このコラムのポイント
- 交付決定前の支出は対象外。
- 採択通知はゴールではなくスタート。交付申請こそが補助金を確定させる最重要工程。
- 設備内容・経費・計画の整合性が厳しく審査されるため、事前準備と慎重な書類作成が成功のポイント。
交付申請は採択後に行う最重要ステップで、設備内容・経費・計画の妥当性が厳しく審査されます。書類の整合性と早めの準備が補助金獲得の成否を左右します。

カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
出典:ものづくり補助金とは?要件や対象者をわかりやすく解説【2025年最新版】
交付申請とは、補助金の交付を確定させるための大切な手続きです。
交付申請の段階をクリアできなければ、補助事業を開始できません。
補助金交付が決定したからといって、喜ぶのはまだ早いです。交付申請が必要です。
ものづくり補助金の採択通知が届いた事業者の方は、まずは採択されたことに安堵するでしょうが、採択されることはまだゴールではありません。新たなスタートラインに過ぎないことを認識してください。
採択を受けた事業者は、速やかに交付申請の準備を進める必要があります。
前述したように、ものづくり補助金の交付申請とは、投資内容を確定させるための大事な手続きです。採択通知を受け取ったら、速やかに交付申請を行いましょう。
交付申請では、補助金の対象となる経費や事業計画の詳細が厳しく審査されます。
交付が決定となれば、補助金額が支給されるでしょう。
交付が決定されず、拒否となれば、補助金は受け取れません。
ちなみに、交付決定を受ける前に経費を支出した場合、交付が決定されてもその費用については補助対象外です。
参考:応募申請・交付申請の流れ
ものづくり補助金と間違えやすいのが、事業再構築補助金です。
ものづくり補助金と性質が似ているため同じ制度だと間違えやすいですが、別ものです。しっかり区別しておきましょう。
事業再構築補助金は確かにものづくり補助金と類似していますが、事前着手申請という制度がある点に注目です。
事前着手申請とは、交付決定前に設備などを購入できることです。これは、ものづくり補助金制度では認められていません。これが二つの大きな違いです。
ものづくり補助金には、事業再構築補助金にある事前着手の制度がありません。ですから、交付決定通知日より前に支出した経費や、事業完了期限後に支出した経費は補助対象外です。その点に留意し、経費を使いましょう。
参考:事業再構築補助金について
ものづくり補助金補助金は、中小企業や小規模事業者が将来直面する制度変更に対応するための、設備投資を支援する制度です。
例)
などに対応するためには経費の投資が必要ですが、その投資が対象です。
ものづくり補助金には、次のような特徴があります。
申請では、企業の経営状況や補助事業の計画について審査されました。
しかし、採択はあくまで交付申請に進む権利を得ただけであり、補助金の交付が決定したわけではありません。
補助金の交付を確定するためには、交付申請というステップをクリアしなければなりません。
交付申請をして初めて補助金が本当に得られます。
交付申請においては、
について具体的に精査されるので、慎重に申請しましょう。
交付申請では、以下の点が審査対象となるので、あらかじめ確認しておきましょう。
交付申請が一発で通ればいいですが、申請内容の一部修正や経費の削除を求められることがあります。
修正の往復になると手間や時間がかかりますから、交付申請書は慎重に作成しましょう。
参考:【公式】ものづくり補助金総合サイト
A. 不備がある場合は修正依頼が来ることが多く、即不採択ではありません。
ただし、修正対応が遅れるとスケジュールが圧迫されます。
A. 可能であれば相見積もり(複数社)が望ましいです。1社のみでも不可ではありませんが、価格妥当性の根拠として複数社がおすすめです。
A. 特に初めての申請では、依頼すると成功率が上がります。設備要件や書類整合性のチェックがとても注目されるからです。
A. 変更申請が必要です。
勝手に変更すると補助金が不交付または返還対象になる恐れがあります。
A. 事業期間が短くなり、設備納期などが間に合わなくなるリスクがあります。結果的に補助事業そのものが成立しないリスクもあります。
A. 機械装置・システム構築費が中心です。それ以外は対象となる条件が細かく定められているため、要領確認が必須です。
交付申請の期限は決してタイトではないですが、速やかな提出が事業期間を確保するポイントです。
交付申請そのものに明確な提出期限は設定されていません。それでも、補助事業の実施期間には以下のような制限があるので気を付けましょう。
一般型は、制度変更に対応する基本的な支援です。ものづくり補助金の中でも最も基本となる類型といえます。
出典:中小企業省力化投資補助金(一般型)
将来的に発生する制度変更、新たな課題に対応するための設備投資が対象です。
事業者が抱える課題を解決し、競争力を高めるための基盤を整えることを目的としています。
これに対し、グローバル展開型は、海外での事業拡大や競争力強化を目指す事業者を支援するための制度です。
出典:ものづくり補助金のグローバル展開型とは?
主に海外拠点での活動や、海外市場への進出を目的とした設備投資などが補助が対象となるでしょう。
以下の4つの類型が用意されており、それぞれ具体的な目的に応じた支援を受けることが可能です。
海外への旅費も補助対象です。そのため、設備投資だけでなく、海外への出張や調査にかかる費用も補助してもらえるでしょう。
海外事業を検討している事業者にとっては、大きな助けになるはずです。海外事業を含む事業活動を、総合的にバックアップしてもらえるでしょう。
出典:海外ビジネス拠点のベストな進出先は?日本企業の傾向と推移まとめ
交付申請が遅れてしまうと、補助事業の実施期間が短縮される恐れが出てきます。
初回申請から交付決定までには1か月以上かかることが多く、事務局とのやり取りで数回の差し戻しが発生するケースも考えられます。
ですから、採択通知を受けたら速やかに交付申請の準備を始め、余裕を持って手続きを進めましょう。
参考:【公式】公募スケジュールについて
ものづくり補助金を利用する際、採択後にどのような手順を踏むべきかを理解することが大切です。
採択後は交付申請の手続きに入ります。
以下では、採択以降の流れをステップごとに解説していきますので、採択以降の流れをつかみましょう。
採択とは、提出した事業計画が審査を通過し、補助金を受け取る資格が得られた状態です。
とはいえ、この時点ではまだ、事業計画に記載された全経費が補助対象となるわけではありません。
具体的な補助対象経費は、次の交付申請のプロセスで精査されるため、油断は禁物です。
採択通知を受け取った後は、交付申請の手続きに入ります。
交付申請の段階では、速やかに事業計画の再確認や、必要書類の準備に移りましょう。
採択された事業者は、交付申請を行うことで次のステップに進めます。
交付申請では、具体的に以下のような手続きを行います。
採択時に提出した事業計画を基に、改めて補助対象経費を明確化してください。
出典:履歴事項全部証明書とは 活用する場面や取得方法について解説
見積書や履歴事項証明書、賃金引上げ計画の誓約書など、交付申請に必要な書類を揃えて事務局に提出しましょう。
出典:【2025.8】ものづくり補助金の賃上げに関する要件とは?賃金引き上げ計画の誓約書についても解説!
事務局は、提出された資料をもとに補助対象経費を詳細に精査します。
この過程では経費の一部が修正or削除される場合があるため、注意しましょう。
交付決定の通知を受け取ったら、補助金を使った事業活動を本格的に始めることが可能です。
この通知は補助事業の開始を意味し、同時に契約や発注ができるようになります。
ここでも大切なポイントがあるので押さえておきましょう。
事業計画で定めた内容は、交付決定日以降に実施しなければなりません。そのため、日付は守りましょう。
交付決定前に契約や発注、支払いを行った場合、その支出は補助対象外となるため、注意してください。
補助事業の実施期間は、一般型の場合なら交付決定から10ヶ月以内、または採択発表から12ヶ月以内に完了させます。
それに対し、グローバル展開型は交付決定から12ヶ月以内、または採択発表から14ヶ月以内が期限です。
事業活動が計画通りに進むよう、進捗を定期的に確認し、必要に応じて対応策を講じてください。
変更が生じた場合は事務局に相談し、適切な手続きを行いましょう。
補助事業が完了したら、次は交付額の確定手続きです。
この時点ではまだ補助金額が確定していないため、次の手続きで確定させましょう。
出典:実績報告書のまとめ方(第14回まで)
事業活動の成果や経費の使用状況を詳細に記載した実績報告書を作成し、事務局に提出してください。
事務局は、事業者が提出した実績報告書およびその他の関連書類をもとに、補助金の交付額を最終的に決定します。
この際、不足書類や不備があると手続きが遅れてしまうため、書類は正確かつ完全に揃えましょう。
交付確定の通知を受け取ったら、請求書を作成し、事務局に提出してください。
この請求書が受理されると、めでたく補助金が事業者の口座に入金されます。
ものづくり補助金の採択後は、入金までのステップを経てやっと補助金が受け取れます。
各ステップごとに注意点や期限があって大変ですが、順守することでスムーズな手続きができるでしょう。
特に、交付申請や補助事業実施の段階では、計画に基づいた進行が大切です。
書類の準備や期限の管理を徹底し、確実に補助金を受け取れるように準備を進めましょう。
参考:【公式】成功事例の紹介
交付申請に必要な書類を確認しておきましょう。
導入予定の設備について、価格が適正か確認するために必要です。
税抜50万円以上の設備には、複数社からの見積もり(=相見積書)が必要です。
※見積もり有効期間が短い場合は早めに調整しておく。もし、相見積もりが取れない場合は業者選定理由書を提出することで対応可能。
応募申請時に作成したものを提出します。
事務局から修正指示があった場合は、その内容に従って再提出してください。
技術導入費やクラウドサービス利用費など、特定の経費がある場合に必要です。
交付申請は大事なプロセスですが、申請手続きよりも必要書類が少なく、手続きが簡単です。
ただし、補助事業の具体的な内容がしっかり審査されるため、丁寧に書類を揃えてください。
また、当たり前ですが期限を守ることが大切です。
ものづくり補助金の申請では、申請内容に変更があった場合、正しい内容に修正して再提出すれば大丈夫です。
提出が必要な書類の確認ポイントも、わかりやすく説明します。
申請内容をもう一度確認し、変更があった部分を修正しましょう。
特に注意するべき点は次の3つです。
事務局からメールが送られることがあるので、担当者のメールアドレスが正しいか確認してください。
補助事業計画書に書かれた役員の名前が、法人の証明書と一致しているか確認しましょう。
で応募してください。
出典:【2025.8】ものづくり補助金の回復型賃上げ・雇用拡大枠とは?概要や補助金額を解説
通常枠の場合は注意が必要です。
出典:IT導入補助金の申請枠の違いとは|通常枠・デジタル枠・セキュリティ枠の違いを解説
また、事業計画の内容は変更できますが、成果が小さくなるようなら変更不可です。
基準年度の数字を変更した場合、実績に置き換えて申請しましょう。
実績が確定していれば、それに基づいた申請をしてください。その時に決算書も提出します。
もし実績の数字を変更した結果、補助金の条件を満たさない場合は、翌年度以降の計画を修正して条件を満たしてください。
次に挙げる経費を補助金として申請する場合、それぞれについて説明が必要です。
該当しない場合は提出は不要です。
見積書に基づいて、補助金額や計算の詳細を更新しましょう。
補助金の上限額は、申請時と同額です。
交付申請時に補助金額を増やすことはできません。
また、申請時にはデジタル枠や回復型賃金引上げ・雇用拡大枠で応募します。
通常枠で選ばれた場合は、補助率が半分に変更されることがあります。その場合、補助金額を修正してください。
経費には消費税を含めないように注意してください。
なお、見積書に〇〇一式などの内訳が不明な記載は認められません。項目ごとに内訳を明確にしてください。
見積書に記載された内容(機械の名称や型番、金額など)は、そのまま申請書に記入します。
購入した機械や装置に付随する軽微な作業は認められますが、大きな工事や改修作業は認められません。
もし手続きが難しいと感じたら、専門のサポートサービスを利用するのもひとつの手です。わからないことがあれば、早めに相談して準備を進めましょう。
ものづくり補助金の採択通知はゴールではなく、新たなスタートです。
交付申請は補助金額を確定させるための大事なステップであり、この段階をクリアしなければ補助事業を始めることはできません。
交付申請には注意点が多いため、手続きに不安を感じる場合は、専門家のサポートを活用することを検討してください。
特に、事業実施後に必要となる実績報告は、交付申請以上に手間がかかる場合がありますので、早めの準備が肝心です。
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交付申請は「採択=内定」を「交付決定=確定」に変える最重要局面です。交付決定前の契約・発注・支払は原則対象外。見積の妥当性、型番・仕様、経費区分、計画との整合を採択直後から詰め、差戻しに備えて早期提出が鉄則です。専門家の支援を仰ぐと良いでしょう。