雇用就農資金とは?対象・金額・申請方法をわかりやすく解説

雇用就農資金は、農業法人などが49歳以下の就農希望者を雇用・育成する際に活用できる支援制度です。研修費用として年間最大60万円、最長4年間支給され、農業人材の定着と育成を後押しします。
菱谷 里沙子

更新日:

雇用就農資金

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

この記事の結論3つ

  1. 条件や手続きが細かいため、事前確認計画的な申請が大切
  2. 生活の安定と実践的な研修により、新規就農者の定着・独立を促進できる
  3. 雇用就農資金は、農業人材不足を解消するための雇用+研修を支援する制度

雇用就農資金って何?


出典:雇用就農資金
雇用就農資金は、日本の農業において新たに就農を希望する人々を支援するための制度です。農業法人や個人農業者が新たに雇用した従業員に対して、必要な資金を助成することを目的としています。

特に、49歳以下の就農希望者を対象にしており、農業の担い手を確保し、育成するための重要な施策です。
雇用就農資金

制度の概要

雇用就農資金は、農業法人が新たに雇用した就農希望者に対して、実践的な研修を行うための資金を提供します。

農業法人が従業員を育成し、次世代の農業経営者を育てるために使用されます。具体的には、以下のような支援が行われるでしょう。

雇用就農者育成・独立支援タイプ


出典:【2024年保存版】農業の補助金・助成金13選│初めての申請でも安心の手続き解説つき
新たに雇用した就農者に対して、年間最大60万円の資金を最長4年間支給します。独立を目指す場合には、最大120万円が支給されます。
参考:雇用就農資金(雇用就農者育成・独立支援タイプ、新法人設立支援タイプ)

新法人設立支援タイプ

新たな農業法人を設立し、独立就農を目指す者を雇用して実践研修を行う場合に資金が交付される。

次世代経営者育成タイプ


出典:雇用就農資金(次世代経営者育成タイプ)
農業法人が次世代の経営者を育成するための研修を支援。このように、雇用就農資金は農業の担い手を確保し、育成するための多様な支援を提供しています。
参考:雇用就農資金(次世代経営者育成タイプ)
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雇用就農資金は何のためにある?

雇用就農資金の主な目的は農業の担い手を確保し、定着させることです。日本の農業は高齢化が進んでおり、若い世代の農業従事者が不足しています。

このため、農業法人や個人農業者が新たに若い人材を雇用し、育成することが求められています。

担い手を確保するため

雇用就農資金を利用することで、農業法人は新たな従業員を雇用しやすくなります。これによって農業の現場に新しい人材が加わり、農業の活性化が期待されるでしょう。

定着を支援するため

雇用した従業員が農業に定着するためには、実践的な研修がポイントです。雇用就農資金を活用することで、従業員は必要な技術知識を身につけることができ、長期的に農業に従事する意欲が高まります。

経営を安定化する

新たな担い手が育成されることで農業法人の経営が安定し、持続可能な農業経営が実現可能。これにより地域の農業が活性化し、地域経済にも良い影響を与えることが期待されます。

まとめ

雇用就農資金は、農業の担い手を確保し、育成するための大事な制度です。新たに雇用された就農希望者に対して、実践的な研修を行うための資金を助成することで、農業の現場に新しい人材を加え、農業の活性化を図ります。

この制度を通じて、農業の未来を支える次世代の経営者を育成できるでしょう。
参考:雇用就農資金について

雇用就農資金の具体的な内容を知ろう


雇用就農資金雇用就農資金には、

  • 金額
  • 支給内容
  • 支給期間
  • 対象となる人や条件

などの要素で、いくつか決まりごとがあります。

対象となる人・条件

雇用就農資金の対象となるのは、農業法人に雇用されて就農する人々です。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

年齢

原則として、就農時に49歳以下でなければなりません。若い世代の農業従事者を育成するための制度だからです。

経験

農業経験がない人でも応募可能ですが、農業法人側には、5年以上の農業経験を持つ指導者が必要です。この指導者が新規雇用者に対して実践的な研修を行います。

研修条件

新規雇用者は、農業法人が提供する研修を受けなければなりません。この研修は、就農に必要な技術や知識を身につけるためのものです。

研修内容は、農業をはじめる.JPなどのポータルサイトに掲載される必要があります。

支給内容と金額

支給内容: 雇用就農資金は、農業法人が新たに雇用した就農希望者に対して実践研修を行うための資金を助成。具体的な支給内容は以下の通りです。

支給額の目安

年間最大60万円が支給されます。これは、月額に換算すると約5万円です。

支給期間

支給は最長で4年間行われます。この期間中に、雇用者は新規就農者に対して必要な研修を実施し、農業技術を身につけさせることです。

まとめ

雇用就農資金は、農業法人が新たに雇用した49歳以下の就農希望者を支援するための制度です。

対象者は農業法人に雇用され、研修を受けることが求められます。支給内容は年間最大60万円で、最長4年間の支援が行われます。この制度を通じて農業の担い手を確保し、育成することが期待されています。
参考:農業経営者向け情報

雇用就農資金の申請の流れと必要書類

雇用就農資金の申請の流れは、いくつかのステップにわかれています。

必要書類を準備する

申請を行うためには、必要な書類を準備することから始まります。具体的には、

  1. 募集要領を確認する
  2. 申請書類の一覧をチェックする
  3. 必要な書類を揃える

という順に進めましょう。必要書類には、

  • 応募申請書
  • 研修計画書
  • 研修指導者の履歴書

などが含まれます。

必要な情報を入力する

申請フォームに必要な情報を入力します。この際、もし途中で作業を中断したい場合は、入力内容を保存することが可能です。

すべての情報を入力し終えたら、必要な添付書類をアップロードする画面に進んでください。ここで、準備した書類をアップロードします。

申請する

申請が完了したら、応募内容を確認するためのファイルをダウンロードして保存しましょう。これにより、申請内容を後で確認できます。

申請が受理されると、通常10営業日以内に農業会議などから連絡が来るでしょう。それまで待ってください。申請先は、各自治体の農業会議JA(農業協同組合)などです。

出典:JAとは?
具体的には、各都道府県の農業会議が窓口となっており、申請書類をメールや郵送で提出することが可能です。

申請の際は、募集期間内に必要な書類を提出してください。このように、雇用就農資金の申請は必要書類の準備から始まり、

  1. 情報入力
  2. 書類のアップロード
  3. 確認ファイルのダウンロード

といった流れで進みます。申請先は各自治体の農業会議やJAで、必要な書類を揃えて申請を行うことが求められます。

雇用就農資金活用のメリット・注意点

農業をこれから始めようとする人(新規就農者)にとって、最も大きな壁ひとつは生活をどのように支えるかという問題です。

農業の収入は作物の育ち具合や天候、流通など多くの影響を受けるため、すぐには十分な収入が得られないことも珍しくありません。そんなときに雇用就農資金という制度を活用できれば、大きな助けとなるはずです。

就農初期の生活を安定させられる

農業は始めたばかりのころは収入が不安定になりやすく、生活費に不安を感じる人も多いです。

しかし、雇用就農資金を受け取ることで、一定の収入が確保され、安心して研修や仕事に集中できます。

実践的に農業を学べる

農業法人に雇われながら経験を積むので、机上の勉強ではなく実際の現場で技術や知識を学べます。

  • 機械の使い方
  • 販売の仕組み
  • 作物の栽培方法

など、独立後に役立つスキルを身につけられるのが大きな利点です。

独立や定着につながる

雇用されながら学んだ後は、そのまま法人で働き続けることも、将来的に独立して農業を始めることも可能です。生活基盤を支えながらキャリアの選択肢を広げられるのは魅力です。
参考:農業経営者向け情報

雇用就農資金を利用する際の注意点

受給条件がある

  • 保険への加入
  • 就農計画の提出
  • 年齢制限(18歳~45歳未満など)

など、受け取るための条件が細かく定められています。条件を満たさないと支給が受けられないため、事前に確認してください。

働き方に制約がある

一定の労働時間や研修内容が求められるため、

  • 副業をしたい
  • 自由に働きたい

という方には合わない可能性があります。なお、途中で辞めてしまうと資金の返還を求められることがあります。

手続きが複雑になりやすい

  • 申請書や計画書の作成
  • 自治体や関係機関とのやり取り

など、準備に時間と労力が必要です。指導を受けられる機関に相談しながら進めると良いでしょう。

地域によって制度の運用が異なる場合がある

同じ制度でも、自治体によってサポート内容や審査基準が少し違う場合があります。自分が就農を考えている地域の情報をきちんと調べてください。

まとめ

雇用就農資金は、農業を始める人にとって、生活の安定実践的な学びの両方を支えてくれる心強い制度です。しかし、条件や制約があるため、誰でも自由に使えるわけではありません。

利用を考える際にはメリットと注意点をよく理解し、地域の担当窓口に相談しながら、自分の就農計画に合っているかを確かめてください。
みんなの補助金コンシェルジュでは、雇用就農資金を活用した人材採用・育成のご相談を受け付けています。「申請条件を満たすか確認したい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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農業人材不足の現状は?

今、日本では農業をする人が少なくなっています。理由のひとつは、農業をする人の多くが高齢になっているからです。

農林水産省のデータによると、農業をしている人の平均年齢は60代後半ととても高めです。若い人が農業を始める数は少ないため、畑や田んぼをやめてしまう家も増えています。

となるとお米や野菜を作る人が減り、食べ物を安定して作るのが難しくなります。そこで国は、新しく農業を始めたい人を応援するために、いろいろな支援制度を用意。

そのひとつが雇用就農資金です。農業を始めるときのお金の不安を減らして、安心して農業を続けられるようにする制度です。

新規就農者を支える制度が大切?


出典:令和4年新規就農者調査結果
日本の農業は、今大きな転換期を迎えています。スーパーに行けば当たり前のように並んでいるお米や野菜、果物、肉や魚も、もとをたどれば誰かが育てているものです。

しかし、その誰かが急速に減ってきているのが実情です。農業に従事している人の多くが60代や70代と高齢であり、若い世代が農業を継ぐケースは年々減少傾向に。

このままでは畑や田んぼが荒れ、耕作放棄地が増え、私たちの食を支える基盤そのものが弱くなってしまうでしょう。

こうした中で、農業の未来を守るために欠かせないのが新規就農者の存在です。

  • 農業法人に雇用されて経験を積む
  • 農業を家業としていない人が新しく農業に挑戦する

上記のようにその形はさまざまですが、共通しているのは農業を続けたいという強い意志とチャレンジ精神です。そうはいっても現実は理想どおりにはいきません。

農業は土地や機械、資材といった初期投資がとても大きく、生活が安定するまでに時間がかかる仕事です。

さらに自然が相手であるため、天候不順や災害、病害虫の被害など予測できないリスクも多いです。

せっかく志をもって就農した人でも、資金繰りや生活の不安から数年で離農してしまうケースもよくあります。

そこで大切になるのが、新規就農者を支える制度です。制度とは、国や自治体が設ける補助金や給付金、研修の仕組みなどを指します。

単なる金銭的な援助にとどまらず、新規就農者が安心して農業を続けられるようにするための基盤となるものです。

たとえば雇用就農資金という制度は、農業法人などに雇用されて働きながら技術を学ぶ人に対して、生活費の支援を行う仕組みです。

安定した収入を得ながら農業を学べる環境が整えば、未経験者でも一歩を踏み出しやすくなるはず。

また、青年就農給付金は、独立して農業を始める人に対して最長で数年間、生活資金を給付する制度で、若手の定着を後押ししています。

出典:【2024年保存版】農業の補助金・助成金13選│初めての申請でも安心の手続き解説つき
こうした制度がなぜ大切かといえば、新規就農者が抱える不安を和らげる効果が期待できるからです。

農業を始めたい人は、

  • 技術をどう学ぶか
  • 生活費をどうするか
  • 販路は見つかるのか

といった多くの課題に直面します。

制度による資金支援があれば、生活を心配せずに技術習得に集中できますし、研修制度を通じて地域の先輩農家から知識を得ることも可能です。

自治体によっては住宅支援や機械購入の補助金を用意しているところもあり、トータルで生活基盤を整えやすくなっています。

さらに、新規就農者を支える制度は、農業の未来そのものを守る意味を持ちます。

若い人や異業種からの転職者が農業に入りやすくなることで、地域の農村が活気づき、耕作放棄地の解消にもつながるでしょう。

農業人口が増えれば、新しい栽培方法や経営スタイルが導入され、農業がより持続的で魅力的な産業へと進化していく可能性も広がるはず。

最近では、ITやドローンを使ったスマート農業に挑戦する新規就農者も増加傾向です。

制度による支援がこうした新しいチャレンジを後押ししています。もちろん、制度にも課題はあります。

  • 申請手続きが複雑
  • 対象条件が厳しい

などにより、利用したくてもできない人がいます。また、制度そのものを知らないまま就農し、後になってこんな支援があるなんて知らなかったと後悔する人もいます。

こうした情報不足や手続きの壁をなくし、誰もが必要なときに制度を活用できるようにすることが今後の大きな課題です。

それでも、制度の存在が新規就農者の背中を押していることは間違いありません。もし制度がなければ、資金や生活の不安から農業に挑戦する人はもっと少なかったでしょう。

制度は新規就農者にとっての安全網であり、挑戦を続けるための支えです。農業は私たちの生活を守る根幹です。国や自治体が制度を整え、社会全体で新しい担い手を応援することは、食の未来を守ることにも直結しています。

新規就農者を支える制度が大切なのは、個人の生活を守るためだけではありません。

農業を続ける人が増えれば地域のつながりが深まり、子どもたちに豊かな自然と食文化を引き継ぐことも可能です。

制度によってひとりでも多くの人が農業を始め、続けられるようになれば、日本の農業は確実に力を取り戻していくでしょう。

結論として、新規就農者を支える制度は未来への投資です。今はお金や仕組みを整えることにコストがかかっても、その結果として安定した食の供給や地域社会の活性化が得られるなら、社会全体にとって大きなプラスとなるでしょう。

私たちが毎日安心して食事ができるのは、農業を支える人たちがいるからこそです。そしてその人たちを支える制度があるからこそ、農業の未来は守られます。
参考:雇用就農資金・農の雇用事業

雇用就農資金についてのFAQ


出典:雇用就農資金

Q1. 雇用就農資金は正社員以外でも対象になりますか?

A. 原則は常時雇用が前提ですが、雇用形態の詳細は自治体や事業内容によって判断されます。

Q2. 雇用就農資金と青年就農給付金は併用できますか?

A. 同一人物・同一期間での併用は原則不可ですが、就農段階が異なれば検討できる場合があります。

Q3. 研修期間中に就農者が途中退職した場合はどうなりますか?

A. 支給が打ち切られるほか、状況によっては一部返還を求められることがあります。

Q4. 雇用する側(農業法人)に費用負担はありますか?

A. 資金は研修支援ですが、給与社会保険料などは原則として雇用側の負担です。

Q5. 地方移住とあわせて活用できる支援制度はありますか?

A. 多くの自治体で、住宅補助移住支援金と組み合わせて利用できるケースがあります。
参考:雇用就農資金

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監修者からのワンポイントアドバイス

農業の人材確保において、年間最大60万円の助成は経営の大きな助けとなります。活用の鍵は、単なる雇用ではなく、定着を見据えた「質の高い研修計画」です。要件が細かく、途中退職時の返還規定もあるため、制度を正しく理解し、長期的な視点で計画的に申請しましょう。