IT導入補助金のシミュレーションをしよう!補助率や補助額は?
IT導入補助金に申請する前に、シミュレーションをしておきましょう。いくらもらえるのかあらかじめ想定しておけば、補助率や補助額がイメージしやすくなり、事前準備がしやすくなるでしょう。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
IT導入補助金のシミュレーションをしよう!受け取れる補助金はいくら?

ITツールを導入したいものの、どのようにその費用を負担しようか悩んでいる事業者は多いでしょう。実は、その負担は補助金でカバーできます。というのも、政府からIT導入補助金という支援がしてもらえることがあるからです。
申請するには条件がありますが、条件に当てはまっている事業者は申請ができます。採択されれば、補助金を利用してITツールを導入できるでしょう。IT導入補助金を利用すれば、自社で必要なITツールやソフトウェアの購入費用が、半分以上もカバーしてもらえることがあるのです!
補助率は状況によっても異なってきますが、半分以上も補助してもらえたらかなりの負担軽減になりますよね。たとえ少ない購入金額だとしても申請していいのも、IT導入補助金の魅力です。
ここでは、結局補助金はいくらくらいもらえて、どのくらいの資金を準備しておけば間に合うのか、シミュレーションをしながら説明していきます。
補助率がわかれば補助金額がわかる
ITツールの導入費用に、補助率という数字を掛けてみましょう。そうすれば、受け取れる補助金が決まります。
補助率は、1/2~4/5まで幅があり、導入予定のITツールの種類や内容によって変わりるのです。
【計算法】
たとえば、あるソフトウェアの導入にかかる費用が100万円だとします。この場合、補助率が1/2なら、補助金として50万円を受け取れることになるでしょう。
100万円 × 1/2 = 50万円
さらに、補助金の上限額も決まっています。もし上限が150万円に設定されていたら、計算で150万円を超えた金額は受け取れません。
どんな費用が対象?
IT導入補助金で対象となっている費用には、決まりがあるのです。
主に次のようなものがあり、対象に当てはまっていなければ申請はできません。
- サービス
- 導入関連費用
- ソフトウェア
- ハードウェア(パソコン、タブレット、プリンターなどの機械製品)
これらの費用を合計し、その中で補助金がもらえる金額を計算しましょう。
具体的な計算法
たとえば、200万円の会計ソフトを導入したとしましょう。このソフトに搭載されている会計機能はひとつです。この場合、仮に補助率が1/2だとしたら、次のように計算できるでしょう。
200万円 × 1/2 = 100万円
この計算式を見れば、補助金が100万円になることがわかるでしょう。ただし、これはあくまで会計機能がひとつ付いていた場合の計算です。もし機能数が増えると、受け取れる補助金はそれに応じて増えるでしょう。
たとえば、同じソフトウェアで機能が4つある場合、補助金の上限は増えてきます。
参考:補助金シミュレーター
IT導入補助金に申請するにはどうする
では、実際にIT導入補助金を申請する段階になったら、どのような手順を踏めばいいでしょうか。下記のステップに従って着実に進めてください。
どんなITツールを導入するか決定する
まず、どんなITツールにしたいのか考えましょう。
自社で導入したいソフトウェアや機械を決めて、それが対象になっているか確認してください。
補助率を調べる
ITツールが決まれば、補助率もわかります。そのツールがどのくらいの補助率なのか確かめましょう。
シミュレーションで補助金の想定金額を出す
申請する前に、補助金額がどれくらいになるか知っておいてください。受け取れる補助金の金額を確認します。
申請書を作成する
必要な書類を用意し、申請を行いましょう。
申請する時の注意点と確認すべきポイント
補助金を申請するときには、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
補助上限を確認する
補助金には上限があるので、上限を超えて受け取ることはできません。上限を超えた分は補助金の対象外です。
補助率は変わることがある
補助率を調べた上で、「これくらいだな」とわかったとしても、その割合は変わることがあります。補助率は、申請内容によって変動するからです。
補助対象となる費用を確認する
かかった費用の全部が補助対象になるわけではないことを確認してください。一部の場合もあります。どこまでが対象範囲となるかをしっかり調べておきましょうね。
参考:IT導入補助金2025
IT導入補助金にも種類がある
IT導入補助金といえば、IT(情報技術)を使って、ビジネスをもっと効率よくするために役立つツールを購入するための費用を支援する制度です。
たとえば、パソコンやタブレット、特別なソフトウェアなどを購入する費用の一部を政府が出してくれるので、会社としては経費削減になりますよね。資金力がなくて、必要なITツールの導入を見送っている会社にとっても、IT導入補助金はとても大きな助けとなるでしょう。
IT導入補助金を利用すれば、ITツールを導入する際にかかる費用の一部を補助してもらえるわけですが、一口に補助金といっても、種類があります。
ここでは、その種類の中でも通常枠、インボイス対応類型、電子取引類型について、その補助率と計算方法をわかりやすく説明していきます。
通常枠
まず、通常枠にはAとBという二つの申請タイプがあります。それぞれのタイプは、補助金を受け取る条件や金額に違いがあります。これらの違いを理解することが、どちらを選べば良いかの参考になるでしょう。
【通常枠A】
通常枠Aは、比較的申請条件が簡単で補助額が少ないです。
しかし、一般的な中小企業や小規模事業者にとって使いやすい枠といえます。
- 補助額…通常枠Aの補助額は、最低30万円~最高150万円です。
事業者が必要とするITツールの導入にかかる費用の一部を支援してもらえます。
- 申請要件…通常枠Aは、補助額に対しての要件が比較的緩やかです。
ITツールを導入して業務の効率化を図り、生産性向上を目指す必要がありますが、賃金の引き上げなど、追加の要件はあまり厳しくありません。
対象となるITツールは、業務を効率化するためのツールが前提です。
たとえば、顧客管理ツールや在庫管理ツール、会計ソフトなどが対象です。これらのツールを導入することで、業務がスムーズに進み、効率的に運営できるようになるでしょう。
【通常枠B】
通常枠Bは、通常枠Aよりも補助金額が大きい代わりに、申請条件が少し厳しいです。通常枠Bを利用するには、一定の条件を満たさなければなりません。
補助額…通常枠Bでは、補助額の下限は150万円からで、上限は450万円まで支援してもらえるでしょう。つまり、補助金額がA枠よりも大きいのです。
要件…通常枠Bには、賃上げ要件という特別な条件が設けられている点に注目です。
具体的には、次の3つの条件を満たす必要があります。
- 賃上げについて従業員に表明する
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加する
- 地域別最低賃金+30円以上の事業場内最低賃金を設定する
これらを満たさなければ補助金を受け取れないのです。
各地域には最低賃金が決められています。それに30円以上足した額を最低賃金として設定する必要があります。賃上げする際は、賃上げをすることについて従業員に表明するというルールに従うことを忘れないでください。給料を増やすことを、忘れずに従業員にしっかり伝えましょう。そのうえで賃上げを実行するのです。
従業員がそのことを知らなければ、賃上げしても意味がありません。ルールに則った上で賃上げしなければ、賃上げとは認められないからです。せっかく賃上げしても補助金が受けられないため、気を付けましょう。
対象となるITツール…通常枠Aと同様に、業務の効率化に役立つITツールが対象です。ただし、通常枠Bでは、導入するツールの数が4つ以上必要なところが大きな違いです。ITツールの選定についてもやや広範囲な選択が求められるでしょう。
通常枠においては、AでもBでも、対象のITツールについて申し込む必要があるのですが、具体的にどのようなITツールなら通常枠の対象になるでしょうか。3つに分けることができます。
業務プロセスに関するツール
会社が日々行っている業務をスムーズに進めるためのツールです。
例)
- 在庫管理のためのツール
- 会計や経営を管理するツール
- 顧客や営業を管理するためのソフト
オプションに関するツール
既存のツールをより便利に使うためにするITツールです。
例)
- データ分析のためのツール
- 他のツールとデータを連携させるツール
- パソコンやソフトをより安全に使うためのセキュリティツール
付帯サービス
ツールを使うためのサポートサービスや、導入について助言してもらえるコンサルティングがこれにあたります。
たとえば、ツールを使うための説明書や、使い方をサポートしてくれるサービスが含まれます。
例)
- 顧客管理ツール…顧客の情報や営業の進捗を一元管理する
- 会計ツール…経理業務を効率化し、決算などをスムーズに進める
- 在庫管理ツール…商品の在庫を追跡し、在庫切れや過剰在庫を防ぐ
- 決済管理ツール…売上や支出を管理し、効率的にお金の流れを把握する
逆に、対象外となるものも把握しておきましょう。
IT導入補助金の対象になるのは、基本的にはソフトウェアのみです。そのため、パソコンやタブレットなどのハードウェア(機械)は支援の対象外です。
申請する際には、通常枠Aでは少なくともひとつのITツール、通常枠Bでは、4つ以上のITツールを選んで導入しましょう。
業務に必要なツールを導入し、それらの経費の一部を補助してもらう形です。
通常枠の補助率と計算法

通常枠では、補助率は1/2、つまり経費の半分が補助されます。
仮に、ある企業A社がITツールを導入したいと考えている場合、補助金をどれくらい受け取れるかは、導入するツールのプロセスによって決まります。このプロセスとは、ツールを導入してから、業務の効率を上げるために必要な業務の数です。作業数といってもいいでしょう。プロセス数がひとつ以上になれば、補助金を申請できます。
ちなみに、経費が300万円以上で、補助額を150万円以上受け取るためには、4つ以上のプロセスを導入し、さらに賃上げを行う必要があります。
一方でプロセス数が3つの場合、補助額は上限150万円に制限されます。それを超える補助額を得たい場合は、4つ以上のプロセスを導入し、賃上げが必要です。
補助額は5万円から申請でき、最小で10万円以上の経費から申請できます。最大で450万円の補助金を受け取れる場合もあり、その条件は経費が900万円のときです。通常枠の補助額を計算する方法は、対象経費に1/2を掛けるというシンプルなもの。
たとえば、200万円のソフトウェアを導入するなら、補助額は200万×0.5=100万円となります。ですから、実費は100万円です。
仮に400万円のソフトを導入した場合、補助額は400万×0.5=200万円になります。
しかし、補助金の上限額は150万円なので補助金は150万円となり、実際の支払額は250万円です。これが3プロセスの場合の計算です。4プロセス以上を導入し、賃上げも行った場合、補助額は200万円に増えるため、支払額は200万円となるでしょう。
プロセスとは、業務の効率化や生産性向上を目的とした業務の手順を指します。これを導入することで補助金を受け取ることが可能です。
たとえば、会計や総務、顧客対応など、企業で行われている業務はプロセスといえます。ITツールを導入してこれらの業務を改善していけば、補助金を得られます。
参考:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金<一般型>
インボイス対応類型
インボイス枠は、中小企業や小さな会社が使うソフトの経費の一部を助けてくれる仕組みです。インボイス制度に対応するために必要な会計ソフトや受発注ソフト、決済ソフトを導入する際に、経費を少しでも安くすることが目的です。
インボイス制度自体は、2023年10月から始まりました。これにより、企業間で取引をする時は、電子的にインボイス(請求書)をやりとりすることが求められるようになったのです。スムーズに行うためには、特別なソフトを使ったほうがより良いです。インボイス枠においては、パソコンの周辺機器(ハードウェア)も助けてくれる対象に含まれています。
たとえば、紙のインボイス(請求書)を電子データに変換できるスキャナーです。スキャナーがあれば、手書きの請求書をパソコンで簡単に処理できるでしょう。すでに多くの企業が導入しています。
インボイス対応類型では、インボイス制度に対応するためのソフトウェアやハードウェア(PCやレジなど)に対する補助金が受け取れます。
この補助金には、
などが含まれますが、補助率は異なってきます。
インボイス型の補助率と計算法
ソフトウェアに対しては、中小企業の場合3/4の補助率が適用され、補助額が50万円までの部分は3/4、それ以上は2/3です。
小規模事業者の場合、補助率は4/5で、50万円以上の部分は2/3に減ります。PCやレジに対しては、補助率は半分です。
たとえば、ある中小企業B社がソフトウェア代として50万円、PC代として30万円の経費を申請したとします。ソフトウェアの補助金は50万×0.75=37万5000円となり、PC代の補助金は30万×0.5=15万円です。
PC代の補助額は10万円が上限なので、最終的な補助金は37万5000円+10万円=47万5000円となります。ですから、実際に支払う金額は80万円の経費に対して、47万5000円の補助金を受け取ることができ、実質負担額は32万5000円となるでしょう。
別の例として、中小企業が2機能分のソフトウェア代100万円を申請した場合、66万6667円までは補助率3/4が適用され、その後の部分は補助率2/3です。
この場合、66万6667円×0.75=50万円の補助が受けられ、それを超える部分(33万3333円)については33万3333円×0.666=22万2222円の補助が受けられます。
最終的な補助金は50万+22万2222円=72万2222円となり、100万円の経費に対し、72万2222円の補助金を受け取ることができ、実質負担額は27万7778円です。
電子取引類型
電子取引類型は、インボイス制度に対応した受発注システムを導入する枠です。この枠においては、補助率は中小企業と小規模事業者の場合が2/3、大企業では半分です。
たとえば、ある大企業C社が1000万円のソフトウェアを導入する場合、補助額は1000万円×0.5=500万円となります。
しかし、補助額には上限があるため、実際補助してもらえるのは350万円までです。結果的に、1000万円のソフトウェアを導入する際の実質負担額は650万円となるでしょう。
このように、IT導入補助金を上手に利用すれば、企業は多くの費用を補助してもらうことができます。補助金を利用してツールを導入できれば、さらに業務の効率が上がるでしょう。
事前にシミュレーションを行いながら、どの枠が自社に最適かを判断し、補助金をうまく活用して企業運営を行ってくださいね!
おわりに
本記事では、IT導入補助金を受けるための基本的な計算方法やシミュレーションの活用方法について紹介しました。
IT導入補助金を利用することで、ビジネスで使いたいITツールの費用を大きく助けてもらうことができます。シミュレーションをして、実際にどれくらい補助金がもらえるのかを簡単に計算できるので、ぜひ活用してみましょう!
具体的な金額を計算したり、どのツールを導入するかを考えたりする際に、このシミュレーションを使ってみてくださいね。
監修者からのワンポイントアドバイス
現在、各省庁から来年度予算の概算要求が提出され、今後国会での審議を経て予算が成立していきます。来年度の補助金は今年度以上の金額で要求が出されています。本記事にあるように来年度の動向を踏まえて今から備えて置かれると良いでしょう。