登記簿謄本とは?不動産や会社設立などの場面で用いる書類を解説
登記簿謄本は、不動産や法人の証明書といった種類によってさまざまな役割を持ちます。
登記簿謄本は取引の際に、用いられることが多いので、準備しておかないと困る場面が多いのです。
今回は登記簿謄本について詳しく解説します。
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この記事を監修した専門家
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
登記簿謄本とは?
登記簿謄本とは、法務局に保管されている登記記録の写しのことを指し、不動産や法人に関する情報を確認するための公式な文書です。
現在では、登記簿謄本という用語は、正式には全部事項証明書と呼ばれるようになっています。
ただし、一般的には従来の「登記簿謄本」という呼び方が広く浸透しているため、この記事でもこの表現を使用します。
登記簿謄本の目的は、権利関係や法人の概要など、対象の詳細情報を明らかにし、取引や手続きを円滑に進めることにあります。
不動産の売買においては土地や建物の所有者の確認、法人登記では会社の基本情報の確認など、法律や契約の手続きに欠かせない書類です。
たとえば、不動産取引を行う場合、売主が本当にその土地や建物の所有者であることを証明する必要があります。
このとき登記簿謄本を提示することで、正確な所有者情報や権利状態を確認することが可能です。
また、会社設立や融資申請の際には、法人登記簿謄本を用いることで会社の設立時期や代表者情報を証明することができます。
登記簿謄本は、手続きの正確性と信頼性を担保する重要な文書です。その取得には、法務局やオンライン申請などを通じて正規の手続きが必要です。
このように、登記簿謄本は個人や法人が法律的な取引を安全かつ確実に進めるために欠かせない存在といえます。
登記簿謄本の種類
登記簿謄本には、対象や用途に応じてさまざまな種類があります。
主に不動産に関するものと法人に関するものの二つに大別され、それぞれ異なる情報を含むため、用途に応じた適切な選択が重要です。
これらの種類を理解することで、必要な手続きにおいて効率的に活用することができます。
不動産に関する登記簿謄本は、不動産登記簿に記録された内容を基に作成されます。
この書類には、土地や建物の所在地、面積、所有者の名前、抵当権や賃借権が記載されています。
不動産取引の際には、売買の対象が正確であることや、未処理の権利関係がないことを確認するために用いられます。
一方、法人に関する登記簿謄本は、法人登記簿に記録された情報を基に作成されます。
この書類では、会社の商号(名称)、所在地、設立年月日、代表者名、資本金額、事業目的などが記載されており、法人の基本情報を確認する際に利用されます。
会社の設立手続きや契約の際に必要となるほか、銀行口座の開設や融資の審査にも使用されることが一般的です。
また、これらの書類は、必要に応じて部分的な情報のみを含む一部事項証明書として取得することも可能です。
具体的には、所有者情報だけを確認したい場合や、特定の契約で最低限の情報だけを提供したい場合は、この形式が役立ちます。
これらの種類を把握しておくことで、目的に合った登記簿謄本を選び、手続きのスムーズな進行を実現することができます。
登記簿謄本は対象や内容が多岐にわたるため、取得時にはその種類を正確に把握し、必要な情報が記載されていることを確認することが大切です。
※賃借権:賃料を支払って他人の所有物を使用・収益する権利
※抵当権:借金の返済が滞った場合に、担保として設定された不動産を売却して優先的に債権を回収できる権利
登記簿謄本の見方
不動産登記簿謄本と法人登記簿謄本で形式や内容は異なりますが、基本的な見方のポイントは共通しています。
不動産登記簿謄本の見方
不動産登記簿謄本は、主に表題部と権利部(甲区・乙区)の2つで構成されています。
表題部には、不動産の物理的な情報が記載されています。
たとえば、土地であれば所在地や地目、地積(面積)が、建物であれば構造や床面積、所在する階数などが含まれます。
この情報をもとに、不動産の基本的な特定を行うことができます。
権利部は、不動産の所有権や担保権などの権利関係が記載される部分です。
甲区には所有権に関する情報が記載されており、所有者の名前や所有権が移転した日付などを確認できます。
一方、乙区には抵当権や賃借権など、所有権以外の権利が記録されています。
このセクションを詳細に確認することで、不動産に未解決の負債や権利関係がないかを把握することができます。
法人登記簿謄本の見方
法人登記簿謄本は、会社の概要や現在の状態を証明するもので、商号、本店所在地、設立年月日などの基本情報が記載されています。
さらに、代表取締役や取締役会の構成、資本金、事業目的など、法人の内部情報も含まれています。
特に重要なポイントは代表者の変更履歴や資本金の増減履歴です。これらの情報を確認することで、会社の安定性や経営状況を把握する手がかりとなります。
また、事業目的を確認することで、その法人が特定の契約や取引を行う権利を有しているかどうかも判断できます。
注意点として、登記簿謄本の内容は常に最新であるとは限りません。
たとえば、所有権移転の手続き中である場合や、法人情報が最新の登記に反映されていない場合もあります。
そのため、取得した書類の日付を確認し、必要に応じて最新情報を再度取得することが重要です。
このように、登記簿謄本は適切な見方を知っていることで、その情報を最大限に活用できる重要な書類です。
読み方を理解することが取引の信頼性向上に直結します。
登記簿謄本の申請方法
登記簿謄本を取得する際の、それぞれの申請方法について具体的に解説します。
郵送での申請
法務局が遠方にある場合や、直接出向けない場合には郵送申請が便利です。
この方法では、申請書と手数料分の収入印紙、返信用封筒(切手を貼付)を同封して、管轄の法務局に郵送します。
郵送申請の際には、返信用封筒に受取人の住所と氏名を正確に記載することが重要です。
また、手数料は不足しないよう確認し、必要に応じて電話で法務局に問い合わせておくと安心です。
郵送による申請は、通常数日から一週間程度の時間を要します。
参考:法務局(郵送で登記事項証明書の交付を請求するには、どうしたらよいのですか?)PDF
オンライン申請
現在では、インターネットを利用したオンライン申請も広く利用されています。
この方法は、時間や場所を問わずに手続きができるため、効率的で便利です。
オンライン申請には、法務省が提供する登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)を利用します。
まず、登記ねっとのウェブサイトにアクセスし、利用者登録を行います。
その後、対象となる不動産や法人の情報を入力し、手数料を電子納付します。
申請が完了すると、郵送または電子データとして登記簿謄本を受け取ることができます。
ただし、電子申請の場合は電子証明書などの準備が必要になる場合があるため、事前に確認が必要です。
選ぶ際のポイントとしては、申請者の状況や優先順位によります。
たとえば、迅速に取得したい場合は法務局の窓口申請が適しており、自宅で手続きを完結させたい場合にはオンライン申請が便利です。
一方、費用や時間を最小限に抑えたい場合には郵送申請も選択肢となります。
申請方法を理解し、自分に合った手段を選ぶことで、効率よく登記簿謄本を取得できます。
いずれの方法でも、申請書の記載ミスや手数料の不足がないよう注意することが大切です。
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参考:登記ねっと
法務局での窓口申請
最も一般的な方法は、法務局の窓口で申請を行う方法です。
この方法では、直接職員に相談しながら手続きができるため、初めての方でも安心して利用できます。
窓口申請の手順は以下の通りです。まず、申請書を法務局で受け取るか、事前にダウンロードして記入します。
次に、申請書に対象となる不動産または法人の情報を記載し、必要な手数料を収入印紙で支払います。
その後、法務局の窓口に提出し、登記簿謄本を受け取ります。
申請当日に書類を受け取れる場合もありますが、混雑状況によっては後日の受け取りになることもあります。
参考:法務局(各種証明書請求手続)
登記簿謄本の取得にかかる費用
- 郵送申請の費用
- 法務局での取得費用
- オンライン申請の費用
郵送申請の費用
郵送で申請する場合は、登記簿謄本1通あたりの手数料は600円です。
ただし、これに加えて返信用封筒の準備や切手代が必要となります。
返信用封筒の切手代は、書類の枚数や重量によって異なりますが、通常は84円から140円程度です。
郵送申請の場合、法務局へ送る封筒にも切手を貼り付ける必要があります。また、支払いは収入印紙を使用するため、事前に郵便局などで購入しておくことが必要です。
法務局での取得費用
法務局の窓口で登記簿謄本を取得する場合も、手数料は通常1通600円です。
この手数料は、収入印紙で支払うことになります。
法務局の窓口では、申請書の記載内容に不備があった場合でもその場で修正できるため、初心者にも安心な方法です。
窓口申請は即日交付が可能な場合もありますが、混雑状況によっては後日受け取りとなることがあるため、その点も考慮して計画を立てると良いでしょう。
オンライン申請の費用
オンライン申請を利用する場合、手数料は窓口や郵送よりも安価で、1通500円となっています。
これは、申請が電子化されている分、事務手続きのコストが抑えられているためです。
オンライン申請では、手数料の支払いに電子納付が利用されます。
クレジットカードやネットバンキングを活用して簡単に決済できるため、時間や手間を節約したい場合に便利です。
ただし、申請のために電子証明書や対応する機器が必要になる場合があるため、事前に準備を確認しておきましょう。
申請方法にかかわらず、誤った情報を記載した場合や、再申請が必要な場合には追加の費用が発生することがあります。
特に、不動産や法人の登記情報が多くのページにわたる場合、印刷される書類の枚数によっては料金が増えることがあるので注意しましょう。
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登記簿謄本の相談場所
ここでは登記簿謄本に関する相談をしたい場合、どこに相談するのが良いかをご紹介します。
- 法務局
- 司法書士事務所
- 行政書士事務所
- 専門窓口や相談会
- インターネット上の情報源
法務局
登記簿謄本に関する最も信頼性の高い相談場所は、法務局です。
法務局では、登記簿謄本の取得手続きや記載内容に関する質問に直接対応してくれます。
特に、不動産登記簿謄本や法人登記簿謄本に関する具体的な情報を確認したい場合、法務局が最適な相談先となります。
法務局には窓口相談と電話相談の両方があり、初心者にもわかりやすく説明してもらえることが特徴です。
登記内容の修正や変更が必要な場合でも、具体的な手順を教えてもらえるため、初めて手続きを行う方には心強い存在です。
司法書士事務所
登記に関する専門的なアドバイスを受けたい場合は、司法書士に相談するのが有効です。
司法書士は登記手続きの専門家であり、複雑な手続きや書類の作成を代行してくれます。
特に、不動産取引や法人設立に伴う登記手続きが関係する場合には、具体的なサポートを受けられるため安心です。
また、登記簿謄本の記載内容についての解釈や、法的な問題点の相談にも応じてもらえるため、専門的な知識が必要な場面で頼りになります。
行政書士事務所
行政書士も登記関連の相談を受け付ける専門家の一つです。
司法書士と似ていますが、主に書類の作成や手続きのサポートに特化している点が特徴です。
たとえば、法人設立に関連した手続きや、登記簿謄本を利用する場面での書類作成を依頼することが可能です。
ただし、行政書士は登記手続きそのものを代行することはできないため、必要に応じて司法書士と連携して手続きを進めることになります。
専門窓口や相談会
各自治体や商工会議所では、登記や法務に関する無料の相談会を開催している場合があります。
これらの相談会では、専門家や法務局職員が相談に応じてくれるため、気軽に利用することができます。
特に、簡単な質問や初歩的な内容について相談したい場合に便利です。
インターネット上の情報源
法務省の公式ウェブサイトや、登記ねっとも、登記簿謄本に関する情報を調べる際に役立ちます。
これらのサイトでは、手続き方法や必要な書類について詳しく解説されており、簡単な疑問は自己解決できる場合もあります。
ただし、内容が複雑な場合や、具体的なケースについて相談したい場合には、対面での相談が推奨されます。
【まとめ】登記簿謄本の基礎知識を知って取引における不安を無くそう!
今回は登記簿謄本の基本的な知識について解説しました。登記簿謄本は、不動産や会社において、極めて重要な書類です。
登記簿謄本の基本的な知識を把握しておかないと、予定していた取引が先送りとなってしまったり、契約上のトラブルに巻き込まれる可能性があります。
そうならないためにも、今回のコラムを参考に、不動産や法人に関する登記簿謄本の基礎知識を身につけて、事前にトラブルから身を守りましょう。
取引や契約を円滑に進められるようにしてください。