お試し雇用を支援!トライアル雇用助成金を使える条件は?

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、ハローワークなどを通じて紹介された求職者を、試行的に雇用するともらえる助成金です。本コラムでは、トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)の概要や対象企業、申請の流れなどを分かりやすく解説します。
梅沢 博香

更新日:

お試し雇用を支援!トライアル雇用助成金を使える条件は?

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

トライアル雇用助成金を使える企業と対象者の条件

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、ハローワークなどを通じて紹介された求職者を、試行的に雇用する企業が支給対象となる助成制度です。採用リスクを抑えつつ、就職が難しい求職者に雇用のチャンスを与えることを目的としています。

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対象となる企業

トライアル雇用助成金を受けるには、ハローワークなどの紹介を通じて採用を行うことが必須条件です。企業は「トライアル雇用求人」をハローワークへ提出し、紹介を受けてから採用手続きを進めます。採用後は、トライアル雇用実施計画書を2週間以内にハローワークへ提出する必要があります。

区分要件補足
雇用経路ハローワーク等の紹介を通じて採用自社応募・知人紹介は対象外
契約期間原則3か月の有期雇用契約常用雇用への移行が期待される
労働条件労働保険・雇用保険の適用事業所であること賃金・労働時間が法定基準を満たすこと

また、派遣労働者としての雇用や、既に他の事業所でトライアル雇用中の求職者を採用する場合は対象外です。制度の目的は「新たな雇用機会の創出」であり、形式的な助成金目的の採用は認められません。

助成金の対象となる求職者

助成金の対象となるのは、ハローワークが「就職が特に困難」と判断した求職者です。
次のいずれかに該当する方が対象となります。

  • 紹介日前日に安定した職業に就いていない方
  • 紹介日前2年以内に離職または転職を2回以上繰り返している方
  • 紹介日前日時点で離職期間が1年を超えている方
  • 妊娠・出産・育児を理由に離職し、1年以上就業していない方
  • 60歳未満でハローワークなどで担当者制による個別支援を受けている方
  • 就職支援にあたって特別な配慮を要する方(例:生活困窮者、若年無業者など)

これらの方を3か月間の有期契約で雇用する場合、企業が助成金の対象となります。ハローワークは求職者の状況を確認した上で「トライアル雇用による紹介が適当」と判断した場合のみ紹介を行います。

対象外になりやすいケースに注意

次のようなケースでは、助成金の支給対象外となる場合があります。

  • ハローワークを通さず自社で採用した場合
  • トライアル雇用開始前に採用・契約を締結していた場合
  • 労働条件(賃金・労働時間など)が法定基準を満たしていない場合
  • 学生・在学中の方を雇用した場合
  • すでに他の事業所でトライアル雇用中の求職者を再度採用した場合
  • 助成金目的と見なされる形式的な採用を行った場合

これらに該当する場合、申請を行っても支給対象外となる可能性があります。採用前に必ずハローワークで対象者・手続き内容を確認しましょう。

トライアル雇用助成金はいくらもらえる?支給額と期間の目安

一般トライアルコースの助成額は、1人あたり月額最大4万円を最長3か月間支給する制度です。対象者が母子家庭の母または父子家庭の父である場合は、上限額が5万円に引き上げられます。ここでは、支給額と支給期間の仕組み、減額・不支給になるケースについて解説します。

一般トライアルコースの支給額

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)では、原則として月額最大4万円が最長3か月間支給されます。
支給対象となるのは、ハローワークなどの紹介を通じて雇用された求職者で、雇用期間中に所定の要件を満たしている場合です。

区分支給額(月額上限)支給期間
一般トライアルコース最大4万円最長3か月

支給期間中は、実際の勤務日数や労働時間に応じて支給額が算出されます。原則3か月間を上限としますが、勤務状況により按分される場合があります。この制度は、企業が採用前に求職者の適性を見極められるよう支援するもので、トライアル期間終了後に常用雇用へ移行することが期待されています。

母子・父子家庭の場合は上限額がアップ

対象となる求職者が母子家庭の母または父子家庭の父に該当する場合、
支給上限額が月5万円に引き上げられます。

区分支給額(月額上限)支給期間
母子・父子家庭の対象者最大5万円最長3か月

これは、ひとり親世帯の経済的負担を軽減し、安定した就業機会を確保するための特例措置です。支給期間は通常の一般コースと同様で、3か月間を上限とします。

支給額が減額・不支給になる主なケース

支給額は、要件を満たさない場合に減額または不支給となることがあります。
厚生労働省の公募要領に基づく主なケースは次のとおりです。

  • 勤務実績が所定の労働日数・労働時間を満たしていない場合:実働日数に応じて按分支給、または支給対象外となることがあります。
  • ハローワーク等の紹介を経ずに採用した場合:自社応募や知人紹介など、紹介経路が異なる場合は対象外です。
  • トライアル雇用開始前に採用契約を締結していた場合:制度の趣旨(採用前の試行雇用)に反するため不支給となります。
  • 申請期限を超えて支給申請書を提出した場合:トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内に申請する必要があります。
  • 労働条件が法令基準を満たしていない場合:最低賃金未満や労働保険未加入などの場合は支給されません。

これらの要件を満たさない場合、助成金の一部または全額が支給されないことがあります。制度を利用する前に、採用経路・勤務条件・申請期限をハローワークで必ず確認しましょう。

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申請方法と手続きの流れ(ハローワーク経由での申請が原則)

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、ハローワークなどを通じた採用と申請が原則です。求人の申込みから助成金の支給まで、すべてハローワークを介して行う必要があります。手続きの流れを理解しておくことで、申請漏れや期限切れによる不支給を防ぐことができます。

申請前に準備すべき書類

助成金を申請するためには、採用前から必要書類を揃えておくことが重要です。とくに「実施計画書」は提出期限が短いため、事前準備を徹底しましょう。

書類名提出先提出期限
トライアル雇用求人票ハローワーク申請前(求人登録時)
トライアル雇用実施計画書ハローワーク雇用開始日の翌日を起算日として2週間以内
雇用保険被保険者資格取得届ハローワーク(または電子申請)雇用開始時
助成金支給申請書ハローワークまたは都道府県労働局経由トライアル雇用終了日の翌日から2か月以内

とくに「トライアル雇用実施計画書」は、雇用開始日の翌日を起算日として2週間以内に提出しなければなりません。この提出が遅れると、助成金の支給対象外になる可能性があります。

申請から支給までの流れ

一般トライアルコースの手続きは、次のステップで進みます。

1.求人票の提出(トライアル雇用求人)

ハローワークに「トライアル雇用求人」として求人票を提出します。求人票にトライアル希望の旨を明記し、ハローワークの紹介を受けることが前提です。

2.求職者の紹介・面接・採用

ハローワークが対象求職者を紹介します。企業は面接を行い、採用が決まったら原則3か月間の有期雇用契約を締結します。

3.トライアル雇用実施計画書の提出

採用後、雇用開始日の翌日を起算日として2週間以内に「トライアル雇用実施計画書」を提出します。提出後、ハローワークが内容を審査し、適格と判断された場合にトライアル雇用として正式に認定されます。

4.トライアル雇用の実施(最長3か月)

トライアル期間中は、出勤日数や労働時間などの実績を記録し、支給申請に備えます。

5.助成金の支給申請

トライアル雇用終了後、翌日から2か月以内に助成金の支給申請書を提出します。申請期限を過ぎると不支給となるため、スケジュール管理が非常に重要です。

スムーズに申請するための注意点

申請を確実に進めるためには、以下の点に注意してください。

  • ハローワーク経由が必須:自社採用や知人紹介など、ハローワークを介さない採用は助成対象外です。
  • 提出期限を厳守する:実施計画書は「2週間以内」、支給申請書は「2か月以内」が原則。いずれも期限超過は不支給となります。
  • 法定基準を満たす労働条件を設定する:最低賃金や労働時間が法令を下回る場合は支給対象外となります。
  • 書類の控えを必ず保管する:申請後の確認に備え、受付印付きの控えを保存しておきましょう。
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よくある質問

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)に関して、よく寄せられる質問をまとめました。厚生労働省の公式情報に基づき、実際の申請を検討する際に役立つポイントを解説します。

トライアル雇用期間中に本採用が決まった場合、助成金はどうなりますか?

トライアル雇用期間中に常用雇用へ移行した場合でも、支給対象となります。ただし、1か月未満で常用雇用に切り替えた場合など、勤務期間によって支給額が月割りで調整されることがあります。

また、トライアル終了後に「特定求職者雇用開発助成金」など別の助成金を申請できるケースもあります。
本採用が決まった時点で、必ず管轄ハローワークへ報告し、要件を確認しましょう。

トライアル雇用期間中に求職者が退職した場合、助成金は支給されますか?

一定の勤務期間を満たしていれば、一部が支給される場合があります。例えば、退職が発生しても実際に勤務した日数や労働時間が支給要件を満たしていれば、按分支給となることがあります。

ただし、退職理由(自己都合・事業主都合など)や就労実績により支給の可否が変わるため、判断はハローワークの審査によって行われます。
退職が発生した場合は、早めに担当窓口に相談することが大切です。

トライアル雇用助成金を活用するといくら補助されますか?

一般トライアルコースでは、1人あたり月額最大4万円(最長3か月間)が支給されます。対象者が母子家庭の母や父子家庭の父などの場合は、月額最大5万円に引き上げられます。

区分支給額(月額上限)対象期間
一般トライアルコース最大4万円(母子・父子家庭は5万円)最長3か月

なお、障害者を対象とする「障害者トライアルコース」「障害者短時間トライアルコース」もありますが、本コラムでは一般企業向けの一般トライアルコースを中心に解説しています。

トライアル雇用助成金が使える対象者の条件は?

ハローワークなどから紹介された求職者のうち、就職が特に困難と認められる方が対象です。
具体的には、以下のような方が該当します。

  • 紹介日前日に安定した職業に就いていない方
  • 紹介日前2年以内に離職または転職を2回以上繰り返している方
  • 紹介日前日時点で離職期間が1年以上の方
  • 妊娠・出産・育児を理由に離職し、再就職を希望している方
  • 母子家庭の母または父子家庭の父

これらの方をハローワーク経由でトライアル雇用として採用した場合、助成金の対象となります。

トライアル雇用助成金は、1人を雇うといくらの助成金が出ますか?

一般トライアルコース:1人あたり最大12万円(4万円×3か月)が支給されます。
母子家庭・父子家庭の場合:最大15万円(5万円×3か月)となります。
実際の支給額は、雇用期間や勤務日数などの実績に基づいてハローワークが審査のうえ決定します。

障害者雇用のトライアル雇用の助成金はいくらですか?

障害者を対象とした場合、障害者トライアルコースの適用となり、月額最大8万円(最長3か月)が支給されます。また、知的障害者・精神障害者などを対象とした「障害者短時間トライアルコース」では、週20〜30時間の勤務でも支給対象になります。障害者コースは対象期間が最長6か月となる場合もあるため、詳細はハローワークで確認してください。

人物

監修者からのワンポイントアドバイス

トライアル雇用助成金は「採用リスクの軽減」と「雇用機会の創出」を両立できる制度です。申請時は、ハローワーク経由の採用経路・雇用契約期間・労働条件の3点を特に確認しましょう。形式的な雇用では支給対象外となるため、助成金目的でなく実質的な雇用意欲の裏付けが求められます。