新事業進出補助金の必要書類とは?書類作成のポイントを紹介

新事業進出補助金の必要書類と書類作成のポイントを分かりやすく紹介します。申請書類は個人事業主と法人に共通するものと、それぞれ追加で提出するものがあります。 2025年度、新事業進出補助金の活用を検討中の方はぜひお役立てください。
梅沢 博香

更新日:

新事業進出補助金の必要書類とは?書類作成のポイントを紹介.

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金とは

新事業進出補助金は、中小企業や個人事業主が既存の事業領域とは異なる新たな市場への進出や、高付加価値なビジネスへの転換を図る際に活用できる公的支援制度です。
生産性向上や地域経済の再構築を目的としており、事業計画の策定から設備投資・販促活動まで、幅広い費用が補助対象となります。

区分内容
補助額従業員数・申請枠により最大7,000万円(※特定枠で最大9,000万円)
補助率補助対象経費の1/2~2/3(企業規模や枠によって異なる)
実施期間交付決定日から原則14か月以内(※採択日から最大16か月以内)
補助対象経費機械装置費、システム構築費、建物費、技術導入費、外注費、専門家費用、クラウドサービス利用料、広告宣伝・販売促進費など
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新事業進出補助金の特長

新事業進出補助金は、以下の3つの特長を備えています。

  1. 「新規性」が求められる明確な要件設定
  2. 「賃上げ」が補助対象の前提となっている
  3. 「販路拡大・IT導入費用」まで含めた広範な支援

1.自社にとっての「新規事業」であることが必須

本補助金の最大の特徴は、「新事業への進出」であることが補助対象の前提となっている点です。
ここでいう「新事業」とは、業界全体の革新性ではなく、自社にとって初めて取り組む内容かどうかが重視されます。
たとえば、次のようなケースが該当します。

  • 地元飲食店が初めて冷凍食品の開発・販売を開始
  • 印刷業者が、自社初のパッケージデザイン事業に進出
  • 建設会社が、ドローン測量や3Dモデリング事業に乗り出す

審査では「なぜこの事業が自社にとって新しいのか」「市場にどのような需要があるのか」といった事業の根拠や見通しが具体的に問われます。

2.従業員の「賃上げ」が補助条件として求められる

「新事業進出補助金」は、単に新しい事業への投資を促すだけでなく、その成果が従業員の処遇改善にも結びつくことを重視しています。
このため、補助対象となるには以下のような条件が課される場合があります。

  • 補助事業の実施後に従業員の給与を一定水準以上引き上げる計画があること
  • 最低賃金の水準よりも一定割合以上高い賃金を支払う見込みがあること

賃上げの計画は申請書類に明記する必要があり、実際に達成できなかった場合は、補助金の返還対象になることもあるため注意が必要です。

3.「広告費」や「クラウド利用料」なども対象となる広い経費範囲

この補助金では、単なる「設備投資」にとどまらず、新しい事業を立ち上げるために必要な各種経費が対象となります。
つまり、「売る仕組み」「運営する仕組み」まで含めて補助対象です。
対象となる主な経費には以下のようなものがあります。

  • 機械装置費・建物費:新たな製造機械、店舗改装など
  • 広告宣伝費・販売促進費:ウェブ広告、SNS運用、販促チラシ制作など
  • クラウドサービス利用料:業務効率化のためのITツール(例:会計・在庫・顧客管理)
  • 外注費・専門家経費:商品開発支援、マーケティングアドバイザー、補助金申請サポートなど

このように、「新事業に必要な初期コスト」をトータルで支援してくれる点が大きな魅力です。

新事業進出補助金の補助対象経費を分かりやすく解説!
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新事業進出補助金の必要書類一覧

書類名法人個人事業主解説・補足
事業計画書新規性・付加価値・賃上げ等の要件を満たす具体的計画
決算書等〇(直近の法人決算書)〇(確定申告書B等)原則1期以上の実績が必要。創業1年未満は要件次第で例外あり。
履歴事項全部証明書発行から3ヵ月以内のもの
本人確認書類〇(代表者)〇(申請者本人)運転免許証・マイナンバーカードなどの写し
一般事業主行動計画(該当者のみ)従業員101人以上は「両立支援のひろば」への掲載が必須
GビズIDプライム取得電子申請に必須。取得までに数日かかるため早めの準備を推奨
金融機関の確認書(枠による)一部の申請枠では必要。融資の有無に関係なく求められることも
認定支援機関の確認(枠により必須)一部の申請類型では必須。名義貸しは厳禁

共通して必要な書類(法人・個人事業主 共通)

以下の書類は、すべての申請者に共通して求められます。

  1. 事業計画書
  2. 金融機関による確認書
  3. GビズIDプライムの取得
  4. 決算書類(原則1期分以上)
  5. 一般事業主行動計画の公表確認
  6. 外部支援者の関与に関する確認

1. 事業計画書(必須)

補助金審査の最重要書類です。以下の3つの視点が盛り込まれていることが必要です。

  • 従業員の「賃上げ計画」の内容と達成スケジュール
  • 「付加価値額」(売上-外注費・原材料費など)の増加見込み
  • 自社にとっての「新事業」である根拠(市場分析、競合比較など)

審査評価の大部分を左右するため、実現可能性の高い内容とデータに基づいた記載が求められます。

2. 金融機関による確認書(該当者のみ)

  • 補助対象事業において融資を利用する場合は、金融機関が事業内容・資金面の妥当性について確認を行い、確認書を発行する必要があります。
  • 複数の金融機関から融資を受ける場合でも、1行分の提出で可。

3. GビズIDプライムの取得(必須)

  • 電子申請に必要なアカウントです。
  • 取得には郵送確認等を含め1週間程度かかるため、未取得の方は早めの申請を推奨します。

※アカウントが発行されればシステム上で認証されるため、「取得証明書」の提出は不要です。

4. 決算書類(原則1期分以上)(必須)

  • 法人:直近1期分の法人決算書一式(貸借対照表、損益計算書など)
  • 個人事業主:確定申告書Bと青色申告決算書など

※原則として1期分の財務実績が必要ですが、創業間もない事業者でも、条件によっては申請可能な場合があります(例:認定支援機関の支援を受けた場合等)。

5. 一般事業主行動計画の公表確認(該当者のみ必須)

  • 「仕事と家庭の両立支援」に関する計画(次世代育成支援対策推進法に基づく)を、「両立支援のひろば」(厚労省運営)に掲載した証明。
  • 従業員101人以上の事業者に義務があります。100人以下の事業者は努力義務です。
  • 公表までに1〜2週間程度かかるため、該当する事業者は早めの対応が必要です。

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6. 外部支援者の関与に関する確認(任意)

  • 中小企業診断士や認定支援機関などの専門家から支援を受けた場合に提出。
  • 計画立案支援・事業内容へのアドバイスなどの内容を記載。
  • 支援実態のない「名義貸し」は不正行為として不採択や交付取消の対象になるため、注意が必要です。

個人事業主が追加で提出する書類

以下、は個人事業主が追加で提出する書類です。

  1. 決算書の代替書類
  2. 本人確認書類(必須)

1.決算書の代替書類

  • 確定申告書Bと青色申告決算書など、税務署に提出済みの直近の財務書類一式

2.本人確認書類(必須)

  • 必要に応じて両面の写しを提出
  • 運転免許証、マイナンバーカードなど、公的機関が発行する顔写真付きの有効な身分証明書

法人が追加で提出する書類

以下、は法人が追加で提出する書類です。

  1. 履歴事項全部証明書(必須)
  2. 代表者の本人確認書類(申請様式により必要)

1.履歴事項全部証明書(必須)

  • 法人の登記情報を証明する書類(登記事項証明書)
  • 発行日から3ヶ月以内の原本をスキャンしてPDF化して提出

2.代表者の本人確認書類(申請様式により必要)

  • 運転免許証やマイナンバーカードなど、代表取締役の本人確認書類
  • 提出が求められるかは公募要領で確認が必要

提出形式と注意点

すべての書類はPDF等の電子ファイル形式で提出が必要です。
書類の不備・虚偽・記載ミスは、不採択・交付取消の重大な原因となります。
特に次の3点は審査評価上の重要ポイントです。

  1. 賃上げ計画と財務計画の整合性
  2. 提出書類間の数字・名称の一貫性
  3. 事業計画書の内容の整合性・実現性

新事業進出補助金の申請書類作成のポイント

「新事業進出補助金」の申請では、書類を単に揃えるだけでなく、審査で高評価を得られる事業計画を作成することが採択の鍵となります。
ここでは、申請の質を高め、採択可能性を引き上げるために重要な4つのポイントを解説します。

  1. 数値目標は「根拠と具体性」がカギ
  2. 「新規性」の伝え方が審査の分かれ目
  3. GビズIDと行動計画の準備は「最初」に行う
  4. 「賃上げ計画」は審査と補助金支給に直結する

1. 数値目標は「根拠と具体性」がカギ

補助事業によってどれだけの成果が期待できるかを、数値で示すことは加点の対象となります。
審査で評価されやすいポイントは以下のとおりです。

  • 新事業による売上や付加価値額の成長見込み(例:5年後の売上割合など)
  • 収益見込みの根拠として、市場調査、販売単価の積算、販売件数の予測などを記載
  • 「CAGR(年平均成長率)」などの指標を使うと、説得力が高まります

なお、売上の10%以上・付加価値額の15%以上といった目標数値は、一部制度で参考例として示されたものであり、すべての申請者に義務づけられるものではありません。
必ず最新の公募要領に沿って記載基準を確認してください。

2. 「新規性」の伝え方が審査の分かれ目

本補助金のキーワードは「新事業への進出」です。審査では、「その事業が自社にとってどれほど新しい取り組みか」が評価対象になります。
ポイントは以下のとおりです。

  • 単なる新商品の投入ではなく、「新しい顧客層や新市場への進出」が含まれているか
  • 既存顧客向けの新サービスだけでは「新規性が弱い」と判断される可能性がある
  • たとえば、BtoCからBtoBへの転換、対面サービスからオンラインサービスへの移行などは、高く評価される事例です

計画書には、過去の実績との比較や、自社にとってなぜそれが“初めて”なのかを示す説明を具体的に盛り込みましょう。

3. GビズIDと行動計画の準備は「最初」に行う

申請に必要な環境整備には時間がかかるため、書類作成よりも先に行うべき作業があります。

GビズIDプライム(全申請者対象)一般事業主行動計画(従業員101人以上の事業者のみ必須)
・電子申請に必須のアカウント
・取得には郵送確認が必要なため、発行までに1週間程度かかる
・ID自体が必要であり、「取得証明書」の提出は不要
・次世代育成支援対策推進法に基づく取り組み
・厚生省の「両立支援のひろば」への掲載が必要
・掲載には1~2週間かかる場合がある

これらの準備は、申請締切ギリギリでは間に合わなくなる可能性が高いため、最初に取り組むべき重要事項として認識しておきましょう。

4. 「賃上げ計画」は審査と補助金支給に直結する

多くの補助金制度では、申請企業に対して「従業員の処遇改善(賃上げ)」を要件または加点項目として課しています。
この補助金でも賃上げ計画は、審査段階・事業実施後の報告・補助金支給のいずれにも関係します。

注意点

  • 補助事業終了後に賃上げ未達成となると、補助金の返還対象になることもある
  • 給与支給総額の成長率や、最低賃金との比較など、具体的な目標設定が必要な場合がある
  • 一部制度では「年平均2.5%以上」などの数値が例示されることもありますが、制度により要件は異なる

申請時には、実現可能な水準の目標設定と、社内での共有体制を整えておくことが重要です。

採択される申請は、単に書類を整えただけではなく、論理性・具体性・社会的責任の視点が一体化した事業計画であることが共通しています。
初動の準備と、説得力ある資料作成で、採択に一歩近づきましょう。

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新事業進出補助金のよくあるミス・不備と対策

「新事業進出補助金」の申請では、書類の不備や内容の曖昧さが原因で不採択となるケースが少なくありません。
特に以下の3点は、毎年多くの申請者がつまずく典型的なミスです。

よくあるミス一覧

  1. 根拠のない数値計画
  2. 外部支援者への過度な依存
  3. 提出書類の不備や提出期限の遅延

1.根拠のない数値計画

補助金審査では、売上・利益・付加価値の数値見通しに具体的な根拠があるかどうかが重要な判断材料になります。
希望的な予測や曖昧な見積もりでは、計画の信頼性が損なわれます。
一部の制度では、以下のような参考基準が示されることもあります。

  • 新事業の売上が全体の10%以上
  • 付加価値額が全体の15%以上

ただし、これらはあくまで参考値であり、制度により要件は異なります。

対策

  • 売上見込は「販売単価 × 想定販売数」などで論理的に積み上げて算出
  • 市場調査、顧客分析、競合比較などを通じて定量的な裏付けを添える
  • 「5年間のCAGR」など、成長率の指標を併用するとさらに説得力が増す

2.外部支援者への過度な依存

補助金申請では、認定支援機関やコンサルタントの支援を受けることが可能ですが、計画のすべてを丸投げし、申請者自身が内容を理解していない状態はリスクが高く、審査上も不利になります。

  • 名義貸しや実態のない申請は、不採択・交付取消・将来の補助金申請制限の対象
  • 支援を受ける場合でも、事業者自身が内容を把握し、説明できる状態が必須です

対策

  • 支援者の役割は「伴走支援」と位置づけ、主導権は常に事業者側に置く
  • 作成を支援してもらった場合でも、その支援内容は正直に記載し、透明性を確保する

3.提出書類の不備や提出期限の遅延

申請書類の提出漏れや締切直前での不備は、形式審査で即不採択となる致命的ミスです。
電子申請の場合、以下のような失敗も頻発しています。

  • ファイルのアップロード忘れ
  • 必須添付書類の不足
  • 提出完了ボタンを押し忘れ
  • サーバー混雑で申請できない

対策

  • 提出書類の一覧リストを事前に作成し、進捗状況を見える化
  • GビズIDの取得(約1週間)や行動計画の公表(約2週間)など、外部手続きのリードタイムを逆算してスケジューリング

これらの失敗は、いずれも準備不足や他人任せの姿勢によって起こりがちです。
採択される申請者に共通するのは、自社の課題・強み・成長戦略を深く理解し、主体的に計画を構築している点です。

  • 準備は早めに
  • 内容は自分の言葉で説明できるように
  • 数値には根拠を添えて
  • 必要に応じて専門家の支援を「補助的に」活用

この4点を押さえるだけで、申請の完成度と採択率は大きく向上します。

まとめ

新事業進出補助金は、最大9,000万円の補助が受けられる魅力的な制度ですが、その分、事業の新規性・成長性・実現可能性に対する審査は厳格です。
採択を勝ち取るには、必要書類を確実に揃えるだけでなく、市場性や数値根拠を伴った説得力ある事業計画書の作成が不可欠です。
本記事で紹介した準備の流れや申請書類作成のポイントを踏まえ、早めの着手と丁寧な計画設計を意識して、確実な申請・採択を目指しましょう。

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人物

監修者からのワンポイントアドバイス

補助金申請では補助金ごとにそれぞれ様々な書類を用意する必要があります。すぐに揃うものもあれば時間のかかるものもあります。申請には期限が設定されていることがほとんどであり、申請に間に合うように準備を早めに心がけるようにすると良いでしょう。