新事業進出補助金を活用した不動産ビジネス戦略

不動産業界での新事業進出補助金の活用法を解説。 対象経費や注意点、成功事例を紹介し、資金調達のヒントを提供します。
井上 雅也

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新事業進出補助金 不動産

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金ってなに?

新事業進出補助金は、2025年に創設された補助金です。中小企業が既存事業とは異なる新たな事業に挑戦する際の設備投資を支援します。
機械装置や建物の改修、システム導入などが対象経費となります。
補助率は1/2で、補助上限額は事業規模によりますが、最大9,000万円です。
新事業進出補助金は、企業が新たな市場に進出し、競争力を高めるための支援策といえます。
参考:新事業進出補助金

不動産業に補助金を活用するメリットは?

新事業進出補助金 不動産
不動産業界は、競争が激しく、常に新しいビジネスモデルやサービスが求められています。
新事業進出補助金を活用することで、以下のようなメリットが期待できるでしょう。

資金負担が減る

大規模な設備投資が必要な場合でも、補助金を利用することで自己資金の負担を軽減できます。

新規事業の推進

新たな市場への進出やサービスの多角化を図る際の資金源として活用できます。

業務効率の向上

補助金を活用して最新の技術やシステムを導入することで、業務効率を高め、競争力を強化できます。

対象となる事業内容は?

新事業進出補助金の対象となる事業は、以下のような内容が含まれます。

  • 新たな市場への進出
  • 高付加価値事業の展開
  • 既存事業の技術やノウハウを活かした新規事業の立ち上げ

補助金の金額・上限

補助金の金額は、対象経費の1/2が補助され、上限は以下のように設定されています。

  • 従業員数20人以下:最大2,500万円
  • 従業員数21~50人:最大4,000万円
  • 従業員数51~100人:最大6,000万円
  • 従業員数101人以上:最大9,000万円

応募資格と申請条件

新事業進出補助金の応募資格は、中小企業に限定されており、資本金が10億円以上の大企業は対象外です。
また、以下の条件を満たす必要があります。

  • 新事業進出要件を満たす
  • 付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上
  • 給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上

参考:新事業進出補助金(公募要領)

不動産業界での活用事例は?

不動産業界で新事業進出補助金を活用した事例はいくつかあります。その一部を紹介します。

賃貸管理業務をDX化

不動産業界では、賃貸管理業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。
新事業進出補助金を活用して、以下のような取り組みが行われています。

クラウド型管理システムを導入

賃貸物件の管理を効率化するためのシステムを導入し、業務の効率化を図る。

オンライン契約を導入

賃貸契約をオンラインで完結できるシステムを導入し、顧客の利便性を向上させる。

不動産仲介サービスを多角化

不動産仲介業者が新たなサービスを展開する際にも、補助金が活用されています。

リノベーションサービスを提供

空き家や古民家をリノベーションし、新たな価値を提供する事業を展開。

シェアハウスを運営

若者向けのシェアハウスを運営し、賃貸市場の多様化を図る。

空き家再生ビジネスの新規展開

空き家問題が深刻化する中、空き家を再生するビジネスモデルが注目されています。

空き家のリノベーション

補助金を活用して空き家をリノベーションし、賃貸物件として提供する。

地域活性化プロジェクト

地域の空き家を活用したコミュニティスペースの設置など、地域活性化に寄与する事業を展開。

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対象経費の具体例

新事業進出補助金で対象となる経費には、以下のようなものがあります。

  • 広告宣伝費
  • 内装・設備投資
  • 人件費(一定条件を満たす場合)
  • システム導入費用(CRM、不動産管理ソフト等)

広告宣伝費

新規事業の立ち上げに伴う広告宣伝費も対象となります。
ウェブ広告やチラシの制作費用が含まれます。

内装・設備投資

賃貸物件の内装工事や設備投資にかかる費用が対象です。
具体的には、キッチンやバスルームの改修エアコンの設置などです。

人件費(一定条件を満たす場合)

新規事業に必要な人件費も、一定の条件を満たす場合に補助対象です。
具体的には、新たに雇用した従業員の給与が対象となることがあります。

システム導入費用(CRM、不動産管理ソフト等)

顧客管理システム(CRM)や不動産管理ソフトの導入費用も補助対象です。
これにより、業務の効率化や顧客サービスの向上が期待できます。
参考:新事業進出補助金(公募要領)

応募資格と申請条件

応募資格と申請条件について説明します。主な申請条件は以下の通りです。

  • 新市場・新分野への事業進出
  • 反社会的勢力との関係がない
  • 中小企業基本法に定める中小企業
  • 事業計画書の提出と実現可能性がある
  • 給与支給総額の一定割合の増加(例:年平均+3%以上)

参考:新事業進出補助金(公募要領)

不動産業界での活用事例

空き家再生ビジネス

老朽化した空き家をリノベーションし、シェアハウスや民泊施設、地域密着型店舗として再活用する事例。
建物の改装費やPR費用に補助金が充当されます。

賃貸管理業務のDX化

従来アナログで行っていた入居者管理や契約業務をクラウド化し、遠隔対応が可能な体制へ移行。
CRMや不動産管理システム導入費用に補助金を活用しました。

不動産仲介サービスの多角化

法人向けオフィス仲介から、移住支援付き住宅サービスへの業種拡大。地方自治体との連携を含めた新事業として補助対象に該当します。

新事業進出補助金を申請するときのポイント

新事業進出補助金を申請する際のポイントを解説します。

事業計画書の作成

補助金の審査の要となるのが事業計画書です。
この文書には、新事業の意義や実現可能性を綿密に記載することが重要です。下記の点を明確に記述しましょう。
1.新事業の市場性と独自性を強調する
当該事業がどれだけ需要があり、既存の事業とどこが違うのかを明確にしましょう。
2.投資回収シミュレーション
投資した資金が何年で回収できるのかを解説し、結果的に行政側に従う有用性を示す必要があります。
3.実施スケジュール
開始の準備期間から事業開始、実施後の課題実行期間までを定量的に表します。
4.数値目標(KPI)と達成見込み
KPIは計画の実務性を表す証拠です。たとえば、成立件数、ウェブ回答数、客観数などを細かく設定します。
5.賃上げ要件への対応
補助金を受けるためには、給与支給総額が増える見込みを示す必要があります。
新規雇用の計画や従業員の復縁策などを組み込むと良いでしょう。
6.取得を相当づけるためのデータとKPI設定
取得が見込めることを証明するデータを採用し、数値目標を原理系統的に推定しましょう。
7.要注意点とリスク管理
補助金は後払いが一般的であり、指定条件を達成できない場合は返還義務が生じます。
特に賃上げ要件や事業成果が不達の場合は要警戒です。
新事業進出補助金 不動産

不動産業特有の留意事項(許認可、法規制)

不動産業における許認可や法規制は業界の特性上、重要です。
これらの規制は、業務の適正化や消費者保護を目的としており、遵守しなければならない要件があります。
不動産業を営むためには、特定の許認可が必要です。
特に、宅地建物取引業の免許は、土地や建物の売買賃貸借契約の代理や媒介を行う際に必須となります。
この免許は、国土交通大臣または都道府県知事から取得する必要があります。

宅地建物取引業免許の取得要件

宅地建物取引業免許を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

法人または個人の設立

不動産業を営むためには、法人または個人事業主としての登録が必要です。

事務所を設置する

不動産業を営むためには、実際に事務所を設置し、業務を行う必要があります。

専任の宅地建物取引士の配置

事務所には、専任の宅地建物取引士を配置する必要があります。
従業員数に応じて、一定数の宅建士を配置しなければなりません。

営業保証金の供託または保証協会への加入

営業保証金を供託するか、保証協会に加入する必要があります。
営業保証金は、顧客に対する保証を目的としたもので、金額は本店で1,000万円支店で500万円です。

不動産業における法規制

不動産業における法規制は、業務の透明性や公正性を確保するために設けられています。
その中に、宅地建物取引業法という法律が存在し、不動産業における基本的な法律として位置付けられます。
具体的には、以下のような規定があります。

広告規制

不動産の広告には、虚偽や誇大な表示を禁止する規制があります。
広告内容は、実際の物件の状態を正確に反映しなければなりません。

契約の解除権

消費者は、契約に関する重要な情報が提供されなかった場合、契約を解除する権利があります。

契約書の作成

不動産取引においては、契約書を作成し、双方が署名することが求められます。
契約書には、取引条件や責任の所在が明記されていなければなりません。

消費者契約法

消費者契約法は、消費者を保護するための法律であり、不動産業にも適用されます。
この法律により、消費者に対する不当な勧誘や契約の強要が禁止されています。

不当表示の禁止

不動産業者は、物件の特性や価格について誤解を招くような表示を行ってはなりません。

重要事項説明義務

不動産の取引においては、重要事項を説明する義務があるのです。
これには、物件の状態や法的な制約、取引条件などが含まれます。

不動産業特有の留意事項

不動産業には、特有の留意事項がいくつかあります。これらは、業務を円滑に進めるために重要です。

法令遵守

物件が法令に適合しているかどうかを確認し、違法建築や違反行為がないかを調査します。

クレーム対応

顧客からのクレームや問い合わせに対して、迅速かつ適切に対応しましょう。

契約の履行管理

契約が適切に履行されているかを管理し、問題が発生した場合には迅速に対応する必要があります。

用途地域の確認

物件が所在する地域の用途地域を確認し、建築や利用に関する制約を把握します。

物件の調査と確認

不動産業者は物件の調査を行い、法的な制約や権利関係を確認する必要があります。

情報提供を徹底する

顧客に対して、物件の情報や取引条件について正確かつ詳細に提供する必要があります。

契約書を明確にする

契約書には、取引条件や責任の所在を明確に記載し、双方が理解できる内容にする必要があります。

登記簿をチェックする

物件の所有権や抵当権の有無を確認するために、登記簿を調査しましょう。

顧客とのコミュニケーション

不動産業者は顧客とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築いてください。

おわりに

新事業進出補助金は、中小企業が新たな市場や高付加価値事業に進出する際に必要な設備投資を支援する制度です。
企業の成長を促進し、賃上げや生産性向上を目指すことを目的としています。
不動産業における補助金活用は、新たな事業展開や業務効率化に向けた資金的後押しとして大きな意義があるのです。
補助制度を戦略的に活用することで、不動産企業は時代の変化に対応したビジネスモデルを築きやすくなり、継続的な成長が期待できるでしょう。

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監修者からのワンポイントアドバイス

新事業進出補助金では建物費や構造物費などが対象経費となっており、不動産関連の新事業を始める際に対象となる経費項目が該当するかと思います。金額規模も大きく設定されており、新事業を始める事業者の方にとっては魅力的な補助金となっています。