半導体関連の事業に使える国の補助金
半導体産業は、製造・開発・物流・販路のすべてで莫大なコストが発生する分野です。そのため、国も成長分野として重点的に支援を行っており、製造・省力化・新規事業など複数の補助金が活用できます。本コラムでは、経済産業省・中小企業庁を中心に、半導体関連事業に活用しやすい主要な補助金を紹介します。
半導体関連事業に活用できる主な国の補助金(2025年度版)
| 補助金名 | 主な目的・対象 | 補助率・上限額 | 
| ものづくり補助金 | 生産設備・ソフト導入による品質・効率向上 | 最大3,000万円(1/2〜2/3) | 
| 新事業進出補助金 | 新分野展開・異業種転換など大規模投資 | 最大9,000万円(1/2) | 
| 省力化投資補助金 | ロボット・自動化装置など省人化設備導入 | 最大1億円(1/2〜2/3) | 
| 中堅・中小企業大規模成長投資補助金 | 10億円以上の大規模設備・拠点整備 | 最大50億円(1/3) | 
| IT導入補助金 | DX・業務管理・生産システム導入 | 最大450万円(1/2) | 
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新しい設備やシステムを導入して生産性を高めるときに活用できる代表的な補助金です。半導体分野でも、製造装置の導入や検査工程の自動化などに広く使われています。
 
この補助金は、「高付加価値な製品・サービスの開発」や「海外市場への展開(グローバル枠)」など、企業の挑戦を後押しする制度です。補助対象となる経費には、機械装置費・システム構築費・技術導入費・知財関連費・外注費などが含まれます。
概要
ものづくり補助金の上限額は最大3,000万円(グローバル枠)で、補助率は中小企業で1/2、小規模事業者で2/3です。一定の条件を満たす場合、上限額の引き上げ(最大4,000万円相当)や補助率の優遇措置もあります。
| 項目 | 標準 | 特例適用時 | 
| 補助上限額 | 最大3,000万円 | 最大4,000万円相当まで引上げ可 | 
| 補助率 | 中小1/2・小規模2/3 | 最低賃金引上げ等で2/3まで可 | 
| 主な対象経費 | 設備・システム導入費等 | 同左(+海外販路関連費も対象) | 
※グローバル枠の場合、海外旅費・通訳費・翻訳費・広告宣伝費など、海外展開に関する経費も補助対象になります。
活用イメージ
1. 高精度な製造設備の導入による歩留まり改善と高付加価値化
ウェハー加工やダイシングなど、微細加工工程において新型設備を導入し、製造精度を飛躍的に高める取組です。これにより、工程のばらつきを抑えて歩留まり(良品率)を向上させ、高品質・高性能な半導体を安定的に供給できる生産体制を実現します。結果として、製品単価の上昇や顧客満足度向上による付加価値額の増大につながります。
対象経費:機械装置費・システム構築費
2. 自動搬送ロボットの導入による工程効率化と人材生産性の向上
クリーンルーム内で使える自動搬送ロボット(AGVなど)を導入し、材料や製品の運搬・検査工程を自動化するケースです。人手による搬送作業を削減することで、人的ミスを防ぎ、作業時間を短縮。同時に、作業員をより付加価値の高い工程(検査・技術開発など)に再配置できるため、人材の生産性を高める革新的な改善につながります。
対象経費:機械装置費・技術導入費
3. AI画像検査システムの導入による品質向上とコスト削減の両立
従来、人の目に頼っていた検査工程をAI画像認識によって自動化する取組です。AIが微細な欠陥を高精度に検知することで、不良品発生率を低減し、再加工や廃棄ロスを削減。
その結果、品質向上とコスト削減を同時に実現する生産体制を構築できます。また、検査データを蓄積・分析することで、工程改善や新製品開発にも波及するデジタル基盤が整います。
対象経費:システム構築費・ソフトウェア開発費
4. グローバル枠を活用した海外販路拡大と収益基盤の強化
自社の半導体製品を海外市場に展開するため、現地市場に合わせた製品改良やプロモーションを行う取組です。展示会出展や現地広告、通訳・翻訳費などを活用して、海外顧客への認知向上・受注拡大を図ることができます。新規顧客の獲得により売上増加が期待でき、結果として企業全体の付加価値額・収益力の向上につながります。
対象経費:海外旅費・通訳翻訳費・広告宣伝費
このように、ものづくり補助金は「生産現場の技術革新」と「海外販路の拡大」の両方に対応できる制度です。半導体の製造・検査・物流・販売のどの工程でも、明確な目的と成果が示せる投資であれば採択される可能性が高いといえます。
審査・申請時のポイント
ものづくり補助金では、単に設備を導入するだけではなく、「事業を通じてどのように生産性を高め、付加価値と賃上げを実現するか」が問われます。そのため、申請時には次の4点を意識することが重要です。
- 付加価値額(=売上総利益+人件費+減価償却費)が事業後に上昇する計画か
- 従業員の賃金水準・給与総額の引上げを見込んでいるか
- 設備・システム導入が単なる更新ではなく、革新的な改善にあたるか
- 海外展開を狙う場合、その販路戦略や人材体制の実現可能性が明確か
また、複数回公募されるため、締切・採択発表スケジュールを事前に確認することも必須です。
活用のポイントまとめ
ものづくり補助金は、半導体分野の企業が
- 高精度な製造設備の導入
- 検査や搬送の自動化
- 海外販路の拡大
- に取り組む際の中心的な支援策です。
ただし、「投資が自社の工程をどれだけ改善し、利益と賃上げに結びつくか」を定量的に示す必要があります。この説明が明確であるほど、審査で高く評価される傾向があります。
参考:ものづくり補助金
新事業進出補助金
新事業進出補助金は、既存事業の強みを活かして新しい分野に挑戦する中堅・中小企業を支援する補助金です。2025年度に新設された制度で、従来の「事業再構築補助金」を引き継ぐ形で運用されています。半導体分野でも、既存の加工・組立・測定技術を応用して新しい市場に進出する取組が対象になります。
概要
新事業進出補助金の上限額は最大9,000万円、補助率は一律1/2です。対象となる経費は幅広く、建物・設備だけでなく広告宣伝や知財関連費用まで含まれます。
| 項目 | 内容 | 
| 補助上限額 | 最大9,000万円 | 
| 補助率 | 一律1/2 | 
| 主な対象経費 | 建物費、機械装置費、クラウドサービス利用費、広告宣伝費、知的財産権関連費など | 
このように、単なる設備投資だけでなく、新規事業の立ち上げに必要な総合的な投資を支援する点が特徴です。
活用イメージ
新事業進出補助金は、これまで培った製造技術をもとに、半導体分野への新規参入や事業拡大を図る企業にとって特に有効です。代表的な活用例は次の3つです。
1. 加工技術を活かした半導体装置部品への参入
金属加工メーカーが、これまでの精密加工ノウハウを応用し、パワー半導体製造装置の部品を新たに製造するケースです。既存設備を一部転用しつつ、新しい加工技術の導入や品質検査体制の確立、知財取得などを含めて新事業として立ち上げる取組が対象になります。
このように、設備だけでなく技術導入・専門家活用・開発環境整備までを含む総合的な投資が認められます。
対象経費:機械装置費・技術導入費・専門家経費
2. 測定・検査分野からの半導体産業への転換
電子機器や精密測定装置の部品加工を行ってきた企業が、半導体製造装置分野に参入するケースです。自社が持つ高精度加工技術を活かして、リードタイム短縮や品質向上を実現。
さらに、工程データの蓄積や分析を取り入れ、新たな製造プロセスやサービス価値を生み出す「新分野事業」として評価されます。
対象経費:機械装置費・システム構築費
3. 海外販路の開拓による事業拡大・事業化の加速
自社の半導体関連製品を海外市場に展開するため、展示会出展や広告宣伝を行うケースです。単なるPR活動ではなく、現地市場調査・翻訳・販促資料の制作・取引先開拓など、海外での事業展開を実現するための包括的な投資として活用できます。
これにより、国内だけでなく海外市場での販売基盤を構築し、新事業としての収益モデルを確立することが可能です。
対象経費:広告宣伝費・販売促進費・通訳翻訳費
このように、新事業進出補助金は、「既存事業の延長線上で新しい半導体市場に挑戦する」企業に最適な制度です。特に、加工・検査・制御といった技術を持つ中堅・中小企業にとって、事業拡大のチャンスとなります。
審査・申請時のポイント
新事業進出補助金は、「新しい事業でどれだけ持続的な成長を実現できるか」が評価の中心です。採択を目指すには、次の4点を押さえておくことが重要です。
- 既存事業との関連性が明確で、リスクが抑えられているか
- 新規事業が将来的に売上・雇用・付加価値を生み出す見込みがあるか
- 導入する設備・システムが、事業転換に不可欠な投資であるか
- 地域経済やサプライチェーンへの波及効果があるか
注意点
新事業進出補助金は、補助下限額が750万円からと比較的大規模な投資を想定しています。小規模な設備導入や部分的な改善には不向きで、新拠点の立ち上げや新分野進出など、中長期的な成長戦略を伴う取組が求められます。
また、公募は年4回前後実施される予定であり、毎回申請期間が約1~2か月程度に設定されます。申請を検討している場合は、公募開始のタイミングを逃さないよう早めの計画立案が重要です。
活用のポイント
新事業進出補助金は、半導体関連の新市場に挑戦する中堅・中小企業を力強く後押しする制度です。とくに「既存技術を活かして新分野に踏み出す」「海外市場に展開する」といった明確な方向性を持つ事業が高く評価されます。
採択を目指すには、「なぜ新分野に挑戦するのか」「どの技術をどう発展させるのか」を具体的に説明し、数字で示すことが欠かせません。単なる設備投資ではなく、「新しい価値を生み出す挑戦」であることを伝える構成にすることが、採択への近道です。
参考:新事業進出補助金
省力化投資補助金
省力化投資補助金は、人手不足をテクノロジーによって解消し、生産性を向上させることを目的とした制度です。半導体分野では、製造ラインの自動化や倉庫内の搬送システム導入などに最適です。
概要
省力化投資補助金には、「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型があります。企業の規模や導入したい設備の内容に応じて選択できるのが特徴です。
| 項目 | カタログ型 | 一般型 | 
| 補助上限額 | 最大1,500万円 | 最大1億円 | 
| 補助率 | 一律1/2(小規模・再生事業者は2/3) | 一律1/2(小規模・再生事業者は2/3) | 
| 受付方法 | 随時受付(常時申請可) | 公募制(年3回程度) | 
- カタログ注文型:SMRJが公表する「登録製品カタログ」から選び、販売事業者と共同で申請。
- 一般型:自社の課題に合わせてオーダーメイドの設備・システムを導入するタイプ。
どちらの類型も「人手不足の解消」と「労働生産性の向上」が要件として求められます。
活用イメージ
1. AMR(自動搬送ロボット)の導入による人手不足の解消と搬送効率化
クリーンルーム内で材料や部品を自動搬送するAMR(自律走行ロボット)を導入するケースです。人手に依存していた搬送作業を自動化することで、人員不足を補いながら、安定した供給と作業効率の向上を実現します。
また、粉塵リスクやヒューマンエラーの減少など、安全性の向上にも寄与します。
対象経費:機械装置費・システム構築費
2. 検査工程の自動化による労働負荷軽減と品質安定化
AIや画像解析技術を用いた自動検査装置を導入し、目視検査をデジタル化するケースです。これにより、熟練作業者の負担を減らすとともに、限られた人員でも高精度な品質管理が可能な体制を実現できます。検査データを自動蓄積することで、後工程での改善分析にも役立ち、継続的な生産性向上につながります。
対象経費:機械装置費・ソフトウェア開発費
3. 工場DXによる業務一元化と生産性の最大化
生産管理システムを導入し、受注から出荷までの情報をデジタルで統合するケースです。これまで紙や手入力で行っていた管理を自動化し、工程・在庫・品質情報をリアルタイムに把握できるようにすることで、少人数でも効率的に運営できる「スマート工場化」を推進できます。
結果として、人的ミスの削減・残業時間の短縮・稼働率の向上など、働き方改革にもつながります。
対象経費:システム構築費・クラウドサービス利用費
このように、省力化投資補助金は「人手不足をテクノロジーで解決する」企業を重点的に支援しています。半導体製造のような精密かつ高負荷な現場で、ロボット・AI・DX導入による効率化を進めたい企業に最適です。
省力化投資補助金の審査では、「人手不足の解決につながる具体的な効果があるか」が最も重要です。単なる生産能力の拡大目的では採択されにくいため、次の点を意識して申請書を作成しましょう。
- 人手不足の現状(離職率・採用難・人件費増)を数値で示す
- 導入後に削減できる作業時間・人件費・労働時間を具体的に算出する
- 投資によって生産性(売上/人件費など)がどの程度改善するかを明確にする
- 労働環境の改善(負担軽減・安全性向上)など、定性的な効果も記載する
また、一般型は年3回程度の公募制、カタログ型は随時受付です。特にカタログ型は申請が簡易でスピード感があるため、設備導入を急ぐ企業に向いています。
活用のポイントまとめ
省力化投資補助金は、半導体業界における「生産ラインの自動化」「検査工程の効率化」「人材不足対策」を支援する強力な制度です。ただし、制度の目的は人手不足の改善と賃上げへの波及にあるため、
単なる増産目的や機械更新だけでは採択されにくい点に注意が必要です。導入の背景と効果を明確にし、「人に依存せずに持続的に生産性を高める取組」として計画をまとめることが採択への近道です。
参考:省力化投資補助金
中堅・中小企業大規模成長投資補助金
中堅・中小企業大規模成長投資補助金は、10億円以上の大規模な投資を行う企業を支援する制度です。総額3,000億円規模の国家予算が組まれており、工場の新設や拠点整備、省力化投資を通じた賃上げの実現を目的としています。半導体産業でも、製造拠点の新設やライン自動化などに活用が期待されています。
概要
この補助金は、「中堅企業による大規模成長投資を後押しし、賃上げを促進する」ことを目的とした経済産業省の重点施策です。10億円以上の投資を行う企業が対象で、補助上限は最大50億円と非常に高額です。
| 項目 | 内容 | 
| 補助上限額 | 最大50億円 | 
| 補助率 | 1/3以内 | 
| 主な対象 | 常時使用する従業員2,000人以下の中堅・中小企業 | 
対象事業は、省力化・自動化による生産性向上や、賃上げを伴う成長投資が中心です。製造業や物流、研究開発拠点の整備などにも広く適用されます。
活用イメージ
中堅・中小企業大規模成長投資補助金は、大規模な製造設備投資や拠点整備を計画する半導体関連企業に最も適しています。具体的な活用例は以下の通りです。
1. 半導体製造拠点・研究施設の新設による国内生産力の強化
新たな製造工場や研究開発センターを建設し、国内の生産能力を大幅に高める取組です。海外依存リスクを軽減し、地域分散や国内回帰の動きに対応した国家戦略型の設備投資として高く評価されます。
また、地域雇用の創出や新技術開発との相乗効果が見込まれる点も重要な評価軸です。
対象経費:建物費・構築物費・機械装置費
2. 物流倉庫や検査ラインの整備によるサプライチェーンの強靭化
新設拠点において、物流倉庫や検査ラインを整備し、原材料や製品の流通を効率化する取組です。これにより、供給網の安定化と在庫管理の最適化が実現し、半導体産業全体のレジリエンス強化に貢献する事業として評価されます。クラウド連携型の在庫管理や検査データの共有など、デジタル化による効率化も対象となります。
対象経費:構築物費・機械装置費・クラウドサービス利用費
3. 生産ラインの全自動化・ロボット化による省力化と賃上げの両立
既存の生産ラインを全面的に自動化し、省人化を進めながら増産体制を構築する取組です。ロボット導入やAI制御システムによる最適運転など、明確に生産性向上が示せる投資は補助対象になりやすい傾向があります。
また、生産効率の向上によって収益を生み、その成果を従業員の賃上げや待遇改善につなげる点が重視されます。
対象経費:機械装置費・システム構築費・技術導入費
このように、本補助金は「大規模な設備投資で生産性を高め、雇用と賃上げにつなげる」ことを目的としています。特に、半導体製造・装置・部材分野における新拠点整備や国内生産回帰の動きと親和性が高い制度です。
審査・申請時のポイント
採択を目指すためには、投資規模の妥当性と賃上げ効果の実現性が重要視されます。審査で評価される主なポイントは以下の通りです。
- 投資金額が10億円以上であり、設備投資の内容が合理的か
- 設備導入による生産性向上や業務効率化の効果が定量的に示されているか
- 補助事業終了後に、賃上げ計画(給与総額・平均賃金上昇率)を実行できる体制があるか
- 事業の波及効果(地域経済・雇用・取引先企業への貢献)が明確に示されているか
また、採択後は定期的なフォローアップ報告(成果報告書・賃上げ実績)が求められます。単なる設備投資に留まらず、社会的効果を伴う「成長投資」として位置づけることが重要です。
注意点
- 10億円以上の投資が条件のため、明確な事業規模と資金計画が必要です。
- 賃上げ計画の提出が必須であり、採択後も実績報告が求められます。
- 大規模な制度のため、事業計画の整合性や財務基盤が厳しく審査されます。
- 現在は第3次公募(2025年4月締切)が終了しており、次回公募が期待されています。
公募開始時期や採択結果は公式サイトで随時公表されるため、申請を検討する場合は早めの情報収集が欠かせません。
活用のポイントまとめ
中堅・中小企業大規模成長投資補助金は、「成長」と「賃上げ」を両立する大規模投資を支援する制度です。
 半導体業界においては、製造拠点の新設や生産ラインの自動化、研究施設の整備など、スケールの大きい事業に活用できます。
採択を目指すには、
- 投資規模の根拠と経済効果
- 生産性向上・雇用拡大・賃上げの整合性
- を明確に示し、「持続的な企業成長の道筋」を数字で説明することが不可欠です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、業務のデジタル化や生産性向上を目的に、ソフトウェアやクラウドサービスを導入する際に使える補助金です。半導体製造においても、設備そのものを購入するための補助金ではなく、製造工程を効率化するためのDXツール導入に活用できる制度です。
概要
IT導入補助金の目的は、「中小企業・小規模事業者がITツールを導入して生産性を高めること」です。そのため、補助対象はIT関連の費用(ソフトウェアやクラウドサービス)に限定されます。機械装置や原材料の購入など、ハードウェア投資には利用できません。
| 補助上限額 | 最大450万円(通常枠) | 
| 補助率 | 1/2以内 | 
| 主な対象経費 | ソフトウェア導入費、クラウドサービス利用料、保守・設定費用等 | 
この制度には「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「インボイス対応枠」などの類型があり、目的に応じて選択します。
補助対象と対象外の違い
IT導入補助金は、“情報処理を通じて業務を効率化する”ことが条件です。そのため、以下のように対象となる経費と対象外の経費が明確に区分されています。
| 区分 | 対象となる内容 | 対象外となる内容 | 
| 補助対象 | 生産管理・在庫管理などのITシステム導入、クラウド利用料、AI検査ソフトなど | 露光機・成膜装置などの製造設備、シリコンウェハーなどの原材料、工場建設費 | 
| 理由 | ITツールによる業務効率化が目的 | ものづくりや設備投資は別制度の対象(例:ものづくり補助金) | 
つまり、“半導体を作るための機械”ではなく、“作る工程をデジタルで管理する仕組み”が対象になります。
活用イメージ
半導体分野では、IT導入補助金を使って製造DX(デジタル変革)を推進する取組が可能です。代表的な活用シーンは以下の通りです。
1. MES(製造実行システム)の導入による生産進捗の見える化
生産ラインの稼働状況や不良率をリアルタイムで把握し、現場管理を効率化します。
対象経費:ソフトウェア導入費・クラウド利用料
2. AI画像検査システムによる品質管理の自動化
AIが製品表面の欠陥を自動検知し、人手による目視検査を削減します。
対象経費:ソフトウェア導入費・保守サポート費
3. 海外取引や請求処理の電子化(インボイス対応)
電子帳票や電子契約を導入し、請求書の発行・管理をクラウド化します。
対象経費:クラウドサービス利用料・導入設定費
審査・申請時のポイント
申請の際は、「導入するITツールで何がどれだけ改善するのか」を明確に示すことが重要です。
- 業務工程のどこを改善するのか(例:生産・在庫・品質・請求など)
- 導入前後で削減できる作業時間・人件費を数値で示す
- IT導入支援事業者(登録ベンダー)との連携を明確に記載する
また、申請は必ず「IT導入支援事業者」を通して行う必要があります。自社単独では申請できないため、早めに登録ベンダーとの協力体制を構築しておきましょう。
活用のポイント
IT導入補助金は、「半導体を作るための設備」ではなく、「作るプロセスを最適化するITツール」に使える補助金です。製造現場の見える化、AI検査、自動記録、電子取引など、DX推進のためのシステム導入に最適です。他の設備投資系補助金(ものづくり補助金、省力化投資補助金)と組み合わせることで、「設備 × IT」の両面から半導体製造の効率化を実現できます。
参考:IT導入補助金






