雇用に使える補助金・助成金は?

本コラムでは雇用関係に使える助成金制度を紹介いたします。
梅沢 博香

更新日:

雇用時に活用できる助成金や補助金は?

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

雇用に使える補助金・助成金は?

雇用に使える制度として、以下があります。

  • キャリアアップ助成金(非正規から正社員化・待遇改善など)
  • 産業雇用安定助成金(補助金と連携した賃金助成)
  • 人材開発支援助成金(雇用後の研修や人材育成を支援)

補助金と助成金の違いは?

補助金と助成金は、いずれも行政が行う資金支援制度ですが、目的や担当する省庁が異なります。

項目補助金助成金
主な目的経済の発展を促す雇用の安定・労働環境の整備を支援
管轄省庁経済産業省(中小企業庁)厚生労働省
関連士業中小企業診断士、行政書士など社会保険労務士

補助金は主に企業の成長や投資を後押しする制度で、採択には審査があり、競争的です。一方、助成金は労働者の権利保護や雇用環境の改善を目的としており、条件を満たせば比較的受給しやすい傾向があります。

雇用に関する支援は、厚生労働省が主導して行っているため、補助金よりも助成金の制度が多く、活用しやすいのが特徴です。このコラムでは、補助金も視野に入れつつ、主に雇用に関する助成金制度について解説していきます。

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キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者を正社員にしたり、待遇を改善したりする企業を支援する代表的な制度です。中小企業から大企業まで、幅広い事業者が活用できます。
この助成金には、目的に応じて次の5つのコースがあります。

  1. 正社員化コース:非正規雇用の労働者を正社員に転換した場合に支給
  2. 賃金規定等改定コース:基本給や手当などの賃金規定を引き上げた場合に支給
  3. 賃金規定等共通化コース:正社員と非正規社員の賃金規定を統一した場合に支給
  4. 賞与・退職金制度導入コース:非正規社員向けに新たに制度を導入した場合に支給
  5. 社会保険適用時処遇改善コース:社会保険の適用拡大に合わせて待遇を改善した場合に支給

正社員化コース出典:厚生労働省

一人当たりの助成額

【正社員化コース】
キャリアアップ助成金では、特に支援を手厚くしている「重点支援対象者」が設定されています。主に以下のような方々が対象です。

  • 雇入れから3年以上の有期雇用労働者
  • 雇入れから3年未満で、次の①②の両方に該当する有期雇用労働者
  • ① 過去5年間に正社員として働いた期間が通算1年以下
  • ② 過去1年間に正社員として雇用されていない
  • 派遣労働者、母子家庭の母など
  • 人材開発支援助成金の特定訓練を修了した方

いわゆる、非正規雇用の方や、家庭の事情などで正社員として働く機会が限られている方が対象となります。
【賃金規定等改定コース】
賃金規定等改定コース出典:厚生労働省
賃金規定等改定コースでは、有期雇用労働者の賃金規定を3%以上引き上げて改定・適用した場合にも助成金が支給されます。支給額は、引き上げ率に応じて変わります。
そのほかにも、次のような取り組みが対象になります。

  • 有期雇用労働者の賃金規定を正社員と同じ内容にする
  • 有期雇用労働者に賞与や退職金制度を新たに導入する
  • 社会保険の適用対象となるように労働時間を延長する

これらの取り組みに対しては、30万~60万円程度の助成が受けられます。
申請の期限や必要書類は、厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認しましょう。

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参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

2025年最新!キャリアアップ助成金とは?申請条件等を解説! | みんなの補助金コンシェルジュ

産業雇用安定助成金

産業雇用安定助成金は、補助金と連携して活用できる助成金です。事業再構築補助金やものづくり補助金の交付決定を受けた事業者が、生産性向上の取り組みを行う際、従業員への賃金の一部を助成してもらえる制度です。

区分助成額(1人あたり)期間事業主あたりの上限人数最大助成額(中小企業)
中小企業最大 250万円(125万円×2期)2期分まで5人1,250万円(250万円×5人)
中小企業以外最大 180万円(90万円×2期)2期分まで5人900万円(180万円×5人)

雇用支援は一見補助金と関係が薄いように思われがちですが、近年は補助金制度でも賃金引上げが重視されています。この助成金のように、補助金を前提として設計されている制度もあり、両方を組み合わせて活用することで、事業拡大と人材確保を同時に進めることが可能です。

産業雇用安定助成金の相談をする!

参考:産業雇用安定助成金(産業連携人材確保等支援コース)|厚生労働省

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、雇用後の人材育成を目的とした助成金です。従業員に対して研修を行う際、その経費や賃金の一部が助成されるため、研修費用の負担を大きく軽減できます。幅広い研修内容に対応しており、複数のコースがあるのが特徴です。
参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

人材育成支援コース

このコースは、職務に関連する専門知識や技能を習得させるための訓練を行った際に、費用の一部が助成される制度です。

  • 対象:自社内で行う研修だけでなく、OFF-JT(外部研修)も対象
  • 助成対象:研修経費と賃金の両方

研修中に支払う賃金の一部も助成されるため、実質的なコスト負担を大きく減らせます。
人材育成支援コース.出典:厚生労働省

1人あたりの助成限度額

10時間以上100時間未満100時間以上200時間未満200時間以上
中小企業大企業中小企業大企業中小企業大企業
15万円10万円30万円20万円50万円30万円

これに加えて事業所ひとつにつき、1年で合計1,000万円が限度となります。

人への投資促進コース

「人への投資促進コース」は、ピンポイントな専門研修に対応した助成コースです。5つのメニューから選択でき、それぞれの目的に応じて柔軟に活用できます。

対象となる5つの研修メニュー

  1. 定額制訓練:サブスクリプション型の研修サービスを利用して実施する訓練
  2. 高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練:高度な専門性や成長分野のスキル習得を目的とした訓練
  3. 情報技術分野認定実習併用職業訓練:IT未経験者を即戦力化するための訓練
  4. 自発的職業能力開発訓練:労働者が自主的に受講した訓練費用を事業主が負担する場合
  5. 長期教育訓練休暇等制度:働きながら訓練を受けるための休暇制度などを導入する取組

助成額と助成率

対象となるメニュー経費助成率賃金助成率
中小企業大企業中小企業大企業
定額制訓練60%45%
高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練75%60%1,000円500円
自発的職業能力開発訓練45%
情報技術分野認定実習併用職業訓練60%45%800円400円
長期教育訓練休暇等制度経費助成額1,000円800円
20万円

助成限度額

  • 1事業所あたり年間上限:2,500万円
  • 成長分野等人材訓練の場合:上限1,000万円

なお、訓練内容や対象者によっては、賃金要件・資格要件を満たすことで助成率がさらにアップするケースもあります。詳細は厚生労働省の公式サイトをご確認ください。

1人あたりの助成限度額

人への投資促進コースの助成金には、年間の上限額が定められています。

区分上限額(1事業所・1年度あたり)
全体(各種訓練メニュー合計)2,500万円
成長分野等人材訓練のみ1,000万円
人材開発支援助成金でいくらもらえる?制度内容をわかりやすく解説! | みんなの補助金コンシェルジュ
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申請で意識すべきポイント

助成金を申請・受給する際には、適切な労務管理と計画的な事業運営が欠かせません。申請書の提出だけでなく、その後の実績報告や証明作業が大きな負担になることも多いため、社労士や労務コンサルタントなどの専門家と連携しながら、早めに体制を整えておくことが重要です。

1. 勤怠管理を徹底する

助成金の申請では、実際の労働時間や勤務状況を客観的に証明する資料が必要です。タイムカードやICカードなど、記録が残る勤怠管理システムを導入しておくと安心です。もし導入が難しい場合は、厚生労働省や専門家に相談し、代替資料の整備方法を確認しましょう。

2. 就業規則は自社の実態に合わせて整備

助成金の種類によっては、就業規則の整備が要件になっている場合があります。ただし、形式的に整えるだけではなく、自社の実態に合った内容にすることが大切です。現場とかけ離れた規則を作ると、かえってトラブルの原因になることもあります。

3. 不正受給は厳しく処分される

補助金・助成金の不正受給には、返還命令や企業名の公表、刑事罰(詐欺罪)などの厳しい処分が科されます。虚偽の申請内容はもちろん、研修企業と共謀して自己負担を免れるなどの不正も取り締まりが強化されています。

4. 資金繰り・期限管理をしっかり行う

補助金・助成金はいずれも、お金が振り込まれるのは実績報告後です。申請が通っても、一定期間は自社の資金で運営する必要があります。さらに、申請・実施・報告の期限や条件は細かく設定されており、ひとつでも外れると受給できなくなる可能性があります。普段以上に綿密なスケジュール管理と計画的な資金繰りが重要です。

プロのサポートを活用しよう!

助成金・補助金に関する正確な情報は、厚生労働省・経済産業省の公式サイトや各地域の労働局などの公的機関から入手するのが基本です。

ただし、雇用関連の助成金は要件や提出書類が複雑で、事業を行いながら自力で進めるのは容易ではありません。申請内容の検討から手続き・報告までをスムーズに進めるためには、以下のような専門家のサポートを活用するのがおすすめです。

  • 社会保険労務士(社労士)
  • 上記の専門家と連携しているコンサルティング会社 など

専門家の力を借りることで、制度選定のミスや書類不備を防ぎ、安心して申請を進めることができます。不安や疑問がある場合は、早めに相談してみましょう。

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監修者からのワンポイントアドバイス

テレワークに活用できる補助金としてIT導入補助金はITツールが豊富にありぜひ活用したい補助金です。また各自治体ではワーケーションと絡めた補助金も多数存在します。先着順の補助金も多いため各自治体のHPで確認されると良いでしょう。