人材開発支援助成金をわかりやすく解説!いくらもらえる?

人材開発支援助成金は、労働者に対して職業訓練等を実施した際の、訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する事業者向けの制度です。 本コラムでは人材開発支援助成金の活用で1年度にもらえる助成額や、各コースの概要と活用事例をイラスト付きで分かりやすく解説します!
梅沢 博香

更新日:

人材開発支援助成金をわかりやすくイラスト解説

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

人材開発支援助成金とは?

人材開発支援助成金とは、企業が従業員のスキルアップや専門知識の習得を目的とした「教育訓練(研修)」を実施する際に、国(厚生労働省)がその訓練費用や研修中の賃金の一部を補助してくれる制度です。この制度は、企業の人材育成をサポートすることで、次のような目的を実現するために設けられています。

  • 社員一人ひとりの能力向上
  • 職場全体の生産性向上
  • 企業の持続的な成長

人材開発支援助成金の公式サイトはこちら!

「教育訓練」ってどんなこと?

教育訓練といっても、難しいものではありません。たとえば次のような内容が該当します:

  • 新人社員に対する基本的なマナー研修
  • 中堅社員へのマネジメント研修
  • ITスキルや専門資格の取得に向けた講座受講
  • 外部講師を招いた社内研修 など

これらを計画的に実施し、一定の要件を満たすことで助成金が支給される仕組みです。

中小企業こそ使いやすい制度!

助成率は中小企業が優遇されており、経費の最大75%や、研修中の賃金(例:1人1時間あたり760円)が補助されるケースもあります。つまり、「人材育成にお金をかけたいけれど予算が足りない…」という企業でも、実質的なコストを抑えて研修が行えるチャンスとなります。

ポイント整理

項目内容
対象正社員・契約社員など(雇用保険の被保険者)
対象企業雇用保険適用事業所(中小企業・大企業問わず)
支給対象教育訓練の経費、訓練中の賃金
主な訓練例マナー研修、技能講習、IT研修、OJT等
支給までの流れ訓練計画の作成 → 助成申請 → 訓練実施 → 実績報告

「人を育てる会社」ほど、組織は強くなり、長く続きます。人材開発支援助成金は、その第一歩を後押ししてくれる制度です。

人材開発支援助成金でいくらもらえる?

人材開発支援助成金の活用では、1事業者あたり1年度で最大1億円もらえます。ただし、助成額はコースごとに異なります。

コース名助成額
人材育成支援コース最大1000万円/年度
人への投資促進コース最大2500万円/年度(成長分野等人材訓練を除く)
このうち自発的職業能力開発訓練は最大300万円、成長分野等人材訓練は最大1000万円まで。
建設労働者認定訓練コース最大1000万円/年度
建設労働者技能実習コース最大500万円/年度
教育訓練休暇等付与コース定額30万円(賃金要件・資格等手当要件を満たす場合は36万円)
事業展開等リスキリング支援コース最大1億円/年度

人材開発支援助成金の対象となる事業主とは?

人材開発支援助成金は、すべての事業主が使えるわけではなく、一定の条件を満たした企業だけが対象となります。以下は、主に「人材育成支援コース」を利用する場合の基本条件です。

  1. 職業能力開発推進者を選任していること
  2. 計画書を作成し、労働者に内容を周知していること
  3. 雇用保険に加入している事業所であること(雇用保険適用事業所)

1.職業能力開発推進者を選任していること

企業は、社内の人材育成を円滑に進めるため、「職業能力開発推進者」という役割の担当者を1名選任し、所轄の労働局へ届け出る必要があります。この役割は、経営者自身でも、人事・教育担当者でも構いません。

2.計画書を作成し、労働者に内容を周知していること

助成金の申請にあたっては、以下の2つの計画書を作成・提出することが基本要件です。

  • 事業内職業能力開発計画:会社としての教育方針や訓練方針をまとめたもの
  • 職業訓練実施計画届:いつ・誰に・どんな訓練を行うかを明記したもの

これらは労働組合、または過半数代表者の意見を聴取したうえで作成し、社員にも内容を周知しなければなりません。
※一部の簡易な訓練では、計画提出が省略されるケースもあります(コースにより異なる)。

3.雇用保険に加入している事業所であること(雇用保険適用事業所)

この助成金は、雇用保険に加入している企業(=雇用保険適用事業所)が対象です。また、訓練を受けさせたい従業員も、雇用保険の被保険者である必要があります。つまり、短時間労働者であっても雇用保険に入っていれば対象になります。

対象外となるケースに注意

以下のような企業・状況では、助成金が不支給になる場合があります。

  • 過去に助成金の不正受給歴がある
  • 雇用保険料や労働保険料を滞納している
  • 必要書類の提出が期限を過ぎている
  • 業務と無関係な研修や趣味的な内容の訓練を計画している

要件まとめ表(主に人材育成支援コースの場合)

要件内容
雇用保険適用事業所であること雇用保険に加入している企業であること
職業能力開発推進者の選任教育訓練を統括する担当者を定め、労働局に届け出ていること
訓練計画の作成と意見聴取・周知組合または過半数代表の意見を踏まえた訓練計画を作成し、社員に共有すること
不支給対象への該当がないこと不正受給歴・滞納・書類不備・訓練の内容不適合などがないこと

人材開発支援助成金を活用するメリット

  1. 従業員の生産性が向上する
  2. 人材育成上の費用負担が軽減する
  3. 従業員のキャリアアップへの意識が高まる

1.業務スキルの向上を通じて、生産性アップが期待できる

人材開発支援助成金は、従業員に対する職業訓練の実施を支援する制度です。業務に必要な知識や技能を計画的に習得させることで、現場力や対応力が高まり、生産性の向上につながる可能性があります。特にOJTだけでは得られない体系的なスキル習得に有効です。

2.教育訓練にかかる費用負担を大きく軽減できる

制度を活用すれば、訓練の実施にかかる講師費・教材費などの経費に対する「経費助成」、および訓練中に支払う賃金に対する「賃金助成」が受けられます。
たとえば中小企業であれば、訓練経費の最大75%、1時間あたり760円(※)の賃金助成が支給されるなど、人材育成のコストを大幅に抑えることができます。
※令和6年度「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)」一般訓練の場合

3.従業員のキャリア形成を促すきっかけになる

社内での訓練や研修の実施を通じて、従業員自身がスキルアップの重要性を認識し、キャリアについて主体的に考えるきっかけになります。
とくに、定型業務から応用的な業務へのステップアップを支援するような訓練は、従業員のモチベーション向上や定着率向上にもつながる可能性があります。

人材開発支援助成金とは?

人材開発支援助成金とは、労働者に対して職業訓練などを実施した際の、訓練の経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。労働者が専門的な知識や技能を習得するために、企業が実施する人材育成の取組を支援します。

たとえば、新しいシステムの導入に伴う社員研修や、新規事業展開のために従業員が新たな技術を習得する場合に、本助成金を活用できます。人材開発支援助成金は、6つのコースに分かれています。

  1. 人材育成支援コース
  2. 人への投資促進コース
  3. 建設労働者認定訓練コース
  4. 建設労働者技能実習コース
  5. 教育訓練休暇等付与コース
  6. 事業展開等リスキリング支援コース

人材開発支援助成金の各コース案内出典:人材開発支援助成金

OFF-JT……企業の事業活動と区別して業務の遂行の過程外で行われる訓練
OJT……適格な指導者の指導の下、企業内の事業活動の中で行われる実務を通じた訓練

スキルUPの研修費用を支援!人材育成支援コース

人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成するコースです。
以下3つの訓練が本コースの対象となります。
人材育成支援コース
【対象者】

  • 事業主
  • 事業主団体等

【助成額】

経費助成賃金助成OJT実施助成
1人1時間あたり 760円(中小企業以外は380円)訓練の種類と雇用形態により、訓練費用の 45%〜70% が助成されます。非正規雇用者や正社員化を目指す場合はより高い助成率が適用されます。 OJTを行う場合、1人あたりの訓練に対して 最大20万円(中小企業以外は11万円)が支給されます。
正社員化を目指す訓練では、1人あたり 10万円(中小企業以外は9万円)です。

【活用事例】
IT未経験者が参加するプログラムでは、最初に基本的なプログラミングの知識をOFF-JTで学び、その後、実務で使うソフトウェアを活用しながらOJTでプロジェクトを担当します。

OFF-JTOJT
ITスキルの習得基本的なプログラミングの知識を教育訓練機関で学ぶ。実務で使うソフトウェアを活用しながらプロジェクトを担当する

企業内の人材育成を応援!人への投資促進コース

人への投資促進コースは、企業が従業員の育成やスキル向上に向けた訓練を支援する制度です。このコースには以下の5つの訓練メニューが含まれています。

訓練の種類内容
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練デジタル人材の育成や成長分野での訓練に高率の助成が行われ、大学院での訓練も対象になります。
情報技術分野認定実習併用職業訓練IT未経験者を即戦力化するため、OJT(職場内訓練)とOFF-JT(職場外訓練)を組み合わせた訓練が助成されます。
長期教育訓練休暇等制度働きながら長期の訓練を受けられるように、休暇制度や短時間勤務制度の導入・運用に対する助成が行われます。
自発的職業能力開発訓練従業員が自主的に受ける訓練費用を企業が負担する場合に助成されます。
定額制訓練月額定額で受け放題の研修サービスを導入する事業主に対する助成です。

【対象者】

  • 事業主

【助成額】

経費助成賃金助成OJT実施助成
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練75%960円
情報技術分野認定実習併用職業訓練60%760円20万円
長期教育訓練休暇等制度制度導入経費20万円960円
自発的職業能力開発訓練45%
定額制訓練60%

経費助成の支給限度額は、実訓練時間数に応じて以下のとおりです。

100時間未満100時間~200時間未満200時間以上大学(一年度あたり)大学院(一年度あたり)
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練30万円40万円50万円150万円成長分野等人材訓練:国内150万円/海外500万円
情報技術分野認定実習併用職業訓練15万円30万円50万円
自発的職業能力開発訓練7万円15万円20万円60万円国内60万円
海外200万円

※中小企業以外の場合は上記の金額よりも低くなり、賃金要件・資格等手当要件助成が適用された場合は上記の表よりも高くなります。
詳細は公式サイトでご確認ください。
【活用事例】高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練
中小企業において、高度なデジタル分野の人材育成のため、プロジェクトマネージャーの資格取得講座を実施
効果

  • 非常に高度なスキル(ITスキル標準(ITSS)レベル3、4以上など)を持った人材の育成が可能
  • 高率助成(75%)により、費用負担を大幅に軽減

助成金

受講料経費助成賃金助成
一人当たり280,000円(30時間の受講と資格試験料含む)210,000円28,800円

【活用事例】情報技術分野認定実習併用職業訓練
中小企業においてIT分野未経験の従業員にプログラミング講座の訓練を実施
効果

  • 経験者採用以外の方法でDX推進人材を確保可能
  • 未経験の従業員が研修で実務経験を得ることで、即戦力として働ける一人前のSEに成長
受講料経費助成賃金助成実施助成
1人当たり750,000円で800時間のOFF-JT、200時間のOJT(資格試験料含む)の場合450,000円608,000円200,000円

【活用事例】自発的職業能力開発訓練
従業員の自発的な資格取得を支援
効果

  • スキルアップや資格取得のために自発的に学ぶ従業員の受講費を会社が負担することで、従業員のモチベーションと生産性が向上

助成金

受講料経費助成
労働者が400,000円の訓練を受講し、事業主が受講料の1/2の200,000円を負担した場合90,000円

【活用事例】長期教育訓練休暇等制度
インバウンド対応のため海外の語学学校で5か月間の英会話クラスを受講するための休暇を取得
効果

  • 休暇制度により、従業員の自発的なスキルアップを支援することで、福利厚生が充実し、従業員のモチベーションが向上

助成金

長期教育訓練休暇制度導入経費助成賃金助成(有給休暇の場合のみ)
200,000円

150日の長期休暇取得で、900,000円

認定訓練などの実施を支援!建設労働者認定訓練コース

建設労働者認定訓練コースは、建設分野の認定訓練や指導員訓練を実施し、建設労働者に有給で受講させた場合に、費用の一部が助成されるコースです。
【対象者】

  • 中小建設事業主
  • 中小建設事業主団体(経費助成のみ)

【助成額】

経費助成賃金助成
認定職業訓練または指導 員訓練のうち建設関連の訓練を実施した場合、対象経費の1/6建設労働者に対して認定
訓練を受講させた場合、建設労働者1人1日あたり3,800円

スキルアップの実習を支援!建設労働者技能実習コース

建設労働者技能実習コースは、企業が建設労働者に対して技能向上のための実習を有給で受講させた場合に費用の一部が助成されるコースです。
【対象者】

  • 中小建設事業主、中小建設事業主団体(支給対象は、男性・女性労働者)
  • 中小以外の建設事業主、中小以外の建設事業主団体(支給対象は、女性労働者のみ)

【助成額】

区分従業員数経費助成賃金助成(最長20日間)
建設事業主(中小)20人以下支給対象費用の3/41人あたり日額8,550円
建設事業主(中小)21人以上35歳未満:支給対象費用の7/1035歳以上:支給対象費用の9/201人あたり日額7,600円
建設事業主(中小以外)制限なし支給対象費用の3/51人あたり日額7,100円(※女性労働者のみ)
建設事業主団体(中小)制限なし支給対象費用の4/51人あたり日額8,550円(※所属労働者が中小)
建設事業主団体(中小以外)制限なし支給対象費用の2/31人あたり日額7,100円(※女性労働者のみ)

賃金助成は最長20日分まで支給されます。中小企業の定義は、建設業において「資本金3億円以下または従業員300人以下」が目安です。また、「中小以外」は大企業に該当し、賃金助成は女性労働者に限定される点に注意が必要です。

自主的なスキルアップを支援!自教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースは、従業員が有給休暇を使って自主的にスキル習得の訓練を受けた際、費用の一部が助成されるコースです。
【対象者】

  • 事業主

【助成額】
1事業主あたり30万円支給されます。
訓練後に労働者の賃金が5%以上増加、または資格手当で賃金が3%以上増えた場合、追加で6万円が支給されます。

対象となる教育訓練休暇制度

対象となる教育訓練休暇制度は決められており、それら全てを満たす必要があります。

  • 日単位で取得が可能なものであること
  • 被保険者を対象とした有給の教育訓練休暇制度であること

3年間に5日以上の取得が可能な有給の教育訓練休暇制度を就業規則または労働協約に制度の施行日を明記して規定するものであること など

新規分野のスキル習得を支援!事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、企業が新規事業に向けて従業員に新たな分野の知識やスキルを習得させる訓練を行う際、費用の一部が助成されるコースです。本コースは令和8年度末までの時限措置です。
【対象者】

  • 事業主

【助成額】

経費助成賃金助成
実費相当額の75%1人1時間あたり960円

※中小企業以外の場合は上記の金額よりも低くなります。
【基本条件】
以下3つを満たす必要があります。

  1. OFF-JTで行う訓練であること
  2. 実訓練時間が10時間以上であること
  3. 以下どちらかに該当する訓練であること
  • 事業展開に伴い、新しい分野で必要な専門知識やスキルを習得させる訓練
  • 事業展開は行わないが、企業内でDX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進めるため、関連業務に必要な専門知識やスキルを習得させる訓練

【活用事例】
従業員数100名程のコンサルティング会社
業務効率化と顧客対応の迅速化を目指し、生成AIを活用する新たな業務システムの導入を予定。
事業展開等リスキリング支援コースを活用して従業員に生成AIの基本的な操作方法から、テキスト生成やデータ分析の活用方法など、実務で必要となるスキルを習得させる訓練を受講させた。

コースの適用で実質1/4で生成AIスキルが学べる!

当社では事業展開等リスキリング支援コースの活用で実質1/4の受講費で、生成AIのスキルが学べる研修をご用意しました。従業員にAIの活用方法を効果的に習得させたい事業主様に大変おすすめの研修です。

通常40万円(税込)の研修が事業展開等リスキリング支援コースを利用することで実質10万円(税込)で受講できます!コスト意識の高い事業者さまに大変ご好評の研修内容となっております。助成金の申請は弊社がサポートするので安心してご利用いただけます!

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参考:人材開発支援助成金

人材開発支援助成金の申請フロー

人材開発支援助成金を申請する流れは各コースによって申請フローが異なりますが、基本的な手続きの流れは以下のとおりです。

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