書の提出:区に意見書を提出し、助成の決定を受けます。補聴器の購入は助成決定通知後に行います。
  4. 補聴器の購入:販売店で補聴器を購入し、領収書を取得します。
  5. 助成金の請求:購入後に領収書と請求書を区に提出し、区が指定口座に助成金を振り込みます。

練馬区公式サイト

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4. 補聴器の購入時に使える控除制度 

なぜ補聴器の購入費用が医療費控除の対象に? 
補聴器は、聴力に問題を抱える人が、医師の診断のもと、治療の一環として使用することが多い医療機器です。
そのため、補聴器の購入費用は、医療費控除の対象となるケースがあります。 

医療費控除を受けるための条件 

  1. 医師の診断が必要 
  2. 「補聴器適合に関する診療情報提供書」が必要 
  3. 一般的に支出される水準を超えない範囲 

※ 補聴器の種類や機能によって価格は様々ですが、あまりに高額なものは、医療費控除の対象とならない場合があります。 

医療費控除の手続き 

  1. 医師に診断書を書いてもらう: 補聴器が必要であることを証明する診断書を作成してもらいましょう。 
  2. 「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を受け取る: この書類は、補聴器を購入する際に販売店から受け取ることができます。 
  3. 確定申告の際に書類を提出: 診断書や「補聴器適合に関する診療情報提供書」、補聴器の購入費用がわかる書類などを、確定申告の際に税務署に提出します。 

参考:国税庁ホームページ  

まとめ

補聴器の購入を検討されている方は、まずはお住まいの市区町村の窓口にご相談ください。
自治体によっては、様々な補助金制度が用意されており、経済的な負担を軽減できる可能性があります。 この機会に、ぜひ補助金制度を活用して、快適な聴生活を始めましょう。

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