省力化補助金とは?公募要領の詳細やメリット、注意事項など解説
省力化補助金とは、中小企業の生産性アップを目的とした制度です。
企業がIoTやロボットを導入する費用を補助し、人手不足解消や賃上げを促進します。本記事では、省力化補助金について解説していきます。
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この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
省力化補助金とは何か~省力化補助金の基本情報〜
ここでは省力化補助金の概要について解説します。
省力化補助金という種類を初めて聞いた方も多いでしょう。この機会に省力化補助金の基本知識を押さえましょう。
中小企業省力化投資補助金は、IoTやロボットなどの業務を効率化してくれる設備を導入し、人手不足解消や、生産性向上を目的として創設されました。
これから何か大きな設備を導入しようと考えている企業には、とてもおすすめです。
省力化投資補助金においては、たとえば、企業の人手不足を補うために必要な設備やIoT、ロボットの導入費用が補助対象となるでしょう。
日本商工会議所が2023年に発表した「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」によれば、対象となった中小企業のうち、65.6%が人手不足に困っています。
この数字から、日本の中小企業の大半が人材確保の難しさに直面していることがわかるでしょう。
人手不足は単なる経営上の課題に留まりません。企業が今後存続できるかどうかにも直接関わってきます。
ですから、省力化投資補助金を利用すれば、多くの企業にとって大きな助けとなるでしょう。
参考:中小企業省力化投資補助金
参考:日本商工会議所(中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査PDF)
省力化補助金を出す目的とは?
省力化補助金の目的には、たとえば下記のものがあります。
- 人手不足解消のため
- 生産性アップのため
- 省力化や自動化を実現にするための設備やロボットへの投資を支援をするため
さらに具体例を挙げます。
例1)
従業員が20名いる企業A社は、もっと生産性を上げたいと考えています。そのために思いついたのが、500万円のロボットを導入することです。
しかし、500万円という金額はA社にとって高額であり、予算オーバーです。ですが、その半額である250万円なら工面できそうだと考えます。
この場合、A社は申請することにより、その半額にあたる250万円を省力化補助金として受け取ることが可能です。
こうした省力化補助金の制度があることで、企業は資金面の負担が軽減され、設備投資に踏み切りやすくなるのです。
例2)
従業員数が21名以上の企業B社があります。B社はこれから大幅な賃上げをしようと考えています。
省力化補助金の申請をすることにより、最大1,500万円の省力化補助金が交付されることが期待できます。
補足として、省力化投資補助金には「大幅な賃上げ」とみなされる条件が2つ定められています。
- 給与支給総額を年率平均6%以上増加させた
- 事業所内最低賃金を年額45円以上引き上げた
これら2つの条件を満たしていることを申請時に明確にすれば、補助金の上限額を引き上げることが可能です。
ただし、賃上げに関わる省力化補助金を申請する際には、いくつかの注意点があります。
賃上げ計画は申請前に社員にも共有しておかなければならない
→そもそも従業員が賃上げの内容を認識していない場合、補助金を受け取る資格がなくなる恐れがあります。
計画に沿った賃上げをすること
→計画に沿った賃上げを実施できなかった場合、補助金の返還が求められる恐れがあります。
これらの点に十分注意しましょう。
例3)
製造業を営む中小企業C社は、自動化設備を導入しようとしています。
そして省力化補助金を利用し、これまで手作業で行っていた工程をロボットに置き換えることで、作業効率を50%向上させることに成功しました。
また、導入後の省人化により、従業員の負担が軽減され、離職率も低下。
このように、省力化投資補助金は経営改善に直結する効果をもたらします。
省力化補助金の対象となる事業者や業種は?

この補助金が使えるのは、次の条件を満たす中小の会社や小規模なお店です。
人手不足で困っている会社やお店
→企業やお店によっては、「人が足りなくてお仕事がうまく回らない」という問題を抱えているでしょう。
その証拠を提示し、「人手不足が問題です」と主張すれば、省力化補助金が得られる可能性があるのです。
もっと良い会社にする計画がある会社やお店
→たとえば、「1~3年後にはもっとたくさんのお金を生み出せるようにする!」という目標を持った企業は、省力化補助金の対象になる可能性が考えられます。
補助金をもらうために何が必要か?
省力化補助金を得るためには、単に条件を満たすだけではいけません。
事前に綿密な計画を立てて、それを言語化して書類で提出する必要があるのです。その計画には、次のことが書いてあると、申請が通りやすいでしょう。
もっと効率よく働けるようにするという目標
例:「ロボットを導入してより効率的に業務を終わらせたい!」
給料を上げる計画
例:「社員により満足してもらうために給料を少しずつ上げます!」
人員を減らさないこと
例:新しい機械やロボットを入れても、急に人をやめさせたりしないこと。
従業員の給料が最低賃金を超えていること
「全社員が生活できるくらい十分な給料をきちんと支払ってます!」
これらが伝わるように明記しておくことが大切です。
問題を具体的に説明する
たとえば、「人手不足で○○な問題が生じているからロボットを導入したいです」など、具体的な問題や、数字を使って説明すると説得力が増します。
まとめると、省力化補助金は、会社やお店が「もっと良くなりたい!」「業務を効率的にしたい!」と思っているときに、その手助けをしてくれる制度といえるでしょう。
人手不足で困っている会社やお店が利用するのにおすすめです。
しっかりした計画をアピールすれば、国も補助金を出して応援したいと考えてくれるでしょう。
補助金を受け取れば、少ない自己負担で新しい機械や仕組みを導入できます。
公募要領を確認しよう
省力化補助金を申請したければ、公募要領を必ず確認する必要があります。
この公募要領についてですが、以下の公式ウェブサイトで確認できます。
中小企業省力化投資補助金 公式サイト
→公募要領や関連資料が掲載されています。
経済産業省 公式サイト
→省力化投資補助金に関する最新情報や公募要領が公開されています。
中小企業向けの公募要領
日本国内で法人登記されている中小企業や個人事業主は、省力化補助金を申請するにあたり、特定の要件を満たさなければなりません。
申請時点での資本金や社員数が基準以上になってしまうと、補助対象外となる恐れがあるので気を付けましょう。
たとえば、資本金や人員を減らした後に再度増やすなどの行為がみられると、申請が無効になります。
こうした事態を避けるためにも、対象要件をきちんと確認しておいてください。
対象企業の要件
1.中小企業
資本金や常勤の社員数が以下の基準を満たしている必要があります。
卸売業: 資本金1億円以下、従業員数300人以下
小売業: 資本金5000万円以下、従業員数100人以下
サービス業: 資本金5000万円以下、従業員数100人以下
製造業、建設業、運輸業: 資本金3億円以下、従業員数300人以下
2.組合・法人関連の中小企業
特定の組合や法人で、構成員の大半は、中小企業基準を満たしている必要があります。
社員数300人以下で、収益事業を行っていること
特定非営利活動法人(NPO法人)や社会福祉法人
【注意事項】
申請時に資本金や従業員数の変更があると、補助金の交付が取り消される恐れがあります。
申請者が大企業とみなされてしまうと対象外となってしまうのです。
省力化補助金はあくまで中小規模の企業向けということを意識しておきましょうね。
参考:中小企業省力化投資補助事業(公募要領PDF)
「一般型」という新たな枠組みが追加!
省力化投資補助金とはそもそも令和6年にスタートした制度で、前述した通り、中小企業や小規模事業者の生産性向上や賃上げが目的です。
省力化投資補助金はこれまで「カタログ注文型」で一本化されていましたが、これに加え、令和7年から「一般型」という新たな枠が追加されました。
「一般型」とは従来の「カタログ注文型」と異なり、より柔軟な申請が可能です。
カタログ注文型は、カタログから選ぶだけのいわば限定的な手続きといえるでしょう。
これに対し、一般型では自社に有利な機器や設備がより自由に選べ、申請内容に応じた支援を受けられるのです。
より多様なニーズに対応してもらえるのが大きな魅力です。
一般型の予算規模は3,000億円と非常に大きく、企業の効率化や付加価値向上を後押しすると期待できるでしょう。
申請受付と早めの準備がおすすめ
「一般型」の申請受付は、令和7年3月~4月頃が予定されていますが、申請するなら余裕を持って事前準備することをおすすめします。
一般型の枠はオーダーメイドの投資案件が対象で、公募要領が公表されてから準備を始めると間に合わない可能性が高いです。
そのため、一般型で申請するなら今から理解を深め、必要な準備を進めておきましょう。
どんな企業が省力化補助金の対象になる?
対象となる企業は、次の2つのポイントを満たしている企業です。
事業規模が中小
中小企業であり、業種ごとに定められた「資本金」と「常勤従業員数」の基準を満たしていること。
【応募要件2点】
- 付加価値額要件:生産性を高めるための具体策を持っている
- 賃上げ要件:従業員の給与を増やす取り組みを計画している
より詳しい要件は公募要領で確認できるので、ぜひチェックしてみてください。
省力化補助金の概要
補助額
従業員数によって補助額の上限が異なってきます。
101人以上の場合:最大1億円
5人以下の場合:最大1,000万円
※賃上げ目標を達成すると、より高い上限が適用されることがあります。
補助率
中小企業:補助対象経費の1/2
小規模事業者:補助対象経費の2/3
※補助額が1,500万円を超える部分については一律1/3です。
対象経費の例としては、主に機械装置費やシステム構築(ソフトウェア費)です。
中古機械やリースが対象となるかどうかは、公募開始時に詳細が公表されるので、漏れなくチェックしておきましょう。
今後、国会での審議によって内容が変更される可能性があるため、最新情報を随時確認してください。
まとめると、令和7年から新設される「一般型」は、中小企業にとって大きなチャンスとなる枠です。ただし、申請には事前準備が不可欠といえます。
省力化補助金を上手に活用し、生産性向上や賃上げを目指す企業は、早めに行動を始めましょうね。
参考:中小企業省力化投資補助金とは(補助対象事業者)
省力化補助金の申請手順とは?
補助金の申請には、以下の5つのステップがあります。各ステップをしっかり理解し、必要な準備を進めていきましょう。
1.省力化補助金について理解する
まずは公募要領を確認し、補助金制度の詳細を理解しておきましょう。
公募要領には次の内容が含まれています。
- 補助金制度の概要
- 申請スケジュール
- 補助対象となる経費の種類
- 補助対象となる事業者に必要な条件
省力化補助金の性質が、自社の計画や要件にマッチしているかを最初に確認しておきましょう。
2. gBizIDを取得する
補助金申請はすべてオンラインで行われます。紙での郵送は行っていません。電子申請にあたっては、gBizIDプライムアカウントが必須です。
まだお持ちでなければまずは取得手続きをしましょう。下記の要領で取得できます。
- gBizIDの公式サイトにアクセスする
- 必要事項を入力する
- 申請する
- 申請内容が承認されるまで待機(処理には時間がかかる場合がある)
3.製品カタログから製品を選ぶ
製品カタログを参照し、補助金の対象となる製品を選んでください。
選ぶ時は対象製品の詳細や特徴を比較し、ニーズに合った製品を検討しましょう。
ご不明点があれば問い合わせることも可能です。製品選定が完了したら、次のステップに進みます。
4.販売事業者を選ぶ
製品ごとに指定されている「販売事業者一覧」から、ご希望の販売事業者を選びます。
販売事業者に記載されているサポート窓口の電話番号やメールアドレスを通じて連絡し、具体的に相談しましょう。
対応内容やサポート体制を確認することで、信頼できる業者かどうかがわかってきます。信頼できる業者を選びましょう。
5.販売事業者と共同で申請する
補助金申請は、選んだ販売事業者と共同で行うことがポイントです。事業者だけで申請するのではありません。
申請するにあたり、製品の販売事業者と一緒に事業計画を作成します。
中小企業と販売事業者は、「共同事業実施者」として申請受付システムで申請を進めることになります。
- 販売事業者から招待を受け取る。
- 専用フォームを通じて申請する。
【注意事項・ポイント】
- 提出書類や要件に不備がないか最終チェックを忘れずに
- すべてのステップを計画的に進め、締切に間に合うよう準備する
- 必要書類を確認し、全部揃えてから申請手続きを進める(申請する時は専用フォームを使います)
参考:中小企業省力化投資補助金(申請の流れ)
省力化補助金を活用するメリット
省力化補助金を活用することにはメリットがあるので、ぜひ活用したい制度です。
どんなメリットが考えられるか、具体的に解説していきます。
- 事業計画が明確になる
- 従業員の負担が軽減する
- 賃上げできる可能性が広がる
- 生産性向上と人手不足の解消
- 販売事業者からサポートを受けられる
事業計画が明確になる
補助金を利用するには事業計画書の作成が必須ですが、これにより事業の方向性が明確になります。
これまでの無駄な工程や非効率なプロセスが可視化され、改善策がわかりやすくなるでしょう。
経営ビジョンも鮮明になり、今後の経営戦略にも役立ちます。
従業員の負担が軽減する
省力化補助金によって、省力化機器で業務遂行が可能です。これにより、従業員の労働負担が軽減されるでしょう。
特に中小企業では、業務過多による長時間労働が課題の一つであり、効率的な労働時間管理が求められています。省力化補助金で従業員の業務量を減らせるでしょう。
賃上げできる可能性が広がる
生産性の向上と省力化が進めば事業が拡大し、将来的に持続的な賃上げができると期待できます。
賃上げは社員のモチベーションアップにもつながるので、人材の確保や維持にも役立つでしょう。
生産性向上と人手不足の解消
省力化機器を導入することで、生産性が向上し、人手不足の解消が図れるでしょう。
省力化投資補助金を利用して、今まで手作業で行っていた業務をロボットやシステムにできれば、社員はより付加価値の高い業務に集中できるようになります。
企業全体の業務の効率化が進むでしょう。
販売事業者からサポートを受けられる
補助金申請時には、導入する製品の販売事業者から手続きや活用方法についてのサポートを受けられます。
サポートがあれば、導入効果を最大限に引き出せるでしょう。
省力化投資補助金申請時の注意点
省力化投資補助金の申請には、いくつかの注意点があるので、ここで押さえておきましょう。
- 申請期限を守ること
- 申請条件や必要書類を正確に把握する
- 必要に応じて専門家のサポートを受ける
申請期限を守ること
基本中の基本ですが、日々忙しいとうっかり過ぎていたなんてこともあります。
期限を過ぎた申請は一切受け付けられないため、余裕を持って準備を進めてください。
申請条件や必要書類を正確に把握する
事前に必ず公募要領を詳細に確認しておいてください。公募要領を読まずに申請するのは危険です。
特に事業計画書は補助金審査で非常に注目されるため、具体的かつ現実的な計画を立てましょう。
必要に応じて専門家のサポートを受ける
補助金申請の経験が豊富な専門家に相談することで、申請内容の精度が高まります。
省力化補助金について頼れる専門家には、以下のような方々がいます。
税理士
税理士も、企業や個人事業主のために補助金や助成金の申請をサポートすることがあります。
特に、税務関連の補助金や助成金に強いです。
行政書士
行政書士は法的な手続きを専門としており、補助金の申請手続きを代行してくれます。
特に書類作成や提出に関して、豊富な知識と経験を持っています。
中小企業診断士
中小企業診断士は経営コンサルタントとして、企業の経営課題を解決するために補助金申請をサポートする役割をになっています。
補助金や助成金の制度について詳しく教えてくれるだけでなく、、申請書の作成から申請後のフォローもしてくれます。
補助金コンサルタント
補助金に特化したコンサルタントは、補助金申請に特化した支援を行っています。
企業向けに補助金の選び方を教えてくれたり、申請書作成、申請後のフォローまでしてくれたりと、幅広くサポートしてくれます。
これらの専門家は豊富な経験を有しており、補助金の選定や申請書作成、提出の手続きまでサポートしてくれます。
特に補助金を最大限に活用したい企業や個人事業主におすすめです。
補助金制度は複雑な部分も多いため、プロに頼ることが成功への近道となるでしょう。
地方自治体の補助金担当者
各地方自治体にいる補助金担当者は、地域ごとに特有の補助金制度について詳しく、申請のサポートや助言をしてくれます。
特定の地域の補助金に関しては、最も専門的な知識を持っているといえるでしょう。

おわりに
省力化補助金は、日本の中小企業を支援する制度です。人手不足の解消や生産性向上を目的として誕生しました。
IoTやロボットなど、省力化製品導入にかかる費用の一部を補助し、企業を支援しています。
企業は省力化補助金を活用することにより、付加価値額や賃上げを促進できます。業務効率化や人手不足の解消が進み、より大きく成長できるでしょう。
補助金が出れば、少ない自己負担で新たな技術や設備が導入しやすくなり、競争力も強化されます。全体的に持続可能な経営が期待できるのです。
補助金申請には公募期間が限られているため、早期に情報収集と準備を進めましょう。計画的に申請を進めることで、補助金を最大限に活用してくださいね。