リスキリングで使える補助金・助成金は?条件や申請方法を分かりやすく解説
費用を抑えて従業員のスキルアップを目指す事業者様はぜひ国や自治体のリスキリング助成金を活用しましょう!本コラムでは法人・個人事業主がリスキリングに使える助成金について分かりやすく解説します。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
リスキリングとは?
リスキリング(Reskilling)とは、新しい職業に就くため、または現在の職業で必要となるスキルの大幅な変化に対応するために、新しいスキルを学び直すことを指します。単なるスキルの向上ではなく、全く異なる分野への能力転換を目指すのが特徴です。
なぜリスキリングが重要なのか?
近年、以下の2つの要因により、リスキリングの重要性はますます高まっています。
1.デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展
AI、IoT、クラウド技術などの急速な普及により、企業ではこれらの技術を使いこなせる人材が必要です。特に、プログラミングやデータサイエンス、サイバーセキュリティのスキルを持つ人材の需要が急増しています。
2.グリーン・カーボンニュートラル化の推進
環境技術やサステナビリティに関する知識を持つ人材が求められています。
脱炭素化への取り組みが企業にとって避けられない課題となっており、新しい分野での知識習得が重要です。
リスキリングのメリット
企業にとってのメリット
生産性向上:新技術や新たな知識を活用することで効率的な業務運営が可能に。
競争力強化:市場や技術の変化に柔軟に対応できる組織を作れる。
個人にとってのメリット
キャリアの選択肢が広がる:新たな分野に挑戦することで、将来の仕事の幅を広げられる。
雇用の安定と収入の向上:需要の高いスキルを身に付けることで、安定した職業や収入を得やすくなる。
リスキリングは、企業と個人の双方にとって欠かせない取り組みです。特にDXや環境対応の分野では、リスキリングを行うことで大きな成長機会をつかむことができます。
事業主が従業員のリスキリングに利用できる助成金
法人や個人事業主が従業員のリスキリングを支援するために利用できる主な助成金として人材開発助成金とDXリスキリング助成金があります。
人材開発支援助成金
人材開発支援助成金は厚生労働省が実施する制度で、企業が従業員に対して計画的な職業訓練を実施した場合に助成される制度です。
訓練経費や賃金の一部が補助対象となります。人材開発支援助成金にはいくつかのコースがありますが、本コラムでは汎用性の高い4つのコースを紹介します。
人材育成支援コース
職務に関連した知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に助成されます。
対象となる訓練には、職場内でのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)や外部講習が含まれます。
助成率 | 助成上限額 | 賃金助成 |
中小企業は訓練経費の75%、大企業は60% | 1人1年度あたり中小企業は50万円、大企業は30万円 | 訓練時間1時間あたり760円(中小企業)、380円(大企業) |
教育訓練休暇等付与コース
有給の教育訓練休暇制度を導入し、労働者が休暇を取得して訓練を受けた場合に助成されます。
特に、労働者が自発的に学び直しを行う際に有効です。
助成額 | 休暇取得助成 |
制度導入助成として1企業あたり中小企業は30万円、大企業は20万円 | 労働者1人1日あたり中小企業は7,600円、大企業は3,800円(最大20日分) |
人への投資促進コース
デジタル人材や高度人材の育成、または労働者の自発的な能力開発を支援する訓練を実施した場合に助成されます。
DXやITスキルの習得を目的とした研修などが対象です。
助成率 | 助成上限額 | 賃金助成 |
中小企業は訓練経費の75%、大企業は60% | 1人1年度あたり中小企業は50万円、大企業は30万円 | 訓練時間1時間あたり760円(中小企業)、380円(大企業) |
事業展開等リスキリング支援コース
新規事業の立ち上げや業務転換に伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得するための訓練を実施した場合に助成されます。
例えば、新規サービスの導入に必要な専門スキルの習得を目的とした訓練などが対象です。
助成率 | 助成上限額 | 賃金助成 |
中小企業は訓練経費の75%、大企業は60% | 1人1年度あたり中小企業は50万円、大企業は30万円 | 訓練時間1時間あたり760円(中小企業)、380円(大企業) |
人材開発支援助成金の公式サイトはこちら!
DXリスキリング助成金
DXリスキリング助成金は公益財団法人東京しごと財団が実施する助成制度です。
東京都内の中小企業がDXに関連する職業訓練を従業員に実施する際に支援を受けられます。
特にデジタル技術の導入や活用を目的としたスキル習得に対する助成が中心です。
助成率 | 助成上限額 |
助成対象経費の3/4 | 1人あたり75,000円 |
このような助成金を活用することで、企業は従業員のスキル向上を支援しながら、人材育成のコストを削減することができます。
助成金・補助金を利用するための条件と申請方法
リスキリングを支援する助成金や補助金を利用するためには、一定の条件を満たし、所定の手続きを行う必要があります。
ここでは、主な助成金制度について対象者や条件、申請手続きの流れを解説します。
助成金・補助金の対象者と条件
人材開発支援助成金(厚生労働省)
対象者:企業(中小企業・大企業を問わず)
対象となる訓練:
- 職務に関連する知識・技能を習得させる訓練
- デジタルスキルや高度な専門知識を習得する訓練
- 新規事業展開に必要なスキルの習得を目的とする訓練
条件:
- 訓練計画を事前に作成し、所定の期日までに提出すること
- 訓練実施期間や受講対象者の雇用状況を適切に管理すること
DXリスキリング助成金(公益財団法人 東京しごと財団)
対象者:東京都内の中小企業
対象となる訓練:
- DX推進に関連する技術や知識を習得する訓練
- ITスキル、デジタルツールの活用方法を学ぶ研修
条件:
- 事前に訓練計画を提出すること
- 東京都内に事業所を持つ中小企業であること
- 助成対象となる訓練内容が、DX関連であること
申請方法と手続きの流れ
上記のリスキリングのための助成金を利用するには、以下の手続きを行う必要があります。特に、事前に申請書類を提出する点に注意してください。
1.訓練計画の策定
助成金を申請する前に、どのような訓練を実施するかを明確に計画する必要があります。
訓練内容、対象者、実施期間、費用見積もりを具体的に記載した「訓練計画書」を作成します。
2.申請書類の準備と提出
助成金の種類ごとに必要な書類が異なるため、事前に公式サイトなどで確認してください。
主な書類:
- 訓練計画書
- 申請書(指定様式)
- 企業情報や訓練対象者のリスト
- 費用見積書または支出計画書
提出先:
- 人材開発支援助成金:都道府県労働局またはハローワーク
- DXリスキリング助成金:公益財団法人 東京しごと財団
3.審査と認定
提出した書類を基に審査が行われ、助成金の対象として認められるかどうかが判断されます。
審査結果は書面または電子メールで通知されます。
4.訓練の実施と報告
認定後、計画通りに訓練を実施します。
実施後は報告書を提出する必要があります。特に、受講者の出席記録や実施内容の詳細を記載することが求められます。
5.助成金の受給
報告書の審査が通過すると、助成金が支給されます。
支給方法は振り込みが一般的です。
申請時の注意点
申請書類の記入ミスや提出期限の遅れは不支給の原因になるため、細心の注意を払って準備しましょう。訓練内容が助成対象に該当するかどうかを事前に確認することが重要です。特にDXリスキリング助成金では、DXに関連する内容であることを明確に示す必要があります。
リスキリング助成金を利用する際のポイント
助成金や補助金を利用する際は、ただ制度内容を理解するだけでは不十分です。特に初めて申請する場合は、いくつかのポイントを押さえることで申請の成功率を高められます。以下では、効果的に助成金を活用するためのポイントを解説します。
1. 助成金を受給するための具体的なコツ
訓練計画書の作成を丁寧に行う
訓練内容を具体的に記載することで審査時の評価を高めることができます。
例えば、DXリスキリング助成金の場合は「どのデジタル技術を学び、どの業務に活用するか」を明確に示しましょう。
受講対象者と訓練の目的を具体的に説明し、業務への貢献度を示すことが重要です。
目標設定を明確にする
成果を測定できる具体的な目標を設定することで、計画書に説得力を持たせることができます。
例:「プログラミングスキルを習得することで、業務効率を20%向上させる」などの定量的な目標を設定しましょう。
2. 申請書類の作成方法と見直しのポイント
提出前のダブルチェックを徹底します。
記入漏れや誤字脱字は不支給の原因になることが多いため、提出前に複数回見直すことが大切です。
特に助成金の申請では、公式の指定様式を使用し、必要書類を漏れなく揃えて提出することが求められます。
公式サイトの最新情報を確認します。
制度内容や申請要件は変更されることがあるため、必ず最新の公式サイトを確認しましょう。
人材開発支援助成金の場合は厚生労働省、DXリスキリング助成金の場合は公益財団法人 東京しごと財団のサイトを参照してください。
3. 提出期限の管理とスケジュールの調整
スケジュールを逆算して計画的に進めます。
提出期限の1か月以上前から準備を始めることで、予期せぬトラブルを防げます。
例:訓練開始の1か月前までに申請書を提出する必要がある場合、2か月前から準備を開始することで余裕を持って対応できます。
4. 申請後のフォローアップ
申請後も進捗を確認します。
提出後、審査結果の通知を待つ間も定期的に状況を確認することが重要です。
不備があった場合は、迅速に対応することで受給までの流れをスムーズにできます。
5. 過去の成功事例の活用
類似するケースを参考にします。
過去に同様の助成金を受給した企業の事例を調査し、成功のポイントを学びましょう。
特にDX関連の助成金では、企業規模や業種ごとの成功事例を参考にすることで有効な訓練計画を作成できます。
6. 専門家のサポートを活用する
助成金申請のサポートを行っている専門家に相談します。
申請書類の作成や手続きのサポートを受けることで、成功率を高めることができます。
特に初めて申請する場合は、コンサルタントや補助金申請代行サービスを利用することを検討しましょう。
助成金・補助金を利用する際は、単に制度内容を理解するだけでなく、正確な手続きを行い、効果的な申請書を作成することが重要です。
個人がリスキリングに利用できる助成金
企業だけでなく、個人もリスキリングを目的とした助成金を利用することができます。特に、厚生労働省が提供する「教育訓練給付制度」は、幅広い学習ニーズに対応しており、多くの人が利用可能です。
教育訓練給付制度(厚生労働省)
教育訓練給付制度は、厚生労働省が個人向けに提供している支援制度で、特定の教育訓練を受講する際に費用の一部をサポートするものです。働く人のスキルアップや再就職支援を目的としており、以下の3つの種類があります。
専門実践教育訓練
対象:専門的・実践的な訓練を受講する場合。
給付額:受講費用の最大70%(年間上限56万円)。条件を満たすと追加で20%の支給を受けられるため、合計で90%まで支給されることもあります。
対象となる訓練例:大学院の専門職学位課程、看護師・保育士の資格取得プログラム、プログラミングスクールの高等訓練コースなど。
特定一般教育訓練
対象:特定の一般教育訓練を受講する場合。資格取得や業務に関連する専門的な講座が対象となります。
給付額:受講費用の40%(上限20万円)。ただし、費用が4,000円以上であることが条件です。
対象となる訓練例:ITスキル、語学スクール、ビジネススキル向上のための各種研修。
一般教育訓練
対象:一般的な教育訓練を受講する場合。職業能力の向上を目的とした幅広い講座が対象になります。
給付額:受講費用の20%(上限10万円)。費用が1,200円以上であることが条件です。
対象となる訓練例:簿記、パソコンスキル、ビジネスマナー講座など。
教育訓練給付制度を利用する際の注意点
事前に対象講座であるかを確認することが必要:受講しようとしている講座が制度の対象となっているかを、ハローワークや公式サイトで確認しましょう。対象講座でない場合、給付金を受け取れない可能性があります。
申請手続きのタイミングに注意:受講開始前に申請を行う必要があります。特に専門実践教育訓練では、受講開始日の1か月以上前に申請を行うことが推奨されます。
ハローワークでの手続きが必要:申請手続きは最寄りのハローワークを通じて行います。受講開始前にキャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成することが求められる場合もあります。
地方自治体によるリスキリング助成金の活用法
リスキリングに関する助成制度は、国だけでなく各地方自治体でも独自に実施されています。中小企業や個人がスキル習得のための研修を行う際、費用の一部を補助してもらえるケースも多くあります。
ここでは、東京都をはじめとする複数の自治体が実施しているリスキリング助成制度の例をご紹介します。
地方自治体の助成制度は随時公募され、内容も毎年変わる可能性があります。企業の所在地となる都道府県・市区町村の公式ホームページを定期的に確認しましょう。
情報収集や申請に不安がある方は、補助金に詳しい申請サポート業者への相談も選択肢の一つです。
【東京都】DXリスキリング助成金
都内中小企業が、従業員に向けてDX(デジタルトランスフォーメーション)に関する研修を実施した場合、その費用の一部を助成する制度です。DX人材の育成を目的としています。
助成対象となる研修の例
レディメイド研修:大学院・専門学校などが実施する既存の集合研修やeラーニング
オーダーメイド研修:企業が従業員向けに教育機関に委託して実施する集合研修(※オンライン双方向型も可)
助成内容
助成率 | 上限額 | 対象経費 |
対象経費の3/4 | 1人あたり1研修75,000円/企業あたり最大100万円 | 受講料、教材費、登録料、ヒアリング料など |
上限に達するまで複数回申請可
【東京都】事業内スキルアップ助成金
従業員の職務に必要な専門スキルや資格取得のための研修を支援する制度です。
補助対象 | 助成額 | 上限額 |
集合研修またはオンラインによるリアルタイムの双方向研修 (※通信講座〈添削方式〉は対象外) | 受講者数 × 研修時間数 × 760円 | 150万円 |
上限に達するまで複数回申請可
【大阪府】成長産業分野キャリア形成支援事業
IT・介護・建設などの成長分野で活躍できる人材の育成を目的とした制度で、企業や求職者を対象に研修費用を補助します。
対象 | 対象研修 | 助成 |
府内の中小企業または求職者 | ITスキル、介護職員初任者研修、建設技術研修など | 研修費の一部(上限あり) |
若年層や女性の就業支援にも活用可能
【神奈川県】かながわ人材育成支援事業費補助金
新技術の導入や業務改善を目的とした企業内研修を支援。DXや多能工化など、現場のニーズに合った内容が助成対象です。
対象 | 対象研修 | 助成率 | 上限額 |
県内中小企業 | 研修費、講師謝金、教材費など | 1/2以内 | 100万円 |
【福岡市】人材育成支援補助金(高度人材育成枠)
AI・データ分析・海外展開など、先端分野で活躍できる人材の育成を目的とした制度です。
対象 | 対象研修 | 助成率 | 上限額 |
福岡市内の企業 | AI・ビッグデータ活用・グローバル対応など | 2/3以内 | 100万円 |
リスキリングを支援する地方自治体の助成制度は、業種・職種に応じた柔軟な支援メニューが多く、自社の研修ニーズに合った制度を見つけることで、コストを抑えながら人材を育成できます。
ただし、制度の内容は自治体によって異なり、募集期間も短いことがあるため、早めの情報収集と計画的な準備が重要です。
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