新事業進出補助金の建物費や消費税の取り扱いガイド

新事業進出補助金における建物費の対象範囲や申請方法、注意点を詳しく解説します。
井上 雅也

更新日:

新事業進出補助金 建物費

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金の対象となる建物費は?

新事業進出補助金における建物費は、主に以下のような費用が対象となります。

  • 構築物費
  • 建物を新築にする
  • 建物の改修・リフォームをする

構築物費

新事業進出補助金では、構築物費も新たに補助対象に加わっています。
たとえば、新たに蒸留所を建設する場合など、特定の事業に必要な構築物の建設費用が含まれます。

建物を新築にする

原則として新築の建物費は補助対象外ですが、特別な理由がある場合には対象となる可能性があります。
たとえば、新規事業を行うためにどうしても新築が必要であることを証明できれば、補助対象として認められることがあるのです。

建物の改修・リフォームを行う

既存の建物を改修するための費用は、補助対象です。
これには、事務所や工場のリノベーション設備工事内装工事などが含まれます。
参考:新事業進出補助金(第2回公募要領PDF)

申請方法

建物費を補助対象として申請するためには、以下の手順を踏む必要があります。

  1. 事業計画書を作成する
  2. 必要書類を準備する
  3. 申請書を提出する
  4. 審査と採択

1.事業計画書を作成する

建物費が必要な理由を明確に記載した事業計画書を作成しましょう。
この計画書は、補助金申請の際に重要な役割を果たします。

2.必要書類を準備する

申請に必要な書類を準備します。
これには、法人登記簿謄本や財務諸表、建物の設計図や見積書などが含まれます。

3.申請書を提出する

所定の申請書類を提出します。
申請は、指定された期間内に行いましょう。

4.審査と採択

提出された申請書は審査され、採択されると補助金が交付されます。
審査後も実績報告など、やることがあるので、気を抜かないようにしましょう。
参考:新事業進出補助金公募スケジュール

新事業進出補助金で建物費を申請する際の注意点

新事業進出補助金 建物費
建物費を申請する際には、以下の点に注意が必要です。

補助金の申請は早めに行う

補助金の申請は、早めに行いましょう。
特に、補助金の交付は後払いが基本であるため、資金繰りに余裕を持たせるためにも、早期の申請を心がけるべきです。

本来の使途以外で補助金を利用しない

補助金で得た資金は、申請した事業以外の用途には使用できません。
事業計画に基づいて、専ら補助事業のために使用される建物に関連する費用のみが対象です。

構築物と建物費の違いを確認しておく

構築物は補助対象外であるため、誤って構築物を建物費として計上しないように注意してください。
構築物とは、たとえば外構やフェンスなど、建物とは異なる分類に属するものです。

新事業進出補助金と消費税の話

新事業進出補助金の対象となる経費には、消費税が含まれる場合があります。
具体的には、補助金の対象となる経費を計上する際に、消費税を含めた金額を申請できます。

消費税を計上するのが当たり前?

新事業進出補助金を申請する際には、消費税を含めた経費を計上することが一般的です。
ただし、消費税の還付を受けることができる事業者(課税事業者)は、消費税を除いた金額を基に補助金を申請することが求められる場合があります。
つまり、消費税を還付される場合は、補助金の対象経費から消費税を除外して計算する必要があるのです。

具体的な取り扱い

具体的な取り扱いについては、新事業進出補助金の公募要領や関連するガイドラインに記載されています。
申請を行う際には必ず最新の情報を確認しておきましょう。
新事業進出補助金(第2回公募要領pdf)

新事業進出補助金には税金がかかる?かからない?

新事業進出補助金には税金がかかるの?と、疑問に思う事業者も多いでしょう。結論、新事業進出補助金には税金がかかる場合があります。
しかし、新事業進出補助金も課税対象になるのは嫌ですが、税金を少しでも安くする方法があるのです!

なぜ新事業進出補助金が税金の対象になる場合がある?

新事業進出補助金は、企業や個人事業主が新しい事業を作ったり、事業を変えたりするために使う補助金のこと。
これは益金といって、税金の対象になるのです。新事業進出補助金としてもらったお金に対して、法人税や所得税を支払う必要があります。
たとえば、あなたが1,000万円の補助金を受け取ったとしましょう。
そのお金に対して、法人税(企業の税金)や所得税(個人事業主の税金)がかかってくるため、実際に手に入って来るお金は1000万円よりも低い金額になります。

新事業進出補助金の税金がかかるのはどのタイミング?

税金がかかるタイミングは、補助金額が確定した時です。
つまり、補助金をもらってから、確定申告をして税金を支払うことになります。
ですので、振り込まれる補助金額は満額でも、後から確定申告して税金分を納める必要があるため、トータル的には満額から税金分を差し引いた金額が自社の手取りとなります。
新事業進出補助金にかかる税金は、補助金をもらった年にかかることが多いので、急に大きな税金が請求されることがあるでしょう。
これが負担とならないように、税金を減らすための方法を考えてくださいね。

税金を少しでも安くするための方法は?

合法的にできる税金の減らし方の一つは、いくつかの優遇措置(特別な処置)を活用することです。優遇措置を活用するほど税金を安くできます。
ここでどんな優遇措置を利用できるか確認していきましょう。

圧縮記帳を活用する

圧縮記帳とは、固定資産を購入した場合に、その購入にかかる税金を「先送り」する方法です。
通常、補助金を受け取った年に多くの税金がかかりますが、圧縮記帳を使うことで、税金の支払いを翌年以降に延期することが可能です。
これにより、税金を一度に支払うことなく、企業にとってはお金の流れをうまく調整できるのです。
ただし、圧縮記帳は税金を免除するわけではなく、あくまで先送りするだけだという点に気を付けてくださいね。

経営力向上計画を活用する

経営力向上計画とは、企業が経営力をアップさせるための計画のことです。
たとえば、スタッフを育てるための教育プログラムを作ったり設備を新しくしたりする計画です。
この計画を立てることで、税制優遇を受けられることがあるのです。
これにより、設備投資にかかる費用を一部控除できるでしょう。結果的に法人税を減らすことが可能です。
また、新事業進出補助金と経営力向上計画を一緒に活用すると、さらにお得です。
新事業進出補助金のほか、税金の優遇措置や、低金利の融資を受けられることもあります。
これによって、キャッシュフロー(お金の流れ)が良くなり、経営がラクになるでしょう。

先端設備等導入計画を活用する

先端設備等導入計画は、新しい設備を導入して、企業の生産性を高めることを目的としたものです。
この計画に認定されると、固定資産税(設備にかかる税金)が最大3年間0になります。
もし大きな設備を購入する場合、この優遇措置を利用すると、税金の負担は軽くなるでしょう。
新事業進出補助金を使って設備投資をする際に、とても役立つ措置です。
新事業進出補助金 建物費

補助金における消費税の税区分とは?

補助金や助成金などは、不課税取引に分類されます。
消費税には、商品やサービスに対して課される税金があることはご存知でしょうが、いくつかの取引区分があります。
大きく分けると、下記の4つに分類されます。

  • 免税取引:輸出取引や免税店での販売など
  • 非課税取引:金融取引や公共料金、教育など
  • 課税取引:商品の販売やサービスの提供など、消費税が掛かる取引
  • 不課税取引:補助金や助成金、給与などが該当し、消費税は課されない

補助金は商品やサービスの対価ではないため、消費税の対象外です。つまり、補助金を受け取ったとしても、その金額には消費税は掛かりません。
このように、補助金は不課税取引に該当して消費税はかからないため、補助金を受け取る際に消費税を心配する必要はありません。

新事業進出補助金を受けたら納税額が変わる?

新事業進出補助金を受け取ったら、納税額が変わることがあります。新事業進出補助金の額が、収益として計上されるためです。
新事業進出補助金を受け取ることで、法人税や所得税の金額が変わる可能性があるでしょう。
たとえば、法人の場合、補助金が収益として計上されると、その分、法人税が高くなる場合があります。
個人事業主の場合も同様に、所得税の額が増える可能性があるのです。
具体的にいうと、法人の場合は新事業進出補助金を受け取ったことにより、法人税の納税額が変わります。
もし個人事業主だった場合、新事業進出補助金を受け取ったことで所得税の納税額が増加する可能性があるのです。
収入が増えるため、その分支払うべき納税額が増えるという理屈です。
しかし、もし事業が赤字の場合、法人税や所得税を納める必要がないこともあります。
ですので、新事業進出補助金を受け取ったからといって、必ずしも税金が高くなるとは限りません。
事業が赤字で経費が多いか少ないかによっても、納税額は変わってきます。
新事業進出補助金を受け取ったとしても、赤字なら税金の負担はないということです。
日本は累進課税制なので、赤字の場合は所得税は免除されます。

仕入税額控除と返還義務について

新事業進出補助金補助金を受け取ると、これを利用して経費を支払うことが可能です。
経費には消費税が含まれていることもあり、仕入税額控除という仕組みが関わってきます。
つまり、仕入れにかかった消費税を控除できるというシステムです。
新事業進出補助金を利用して経費を支払った場合、その消費税分の返還義務が生じます。
仕入税額控除とは、仕入れに掛かった消費税を差し引ける制度です。
ですから、新事業進出補助金を使って経費を支払った場合、経費の消費税分も控除対象となるでしょう。
もし補助金を利用した経費に対して仕入税額控除を受けると、その後、消費税の返還義務が生じる場合があります。
ですから、補助金の使い方には注意が必要です。

返還の対象外となる条件

新事業進出補助金を受けた場合、返還の義務が生じるケースもありますが、返還義務がない条件もあります。
以下のような場合には、返還しなくても良い場合もあるので、確認しておきましょう。

  • 免税事業者:消費税の納付義務がないため、返還義務は発生しない
  • 補助対象経費が非課税仕入のみの場合:人件費や家賃など、消費税が掛からない経費に補助金を使う
  • 簡易課税方式を採用している事業者:仕入税額控除が簡略化されているため、返還しない場合がある

こうした場合、消費税の返還義務が生じないため、事前に自分がどの条件に該当するかを確認しておきましょう。

消費税に不安がある場合は専門家へ

消費税に関して不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。
特に税理士や行政書士などの士業や、商工会議所、または民間のコンサル会社などに相談してみましょう。
専門家に相談すれば、補助金を受け取った場合の消費税の計算方法や申告方法を分かりやすく教えてもらえます。
士業の専門家のほかにも、第三者機関を利用する方法もあります。

  • 商工会議所…中小企業向けの支援サービスを提供
  • 金融機関…資金調達や補助金の申請に関する相談
  • 民間コンサル会社…補助金申請から受給後のサポートまで幅広くサポート

相談する際は、専門家によって費用が異なることを考慮しましょう。無料相談を実施しているところもあるので、事前に確認してみてください。

おわりに

新事業進出補助金における建物費は、中小企業が新たな事業分野に進出する際の重要な支援要素です。
建物の新築や改修にかかる費用が補助対象となることで、企業は初期投資の負担を軽減し、事業の成長を促進することができます。
しかし、申請には細かなルールや注意点が存在するため、事前にしっかりと計画を立て、必要な書類を整えることが求められます。
また、専門家のアドバイスを受けることで、申請の成功率を高めることができるでしょう。
新事業進出補助金を活用し、企業の成長を実現するための一歩を踏み出しましょう。
新事業進出補助金を利用する際、消費税の取り扱いや税金の負担について理解しておくことが大切です。
補助金の申請において、消費税を含めた経費を計上する方法や、課税対象となるタイミングを正確に把握することで、申請がスムーズに進むでしょう。
加えて、税金の軽減を図るために活用できる優遇措置や計画を積極的に利用し、事業の発展を支援する最適な方法を選択してくださいね!

関連コラム一覧

新事業進出補助金の申請の流れを7ステップで解説
新事業進出補助金の補助対象経費を分かりやすく解説!
新事業進出補助金の加点項目を増やすと有利?その方法とは?
人物

監修者からのワンポイントアドバイス

新事業進出補助金は建物費を計上できる貴重な補助金です。 建物の改修などには大きな金額がかかることから該当の方は検討の余地があると言えます。 ただし補助金の入金があった年度では法人税等の負担が大きくなりますので注意が必要です。