新事業進出補助金についてわかりやすく解説します!

新事業に取り組む際に、その経費の一部を補助してもらえる新事業進出補助金。 申請する企業は今年もかなり多くなることが予想されています。 そもそも新事業進出補助金とは何か、ここでわかりやすく伝えていきます。
井上 雅也

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新事業進出補助金 わかりやすく

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

新事業進出補助金とは?

新事業進出補助金とは、事業再構築補助金の後継にあたる、新しい補助金制度です。

簡単にいうなら、小さな会社やお店が、新しいことにチャレンジすることを支援するための補助金制度です。

事業再構築補助金の後継として創設されたので、事業再構築補助金とほぼ同じような申請法や内容です。

しかし、今回の新事業進出補助金では、政府はなんと1,500億円という大規模な予算を決定しています。

これは非常に大きな予算なので、いかに政府が事業再構築補助金に力を入れているかがわかりますね。

もし今後お店や会社をもっと拡大したい事業者がいたら、ぜひ新事業進出補助金を検討してみてください。
参考:新事業進出補助金PDF

新事業進出補助金がもらえるのはどんなお店や会社?

新事業進出補助金 わかりやすく
新事業進出補助金は誰もが申請できるものではありません。申請できる事業者には制限があります。

新事業進出補助金は、新たなことに挑戦する小さな会社や個人を応援するための制度です。

そのため、すでに大きくなっている企業は利用できません。

たとえば、次のような状況にある店舗や会社は新事業進出補助金に申請できるでしょう。

  • 小さなパン屋さんが 新たにカフェを始める時
  • 小規模なアパレル店が「オンライン販売を開始する時

このように、中小規模の企業や個人が、新しいことに挑戦する際に新事業進出補助金に申請できます。

新事業進出補助金をもらうためのルールとは

新事業進出補助金を受け取るためには、審査を通過する必要があります。

審査してもらうには最低限申請が必要なのですが、その際に事業計画書の提出が求められるでしょう。

この事業計画書では、3〜5年の計画をしっかり盛り込む必要があるのです。

先を見通した計画をしっかり立ててアピールする必要があります。ただ申請すればいいわけではありません。

もちろん、ただ申請するだけでも可能ですが、事業計画書の質が悪ければ審査で簡単に落ちてしまうでしょう。

事業計画書には、たとえば次のような具体的なビジョンを盛り込みます。

  • 従業員の給料を上げる
  • 会社の売上を年4%以上上げる
  • 最低賃金より30円以上多く支払う

新事業進出補助金を提供している政府としては、国民の給料を増やして経済をより良くしたいと考えています。

ですから、新事業進出補助金を交付してもらうためには、会社を拡大する計画だけでなく従業員の給料を上げることも大事な条件になってくるのです。
参考:中小機構(新事業進出補助金)

新事業進出補助金は場合によっては返還義務がある?

新事業進出補助金は銀行から借りる融資ではないため、基本的に返還義務はありません。

しかし、例外として返還が求められる場合があるので注意しましょう。

その条件とは「従業員の給料を毎年増やす」というもの。

もし条件にそぐわず違反した場合、 新事業進出補助金の一部または全額を返金する必要が出てくるのです。

ここで新事業進出補助金の条件を見ていきましょう。

給料支給総額の年平均成長率が、事業を実施する地域の最低賃金の最近5年間の年平均成長率以上であること

または、

給料支給総額の年平均成長率+2.5% 以上増加させる
会社の最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上にする

これらを満たせなかった場合は、 新事業進出補助金の返還義務が生じます。

ただし、従業員の給料を上げられなかった会社が、必ず返還しなければならないわけではありません。

やむを得ず給料を上げられない会社もあるでしょう。

たとえば、何らかの要因で会社の売上が上がらず、会社全体が不振に陥り、営業利益が赤字になってしまった時は、従業員の給料を上げようにも上げられません。

また、天災地震などで、自分でも他の会社でも回避できないような事態が起こった場合も、返還義務は生じません。

設定された条件を満たさないと、返還しなければならない可能性も意識して、しっかり仕組みを理解しておきましょうね。

新事業進出補助金はどのくらいもらえる?

新事業進出補助金の補助率や上限額を解説していきます。

新事業進出補助金の上限金額はいくら?

新事業進出補助金においては、会社の従業員数によってもらえるお金の上限が変わってきます。そのため、一律でいくらまでと決まっていません。

具体的には、従業員が20人以下の会社は、最大で2,500万円が上限額となります。

次に、従業員が21人から50人の会社は、最大で4,000万円が上限です。

さらに、従業員が51人から100人の会社は、5,500万円まで受け取ることができるでしょう。

従業員が101人以上の大きな会社は、最大で7,000万円を受け取ることが可能です。

ですが、特別な条件を満たすと、さらに多くのお金をもらえることがあるのです。

この特別な条件を、大幅賃上げ特例といいます。

この特例が適用されれば、下記の金額を受け取れます。

  • 従業員数20人以下の会社→3,000万円
  • 従業員数101人以上の会社→9,000万円
  • 従業員数21人~50人の会社→5,000万円
  • 従業員数51人~100人の会社→7,000万円

新事業進出補助金の補助率と下限金額

新事業進出補助金 わかりやすく
補助率とは、実際にかかった費用のうち、どれだけの割合が補助金として支給されるかを示したものです。

新事業進出補助金の補助率は1/2と決まっています。たとえば、1,000万円の費用がかかった場合、500万円が補助金としてもらえます。

また、補助金には下限金額も設定されています。

どんなに小さな会社でも、750万円は最低でも受け取ることが可能です。

これは、会社が新しい事業に挑戦するための基本的な支援を確保するためです。

大幅賃上げ特例の条件

前述した通り、大幅賃上げ特例が適用されると上限額が上がるため、補助金を受けたい企業にとって有利になります。

この特例を受けるためには、事業が終わるときに2つの条件を満たす必要があります。

  • 会社の最低賃金を地域の最低賃金よりも50円以上高くする
  • 従業員に支払う給料の総額が、前年と比べて6%以上増えている

こうした2つの条件をクリアすると、特別に補助金の上限が引き上げられるでしょう。

新事業進出補助金を受けられる対象者や要件

新事業進出補助金に限った話ではないですが、補助金制度に申し込むにあたっては、要件があります。

中小企業庁は、この補助金の対象者を、企業の成長や拡大を目指して新しい事業に挑戦する中小企業と定義しています。よって、大企業は対象外です。

また、中小企業だとしても、新しい製品やサービスを新しいお客さんに提供することを目指していない会社は、対象外です。

新事業進出補助金を申請するには、4つの要件を満たす必要があります。

  • 付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する
  • 事業所内の最低賃金が地域の最低賃金よりも30円以上高い
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表する
  • 一人あたりの給与支給総額が、地域の最低賃金の過去5年間の平均成長率以上、または給与支給総額が年平均で2.5%以上増加する

これらの要件をすべて満たしつつ、3年~5年の事業計画を立てることが求められるのです。

もしこれらの要件のうち、給与支給総額や最低賃金の要件が達成できなかった場合、補助金の一部を返還しなければなりません。

ただし、そもそも付加価値が増えていない場合や、自然災害などの理由で事業がうまくいかなかった場合は、返還義務が免除されることもあります。

このように、中小企業新事業進出補助金は、小規模な会社や店が、新たな事業に挑戦するための大きな助けとなります。

補助金の上限金額や補助率、特例の条件、対象者や要件をしっかり理解して、申請を行ってくださいね。

新事業進出補助金の審査に通るためには

新事業進出補助金の採択率を上げるためのポイントを解説します。

  • 独自性を出す
  • 専門家に相談する
  • 公募要領を詳細に理解する
  • 自分の言葉でわかりやすく記載する

独自性を出す

どんなに素晴らしくて的確な計画であっても、ほかのライバル会社と似たりよったりでは差別化できません。

個性がなく、ほかの会社に埋もれてしまい、審査員の気を引くことはできないでしょう。

応援したいと強く思わせるような魅力的な計画が必要です。

そのためにも、自分の会社ならではの独自性を出すことが大事です。

自社の強みを明確にし、自社でなければできない新事業と考え、いかにその設備投資が必要か、その意義を伝えてください。

たとえば、過去の成功事例や独自の技術を挙げると良いです。

新事業進出補助金を活用することで、どんな成果が期待できるかを具体的に示しましょう。

明確なビジョンやストーリーを描けば、事務局に自社の意義や必要性を伝えることができます。

自社のことを最もよく知っているのは、事業主自身です。

自社の強みや実績を整理し、オリジナリティに富んだ事業計画を考えてみてください。

専門家に相談する

新事業進出補助金の申請の際には、中小企業診断士や税理士、公認会計士などの専門家の意見を取り入れましょう。

専門家に相談するかどうかは任意ですが、採択率を高めたいなら協力してもらったほうがよいです。

補助金制度に詳しい専門家であれば、最新情報や過去の成功事例を知っているため、有益なアドバイスを提供してくれます。

専門家に相談することで、魅力的な書類作成を支援してもらえるだけでなく、書類の不備や漏れを防ぐことが可能です。

補助金の申請には専門的な内容の記載が求められたり、多くの書類を準備したりする必要があります。

しかし、専門家に相談すればスムーズに進むでしょう。これにより、効率的に申請準備を進められるのです。

公募開始となってから円滑に申請できるように備えておけば、審査に有利になるでしょう。

公募要領を詳細に理解する

新事業進出補助金に限らず、どの補助金にも公募要領があります。申請前に必ずチェックしておきましょう。

公募要領には、申請に必要な情報や審査基準が記載されています。

自社の事業が要件を満たしているか、計画している事業投資が趣旨に合っているかも確認できます。

新事業進出補助金の趣旨をわかりやすくいうならば、新規事業への挑戦を目指す中小企業の設備投資を促進することです。

この目的や趣旨に沿った事業計画を作成すれば、採択率は高まるでしょう。

逆にいえば、この趣旨に当てはまらない計画を立ててしまうと、すぐ却下されてしまいます。

審査基準を確認し、それに応じた事業計画書を作成することも大切です。

自分の言葉でわかりやすく記載する

新事業進出補助金に申請する際は、申請理由や将来のビジョンを明記する必要があります。

例)
従業員の給料を上げたい
新事業進出補助金を使って会社の生産性を向上させたい

このような熱意を自分の言葉で伝えることがポイントです。

申請書類は文書で提出しますが、書面審査が終わったら後に口頭審査が実施されます。

口頭審査では、事業主自身が考えている新事業のビジョンや、どのように設備投資を行うかをわかりやすく説明しなければなりません。

この時、テンプレートを使って話したり他の申請書の内容をそのまま引用したりすると事務局に熱意が伝わらず、ポイントを稼げないでしょう。

なぜこの投資が必要なのか、新事業をどのように進めるのかをきちんと自分の頭で考えて、しっかりと表現することが大切です。

新事業進出促進事業を使う前に知っておきたいこと

新事業進出促進事業を申請するにあたり、事前に頭に入れておきたい注意点があります。

無理な投資はしない

補助金で資金をサポートしてくれるとはいえ、補助金がもらえるなら、とりあえず大きな買い物をしよう!と考えてしまうのは軽率です。

市場の流れやお客様のニーズに合わないものを買ってしまうと、せっかくの投資が無駄になる恐れがあります。

大切なのは、自分の事業にとって本当に必要なものをしっかり考えることです。

新事業進出促進事業がなくても成り立つ計画を立てたうえで、補助金があるなら使おう、という考え方をしましょう。

従業員の給料アップはルールを確認してから

新事業進出促進事業においては、従業員の給料を上げることが重要な条件の一つです。

給料アップを検討している企業は多いですが、新事業進出促進事業の申請をする時に合わせてお給料を上げると、より有利になるでしょう。

新事業進出促進事業の詳しいルールは、4月頃発表される予定されています。

今のうちに準備しておいて、発表された後にどうするか決めると良いでしょう。

新事業進出促進事業に申請する際は、どんな事業を始めるかどんなものにお金を使うのかなどを計画書に書く必要があります。

新事業進出促進事業の募集が始まってから締め切りまでは、たった3ヶ月くらいしかありません。

ですから、申請時に焦らなくて済むように、今のうちから計画を立てておきましょう。

また、補助金を申し込んでから実際にお金がもらえるまでには、半年くらいかかることを見込んでおきましょう。

ですから、今すぐに使いたいお金ではなく、あくまで半年後に必要になるお金として計画を考えるとスムーズに進められます。

監修者からのワンポイントアドバイス

新事業進出補助金は今年から新しく始まった補助金です。

金額の規模が大きいものの補助金の下限額は750万円となっています。

最低でも1500万円以上の投資が求められます。

新事業の内容を精査し、無理のない範囲で事業計画を作り上げることが大事になってきます。

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