【2024年】農業融資とは?5つの制度と申請方法を完全解説

農業経営の発展を支える農業融資の基礎知識を解説。 スーパーL資金や青年等就農資金など主要な融資制度の特徴や申請条件、活用シーンをわかりやすく紹介します。
井上 雅也

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農業 融資

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

農業融資とは?

農業融資とは、農業者の経営発展と安定化を支援するための専門的な金融制度です。下記で詳しく解説します。

  • 農業融資の目的
  • なぜ農業融資が必要なのか

農業融資の目的

農業経営の発展と安定化を支援することが、農業融資の最も重要な目的です。

農業には、他の産業とは異なる独自の課題があり、それに対応した専門的な金融支援が必要とされています。

日本政策金融公庫の農業資金では、長期低利の融資条件や据置期間の設定など、農業経営の特性に配慮した制度設計がされています。

日本政策金融公庫の農業融資では、年間約1兆円規模の融資実績があるのです。

このように農業融資は、農業者の経営基盤強化と生産性向上を資金面から支える重要な役割を担っています。

なぜ農業融資が必要なのか

農業経営において、一般的な事業融資だけでは十分な資金調達が困難であり、専門的な農業融資制度が不可欠です。

農業には、収穫までの長期間の資金繰りや、自然災害リスク市場価格の変動など、独特の経営課題があるためです。

農林水産省の調査によると、新規就農者の約7割が資金調達を課題として挙げており、特に設備投資や運転資金の確保に苦心しているという結果が出ています。

そのため、農業の特殊性に対応した融資制度は、持続可能な農業経営を実現するための重要なインフラとして機能しているのです。
農業融資の概要と目的

認定農業者ってなに?

認定農業者とは、農業経営をより良くしようとする意欲と能力があり、市町村から認められた農家のことです。

認定農業者になるためには、具体的な経営改善計画の策定と市町村への申請が必要です。

申請には、5年後の経営目標を含む詳細な計画書の作成が求められます。

この計画には、農業経営の現状分析、目標とする経営指標、目標達成のための取組内容など、具体的な数値や方策を盛り込む必要があります。

計画書に記載する主な項目は、下記の通りです。

  • 生産方式の合理化
  • 経営管理の合理化
  • 経営規模の拡大目標
  • 農業従事の態様等の改善

年間農業所得を400万円以上に増加させる計画や、労働時間を2,000時間以下に抑える取り組みなどを具体的に示しましょう。

申請後は、市町村による審査を経て、計画が妥当と認められれば認定農業者として認められます。

将来の農業経営の姿を具体的に描き、実現可能な計画を立てることが、認定取得の重要なポイントです。

農業融資を5つ紹介!

農業向けの融資を5つご紹介します。

  • 農業改良資金
  • スーパーL資金
  • 農業近代化資金
  • 青年等就農資金
  • アグリマイティー資金

農業改良資金

農業改良資金は、新たな農業技術や経営方法の導入を支援する無利子融資制度として、農業者の経営革新を強力にバックアップしています。

この制度が特に注目される理由は、融資期間全体を通じて無利子という画期的な条件設定にあります。

農業者が新しい取り組みにチャレンジする際の資金面でのハードルを大きく下げ、革新的な農業経営への転換を促進する役割を果たしています。

支援例として、有機農業への転換新品種の導入6次産業化の取り組みなどが対象です。

個人で最大5,000万円、法人で最大1億5,000万円までの融資を受けることができます。

また、据置期間は最長5年と長めに設定されており、新規事業の立ち上げ期間における返済負担を軽減する配慮がなされています。

このように、農業改良資金は革新的な農業経営へのチャレンジを資金面から支える重要な制度として、農業の未来を切り開く役割を担っています。

最大融資額金利返済期間
個人
5,000万円
法人
1億5,000万円
無利子12年以内
(据置期間3年)

参考:日本政策金融公庫(農業改良資金)

スーパーL資金

農業経営の大規模化や効率化を支援する代表的な融資制度が、スーパーL資金です。

この制度は、認定農業者を対象に、経営改善に必要な長期資金を低利で提供する仕組みとなっています。

個人で最大3億円、法人で最大10億円まで借入可能で、金利は0.6%~1.2%と極めて低利に設定されており、返済期限も最長25年と長期に対応できます。

このように、スーパーL資金は農業経営の発展を強力に後押しする重要な融資制度です。

最大融資額金利返済期間
個人:3億円
法人:10億円
0.6%~1.2%最長25年
(据置期間10年)

参考:日本政策金融公庫(スーパーL資金)

農業近代化資金

農業者の経営改善や施設整備を支援する重要な制度として、農業近代化資金があります。

都道府県や農協などの民間金融機関を通じて融資が行われ、より身近な窓口で手続きができるのが特徴です。

融資の限度額は、個人で2億円、法人で20億円までで、金利は実質1%以下に抑えられており、最長15年の返済期間が設定されています。

このように、農業近代化資金は、地域に密着した形で農業経営の近代化を支える重要な役割を担っています。

最大融資額金利返済期間
個人
1,800万円
法人
2億円
0.60%〜1.2%15年以内
(据置期間3年〜7年)

参考:JAバンク(農業近代化資金)

青年等就農資金

新規就農者の夢を実現するための無利子融資制度として、青年等就農資金が用意されています。

45歳未満の認定新規就農者を対象に、就農に必要な機械・施設の購入や、運転資金など幅広い用途に活用できます。

一人当たり最大3,700万円まで借入可能で、据置期間は最長5年、返済期間は最長17年と、新規就農者の経営の安定化に配慮した条件です。

このように、青年等就農資金は、新たな農業の担い手を支える重要な支援制度として機能しています。

最大融資額金利返済期間
3,700万円無利子17年以内
(据置期間5年)

参考:日本政策金融公庫(青年等就農資金)

アグリマイティー資金

農業者の様々な資金ニーズに柔軟に対応する制度として、アグリマイティー資金が設けられています。

この制度は、農地取得や施設整備運転資金など、幅広い用途に活用できる特徴があります。

融資限度額は事業費の80%以内で、返済期間は最長15年と設定されており、担保・保証人の設定も柔軟に対応可能です。

このように、アグリマイティー資金は、農業経営の多様なニーズに応える汎用性の高い融資制度として重要な役割を果たしています。

最大融資額金利返済期間
窓口へ要相談窓口へ要相談
(変動金利性が選択可能)
最長20年
(据置期間3年)

参考:JAバンク(アグリマイティー資金)

農業融資の主な利用シーン

農業融資はどのようなシーンに適しているかを解説します。

  • 新規就農に役立つ融資
  • 経営改善に役立つ融資
  • 機械購入や設備投資に役立つ融資

新規就農に役立つ融資

新規就農者にとって、青年等就農資金は最も活用しやすい融資制度の一つです。

就農初期には多額の初期投資が必要となりますが、自己資金や一般の金融機関からの借入れだけでは資金調達が困難なケースが多いためです。

実際に、この制度では無利子で最大3,700万円まで借りることができ、据置期間も最長5年間設定されているため、多くの新規就農者が活用しています。

このように、新規就農者を支援するための有力な融資制度として、青年等就農資金は重要な役割を果たしているのです。

経営改善に役立つ融資

スーパーL資金や農業近代化資金は、既存の農業経営者の経営改善に特に有効な融資制度です。

これらの制度は、経営規模の拡大や効率化投資を通じて、農業経営の収益性向上の支援が目的です。

農林水産省の統計によると、これらの融資を活用した農業者の約8割が、売上高や経営効率の改善を実現しています。

こうした融資制度の活用は、農業経営の持続的な発展と競争力強化に不可欠な支援となっています。

機械購入や設備投資に役立つ融資

農業機械や施設の導入には、アグリマイティー資金が効果的な融資手段として機能します。

この融資は、高額な農業機械や施設の購入費用を長期的な返済計画で支援することで、農業者の資金負担を軽減する役割を果たしています。

具体的には、トラクターやコンバインなどの大型機械、ハウスなどの栽培施設の導入に際して、最長15年の返済期間で必要額の借り入れが可能です。

このように、設備投資に特化した融資制度は、農業経営の近代化と生産性向上を強力にバックアップしています。
農業融資の利用シーン

融資を受けるための条件と申請方法

農業融資を受けるための条件と申請方法を解説します。

  • 農業融資の必要書類
  • 認定新規就農者の要件
  • 農業融資の申請手続き

農業融資の必要書類

農業融資の申請には、経営状況を証明する基本的な書類の提出が不可欠です。

融資機関が経営の健全性と返済能力を適切に判断するためには、詳細な資料による裏付けが必要となります。

必要な書類を下記にまとめました。

  • 決算書
  • 確定申告書
  • 事業計画書
  • 資金計画書
  • 認定農業者証明書
  • 農地の権利関係を証明する書類

これらの書類は、融資審査の基礎となる重要な資料として、慎重に準備をしましょう。

認定新規就農者の要件

認定新規就農者の資格取得には、実現性の高い就農計画の策定が重要な要件となります。

これは、新規就農者の定着率を高め、持続可能な農業経営の実現を支援するためです。

具体的には、年間所得目標250万円以上技術習得計画必要な農地や機械設備の確保計画など、5年後の具体的な経営像を示す必要があります。

この認定を受けることで、青年等就農資金などの支援を受けられるため、新規就農者の円滑な営農開始を後押しする重要な制度となっています。

農業融資の申請手続き

農業融資の申請は、融資機関への事前相談から始まり、段階的に進めていく必要があります。

申請者の経営状況や資金計画を詳細に確認し、最適な融資プランを策定するためです。

申請の流れは下記の通りです。

  1. 融資の事前相談
  2. 必要書類の提出
  3. 金融機関の融資審査
  4. 審査通過後に融資実行

特に、日本政策金融公庫などの融資機関では、経営アドバイスも含めた丁寧なサポートを提供しており、確実な融資実行に向けた支援体制が整っています。

日本政策金融公庫以外で融資を受ける方法

農業融資は日本政策金融公庫で受ける方が多いですが、それ以外の機関で融資を受ける方法をご紹介します。
日本政策金融公庫以外の融資方法

  • リース
  • JAバンク
  • 銀行や信用金庫
  • 補助金や助成金

リース

農業機械や設備の導入において、リースは資金負担を軽減する効果的な選択肢です。

高額な農業機械を一括購入する代わりに、月々の支払いで必要な設備を利用できることが、リースの最大の利点です。

特に新規就農者や設備投資の初期負担を抑えたい農業者にとって、キャッシュフローの管理がしやすい手法といえます。

実際に、農業機械メーカーや専門リース会社では、トラクターなどの大型機械を3年から7年のリース契約で提供しており、多くの農業者が活用しているのです。

リース料は経費として計上できるため、税務上のメリットも得られます。

農業経営の柔軟性を保ちながら必要な設備を確保できるリースは、従来の融資に代わる現代的な資金調達方法として有効です。

JAバンク

JAバンクは、農業者に寄り添った独自の融資サービスを提供する、重要な資金調達先です。

地域の農業事情に精通し、農業者との密接な関係を持つJAバンクは、経営状況や将来性を総合的に判断した融資判断が可能です。

また、農業融資の専門部署を持ち、きめ細かな相談対応と実務支援を行えます。

JAバンクの農業融資実績は年間約1,000億円規模に達し、運転資金から設備投資まで幅広い資金ニーズに対応しています。

特に、農業近代化資金の取扱実績が多く、地域農業の発展に貢献しているのです。

地域に根ざした金融機関として、JAバンクは農業者の経営発展を支える確かな選択肢となっています。

銀行や信用金庫

一般の金融機関も、農業融資に積極的に取り組み始めており、新たな資金調達先として注目されています。

従来の融資基準に加えて、農業分野特有の事業性評価手法を導入することで、より適切な融資判断が可能です。

また、地域金融機関として培った企業支援ノウハウを活かし、経営改善や事業承継などの支援も提供しています。

具体的には、農業融資の専門チームを設置する地方銀行が増加しており、年間融資実績も着実に伸びています。

信用金庫でも、農業者向けの独自商品を開発するなど、支援体制を強化しているのです。

民間金融機関の参入により、農業者の資金調達手段は多様化し、より柔軟な経営戦略が可能になっています。

補助金や助成金

補助金や助成金は、返済不要の支援制度として、農業経営の基盤強化に重要な役割を果たしています。

国や地方自治体が提供する各種支援制度は、農業の持続的発展や地域活性化を目的としており、設備投資や技術導入の際の重要な資金源となります。

特に、融資と組み合わせることで、より効果的な資金計画が可能です。

たとえば、強い農業・担い手づくり総合支援交付金では、農業用機械・施設の導入に対して最大で事業費の1/2が補助されます。

また、環境保全型農業や6次産業化に取り組む際の支援制度も充実しています。

返済負担のない補助金・助成金の活用は、農業経営の安定化と発展を支える重要な選択肢として、積極的に検討すべきでしょう。

農業融資の最新情報と政府の支援策

農業融資に関する最新情報をまとめました。

  • 災害時などに対応した資金
  • 政策変更や新しい支援策について

災害時などに対応した資金

自然災害や社会的変化に対応するため、農業セーフティネット資金が重要な支援制度として機能しています。

予期せぬ災害や経済環境の変化により、農業経営が一時的に悪化した場合でも、速やかな経営再建を可能にするためです。

台風や長雨による被害を受けた農業者は、最大720万円まで低利で借り入れが可能で、最長10年間の返済期間が設定されています。

このように、災害時対応資金は、農業経営の危機を乗り越えるための重要なセーフティネットとして機能しているのです。

政策変更や新しい支援策について

農業政策の進化に伴い、環境に配慮したスマート農業への支援が強化されています。

これは、持続可能な農業の実現と国際競争力の向上を目指す政府の方針を反映したものです。

具体的には、環境負荷低減に取り組む農業者向けの特別金利の設定や、ICT機器導入時の融資上限額の引き上げなど、新たな支援メニューが次々と打ち出されています。

最近では、2024年度の農林水産関係予算において、先進的な取り組みへの支援が拡充されており、農業の未来を見据えた融資制度の整備が着実に進められています。

【まとめ】自分に合った農業融資を利用して農業経営を改善しよう!

今回は、農業融資について解説しました。農業経営者は年々減少傾向にあるので、国も融資制度の整備を着実に進めているところです。

ケースによってどの融資が適しているか確認し、目的に沿って融資を受けるようにしましょう。

また、災害時の支援や新しい政策によって申請可能な融資が出てくる可能性があるので、定期的に融資関連の情報をチェックしましょう。

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