新事業進出補助金の見積もりについて|書類作成のポイントを解説
この記事では、新事業進出補助金の交付申請時に求められる見積書の役割や作成のポイントを解説します。
見積もり取得の注意点や提出時の具体例も記載しているので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
新事業進出補助金とは何か
新事業進出補助金とは、中小企業が新たな分野に事業を展開する際に、その初期投資費用や販路開拓費用などを国が一部支援する制度です。
この補助金は、地域経済の活性化や産業の多様化を目的としています。
事業の再構築や高付加価値化、新分野進出など、企業の挑戦を後押しする政策の一環です。
対象となる事業は、既存のビジネスとは異なる市場や技術を活用したものであることが求められます。
また、計画には賃上げ要件や収益性の証明などが必要であり、しっかりとした事業計画が不可欠です。
補助金の上限額は事業規模や類型によって異なり、最大で9,000万円が支給されるケースもあります。
補助率も2分の1とされており、企業にとっては大きな資金的支援となるはずです。
新事業進出補助金について詳しく知りたい方は、下記コラムを参考にしてください。
新事業進出補助金についてわかりやすく解説します!
参考:新事業進出補助金
見積書が必要な理由
補助金申請時に見積書が必要な理由は以下の通りです。
- 補助金の使途証明のため
- 審査の透明性を確保するため
- 費用の妥当性を証明するため
- 実施後の経費精算時に必要となるため
- 事業計画の実現可能性を裏付けるため
補助金の使途証明のため
補助金は、単に必要だから支給されるというものではありません。
公的資金を適正に使用するという原則のもと、明確な使途とそれを証明する根拠資料が求められます。
たとえば、以下のような経費に対して見積書が必要となります。
- 建物の内装工事→施工会社による詳細な内訳付き見積書
- ITシステム導入→ベンダーからの開発・導入費用の詳細見積書
- 広告宣伝費→デザイン会社や広告代理店からの制作・掲載費見積
- 機械装置・備品購入→メーカーまたは販売会社からの見積書(型番、仕様、納期を明記)
これらの見積書には、できる限り具体的な項目と価格が記載されている必要があります。
「一式」などの表記が多いと、審査で否認される可能性があるため注意してください。
また、見積書は単に金額の根拠となるだけでなく、補助事業の透明性と実現可能性の証明にもつながります。
提出時には、2社以上の相見積もりを求められる場合もあるため、あらかじめ複数の業者から見積もりを取得しておくと安心です。
審査の透明性を確保するため
審査機関にとって、事業の内容と必要経費の妥当性を第三者的に確認できる資料として、見積書は不可欠です。
審査の公正性を担保する意味でも、見積書の提出は重要といえます。
費用の妥当性を証明するため
見積書があることで、申請する金額が適正な市場価格に基づいていることを証明できます。
これにより、過大な申請や意図的な水増しといった不正行為のリスクを抑制します。
事業計画の実現可能性を裏付けるため
見積書は、必要な設備やサービスの具体的内容を明示するため、事業計画の実現性を補強する役割があります。
たとえば、内装工事の費用が見積もられていなければ、実際に事業を立ち上げられるのか疑問視されるでしょう。
実施後の経費精算時に必要となるため
補助金の多くは後払い方式です。事業実施後、補助対象経費の支出証明と合わせて、当初提出した見積書との照合が行われます。
このときに見積書がない、または整合性が取れていないと、補助金が減額されたり、不支給となることもあるのです。
見積書に求められる基本要件とは
新事業進出補助金の見積書に求められる基本要件などを詳しく解説します。
- 信用性があるか?
- 適正な価格設定をしているか?
- ビジネスにあった説明が含まれてるか?
信用性があるか?
審査項目としての信頼性確保も大事です。
補助金の審査においては、見積もりの信頼性が重要視されます。
見積もりが不適切であったり、虚偽の情報が含まれている場合、補助金の申請が却下される可能性があるのです。
ですから、見積もりを作成する際には、信頼できる業者からの見積もりを取得し、正確な情報を提示しましょう。
また、見積もりの有効期限にも注意が必要です。期限が切れている場合は再提出が求められることがあります。
見積書に求められる基本要件についても触れておきます。
見積書には、発行元企業名や連絡先、日付が明記されている必要があります。
これにより、見積もりの信頼性が高まり、審査時に必要な情報が明確になるからです。
また、品目の詳細や単価、数量、金額の記載も重要です。
適正な価格設定をしているか?
まず、適正な価格設定の裏付けについて考えましょう。
適正な価格設定は、補助金の審査において重要であり、見積もりが適切であることが求められます。
具体的には、見積もりを取得する際には、複数の業者から相見積もりを取得し、価格の妥当性を確認することが必要です。
特に、50万円以上の経費を申請する場合は、3社以上からの見積もりが求められます。
ビジネスにあった説明が含まれてるか?
事業内容に合った説明が見積書に含まれているかもポイントです。
見積書には、申請する事業の内容に関連する説明が必要であり、これにより審査員が事業の目的や必要性を理解しやすくなります。
見積書の提出が求められるタイミングについては、事業計画提出時に添付することが一般的です。
このため、事前に見積もりを取得し、準備を整えておきましょう。
また、追加資料提出の可能性にも備えておいてください。
審査過程で追加資料の提出が求められることがあるため、見積もりに関連する資料や説明を準備しておくことが望ましいです。
実務で注意すべきことは、
- 相見積もりの取得が必要
- 同業他社との癒着を避ける工夫
などが挙げられます。相見積もりを取得することで価格の透明性が確保され、適正な価格設定が行われることが期待されます。
実際の支払い額と相違しないよう管理することも大切です。
見積もりと実際の支払い額が大きく異なる場合、補助金の審査において問題が生じる可能性があります。
【無料】御社に合った補助金・助成金を診断! 見積もり取得や専門家の活用方法について
新事業進出補助金に関連する見積もり取得や専門家の活用法について解説します。
修正が求められたときの対応は?

補助金申請において、修正が求められることもあります。
まず、修正依頼があったら、指摘された内容を正確に把握し、どの部分をどのように修正すればよいのかを明確にしてください。
次に、必要な情報を収集し、修正内容を反映させた新しい書類を作成します。
この際、修正後の書類は、元の書類と同様に正確であることを確認しなければなりません。
修正が完了したら、指定された期限内に新しい書類を提出します。
提出後は、再度確認を行い、受理されたかどうかを確認しましょう。
補助対象経費ごとの見積もり取得の例
以下に、具体的な経費ごとの見積もり取得の例をご紹介します。
設備投資(洗濯機、店舗什器)
設備投資に関しては、洗濯機や店舗什器などの購入が該当します。これらの設備を購入する際には、複数の業者から見積もりを取得しましょう。
たとえば、洗濯機を購入する場合、3社以上の業者から見積もりを取り、価格や性能、アフターサービスなどを比較してください。
見積もりには、機種名、単価、数量、合計金額が明記されていることが求められます。
また、見積もりの有効期限も確認し、期限内に申請を行いましょう。
広告宣伝費(チラシ制作、Web広告)
広告宣伝費に関しては、チラシ制作やWeb広告の費用が該当します。
これらの費用についても、複数の業者から見積もりを取得することが求められます。
たとえば、チラシ制作の場合、デザイン費、印刷費、配布費用などが明記された見積もりを取得します。
Web広告の場合は、広告掲載費用や制作費用が含まれる見積もりを取得し、各業者の提案内容を比較しましょう。
システム導入費(不動産管理ソフト)
システム導入費に関しては、不動産管理ソフトの導入が該当します。この場合も、複数のソフトウェア提供業者から見積もりを取得する必要があります。見積もりには、ソフトウェアの機能、ライセンス費用、導入サポート費用などが含まれていなければなりません。
また、導入後のサポート体制や更新費用についても確認し、総合的に判断しましょう。
内装工事(レイアウト設計・施工など)
内装工事に関しては、レイアウト設計や施工が該当します。この場合も、複数の施工業者から見積もりを取得する必要があります。
内装工事の見積もりには、工事内容、単価、工期、合計金額が含まれていることが必要です。
とくに、工事の内容が詳細に記載されていることが重要であり、どのような材料を使用するのか、施工方法はどうするのかなどが明確に記しましょう。
専門家の賢い活用法
新事業進出補助金の申請においては、専門家の活用がおすすめです。
- 信頼できる業者と連携する
- 商工会議所や士業のサポート
- 見積取得の支援を受けるために
信頼できる業者と連携する
信頼できる業者との連携が成功への近道です。
業者を選定する際には、過去の実績や評判、提供するサービスの内容を確認しましょう。
また、複数の業者から見積もりを取得し、価格やサービス内容を比較することで、信頼性の高い業者を選ぶことが可能です。
業者との連携を強化するためには、定期的なコミュニケーションを行い、進捗状況や問題点を共有してください。
商工会議所や士業のサポート
商工会議所や士業(弁護士、税理士、中小企業診断士など)は、新事業進出補助金の申請において非常に有用なサポートを提供しています。
商工会議所では、補助金に関するセミナーや相談会が開催されているため、最新の情報を得られるでしょう。
士業は専門的な知識を持っており、申請書類の作成や事業計画の策定において具体的な助言をくれます。
士業に依頼する際には、事前に相談内容や希望するサポート内容を明確にし、適切な士業を選ぶことをおすすめします。
見積取得の支援を受けるために
見積取得の支援を受けるためには、専門家や支援機関に相談することが有効です。
商工会議所や中小企業支援センターなどでは、補助金申請に関する相談窓口が設けられています。
そこで見積もりの取得方法や業者の紹介を受けることが可能です。
また、専門家に依頼することで、見積もりの取得から申請書類の作成までを一貫してサポートしてもらえます。
おわりに
新事業進出補助金の申請において、見積書は単なる書類のひとつではありません。申請の信頼性を大きく左右する重要な資料です。
補助金の審査担当者は、提出された見積書をもとに事業計画の妥当性や実現可能性を評価します。
曖昧で具体性のない見積もりは、申請全体の信頼性を損ねるだけでなく、採択率を著しく低下させるリスクがあるのです。
とくに、新規事業の内容に合致した、詳細かつ具体的な見積書を作成することが求められるでしょう。
見積書の質を高めることは、単に書類審査を通過するだけでなく、実際の事業推進における資金活用の正当性を示すことにもつながるのです。
監修者からのワンポイントアドバイス
見積書に関しては補助金の公募要領や交付申請の手引きなどにどのような項目が必要かが掲載されています。
その形式に準拠していないと差し戻しの対象となってしまいます。
必ず業者に見積もり依頼する前に確認し、業者にその内容を伝えるようにしましょう。