法人の登記簿謄本とは?初めて法人登記簿を取得する方に向けて解説
法人の登記簿謄本(登記事項証明書)とは、会社の身分証明書の役割を持つ公的な書類です。
しかし、登記簿謄本とひとくちに言っても、種類が多くてそれぞれの違いが分かりづらいですよね。
今回は法人の登記簿謄本について解説します。
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この記事を監修した専門家
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
法人の登記簿謄本(登記事項証明書)とは?
法人の登記簿謄本は、正式には登記事項証明書と呼ばれる文書で、法人の基本的な情報を証明するために法務局が発行する公的な書類です。
会社の設立や運営において、その法人が法的に存在することを証明し、取引相手や関係機関に安心感を与える役割を果たします。
登記簿謄本には、法人名、所在地、設立年月日、資本金、役員情報、定款に関する記載など、法人の基本情報が詳細に記載されているのです。
この文書は、会社設立後に法人として活動するうえで必要不可欠であり、銀行口座の開設、不動産の契約、許認可の取得など、さまざまな手続きで提出が求められます。
法人の登記簿謄本は、その時点での法人の状況を正確に反映する書類であるため、登記内容が変更された場合は、新しい情報を反映したものを取得する必要があります。
たとえば、会社の本店所在地や役員構成が変更された場合には、速やかに登記を変更し、最新の登記簿謄本を取得しましょう。
これは、会社の信用を維持したり、取引の透明性を確保したりするためにも重要です。
法人の登記簿謄本は、法人の公的な名刺とも言えます。
そのため、経営者や関係者は、必要に応じて取得方法や活用場面について十分な理解が必要です。
法人の登記簿謄本はどんな場面で必要?
法人の登記簿謄本は、法人がさまざまな手続きや取引を行う際に必要とされる重要な書類です。
具体的には、法人の基本情報を第三者に証明する役割を果たし、信頼性や透明性を確保するために使用されます。
まず、金融機関での手続きにおいて登記簿謄本の提出が求められるのです。
法人名義で銀行口座を開設する際や、融資の申請を行う際には、その法人が適切に設立され、活動していることを証明しましょう。
また、法人の代表者や役員の変更があった場合、銀行への変更届にも最新の登記簿謄本が必要です。
次に、行政機関や自治体に対しても登記簿謄本の提出を求められる場合があります。
具体的には、建設業や飲食業など特定の許認可が必要な業種で申請を行う際、法人の情報を確認するために必要です。
また、補助金や助成金を申請する際にも、法人の資格を証明する書類として活用されます。
さらに、法人間の取引や契約時にも登記簿謄本が利用されます。
たとえば、新規取引を開始する際、取引先に対して法人の情報を開示し、信頼関係を構築するために提出することがあります。
不動産の購入や賃貸契約など、契約相手が法人の場合、登記簿謄本でその法人が契約の主体として適切であることを確認するのが一般的です。
このように、法人の登記簿謄本は、金融機関、行政機関、取引先などとの重要な手続きで必要な書類です。
適切なタイミングで取得し、最新の情報を維持することが、法人の信用を保つ上で大切なポイントとなります。
登記簿謄本の4つの種類
法人に関連する登記簿謄本の種類を4つ解説します。
- 現在事項証明書
- 閉鎖事項証明書
- 代表者事項証明書
- 履歴事項全部証明書
現在事項証明書
現在事項証明書は、法人の登記内容のうち、現在効力がある事項のみを記載した証明書です。
これは、法人が現在どのような状態にあるかを証明するために使用されます。
会社名や所在地、資本金、役員構成などの最新情報が記載されており、法人が現在どのような活動状況にあるのかを第三者に明示する役割を果たします。
この証明書は、銀行口座の開設や融資の申請、法人契約などの場面で広く使用されます。
必要な情報だけが記載されるため、相手に不要な過去の情報を開示する必要がないことが特徴です。
また、行政機関に許認可を申請する際にも、この書類が求められることが多く、法人活動における基本的な書類といえます。
一方で、過去の変更履歴や取り消された情報は記載されていないため、それらの情報が必要な場合には別の種類の証明書を取得する必要があります。
現在事項証明書は、法人の「今」を証明するために特化した書類であるといえます。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書は、過去に登記されていた内容のうち、すでに効力を失った事項が記載されている証明書です。
具体的には、法人の名称変更や所在地の移転、役員の交代、増資や減資など、登記情報に過去の変更履歴が残されている場合に、その内容を確認するための書類です。
この証明書は、主に過去の登記内容を証明する必要がある場面で使用されます。
たとえば、法的なトラブルにおいて過去の情報を確認する必要が生じた場合や、長期間事業を継続している法人が過去のデータを提示する必要がある場合などです。
特に、過去に閉鎖された支店や旧所在地の登記内容を確認する際に重要となります。
閉鎖事項証明書は、現在では効力のない情報を記載しているため、通常の取引や契約手続きにはあまり使用されません。
ただし、過去の事実確認が必要な特定の場面では必要な書類です。
過去の情報を正確に把握したい場合には、この証明書を取得することで対応できます。
代表者事項証明書
代表者事項証明書は、法人の代表者に関する情報のみを記載した証明書です。
具体的には、法人名、代表者の氏名、役職、住所などが記載されており、法人の代表者が誰であるかを明確にするために使用されます。
この証明書は、代表者に関連する事項を限定的に証明する書類であり、第三者に余計な情報を開示する必要がない場面で活用されます。
この書類は、特に代表者個人の身元や法人との関係性を証明する際に役立ちます。
たとえば、代表者名義で契約を行う場合や、行政機関への特定の申請手続きで必要になる場合があります。
また、企業間取引において、相手方が代表者情報の確認を求める場合にも、この証明書が使用されることがあります。
一方で、代表者に関する情報以外の法人の詳細情報(資本金や所在地など)は記載されていません。
これらの情報を証明する場合には他の証明書を取得する必要があります。
代表者事項証明書は、必要な情報をピンポイントで提供するために特化した書類です。
履歴事項全部証明書
履歴事項全部証明書は、法人の設立から現在に至るまでのすべての登記内容が記載された証明書です。
これには、法人の名称や所在地、設立年月日、資本金、役員の変更履歴など、過去に登記されたすべての情報が網羅されています。
そのため、法人の歴史を一括して確認したい場合に非常に便利な書類です。
この証明書は、特に法人の過去の変更履歴が重要となる場面で使用されます。
たとえば、長期間にわたる取引の信用調査や、法的な手続きにおける証拠提出のために利用されることがあります。
また、事業承継やM&Aの際に、法人の全体像を正確に把握する必要がある場合にも、この書類が求められることがあります。
ただし、この証明書には過去から現在に至るすべての情報が記載されているため、情報量が多くなる傾向があります。
そのため、特定の情報だけを確認したい場合には、現在事項証明書や代表者事項証明書など、他の種類の書類のほうが適している場合もあります。
履歴事項全部証明書は、法人の全貌を包括的に把握するために最適な書類といえます。
法人の登記簿謄本の取得方法
法人の登記簿謄本を取得する方法を3つご紹介します。
- 郵送で申請する場合
- オンラインで申請する場合
- 法務局の窓口で申請する場合
郵送で申請する場合
法人の登記簿謄本を郵送で取得する場合、必要な書類を準備し、法務局に郵送で申請を行います。
申請には、登記事項証明書交付申請書を記入する必要があります。
この申請書には、取得したい法人の情報(法人番号や所在地、取得したい証明書の種類など)を正確に記載します。
郵送申請では、申請書とともに交付手数料分の収入印紙を貼付したものを同封し、返信用封筒を忘れずに用意します。
返信用封筒には、申請者の住所と名前を記載し、必要な郵便料金の切手を貼ります。これらを揃えたうえで、管轄の法務局へ送付します。
郵送申請の利点は、窓口まで行く時間がない場合や、オンライン申請が難しい場合に便利な点です。
ただし、郵送には一定の日数がかかるため、急いで証明書が必要な場合には適していません。
また、不備があると申請が受理されず、再度手続きが必要になる場合があるため、書類の記載内容や添付書類に注意が必要です。
オンラインで申請する場合
オンラインでの申請は、法務局が提供している登記情報提供サービスまたは登記・供託オンライン申請システムを利用して行います。
この方法では、インターネットを通じて手続きが完結するため、最も効率的で便利です。
まず、利用者登録を行い、専用の申請フォームに必要事項を入力します。
入力項目には、法人の名称、法人番号、所在地、取得したい証明書の種類などが含まれます。
その後、電子納付やクレジットカードによる手数料の支払いを行うことで、申請が完了します。
オンライン申請の大きな利点は、自宅やオフィスから簡単に手続きができる点です。
また、申請から数日以内に証明書が届くため、郵送に比べて短期間で入手できます。
一方で、初回利用時にはアカウント登録やシステムの操作に慣れる必要がある点がデメリットとして挙げられます。
オンラインでの手続きに慣れている方には最適な方法です。
法務局の窓口で申請する場合
法務局の窓口で申請する方法は、最も直接的な取得方法です。
この場合、法務局に訪問し、登記事項証明書交付申請書を提出することで手続きを行います。
申請書の書き方が不明な場合でも、窓口の職員に相談しながら進められるため、初めて申請する方にとって安心感があります。
窓口申請では、申請書の提出と同時に交付手数料を支払います。
この際、手数料は現金ではなく、収入印紙で納付する必要がありますので、事前に準備しておくことが重要です。
証明書は、申請当日に受け取れる場合が多く、急ぎの場合に適しています。
窓口申請のメリットは、疑問点をその場で解消できることや、不備なく手続きを完了できる点です。
一方で、法務局の営業時間内に訪問する必要があるため、平日の日中に時間を確保しなければならない点がデメリットといえます。
忙しい方や遠方に住んでいる方は、郵送やオンライン申請を検討するのがよいでしょう。
参考:法務省
参考:法務局
法人の登記簿謄本の取得にかかる費用
法人の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得する際には、交付手数料が必要です。
この費用は、取得方法や証明書の種類によって異なるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
まず、法務局の窓口で申請する場合、1通あたりの交付手数料は、収入印紙で支払う形式となります。
一般的な登記事項証明書の場合、1通の手数料は600円程度です。
この手続きでは、申請当日に証明書を受け取れることが多いため、時間を重視する場合には便利な方法といえます。
次に、郵送で申請する場合の手数料は、窓口申請と同じく1通600円程度ですが、郵送に必要な追加費用が発生します。
申請書類を法務局へ送る際の郵送料と、証明書を返送してもらうための返信用封筒に貼付する切手代が必要です。
返信用封筒には追跡サービス付きの簡易書留を利用するのが一般的で、この場合、数百円の追加費用がかかります。
オンライン申請の場合、交付手数料は窓口申請よりもやや安く設定されており、1通480円です。
手数料の支払いは、電子納付やクレジットカードを利用して行います。
ただし、オンライン申請で取得した証明書は郵送で届けられるため、郵送代が別途必要です。
そのため、最終的なコストは郵送申請と大きく変わらない場合があります。
これらの費用に加え、証明書の種類によっても手数料が異なる場合があるため、事前に法務局やオンラインシステムで最新情報を確認することが重要です。
また、登記簿謄本を頻繁に取得する必要がある場合には、オンライン申請を活用することで効率的に手続きを進められます。
登記簿謄本を取得する際には、こうした費用の違いを理解し、自分の状況に合った取得方法を選ぶことがポイントです。
時間やコストを考慮しながら計画的に手続きを進めることで、スムーズな取得が可能となります。
法人の登記簿謄本を活用するときのポイント
法人の登記簿謄本(登記事項証明書)は、法人がさまざまな場面で信頼性を示すために必要な書類です。
適切に活用するためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。
まず、登記簿謄本は、取引先や金融機関との信頼構築において重要な役割を果たします。
新規取引を始める際、相手方に法人の正確な情報を提示することで、透明性を確保し、信頼を得ることができます。
特に、会社名や所在地、代表者名などを確認することで、取引リスクを軽減できるため、重要な交渉の前には最新の登記簿謄本を取得しておくことが大切です。
また、銀行口座の開設や融資申請、許認可の取得など、行政機関や金融機関への手続きにも頻繁に活用されます。
これらの場面では、登記簿謄本の内容が古い場合や誤りがある場合、手続きが遅れることがあります。
そのため、登記内容に変更があった際には、速やかに登記を更新し、新しい登記簿謄本を取得しておくことがポイントです。
さらに、登記簿謄本を第三者に提出する際には、必要以上の情報を提供しないよう注意が必要です。
たとえば、過去の履歴が不要な場合は現在事項証明書を利用するなど、状況に応じて適切な種類の証明書を選ぶことが重要です。
これにより、機密性の高い情報を守りつつ、必要な証明を行うことができます。
最後に、登記簿謄本の保管方法にも注意が必要です。
頻繁に取得する場合でも、毎回取得日や使用目的を記録し、適切に管理することで、手続きの効率を上げることができます。
また、期限切れの古い証明書を使わないよう、定期的に見直しを行うことも大切です。
法人の登記簿謄本は、法人の「公的な顔」ともいえる重要な書類です。
そのため、適切に取得し、用途に応じて活用方法を工夫することで、法人活動の信頼性をさらに高めることができます。
登記簿謄本の取得後に内容の変更をする場合は?
登記簿謄本を申請した後に法人の内容に変更があった場合、その変更を正確に反映させるためには、速やかに法務局で、登記の変更手続きを行う必要があります。
この手続きを怠ると、取引先や関係機関との信頼関係に影響を及ぼす可能性があるため、変更が生じた際には迅速に対応することが重要です。
登記内容の変更が必要となる具体的な例としては、本店所在地の移転、代表者や役員の変更、資本金の増減などが挙げられます。
これらの変更は、法務局にて所定の申請書類を提出し、正式に登記記録を更新することで初めて効力を持ちます。
変更登記が完了すると、最新の情報を反映した登記簿謄本を取得できるようになります。
また、登記変更の申請には期限が設けられているケースが多い点にも注意が必要です。
たとえば、会社法では役員変更や本店所在地の移転などの変更について、原則として変更後2週間以内に登記を申請することが義務付けられています。
この期限を過ぎてしまうと、過料(罰金)が科される可能性があるため、変更内容が発生した際は速やかに手続きを進めましょう。
変更登記が完了するまでに取得した登記簿謄本は、旧情報が記載された状態となるため、変更後の手続きや取引には使用できません。
そのため、新しい登記内容を基にした登記簿謄本を再度取得し、取引先や関係機関に提示する必要があります。
この際、事前に必要な書類や申請手順を確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。
内容変更後の対応が遅れると、手続きが滞るだけでなく、取引先や金融機関からの信頼低下を招くリスクがあります。
法人としての信用を維持するためにも、登記内容の変更が生じた場合には、速やかに法務局への申請と新しい登記簿謄本の取得を行いましょう。
【まとめ】法人の登記簿謄本をスムーズに取得しよう!
今回は法人の登記簿謄本について解説しました。
法人の登記簿謄本は、会社の情報を証明するものとして、非常に重要な役割を果たしています。
登記簿謄本がしっかりと取得できていないと、資金調達や各種手続きに影響が出てしまうので、しっかりと取得するようにしましょう。
このコラムを参考に、法人の登記簿謄本をスムーズに取得し、手続きを円滑に行ってください。