歯科医院に新事業進出補助金は活用できる?新規事業をサポート
新事業進出補助金は、歯科医院が新たな事業に挑戦するための支援制度です。
最大9000万円の補助金が提供され、高齢者向け自由診療や美容医療との融合など、多様な事業展開が可能です。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
なぜいま、新事業に進出するのか?
近年、歯科医院の経営環境は大きく変化しています。
少子高齢化や人口減少、地域格差、そしてコロナ禍の影響などによって、患者数が減少したり、従来の治療モデルに限界を感じたりする院長先生も増えてきました。
こうした中で注目されているのが、新事業進出に対する補助金制度です。
この記事では、歯科医院が新しい領域へとチャレンジする際に活用できる補助金制度について、詳しく解説していきます。
歯科業界ではこれまで、「むし歯治療」や「歯周病治療」が中心でした。
しかし、予防歯科、審美歯科、訪問診療、口腔リハビリ、さらには美容医療分野など、患者のニーズの多様化にともない、新たな分野に参入する医院が増えてきました。
特に注目されているのが以下のような分野です。
- 高齢者向け訪問歯科診療
- オーラルケア商品の開発・販売
- 医科歯科連携による新たな医療モデルの構築
- 口腔周囲のエステティック(美容)医療への参入
- インプラント、矯正、ホワイトニングといった自費診療の強化
これらの取り組みは、医院の経営基盤を強化し、地域に根差した存在としての価値を高める上でも大切な意味を持ちます。
しかし、新しい事業に乗り出すには当然、設備投資や人材育成、マーケティングなど多くのコストが発生するでしょう。
そこで活用したいのが「新事業進出補助金」です。
新事業進出補助金とは何か?
新事業進出補助金とは、既存の業種・事業を展開している事業者が、新たな分野やサービスへと進出する際に必要な資金を国や自治体が補助する制度のことです。
主な目的
- 雇用の維持・拡大
- 地域経済の活性化
- 中小企業の事業再構築・成長支援
- 社会課題(高齢化、医療格差など)への対応
参考:新事業進出補助金
新事業進出補助金の補助対象は?
新事業進出補助金の対象者や経費について解説します。
補助対象経費
まず補助対象経費は、下記の通りです。
- 建物費
- 運搬費
- 外注費
- 広告宣伝
- 機械装置
- 専門家経費
- 販売促進費
- 技術導入費
- システム構築費
- 知的財産権等関連経費
- クラウドサービス利用費
上記の中で新規事業に注力するための費用であれば、補助対象となります。
参考:新事業進出補助金
もらえる補助金額はどれくらい?
従業員数に応じて、以下のような補助金が設定されています。
従業員数 | 通常の補助額 | 賃上げを伴う場合 |
20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 |
21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
51人〜101人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
補助率は、一律1/2となっています。また、下限補助金額は750万円です。
参考:新事業進出補助金第1回公募要領
新規事業に補助金を活用するメリットは?
新規事業において補助金を活用するメリットを解説します。
- 経済的負担を大きく軽減できる
- 地域社会とのつながりが深まる
- 対外的な信用力の向上につながる
経済的負担を大きく軽減できる
1つ目は、初期投資にかかる経済的な負担を大きく軽減できる点です。
たとえば、高額な設備導入や人件費といった費用の一部が補助されることで、資金面のハードルが下がり、計画的かつ積極的に事業をスタートさせることが可能となるでしょう。
また、補助金の存在は、これまで新規事業に踏み出すことをためらっていた歯科医院にとって、大きな心理的後押しとなります。
これによって、リスクを抑えながら新しい取り組みに挑戦できる環境が整うのです。
地域社会とのつながりが深まる
3つ目のメリットは、新事業を通じて地域社会とのつながりが深まることです。
地域の自治体や高齢者施設、地域活動団体などとの連携が生まれることで、地域全体の健康意識を高める活動への参加や協力の機会が増えます。
結果的に歯科医院としての社会的役割や地域貢献度を高めることにつながるでしょう。
対外的な信用力の向上につながる
メリットの2つ目は、歯科医院の対外的な信用力の向上にも貢献する点です。
特に、銀行や金融機関からの評価が高まり、今後の融資を受けやすくなるといった資金調達面でのメリットが期待できます。
行政による支援を受けているという事実そのものが、経営の健全性や将来性の証明ともなるのです。
こうした支援を受けることによって、他院との差別化も図りやすくなります。

申請の流れと注意点
ここでは新事業進出補助金を申請する場合の流れと注意点を解説します。
- 公募情報を収集する
- 事業計画を策定する
- 申請書を作成する
- 採択・交付決定
- 実績報告・精算手続き
1.公募情報を収集する
経済産業省や各自治体の公式サイトで最新情報を確認。
2.事業計画を策定する
目的・背景、必要な費用と効果見込み、どのような新事業に取り組むか などを明確に記載。
3.申請書を作成する
書類の正確性・論理性・説得力が重要。
申請書は専門家(行政書士や中小企業診断士)に依頼することも検討を。
4.採択・交付決定
審査を経て採択された場合、交付決定が出され、その後に事業を開始。
5.実績報告・精算手続きをする
事業実施後は、実績報告書や経費の精算書類を提出。
補助金の不正利用には厳しい罰則もあります。
参考:新事業進出補助金第1回公募スケジュール
申請時に必要な準備とは?
申請には、以下のような準備が必要です。
- 指針に沿った事業内容である
- 借入を伴う場合は金融機関の確認が必要
- 自己資金で実施する場合は、支援機関の確認のみで可
- 経営革新等支援機関や金融機関と共同で事業計画を策定する
- 補助事業終了後、付加価値額または従業員1人当たりの付加価値額が3〜5%以上成長する見込みがある
代表的な補助金制度
新事業進出補助金以外にも、歯科医院が新規事業を行う際に利用しやすい補助金は、以下のような制度があります。
IT導入補助金
→ITツール・ソフトウェア等の導入を目的とする補助金
新規事業とITツール導入を掛け合わせることで利用可能。
参考:IT導入補助金
ものづくり補助金
→新たなサービスや製品開発を目的とした設備投資に活用可能。
技術革新にチャレンジする歯科医院に適しています。
参考:ものづくり補助金
小規模事業者持続化補助金
→販路開拓や新サービスのプロモーションなどに使える補助金。
新事業の認知拡大やWeb活用に役立ちます。(小規模事業者が対象)
参考:小規模事業者持続化補助金
新事業進出補助金の公募スケジュール
2025年10月現在、第2回公募の情報が発表されています。
スケジュール
- 公募開始:9月12日
- 申請受付開始日:11月10日
- 応募締め切り:12月19日18時まで
第2回の応募締め切りまでに十分時間があるので、申請を検討されている方は、書類等の準備をして申請しましょう。
参考:新事業進出補助金
おわりに
歯科医院が地域に愛され、持続可能な発展を目指すためには、時代の変化に柔軟に対応し、新しい価値を提供し続けることが大切です。
新事業進出補助金は、その第一歩を後押ししてくれる力強い制度です。
資金面の支援だけでなく、医院の信頼性や社会的役割を高めるチャンスとして、ぜひ積極的に活用してみてください。
監修者からのワンポイントアドバイス
新事業進出補助金の申請に関しては申請要件を細かく見ていく必要があり、申請要件を満たしているか吟味しないといけません。
また新事業進出要件に関してはなかなか判断が難しい場面も多々ありますので専門家と共同して確認していくと良いでしょう。