賃上げ促進税制、大幅見直しで物価高に負けない賃上げを促進

政府・与党は、賃上げ促進税制を大幅に見直し、物価高に負けない賃上げを促進する方向で検討しています。 現行制度と見直し案の詳細や、課題についてご確認ください。
横山 紗季

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賃上げ促進税制の強化

賃上げ促進税制、強化の方針

政府・与党は、賃上げに積極的な企業の法人税負担を軽減する「賃上げ促進税制」の強化を検討しています。
物価高に負けない、より高い賃上げを企業に促すことが狙いです

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現行制度の問題点

賃上げ促進税制は、2018年度から導入された制度で、一定の賃上げをした企業の法人税を差し引く仕組みです。

現行制度
大企業:給与総額を前年度比3%以上増やすと、増加分の15%を控除・4%以上増やすと25%控除
中小企業:給与総額を前年度比2.5%以上増やすと、増加分の30%を控除・1.5%以上増やすと15%控除


しかし、財務省の調査で賃上げの動機付けになっていないと指摘されるなど、その効果が疑問視されています。
また、賃上げの要件は、総額ベースでの前年度比であるため、従業員数の増減や退職金の支払いなどによって、実質的な賃上げ率と乖離する可能性があります。

経済産業省|賃上げ促進税制のパンフレットはこちら

見直し案の内容

・教育訓練や子育て支援などに力を入れた企業には、控除率を5%上乗せする。
→人材育成や女性活躍支援にも配慮する。


・従業員2000人以下の企業を「中堅企業」に分類し、現行の大企業と同じ税優遇を受けられるようにする。
→中堅企業の賃上げを支援する。


・3%以上の賃上げに対する控除率を10%に引き下げ、7%以上の大幅な賃上げに対する控除率を最大35%とする。
→物価高に負けない、より高い賃上げを企業に促す。


・中小企業に対しては、赤字でも賃上げをした場合、減税できる権利を最大で5年間繰り越し、将来黒字になった際に減税を受けられる仕組みにする。
→赤字の中小企業を含めて幅広く賃上げを促す。



出典:TBSニュース|「賃上げ促進税制 大企業は7%超の賃上げで控除率最大35%へ」はこちら

まとめ

これらの改革案により、賃上げ促進税制の効果的な運用と企業の賃上げ意欲向上を促進することが期待されています。
今後の与党の議論を経て、2024年度の税制改正大綱に盛り込まれる見通しです。

補助金で賃上げを支援する道も

従業員の賃金を上げるに当たり、下記の補助金も役立ちます。
あわせて、各補助金の詳細をご確認ください。

事業再構築補助金:
生産性の向上や賃上げにつながる設備投資や販路開拓などを支援する補助金です。大規模な賃上げに取り組む事業者に対し、補助金額が上乗せされます。

ものづくり補助金:
革新的製品やサービスの開発やプロセス改善などに係る設備投資を支援する補助金です。大幅な賃上げに取り組む事業者については、申請枠にかかわらず、 一律で補助上限を引き上げます。

事業承継・引継ぎ補助金:
事業承継や引き継ぎにかかる設備投資や廃業費などを支援する補助金です。一定の賃上げを実施する場合において、補助上限額を引き上げる措置が追加されます。

業務改善助成金:
事業場内の最低賃金を引き上げ、機械設備やコンサルティング導入などの設備投資をした場合に、その費用の一部を助成する助成金です。

キャリアアップ助成金:
非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善に取り組んだ場合に、その費用の一部を助成する助成金です。


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