このコラムのポイント
- 基準年度とは、事業計画書に記載する売上・付加価値額などの実績値の基準となる年のこと
- 決算日と申請締切日の関係によって、どの年度が基準年度になるかが決まる
- 基準年度の数値は、賃上げ目標や将来の成長計画の妥当性を示す重要な判断材料
ものづくり補助金では、基準年度が申請審査の重要項目です。基準年度は決算日から6か月以内かどうかで決まり、売上高や付加価値額の実績を示す基準になります。本記事ではその判断方法と注意点を解説します。

カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
出典:【2025.8】ものづくり補助金の基準年度はいつにすべき?基準年度の具体例とともに解説
ものづくり補助金の申請において、事業計画書を提出する際に、基準年度を記載する必要があります。
この基準年度は、会社全体の事業計画における重要な項目です。
売上や付加価値額などの数値を明確にするための、基準となる年です。
とはいっても、
がわからない事業者も多いでしょう。
そこで、ものづくり補助金に係る基準年度の意味や記載方法について詳しく解説します。事業計画書を作成する際の参考にしてください。
基準年度とは、ものづくり補助金の申請時に提出する事業計画書の中で使われる重要な指標です。
この指標は、企業の過去の実績をもとに、売上高や付加価値額などを示すために必要です。
事業計画書においては、会社全体の事業計画として、基準年度を基にした数値を記入します。
この数値は、申請者が企業の成長や賃上げの実現可能性を示すために使われます。
事業者は過去の実績を基にして、将来の見込みをシミュレーション可能です。
この基準年度は、事業者の決算日に基づいて決まります。
具体的にいえば、事業者の決算日が補助金申請締切日から6ヶ月以内なら、その決算日は基準年度です。
一方で、決算日が申請締切日から6ヶ月以上経過している場合、次回の決算日が基準年度です。
仮に企業の決算日が毎年5月だとすれば、2024年7月の申請時点で基準年度は2024年です。
なぜなら、申請時点から2ヶ月前の決算日が2024年だからです。
逆に、決算日が毎年1月の企業の場合、申請締切が2024年7月でも、基準年度は翌年2025年となるでしょう。
これは、申請時点から6ヶ月以上経過した決算日が1月で、申請時点から6か月以上経過しているためです
基準年度に記載する内容は、売上高や付加価値額の推移に関する実績値が中心です。
こうした数値は、企業が設定した目標に対する達成度を示すため、申請時に重要なデータとして扱われます。
申請者は基準年度を基に、
など、先を読む具体的な指標として事業計画書に盛り込むことになるからです。
これにより、ものづくり補助金を受けるために必要な評価が行われます。
補助金の申請締切日から半年前までに決算日がない事業者や、決算の実績がまだ確定していない場合は、見込みの数値を基にして基準年度を記載します。
この場合、事業者は過去のデータや推定に基づき、売上や付加価値額の見込み値を記入しましょう。
たとえば、決算日が毎年3月の企業で初回の決算がまだ終わっていないとします。
この場合は、過去半年分の売上や付加価値額の実績を2倍にして、1年分にした見込み値を基準年度として記載してください。
このように、実績が確定していなくても、適切に見込み値を記入することで事業計画書の作成を進められます。
基準年度は、ものづくり補助金の申請においてとても大事なデータです。
正しい基準年度を選び、過去の実績や見込みを基にした事業計画書を提出しましょう。それが成功のコツの一つです。
申請時にはこの基準年度を確実に理解し、必要なデータを適切に記入するように心がけてください。
参考:【公式】ものづくり補助金総合サイト
出典:売上高とは?営業利益と経常利益はどう違う?
基準年度が大切な理由は、ものづくり補助金を申請するときに、その企業の過去の実績(売上など)をもとに計画を立てるからです。
基準年度はその計画を立てるための基準となる年で、さまざまなことを評価するために使われます。
ここで、なぜそんなに大事なのか理由をまとめておきます。
基準年度は、企業が過去にどれだけ売上を上げたり、利益を出したかを示すために使える指標です。
この年のデータをもとに、今後どれだけ成長するかを考えることが可能です。
ものづくり補助金は、企業が新しい技術を使って成長することをサポートするため、基準年度のデータをもとにどれくらい成長できるかを評価。
企業が賃上げや事業拡大を目指している場合、基準年度を基にその計画が現実的かどうかを確認可能です。
まだ確定していない数字でも、基準年度のデータを使って見込みの数値を出すことで、計画が現実的で信頼できるとアピールできます。
基準年度に基づいて企業に支給される補助金の額が決まるので、大切です。
基準年度が変われば、補助金額も変動してきます。それだけ基準年度はものづくり補助金に影響するものであり、正しく設定されていなければなりません。
出典:採択率90%超のプロコン集団が最適な補助金制度を選定し、「採択」と「事業の成長」へ導きます
決算日が補助金の申請締切日から6ヶ月前以内にある企業は、その決算年度が基準年度です。
もし6ヶ月前以内に決算日がない場合は、次回の決算年度が基準年度として扱います。
たとえば、決算日が毎年5月の企業が2024年7月に申請する場合、その基準年度は2024年です。
ものづくり補助金の基準年度について、具体的な例を取り上げるとさらにわかりやすくなるでしょう。
ある会社A社は2024年12月に決算を迎え、4月がものづくり補助金の申請締め切り日だとします。
この場合、A社の決算日は12月なので、申請締切日から半年以内に当たります。
そのため、2024年12月の決算データ(売上や利益など)を基準年度として使います。
2024年12月を基準年度として選んだなら、A社は2022年の数字を使って事業計画書を作ってください。
A社と同じ12月決算のB社の申請の締切日は、8月だと仮定してみましょう。
ここでは、申請締め切り日から半年以上前の12月が決算日です。
ですので、2024年12月の決算データは使えません。
その代わり、2023年の決算データ(まだ決まっていない場合は見込みの数字でOK)を基準年度にできます。
見込みの数字を出すときは、これまでの売上や実績を参考にし、2023年の予想数字を記入してください。
→申請自体は可能ですが、決算書が未完成の場合は正式な実績値として扱われません。
申請内容が不整合になる恐れがあるため、完成後の申請がおすすめです。
→売上が大きく変動したケースでは、その理由を事業計画書で補足説明をしましょう。
変動の理由が明確であれば審査上の不利にはなりません。
→はい、必要です。
法人と同様に、確定申告書を基に基準年度の実績を示してください。
青色申告・白色申告いずれでも対象です。
→重大な不整合がある場合、不採択につながる可能性があります。
特に付加価値額の算定ミスは審査への影響が大きいため、注意しましょう。
→有利・不利はありません。
ただし、直近の数値のほうが事業計画との整合性が取りやすく、審査での説明がしやすくなります。
→原則として申請者単体の決算が基準です。
連結決算を基準にする必要はありませんが、特に規模が大きい場合は補足説明がおすすめです。
出典:事業再構築補助金
ものづくり補助金の基準年度は、事業再構築補助金の基準年度とは少し異なることにも注意してください。
事業再構築補助金の収益計画を作る時、基準年度はいつにするべきか悩む方もいるでしょう。
計画書の見本には、直近決算年度や基準年度の欄があり、混乱する方もいるはずです。
中小企業や個人事業主が補助金をもらうには、事業計画書を提出し、採択される必要があります。
事業再構築補助金基準年度とは、収益計画を作成する際に参考にする過去の実績や、将来の予測を決めるための期間です。
具体的には、補助事業が終わる年度にあたる決算年度が基準年度です。
しかし、自社の決算月や事業のスケジュールに影響されるため、必ずしも決算月だけでは決まりません。
たとえば、決算月が12月の企業が、2022年9月に補助金の申請をし、2023年1月から事業を始めて10月に終了するとします。
この場合、直近決算年度は2021年度ですが、基準年度は2023年度です。
補助事業が終了するのが2023年10月で、その月は2023年度に含まれるためです。
事業再構築補助金を申請する際も、基準年度がとても大切です。
事業再構築補助金では、補助事業が終わる月が決算年度に影響してきます。
一方で、ものづくり補助金では、申請の締め切り日から6ヶ月以内の決算日を基準にするため、間違えないように注意してください。
これまでものづくり補助金の基準年度にフォーカスしてきましたが、そもそもものづくり補助金とは何か、簡単に説明しておきます。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が行う革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を支援するための補助金です。
正式には、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金と呼ばれ、税金を基に実施されています。
ものづくり補助金の財源は国民の税金です。
ものづくり補助金が誕生したのは、企業が新たな設備投資や生産方式の導入を行うことで、より生産性アップや、革新的な技術開発ができるようにするためです。
企業同士の競争力を強化することにもつながります。
ものづくり補助金によって、次のような良い影響が出てくるでしょう。
ものづくり補助金により、企業はより効率的に生産でき、業務がはかどります。
生産方式が改善し、設備導入もしやすくなるでしょう。
ものづくり補助金により、多くの企業の革新的な製品・サービスの開発が促進されます。
これによって企業全体の競争力が高まり、全体的な品質・サービス向上につながります。
それに伴い、業績も上がるでしょう。
新しい技術や方法を導入し、業務の効率化やコスト削減が実現できます。
環境に配慮した生産プロセスや製品開発が進み、持続可能な社会の実現の後押しとなります。
参考:【公式】公募スケジュールについて
ものづくり補助金の目的は理解できたでしょう。
では、なぜものづくり補助金が導入されたのか、その背景についても掘り下げていきます。
ものづくり補助金の創設には、複数の背景があります。
いくつかの社会的な課題があり、それらに対応するために、生産性向上が必要とされる状況です。
そのため、企業の生産性を高めることが求められています。
社会的な課題には、下記のようなものがあります。
日本は少子高齢化により、今後ますます人手不足になると懸念されています。
企業は生産性を上げることで、この問題に対応しなければなりません。
人口減少による人手不足を補完するためにも、設備の導入が必要です。
ものづくり補助金導入の背景には、グローバル化も考えられます。
現代では、非常に国際競争が増しています。
世界での競争力を維持するには、技術革新や効率化が必要不可欠です。
現代では、デジタル化、ペーパーレス化が進んでいます。
企業にとっても、デジタル技術を活用すれば生産性が上がり、業務促進になるでしょう。
デジタル化に伴い、新たな設備投資も必要です。
海外市場でも通用する製品や、サービスを提供する必要もあるでしょう。
デジタル化を促進させるためにも、ものづくり補助金のような補助金制度の需要は高まっています。
地球温暖化など、私たちは常に環境問題と直面しています。
環境意識が高まっている時代だからこそ、企業も環境にどれだけ配慮しているかが見られています。
企業もグリーン化が必要です。
企業が環境に配慮した事業を促進するためにも、ものづくり補助金は重要な役割を持っています。
これらの背景を踏まえて、企業の生産性向上を支援するために、ものづくり補助金が設立されました。
参考:【公式】成功事例の紹介
2024年9月時点にはなりますが、3つの申請枠があります。
それぞれの申請枠における補助金額や特定の要件について説明していきます。
出典:【17次締切】ものづくり補助金【省力化(オーダーメイド)枠】の公募が開始されました。
生産プロセスの効率化やサービス提供方法の高度化を目的とし、デジタル技術を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入が対象です。
単に機械装置を導入するだけでは補助の対象にならない点に注意が必要です。
出典:【2025】ものづくり補助金の概要 上限は最大4000万円/収益納付なし
新しい製品やサービスの開発、あるいは既存製品の高付加価値化を目指した設備投資を支援することが目的です。
出典:【18次公募】ものづくり補助金のグローバル枠について解説します
海外市場への進出を目指す企業に対して、国際的に競争力のある製品やサービスの開発を支援します。
それぞれの枠における補助金額や要件は異なるため、自社の状況に最適な申請枠を選びましょう。
問題なくものづくり補助金を受けるためには、いくつかの注意点を押さえてください。
特に以下の4つのポイントが大切です。
補助金の申請には、最低でも50万円以上の設備投資が必要な点に留意しましょう。
企業の生産性向上や新技術の導入に繋がる本格的な投資を促進するためにも必要です。
もし50万円が自社で用意できなければ、銀行で融資を受けましょう。
ものづくり補助金は基本的に後払い制です。
そのため、資金繰りの工夫が必要となるでしょう。
補助金がおりることが決定しても、事業完了後に支給されるため、それまでは事業者が立て替えなければなりません。
資金繰りに工夫が必要です。
申請から補助金交付後の報告まで、意外にも多くの事務作業が発生します。
たとえば、事業計画書の作成や見積もり依頼、事業完了後の成果報告などがあり、長期間にわたって負担が発生することを見通しておきましょう。
補助事業が終了したとしても、それですべてが完了するわけではありません。
補助金を受け取った後も、成果報告を5年間報告する義務があります。
報告が適切に行われなければ、補助金の返還を求められることがあるので、注意してください。
ものづくり補助金における基準年度は、申請時に必要な重要な概念です。
なぜ重要かというと、企業の過去の実績(売上や付加価値額など)を基に、事業計画を立てるための基準となる年だからです。
企業の決算日が申請締切から6ヶ月以内なら、その決算年が基準年度です。
反対に、6ヶ月以上経過している場合は次回の決算年が基準年度です。
基準年度のデータは、企業の成長予測や計画の信頼性を高めるために必要で、補助金額を決める際にも影響してきます。
正しい基準年度を選び、適切に計画を立てることが、ものづくり補助金を受けるためのポイントです。
ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上を支援するための有効な制度です。
とはいうものの、申請から交付までにはさまざまな手続きや注意点がある点に気を付けましょう。
きちんと事前準備を整えて申請を進めれば、企業の成長につながる支援を受けられます。
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