令和6年度「事業承継・引継ぎ補助金」個人事業主も活用できる?

このコラムを読んで分かること ・「事業承継・引継ぎ補助金」の概要 ・個人事業主が「事業承継・引継ぎ補助金」は活用可能か否か
梅沢 博香

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令和6年度「事業承継・引継ぎ補助金」個人事業主も活用できる?

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

「事業承継・引継ぎ補助金」とは?

「事業承継・引継ぎ補助金」は、中小企業・小規模事業者の事業承継やM&A等を支援する補助金です。
支援の対象によって、以下3つの申請類型があります。

  1. 経営革新枠
  2. 専門家活用枠
  3. 廃業・再チャレンジ枠
対象者
経営革新枠経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者を含む)、M&Aを過去数年以内に行った者、または補助事業期間中に行う予定の方
専門家活用枠補助事業期間に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける方
廃業・再チャレンジ枠事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う方

経営者の高齢化が進んでいること、後継者不在率が高い水準で推移していること等から「事業承継・引継ぎ補助金」の活用の場が広まりつつあります。
近年、休廃業が増加傾向にありますが、黒字の廃業が約6割を占める状態が続いており、後継者がいない中小企業では「黒字経営でも廃業を選択しなくてはならない」状況にあると言えます。
「事業承継・引継ぎ補助金」は、このような中小企業・小規模事業者の事業承継・引継ぎを支援するものです。

「事業承継・引継ぎ補助金」対象事業はどう選ぶ?交付申請の手順も解説!

「事業承継・引継ぎ補助金」は個人事業主も活用できる!

「事業承継・引継ぎ補助金」は個人事業主も申請できます。
業種分類によって補助対象となる個人事業主の定義が違うのでご注意ください。

業種分類補助対象となる個人事業主
製造業その他常時使用する従業員の数が 300 人以下の個人事業主
卸売業常時使用する従業員の数が 100 人以下の個人事業主
小売業常時使用する従業員の数が 50 人以下の個人事業主
サービス業常時使用する従業員の数が 100 人以下の個人事業主
【2024年最新!】個人事業主におすすめの補助金は?

「事業承継・引継ぎ補助金」受給までのスケジュール

「事業承継・引継ぎ補助金」の交付までの大まかな流れは「専門家等に相談➤申請➤実績報告➤受給」です。
申請から受給までは約1年かかります。

  1. 認定支援機関や専門家への相談等
  2. 交付申請
  3. 補助事業の実施・状況報告
  4. 実績報告
  5. 補助金交付請求
  6. 事業化状況報告等

事業承継・引継ぎ補助金流れ.出典:「事業承継・引継ぎ補助金」のパンフレット

事業承継・引継ぎ補助金:(1)経営革新枠

「経営革新枠」は、事業承継やM&Aを契機として経営や事業を引き継いだ(または引き継ぐ予定である)中小企業者が、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等を行う際の費用の一部を補助することで、中小企業者の生産性を向上させることを目的とした枠です。
事業承継・引継ぎ補助金(1)経営革新枠出典:「事業承継・引継ぎ補助金」「経営革新枠」のパンフレット
承継の手段(種類)によって、以下3つの支援類型があります。

  • M&A型
  • 創業支援型
  • 経営者交代型
支援類型内容
M&A型事業再編・事業統合等のM&Aを契機として、経営革新等に取り組む場合
創業支援型事業承継を契機に創業(開業や法人設立)を行い、経営革新等に取り組む場合
経営者交代型親族や従業員への承継によって経営を引継ぎ、経営革新等に取り組む場合

申請条件

主な申請条件は以下2点です。

  1. 事業承継後に、経営革新等に取り組むこと
  2. 一定期間内に事業承継やM&Aによって経営資源を引き継いでいる(予定を含む)こと

■経営革新とは?
経営革新とは、以下の取り組みのいずれかを通じて「経営の相当程度の向上を図ること」を指します。

  • 新役務の開発または提供
  • 新商品の開発または生産
  • 役務の新たな提供方式の導入
  • 商品の新たな生産方式または販売方式の導入
  • 技術に関する 研究開発およびその成果の利用
  • その他の新たな事業活動

■一定期間内とは?
「一定期間内」毎公募により異なります。
たとえば9次公募の事業承継対象期間は、2019年11月23日~2024年11月22日の5年間です。
事業承継・引継ぎ補助金経営革新枠の一定期間出典:「事業承継・引継ぎ補助金」「経営革新枠」のパンフレット

補助対象者

経営資源引継ぎ型創業や事業承継(親族内承継実施予定者を含む)、M&Aを過去数年以内に行った方または補助事業期間中に行う予定の方

補助対象経費

補助対象経費はものづくり補助金等と比べて幅広いという特長があります。
店舗等借入費/店舗等借入費/設備費/謝金/外注費/廃業費(併用申請時)/産業財産権等関連経費/原材料費/旅費/委託費/マーケティング調査費/会場借料費/広報費

補助率・補助上限額

賃上げの実施や小規模事業者や赤字等一定の条件に該当する場合は、補助率・補助上限額が上がる優遇措置があります。

条件賃上げ補助上限額補助率
①小規模企業者
②営業利益率低下
③赤字
④再生事業者等
のいずれかに該当
実施800万円600万円超~
800万円相当部分
1/2以内
実施せず600万円~600万円相当部分2/3以内
上記①~④該当なし実施800万円1/2以内
実施せず600万円

■ポイント

  1. 一定の条件に該当する場合、補助額600万円以内部分の補助率が、1/2以内から2/3以内に引き上げられます。
  2. 補助事業期間に一定額以上の賃上げを実施する場合、補助上限額が600万円以内から800万円以内へと引き上げられます。


「経営革新枠」のパンフレットはこちら!
「経営革新枠」の9次公募要領はこちら!

「創業支援類型」の活用事例:【飲食業】

継承者した人:首都圏の創作和食店で修行した子
承継された人:飲食業(従業員数0名)を営む親

子は首都圏の創作和食店で修行後、寿司店を継ぐために帰郷しました。
実家の飲食店の主な顧客層は高齢者で仕出し弁当の注文が中心だったので、ファミリー層にマッチしていませんでした。
子は学んだ創作和食を提供しつつ、村民の記念日を祝う店舗とする新たな取り組みでファミリー層の獲得を目指しました。
■取り組みの概要

  • 冠婚葬祭需要や日常的な祝いごとを印象的にするために独自サービスを提供
  • ファミリー層向けの小規模宴会需要の開拓と独自顧客管理手法の導入を目指す

■経費の種類

  • 設備費(店舗の改装費用)

■実施した取り組みと効果

  • 商品の価値と体験をセットにした「出張にぎりサービス」の実施

思い出に残る印象的な食事の時間を提供できた

  • 誕生日や結婚記念日などの記念日情報を提供してもらい、お客様記念日カルテを作成

記念日に定期的に利用してもらえるよう、毎月管理ソフトから記念日が近づいたお客様を抽出。割引や特典付き通知をした結果、少人数向け宴会の需要が増加した

事業承継・引継ぎ補助金:(2)専門家活用枠

「専門家活用枠」は、後継者不在や経営力強化といった経営資源引継ぎ(M&A)のニーズをもつ中小企業者が、経営資源の引継ぎに際して活用する専門家の費用等の一部を補助することに
よって、地域の需要や雇用の維持・創造等を通じた経済の活性化を図ることを目的とした枠です。
事業承継・引継ぎ補助金:(2)専門家活用枠出典:「事業承継・引継ぎ補助金」「専門家活用枠」のパンフレット
経営資源引継ぎの立場に応じて、以下2つの支援類型があります。

  • 買い手支援類型
  • 売り手支援類型
支援類型経営資源引継ぎの立場
買い手支援類型事業再編・事業統合に伴って、株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業者
売り手支援類型事業再編・事業統合に伴って、株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業者

申請条件

主な申請条件は、補助事業期間内に経営資源の引継ぎ(M&A)が着手もしくは実施されることです。

補助対象者

補助事業期間に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける方

補助対象経費

委託費/謝金/旅費/システム利用料/廃業費(併用申請時)/保険料/外注費
※FA・仲介業者への委託費が補助されるためには、「M&A支援機関登録制度」に登録した専門家を活用することが必要です。

補助率・補助上限額

類型補助率補助下限額補助上限額
買い手支援類型2/3以内50万円600万円以内 ※
売り手支援類型1/2または
2/3以内

※上乗せ額(廃業費)+150万円以内
■ポイント

  1. 売り手支援類型において、以下の条件に該当する場合は、補助率が1/2以内から2/3以内に引き上げられます。
  • 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合
  • 一定の比較期間における営業利益率が、物価高等の影響により低下している場合
  1. 補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合(補助対象事業において、クロージングしなかった場合)、補助上限額は300万円以内に引き下がります。

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「買い手支援類型」の活用事例【食品製造業】

継承者した人: 食品製造業(従業員数22名)
承継された人:和菓子・洋菓子の販売店。譲渡後も「町のお菓子屋さん」として地域に根付いた店として地域に貢献したいとの思いがある

「事業承継・引継ぎ補助金」は、仲介とのアドバイザリー契約に支払う成功報酬の委託費として利用しました。
経営資源の引継ぎによって雇用を継続しつつ営業を継続し、老舗としての伝統と地域住民との信頼関係の継続も実現しました。

事業承継・引継ぎ補助金:(3)廃業・再チャレンジ枠

「廃業・再チャレンジ枠」は、M&Aによって事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主や個人事業主が、地域の新たな需要の創造や雇用の創出にも資する新たなチャレンジをするために、既存事業を廃業する場合にかかる経費の一部を補助する枠です。
事業承継・引継ぎ補助金:(3)廃業・再チャレンジ枠出典:「事業承継・引継ぎ補助金」「廃業・再チャレンジ枠」のパンフレット
「廃業・再チャレンジ枠」には、当枠のみで申請を行う「再チャレンジ申請(単独申請)」と、「経営革新枠」や「専門家活用枠」と併せて申請を行う「併用申請」があります。

申請の種類内容
再チャレンジ申請(単独申請)M&Aで事業を譲り渡せなかった事業者による廃業・再チャレンジ
併用申請事業承継に伴う廃業や、事業の 譲り渡し/譲り受けに伴う廃業

■ポイント
再チャレンジ申請(単独申請)において、中小企業(法人)の廃業を行う場合は、廃業予定の中小企業と、その支配株主や株主代表との共同申請が必須です。

申請条件

単独申請の場合と、併用申請の場合とで要件が異なります。
【再チャレンジ申請の場合】

  1. 再チャレンジ申請の場合は補助事業期間終了日までに廃業が完了していること
  2. また廃業に伴って「2020年以降に売り手としてM&Aへの着手し、6か月以上取り組んでいること+廃業後に再チャレンジ」を行った、または行う予定であること

【併用申請の場合】

  1. 補助事業期間終了日までにM&Aまたは廃業が完了していること
  2. また廃業に伴って以下の3点を行った、または行う予定であること
  • 事業承継後M&A後の新たな取り組み
  • M&Aによって他者に事業を譲り渡す
  • M&Aによって他者から事業を譲り受ける

詳細は、公募要領の10ページをご覧ください。

補助対象者

事業承継やM&Aの検討・実施等に伴って廃業等を行う方

補助対象経費

廃業支援費/在庫廃棄費/解体費/原状回復費/リースの解約費/移転・移設費用

補助率・補助上限額

類型補助率補助下限額補助上限額
再チャレンジ申請2/3以内50万円150万円以内
併用申請1/2または
2/3以内

「廃業・再チャレンジ枠」のパンフレットはこちら!
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個人事業主の皆様へ

事業所で利用可能な自治体や国の補助金、実はたくさんあります!
これらの補助金を活用することで、事業の課題を解決しつつコストを削減できます。

御社が利用可能な補助金を調べる

個人事業主が使える補助金としてたとえば以下の補助金があります。

IT導入補助金
・最大450万円
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ものづくり補助金
・最大4,000万円~1億円
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事業再構築補助金
・最大7,000万円~3億円
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小規模事業者持続化補助金
・最大250万円
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