IT導入補助金におけるコンソーシアムって何?活用法やメリット

IT導入補助金を活用して業務効率化を図る方法や、コンソーシアム登録のメリットとその手続きを解説します。中小企業や事業者の支援に欠かせない補助金制度を活用し、ビジネスの成長を促進しましょう!
菱谷 里沙子

更新日:

IT導入補助金 コンソーシアム

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

IT導入補助金って何?

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者を対象にした支援制度です。その目的は、業務効率化生産性向上あります。
IT導入補助金を利用すれば、企業が導入したITツールの費用の一部を補助してもらえるのです。

昨今では、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイスの導入などにより、多くの企業がシステム環境の変更を迫られていますよね。そのため、今まで以上にIT導入補助金の申請手続きは頻繁にされてきています。申込が殺到したことに伴い、多くの中小企業が採択を受けています。

2024年度には、IT導入補助金を含む中小企業生産性革命推進事業に2,000億円が割り当てられました。ただし、IT導入補助金を受けるには対象とされるITツールである必要があります。

それにはパッケージソフトやクラウドサービスの導入費用が含まれ、用途に応じて複数の申請枠が設けられているのです。補助額や対象費用は毎年見直されるため、申請時には最新の公募要領を確認し、適切な活用方法を検討しましょう。
参考:IT導入補助金とは

IT導入補助金にはこんなメリットがあります

IT導入補助金 コンソーシアム
導入したいIT設備があり、IT導入補助金制度に申し込める要件が整っているなら、ぜひIT導入補助金制度を活用したほうがいいでしょう。IT導入補助金制度には、費用を抑えるだけでなく、以下のようなメリットも期待できるからです。

購入するリスクがない

IT導入補助金制度においては、「買ったのに補助金が出なかった!」という事態になりません。IT導入補助金は後払い制なので、採択前に購入してはいけないことになっているからです。

基本的には、採択された後にITツールを購入する必要があります。そうすれば補助金が後で支払われるため、導入費用の一部がカバーされ、結果的に自己負担額が減少します。採択後に購入すれば、補助金が出ること前提で購入することになるので、損はしません。導入してから大体1~2ヶ月後に還付されるでしょう。補助金が支払われる時期を想定し、あらかじめ購入計画を立てておくことをおすすめします。

ちなみに、順序を間違えて採択前にITツールの購入や契約を行った場合、補助金の対象外となってしまうので気を付けてください。

返済は不要です

補助金は融資とは異なるため、返済する必要がありません。IT導入補助金制度は事業計画に基づいて採択され、採択後にITツールを導入し、適切な報告をすればスムーズに受け取れます。その後は返済する義務はなく、そのまま補助金をもらったままで良いのです。

ただし、不正行為があった場合は返還を求められることがあり、例外となる点に気を付けましょうね。ルールに従って普通に手続きしていれば、基本的には返還は求められません。

再申請もできる

IT導入補助金が不採択になってしまったからといって、もう二度と申し込めないというわけではありません。同年度内であれば再申請ができるからです。

2023年度においては、通常枠で10回、デジタル化基盤導入枠では17回の申請期間が設けられていました。過去に採択を受けた企業も、交付決定から一年以上経過していれば再申請ができます。

ただし、締切直前はアクセスが集中するため、余裕を持って申請してくださいね。

少額でも申請可能

IT導入補助金においては、少額でも申請できます。そのための枠が用意されているのです。補助額によっては下限が設けられていない場合もあり、少ない金額でも補助金を申請できます。

採択率が高い

IT導入補助金制度を申請してもどうせ採択されない…と諦めないでください。IT導入補助金制度は難しそうに感じますが、意外に採択率は高めです。DX化や業務のデジタル化が急務となる中、近年のIT導入補助金は制度改正への対応支援が強化されているからです。国は、できる限り採択したいと考えて予算を拡大しているため、採択率は高くなっています。

たとえば、2023年度の全国での採択率は75%以上となり、申請した企業の約3分の2が採択されています。

IT導入支援事業者とは

IT導入補助金の関連用語として、IT導入支援事業者があります。IT導入支援事業者とは、補助金を受けることを目指す企業がIT導入を進める際に、支援を行う事業者のことです。

具体的にいえば、

  • ITツールを導入する
  • ITツールの説明をする
  • ITツールの運用方法を教える

などについての助言をはじめ、幅広い支援を提供してくれます。

また、補助金の申請や実績報告といった管理業務も担当することが一般的です。企業が補助金を申請する際には、このIT導入支援事業者の選定が必要不可欠です。選ぶ事業者の選定は、プロジェクトの成否に大きく影響を与えるでしょう。

IT導入支援事業者になるには?

IT導入支援事業者になるためには、ベンダー登録という手続きが必須です。ベンダー登録をした事業者は、IT導入支援事業者として認められるのです。このベンダー登録をすることで、IT導入補助金という制度を活用し、企業や事業者がITツールを導入する際に支援できます。

ただ、ベンダー登録はやや手続きが少し難しく、専門知識が必要です。そのため、何も知識がない人が自分一人で手続きすることは現実的ではなく、行政書士や専門家に手続きを支援してもらうのが一般的。それでも、依頼する事業者自身も手続きの流れをある程度理解しておきましょう。

まず、IT導入支援事業者の中にも2つのタイプがあります。

  • ベンダー系
  • 販売代理店系

ベンダー系は、自社で開発したITツールを提供する企業のことです。販売代理店系は、複数のITツールを取り扱っている企業です。ベンダー系も販売代理店系にもそれぞれ特徴があり、どちらを選ぶかは自社の状況に合わせて決めることになるでしょう。

ベンダー系の企業は、自社で開発したツールを提供することに特化していますが、ツールを販売する営業活動を、別の会社に任せることもあります。要するに、開発と営業を一緒にやっている事業者が「ベンダー系」なのです。ただ、ベンダー系の事業者は営業所が少ないため、対面でのサポートは難しいです。

その一方で「販売代理店系」は複数のITツールを取り扱っており、それをお客さんに提案して販売しています。複数のツールを比較し、お客さんにとって最適なものを選んで提案してくれるのです。このため、成約率も高まるでしょう。

ベンダーに登録する時の流れ

IT導入補助金 コンソーシアム
ベンダー登録をするための流れは、以下の通りです。

仮登録する

IT導入補助金のホームページにアクセスし、登録申請のページで仮登録を行います。仮登録をすると、登録したメールアドレスに案内が届くでしょう。

本登録

仮登録後、IT事業者ポータルにログインし、必要な情報を入力してください。このとき、会社の情報や提供するITツールに関する情報を入力します。

審査

登録内容に不備がないか、事務局が審査します。もし修正が必要な場合は通知が来るので、速やかに修正してくださいね。

登録決定

審査を無事通過すると、正式にベンダーとして登録されます。

登録方法にも2種類あり、

  • 法人登録
  • コンソーシアム登録

があります。

法人登録は、単独の法人が、独自にITツールを導入してそのツールに関するサポートも行います。法人が単独で行動することになるのです。

一方で、コンソーシアム登録は、複数の法人が集まってチームを作り、一緒に活動します。チームですから、複数の企業で協力しながらITツールを導入し、支援を実施しなければなりません。法人登録にもコンソーシアム登録にも、それぞれ異なる要件があります。

法人登録においては、

  • 日本国内で法人登記されている
  • 安定した事業基盤を持っていること

などが求められます。

コンソーシアム登録では、

  • 法人や個人事業主でも登録可能
  • 販売実績がなくても登録できる

ことなどが特徴です。

IT導入補助金のサポートをしたいと考えている企業にとって、ベンダー登録をすることの意義は大きいです。ITツールを提供する企業として他社と差別化できるため、営業活動がしやすくなるでしょう。

また、販売代理店によるITツールの導入が期待できるため、販売網が広がり、売上増加も期待できます。ベンダー登録を申請するときに費用はかかりませんが、専門家に依頼すれば当然費用は発生します。

その代わり、自分一人で手続きをするよりも手続きにおける負担は軽減され、事業に集中できるでしょう。そのため、多くの事業者がベンダー登録を専門家に依頼しています。

このように、IT導入支援事業者としてベンダー登録をしておけば、ITツールを導入したい企業を支援でき、ビジネスを拡大するチャンスが広がるのです。

IT導入補助金におけるコンソーシアムって何?

コンソーシアムとは、共通の目的を持つ企業や団体が、連携して活動する組織のことです。IT導入補助金におけるコンソーシアムでは、メインとなる企業と、複数の中小企業や小規模事業者が協力し、ITツールやシステムを共同導入することで、生産性向上や競争力強化を目指しています。

コンソーシアム内のベンダーは、各自の専門性を活かしながら、共同で申請手続きを進めたり、ITツールの提供を行ったりします。これにより、より多様なサービスを提供し、申請の成功率を高めることが期待されるでしょう。

コンソーシアムのメリット

そんなコンソーシアムには、下記のようなメリットが考えられます。

ビジネスが展開しやすくなる

幹事社は、コンソーシアムのリーダーとして、ITプロジェクトを主導できます。これによって、自社のサービスや商品を他企業に広める機会を得られるのです。

また、異業種との協力によって新たなビジネス関係を築くことも可能です。

ブランディングと社会的信用アップにつながる

公的補助金を活用すれば、企業の信用力が高まり、社会的信頼度の高いプロジェクトとして認識されるメリットが期待できるでしょう。

コスト削減になる

コンソーシアムによる協力体制により、ITツールの導入コストを分担できるため、企業単体での導入よりも経済的負担を軽減できます。
参考:ITツール・IT導入支援事業者検索(コンソーシアムを含む)

IT導入補助金におけるベンダーの役割

コンソーシアムに対して、ベンダーという言葉があります。ベンダーとは、一言でいえば、特定の製品やサービスを提供する企業のことです。IT導入補助金についていえば、ITツールを提供し、補助金申請をサポートする事業者をいいます。

ベンダーはIT導入支援事業者として登録され、企業がITツールを導入する際のサポートを行います。ここでは、ベンダーについて詳しく説明しましょう。

IT導入補助金でいうベンダーとは、ITツールを提供し、補助金申請をサポートする事業者です。IT導入支援事業者として登録された企業(ベンダー)が、IT導入補助金を利用して、中小企業や小規模事業者にITツールの提案、導入、運用支援を行います。

その役割には、下記のようなものがあります。

ITツールを提供する

ベンダーは、業務効率化や生産性アップに役立つITツールを開発・提供します。

たとえば、ソフトウェアやクラウドサービスなどがこれにあたります。

IT導入補助金の申請を支援

ベンダーはIT導入補助金の申請手続きにおいて、企業が必要な書類を整えたり、申請内容を確認したりするサポートを行います。申請者が単独で申請を行うことはできず、必ずベンダーの支援が必要です。

アフターサポートがある

ITツール導入後も、ベンダーは導入したツールの運用に関する支援を続け、企業が設定した目標を達成できるように手助けします。導入後のトレーニング技術支援も含まれています。
【まとめ】
IT導入補助金におけるベンダーは、ITツールの提供と申請サポートを行う重要な役割を担っています。特に、中小企業や小規模事業者がIT導入を進める上で欠かせない存在です。コンソーシアムを通じて複数のベンダーが協力すれば、より効果的な支援が可能となるのです。
参考:ITベンダー・サービス事業者のみなさま

法人(単独)とコンソーシアムの違いとは

コンソーシアムに対して、単独という概念もあります。コンソーシアムを簡単にいえば、いくつかの会社が集まったグループです。これに対し法人(単独)は、ひとつの会社です。

ネットで「IT導入支援事業者・ITツール検索」というキーワードを入れて検索してみましょう。このとき、コンソーシアム名が表示される会社は、グループで支援活動をしている会社ということです。

一方で、法人はひとつの会社が支援をしているため、会社はひとつしかなく、グループになっていません。ひとつの会社がIT導入補助金の支援をするためには、ITツールやサービスを提供したり、売ったりした経験が求められます。

IT導入補助金のコンソーシアムにもデメリットがある?

コンソーシアムにはメリットもあるのですが、デメリットになることもあるので、ここで確認しておきましょう。ポイントを押さえて、後悔のないようにしてくださいね。

やりとりが複雑になる可能性

コンソーシアムは複数の会社で作られている組織です。複数ということで、コンソーシアムの利用者と、支援する会社との連絡も煩雑になってくることが考えられます。そのせいで、誤解や勘違いも起きやすくなるリスクがあるでしょう。

このリスクを避けるためには、やり取りが複雑にならないように、スムーズに連絡をとるにはどうしたらいいか、誰が関わるのかを事前に確認しておいてください。

会社同士の連携がうまくいかない可能性

コンソーシアムの中で、会社同士のコミュニケーション調整がうまくいかないリスクがあります。こうなると不満がたまってしまうでしょう。

また、同じグループ内であっても、会社によってサービスの内容や質が異なることも考えられます。連携がうまくいかなくなることを防ぐには、どの会社がどんな仕事をするのか、しっかり確認しておいてください。

手続きに時間がかかる可能性がある

コンソーシアムにおいては多くの会社が関わります。そのため、決めることや手続きに時間がかかることも多いのです。
特に、早くITツールを使いたいときは、時間がかかることでストレスになる恐れがあります。プロジェクトのスケジュール管理には十分気をつけましょう。

コンソーシアムを選ぶべき時はどんなとき?

具体的にどんな状況でコンソーシアムを選ぶべきなのか、気になる事業者も多いでしょう。ここで、コンソーシアムを選ぶべきおすすめのシチュエーションを3つ紹介します。

複数の専門分野の支援を必要としている

言うまでもなく、複数の専門知識が必要な場合はコンソーシアムを利用すると良いです。たとえば、法的なアドバイス・財務計画・技術的なサポートといったように、求める専門知識が異なる場合は、偏りが出ないようにコンソーシアムに頼るのがおすすめです。コンソーシアムなら、さまざまな分野の専門知識に対応できるからです。多様な専門家が集まっているからこそ、あらゆるニーズに対応してくれます。

プロジェクトの規模が大きい

コンソーシアムは、中小企業同士が協力し合って成り立っています。協力関係にあるわけなので、企業単独では難しい大きな目標も達成しやすくなるでしょう。そのため、大規模なプロジェクトに関わっている事業者が選ぶのにおすすめです。

コンソーシアムなら、複数のリソースや専門知識を提供してくれます。大きなビジネスを展開しやすくなるでしょう。

コスト削減したい

経費を節約したいときも、コンソーシアムがおすすめです。コンソーシアムに参加している企業が中小企業であっても、支援するための設備を整えやすいのです。その分、単独の会社よりも費用を抑えることができ、その結果、利用者は比較的安くサービスを受けられるでしょう。

では逆に、コンソーシアムではなく法人の支援事業者を選ぶべきケースはどのような状況でしょうか。

法人(単独)の支援事業者を選ぶべきときはどんなとき?

ケースは2つあります。

依頼内容が明確に決まっている

特定のITツールを利用することがすでに決まっているなら、法人を利用するのがおすすめです。コンソーシアムである必要はないのです。このとき、依頼内容に特化した専門性を持つ単独事業者を選ぶと、より満足いくサポートが受けられるでしょう。

長期的な関係を築きたい

単発ではなく長期的に信頼関係を結んで取引していきたいなら、実績のある単一法人との連携が適しています。長い信頼関係は、プロジェクトが進行する中で安定感を与え、安心して進められるでしょう。

おわりに

IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入する際の強力な支援制度といえます。IT導入補助金を申請する際、コンソーシアムを活用すれば、効率的な手続きが期待できるでしょう。

一方で、コンソーシアムに属する企業側にとっては、事業拡大が期待できます。補助金の申請方法やコンソーシアム登録に関する手続きは少し手間がかかりますが、その分得られるメリットは大きいものです。

これからの時代、IT導入はますます重要になるため、ぜひコンソーシアムの存在についても知っておきましょうね。

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監修者からのワンポイントアドバイス

IT導入補助金にはコンソーシアムという聞き慣れない申請形態があります。効率性や専門性といった観点で不安がある場合、複数の中小企業等が連携して申請することによりメリットを見出すことができるようになります。手続きに関してはまずは専門家に確認をされると良いでしょう。