省力化補助金は農業で使える?
省力化補助金は農業そのものには利用できません。
ただし、製造業、飲食業、宿泊業、倉庫業など、一次産業以外の分野で活用することは可能です。農業関係者も、これらの業種を通じて補助金を活用する方法を検討してみてください。
人手不足解消に役立つさまざまな省力化製品が補助される省力化補助金。省力化補助金は、農業にも活用できるのでしょうか?本コラムでは、省力化補助金の概要や、農業に活用できる製品などを分かりやすく解説します!農業で省力化投資補助金を検討している方は、ぜひ参考にしてください!
カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
省力化補助金は農業そのものには利用できません。
ただし、製造業、飲食業、宿泊業、倉庫業など、一次産業以外の分野で活用することは可能です。農業関係者も、これらの業種を通じて補助金を活用する方法を検討してみてください。
省力化補助金は、人手不足を解消するために、ロボットやIoTなどの省力化製品を導入する際の経費を国が支援する制度です。
簡単かつ効果的な省力化投資を促進し、企業の売上拡大や生産性向上、さらに賃上げにつなげることを目的としています。
カタログ注文型と一般型の2つの申請枠があります。
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清掃ロボットや自動券売機、スチームコンベクションオーブン、無人搬送車など、人手不足解消に役立つ汎用製品を「カタログ」に掲載。
申請者はこの「カタログ」から製品を選んで申請します。
中小企業が簡単に選んで導入できる仕組みを整えています。これにより、手軽かつ即効性のある省力化投資を推進します。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5名以下 | 200万円(300万円) | 1/2 |
6~20名 | 500万円(750万円) | |
21名以上 | 1,000万円(1,500万円) |
※()内の金額は、賃上げ要件を達成した場合に引き上げられる補助上限額です。
「一般型」では、「カタログ」以外の製品も補助対象になります。簡単に言えば、より自由度の高い省力化補助金といえます。
業務プロセスの自動化や高度化、ロボットによる生産プロセスの改善、デジタルトランスフォーメーション(DX)など、個別の現場に合わせた設備導入やシステム構築を支援。中小企業の業務内容や設備に応じた多様な省力化投資を後押しします。
「一般型」の補助率は原則1/2以下ですが、小規模・再生事業者に該当する場合は2/3に引き上げられます。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5名以下 | 200万円(300万円) | 1/2 |
6~20名 | 500万円(750万円) | |
21名以上 | 1,000万円(1,500万円) |
※()内の金額は、賃上げ要件を達成した場合に引き上げられる補助上限額です。
以下の2つの要件を満たす必要があります。
人材不足であること:客観的な指標(例:残業時間)を用いて、現在の人材不足を証明する必要があります。
事業計画での付加価値向上:補助事業終了後1~3年以内に、従業員1人あたりの「付加価値額」を年率平均3%以上増加させる見込みの事業計画を策定し、効果報告を行うこと。
農業が省力化補助金の対象となるのか、詳しく見ていきましょう。
省力化補助金では、カタログ内で対象となる業種が明記されていますが、その中に「農業」という文言は含まれていません。
少なくとも、カタログ上では農業用途としての利用は想定されていないことがわかります。さらに、2025年1月時点の公募要領(P17)には以下の趣旨の記載があります。
特に、一次産業(農業・林業・漁業)は明確に補助対象外とされています。つまり、省力化補助金は農業そのものには利用できません。
前述の通り、省力化補助金は農業そのものに活用は活用できません。しかし、農業に付随するさまざまな業務でこの補助金を活用することは可能です。
農業でおすすめできる省力化補助金の活用例は下記の4つです。
農業と密接に関わる食品製造業では、省力化補助金を活用して製造工程の自動化や高度化を進めることが可能です。
例えば、収穫した果物を原料にジャムやソースを製造する場合、補助金を利用して以下のような設備を導入できます:
こうした設備の導入により、単なる生産効率の向上だけでなく、製品の品質を一定に保つことが可能になります。また、省力化されたプロセスは人件費の削減や作業者の負担軽減にもつながります。
食品製造業では、農産物の付加価値を高める取り組みを進めやすいため、省力化補助金を活用することで新たなビジネスチャンスを生み出せる可能性があります。
出典:省力化補助金
出典:省力化補助金
農業そのものではなく、付随する卸売業や小売業に視点を広げることで、省力化補助金を活用する道が開けます。効率化を図るためにどのような業務に補助金を使えるのか、具体的に検討することが重要です。
農作物を効率よく「売る」ための省力化設備やシステムを導入することで、事業全体の生産性を向上させるチャンスを活かしてみてはいかがでしょうか?
農業と深い関わりを持つ業種として、飲食業は省力化補助金を活用しやすい分野です。地産地消をテーマに、農家が直接経営する飲食店や農産物を活用するレストランが増えており、補助金を活用することでさらなる効率化が期待できます。
例えば、以下の取り組みが補助金の活用例として挙げられます:
こうした設備やシステムの導入により、飲食店の運営がスムーズになり、効率化が進むことで利益率の向上も期待できます。また、地元の農産物をメニューに多く取り入れることで、農業への恩恵も生まれ、地域全体の活性化につながります。
出典:省力化補助金
宿泊業は農業と密接に関わる業種のひとつです。地元の野菜や果物を使った料理の提供や農産物の販売を通じて、地域資源を活用しながら農業と連携した相乗効果を生むことができます。
省力化補助金のカタログには、農業に特化した製品はありませんが、飲食業や宿泊業の業務効率化を支援する製品が含まれています。これらを活用することで、農業との新たな連携の可能性が広がります。
具体例として、農園体験やグリーンツーリズムを提供する宿泊施設では、以下のような取り組みが考えられます:
これにより宿泊施設の魅力を高めるだけでなく、地域の農業体験の普及や地域活性化にもつながります。
出典:省力化補助金
宿泊業者必見!省力化補助金の活用方法をプロが解説!
倉庫業では、省力化補助金を活用して効率的な設備を導入することが可能です。たとえば、農作物を効率よく管理するための「温度・湿度管理機能付き自動倉庫」や、「検品・仕分システム」などが補助対象製品として挙げられます。これらの設備は、作業効率を向上させるだけでなく、人件費削減や農作物の品質維持にも役立ちます。
このように、省力化補助金を通じて倉庫業の運営を効率化し、農業全体のサポート体制を強化することができます。
2025年から新たに加わった「一般型」は、農業分野への活用を検討する方にとって非常におすすめの選択肢です。この型では、カタログに記載されていない製品でも、「省力化」に貢献するものであれば補助対象となります。
「一般型」の補助対象経費は以下の2つに大きく分けられます。
この柔軟な仕組みによって、農業分野でも省力化補助金を活用して機械化やデジタル化を進めることが可能です。農作業の省力化を目指している方は、ぜひこの新しい制度を検討してみてください。
「一般型」は、これまでの「ものづくり補助金」の「オーダーメイド枠」とほとんど同じ内容となっている点が特徴です。このため、多くの専門家は、ものづくり補助金の仕組みをベースにした制度だと考えています。
過去にものづくり補助金では、農業関連の採択事例が数多く見られました。そのため、一般型も同様の運用がされる可能性が高く、農業関連の省力化投資にとって有望な制度といえます。
農業で新たな設備投資やシステム導入を検討されている方は、「一般型」の活用も視野に入れてみるとよいでしょう。
補助金を効果的に活用するには、具体的な要件や活用例を確認するだけでなく、補助金全体の趣旨を理解することが重要です。
たとえば、ものづくり補助金の主な目的は「生産性の向上」や「革新的な事業展開の支援」にあります。一方、省力化補助金の目的は、これらが「人手不足を解消する手段」として位置付けられています。
つまり、省力化補助金は「人手が足りない事業者を助けること」を最優先としており、生産性向上や革新的な取り組みは、そのための手段として求められるものです。
もし農業での生産性向上が、直接的に人手不足の解消に結びつかないと判断される場合、省力化補助金の「一般型」でも対象外とされる可能性があります。このため、農業分野での補助金活用を考える際には、補助金の趣旨に合致しているかどうかを慎重に検討する必要があります。
補助金名 | 主な目的 |
ものづくり補助金 | 生産性の向上や革新的な事業展開の支援 |
省力化補助金 | 効率性向上を通じた人手不足の解消 |
省力化補助金は、事業者の「人手不足解消」を目的として設計されています。そのため、農業での活用を目指す場合は、取り組みが補助金の趣旨に合致するかどうかを確認しつつ、今後の運用動向を注視していくことが重要です。
省力化補助金は新しい制度であり、第1次産業が補助対象外であることを知らない方も少なくありません。しかし、農業はドローンや高性能トラクター、収穫ロボットなどを活用しやすい、省力化の可能性が高い分野といえます。
一方で、農業では「人手不足の解消」よりも、「農業を担う事業者そのものが不足している」という課題が大きいのが現状です。このため、省力化補助金の趣旨である「人手不足の解消」に直結せず、単に生産性向上や効率化にとどまる可能性があります。
省力化補助金の利用を検討する際には、補助金の目的に合致するかどうかを事前に確認し、農業における具体的な省力化の取り組みが補助対象となるか慎重に見極める必要があります。
今後、補助金の運用が見直されることで、農業も対象業種に含まれる可能性があります。特に「一般型」が農業を部分的に対象として認めるようになれば、第1次産業にも補助金の適用が進むことを意味します。
農業での補助金活用を目指している方は、最新情報をチェックし、制度の変更に備えることが大切です。省力化補助金がどのように進化していくか、今後の動向に注意が必要です。
本コラムでは、引き続き省力化補助金の最新の情報を提供していきます。
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