工場の建設・移転・省エネに使える補助金【2025年最新版】

工場の新設や移転、設備投資に補助金が活用できます。本コラムでは、工業関連に使える国と自治体の補助金を紹介します。
梅沢 博香

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工場の建設・移転・省エネに使える補助金【2025年最新版】」

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

工場関連に使える補助金は?

工場関連の補助金は、大きく分けて 「建設・移転」「設備投資・省エネ」「老朽化対策・リフォーム」 の3つの用途で活用できます。国の代表的な補助金を一覧にまとめました。

分類主な補助金特徴・ポイント
建設・移転に使える補助金新事業進出補助金新しい市場や業種への挑戦を支援する補助金。工場の新設や移転が補助対象となる場合もあるが、「補助事業の遂行に不可欠な建物費」に限られるなど条件付き。
設備投資・省エネに使える補助金中堅・中小企業大規模成長投資補助金
ものづくり補助金
大規模成長投資補助金は、10億円規模を想定した大型投資を支援。ものづくり補助金は中小企業の生産性向上や工場内設備更新に幅広く活用できる。
老朽化対策・リフォームに使える補助金ものづくり補助金(改修対応)
食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業
小規模事業者持続化補助金(建物改装費用の一部)
老朽化した工場や建物の改修に対応。HACCP事業は食品関連の施設整備や衛生基準対応のための改修が対象。持続化補助金は小規模な改装や外装工事で使える。

地方自治体独自の補助金(例:大阪府の工場移転支援、茨城県の工場立地補助金など)もあり、所在地や進出予定地によって条件が大きく異なります。国の補助金と合わせて必ずチェックしましょう。

工場の関連費用に補助金を活用する!

工場の建設・移転に使える補助金

工場の建設や移転に活用できる補助金は、主に「新事業進出補助金」と「自治体の立地支援」、そして中古工場購入に関連する一部の制度です。以下に代表的なものを紹介します。

新事業進出補助金

新事業進出補助金は、新しい事業に必要な工場や施設の建設・改修に使える補助金です。補助対象経費の中に「建物費」が含まれており、工場や倉庫、事務所などが事業遂行に不可欠であれば対象になります。

項目内容留意点
対象経費建物費、構築物費、機械装置・システム構築費など「補助事業のために使用される建物」に限る
建物費の範囲新設、改修、修繕、撤去、付随する構築物の整備新規建設も可能だが、実態は改修・リフォームが中心
上限額・補助率従業員数に応じ最大9,000万円、大幅賃上げで増額あり補助率は一律1/2

つまり、工場を新たに構える場合や、老朽化工場を改修する場合に有効です。ただし、単なる移転や既存建物更新は対象外となる点に注意しましょう。
参考: 新事業進出補助金

自治体の補助金(例:大田区のものづくり工場立地助成事業)

自治体独自の補助金では、工場移転や立地を支援する制度があります。例えば東京都大田区の「ものづくり工場立地助成事業」では、工場の新設・移転費用を助成しています。

項目内容留意点
対象者区内で工場を新設または移転する中小企業区内に拠点を持つことが前提
助成内容土地・建物の取得費や賃借料、設備投資の一部を助成上限・助成率は年度ごとの要綱に基づく
特徴地域産業の維持・活性化を目的とする制度国の補助金と併用可能な場合もあり

参考:大田区|ものづくり工場立地助成事業

中古工場購入に活用できる補助金は?

中古工場の購入費そのものは、国の補助金では対象外です。理由は、国の補助制度では「土地や建物の単純な取得費」は原則として認められていないからです。

一方で、中古工場を取得した後に行う改修・リフォーム・設備更新については補助対象となる可能性があります。例えば「ものづくり補助金」や「小規模事業者持続化補助金」では、条件を満たせば改修費用を計上できます。
なお、これらの詳細な対象範囲や注意点は、後述します。
参考:ものづくり補助金
参考:小規模事業者持続化補助金

工場の設備更新・省エネに使える補助金

工場の設備更新や省エネ投資に活用できる補助金は、国の大型制度から自治体の支援まで複数あります。ここでは代表的な補助金を紹介します。

中堅・中小企業大規模成長投資補助金

中堅・中小企業大規模成長投資補助金は、10億円以上の大規模な設備投資や省エネ投資に対応する補助金です。この補助金が「賃上げを伴う大規模な設備投資」を前提として設計されているためです。工場の省エネ化や大規模な生産ライン刷新など、相当な投資計画でなければ対象になりません。

項目内容留意点
補助上限額最大50億円投資規模10億円以上が必要
補助率1/3以内賃上げ要件あり
対象者中堅・中小企業(従業員2,000人以下)大企業は対象外

つまり、通常の中小企業にはハードルが高い制度ですが、大規模な設備更新を計画している場合は検討すべき強力な補助金です。
参考:中堅・中小企業大規模成長投資補助金

ものづくり補助金

ものづくり補助金は、中小企業の工場内設備更新や改修に広く活用できる補助金です。補助対象経費に「機械装置・システム構築費(必須)」が含まれており、生産性向上を目的とした設備投資が中心だからです。ただし、工場そのものの新築建設は対象外です。

区分上限額補助率
製品・サービス高付加価値化枠750万~2,500万円(従業員数に応じ増額)中小企業 1/2、小規模事業者 2/3
グローバル枠最大3,000万円同上

対象経費は、機械装置・システム構築費を中心に、技術導入費や専門家経費、外注費など幅広い経費をカバーします。
つまり、中小企業が最新設備を導入して生産性を上げたい場合に最も利用しやすい補助金です。
参考:ものづくり補助金

自治体の補助金(例:足立区「省エネルギー対策工場設備更新補助金」)

自治体独自の補助金では、省エネ設備更新を支援する制度があります。例えば東京都足立区の「省エネルギー対策工場設備更新補助金」では、区内の製造業工場が省エネ機器へ更新する際に補助を受けられます。

項目内容留意点
対象者区内で製造業を営む認可工場事前相談が必須、更新後5年以上継続利用が条件
補助内容省エネ診断費(全額・上限2万円)、設備更新費(購入費の1/2、100万~500万円)過去に同補助を受けた機器は対象外
特徴CO₂削減率10%以上の効果が必要申請期間は令和7年4月1日~11月28日(診断は~令和8年3月13日)

参考: 足立区

工場の関連費用に補助金を活用する!

工場の老朽化対策・リフォームに使える補助金

工場の老朽化対策やリフォームには、国や自治体の複数の補助金が活用できます。ここでは代表的な4つの補助金を紹介します。

ものづくり補助金(改修対応)

ものづくり補助金は、工場の改修や内部設備の更新に使える代表的な補助金です。補助対象経費に「機械装置・システム構築費」とあわせて、必要な範囲の改修・修繕費が認められているためです。ただし、工場の新築や大規模建設は対象外です。

項目内容留意点
補助上限額750万~2,500万円(従業員数で変動)大幅賃上げ時は加算あり
補助率中小企業1/2、小規模事業者2/3グローバル枠は最大3,000万円
対象経費機械装置、システム構築費、付随する改修費など建物本体の新築は対象外

参考:ものづくり補助金

食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業

食品関連工場の衛生環境整備に特化した補助金です。食品輸出の安全基準「HACCP」対応を目的としているためで、施設の改修や機器導入が対象になります。

項目内容留意点
補助上限額最大5億円規模の大きい事業が前提
補助率1/2申請期限は年度ごとに設定
対象経費工場の改修、HACCP機器導入、教育指導生産性向上目的のみでは利用不可

参考:農林水産省

小規模事業者持続化補助金(建物改装費用の一部)

小規模事業者持続化補助金では、販路開拓の一環として工場や店舗の改装費用が対象になります。この補助金が「販路拡大や業務効率化」を目的としており、その実現に必要な建物改装を認めているためです。

項目内容留意点
補助上限額50万~200万円(枠により変動)インボイス対応などで加算あり
補助率2/3小規模事業者限定
対象経費外装工事、内装改装、看板設置など販路開拓目的に資する改装が必要

参考:小規模事業者持続化補助金

省エネルギー投資促進支援事業

省エネルギー投資促進支援事業は、老朽化設備を省エネ型に更新する際に活用できる補助金です。
理由は、経済産業省・環境省が連携し、CO₂排出削減やエネルギー効率化を目的に工場設備の更新を支援しているためです。

項目内容留意点
補助上限額設備種類により異なる(数百万円~数億円規模)省エネ診断結果などが必要
補助率1/3~1/2中小企業優遇あり
対象経費高効率ボイラー、空調設備、冷凍冷蔵設備など省エネ効果の証明が条件

参考:省エネルギー投資促進支援事業|環境共創イニシアチブ

よくある質問

Q1. 工場建設に使える補助金はありますか?

はい、条件を満たせば使える補助金があります。代表例は「新事業進出補助金」で、建物費(工場や倉庫の新築・改修)を対象経費として認めています。ただし、新規事業の開始や賃上げ要件などが前提で、一般的な拡張・増設目的では利用できません。

Q2. 工場移転や中古工場購入でも補助金は出ますか?

中古工場の購入費用そのものは対象外ですが、移転や取得後の改修には補助金が使える場合があります。

  • 工場移転:自治体の立地支援制度(例:大田区「ものづくり工場立地助成事業」)で支援されるケースあり
  • 中古工場購入後:ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金で改修・設備投資に活用可能

つまり、「購入費はNG、改修費はOK」という線引きが基本です。

Q3. 工場の省エネ設備(太陽光・LED・空調)は補助対象になりますか?

はい、多くの国・自治体補助金で対象になります。
経済産業省や環境省の「省エネルギー投資促進支援事業」では、高効率空調・LED照明・太陽光・蓄電池などが補助対象です。さらに、足立区などの自治体でも独自の省エネ設備更新補助制度があり、国の制度と併用できるケースもあります。

Q4. 工場のリフォームや老朽化対策に補助金は使えますか?

はい、条件を満たせば利用可能です。

  • ものづくり補助金:設備導入に伴う必要な改修費用を一部認める
  • 小規模事業者持続化補助金:販路開拓につながる内装・外装工事が対象
  • 農林水産省「HACCP対応施設整備補助金」:食品工場の衛生基準対応改修が対象

ただし、「単なる修繕や老朽化補強」は対象外で、補助事業の目的に合致した改修であることが条件です。

Q5. 経済産業省の工場関連補助金はどれですか?

主に次の3つが代表的です。

  1. 新事業進出補助金:新規事業に伴う工場の建設・改修
  2. ものづくり補助金:工場内の設備投資や一部改修
  3. 中堅・中小企業大規模成長投資補助金:10億円以上の大規模投資(工場設備更新・省力化)

このほか、農林水産省や自治体にも工場関連の補助金があるため、制度ごとの管轄省庁を確認することが重要です。

工場の関連費用に補助金を活用する!

まとめ

工場関連の補助金は、「建設・移転」「省エネ設備」「老朽化対策」 など多岐にわたります。国の補助金だけでなく、自治体独自の制度も多数存在するため、目的に合った補助金を見極めることが重要です。特に工場投資は金額が大きく、要件も制度ごとに大きく異なります。誤解を避けるためにも、必ず 最新の公募要領や自治体の公式情報 を確認した上で、計画的に申請準備を進めましょう。

人物

監修者からのワンポイントアドバイス

工場の建設や改修には費用も高額になりやすいことから補助金をぜひ検討したいところです。また工場のLEDなどの省エネ設備も補助金の対象となっています。3.4月から補助金の公募が始まることが多いのでそれまでにプランを考えると良いでしょう。