IT導入補助金のインボイス枠とは?申請のポイント解説

本記事では、IT導入補助金とは何か、インボイス枠とは何かについて詳しく解説していきます。対象となるITツールや申請方法、インボイス対応類型と電子取引類型の違いについて詳しく解説します。
菱谷 里沙子

更新日:

IT導入補助金 インボイス枠

IT導入補助金って何?

IT導入補助金 インボイス枠IT導入補助金とは、小規模な会社やお店が、新しいITツールを使って業務をもっと効率化したり、デジタル化を促進したりする時に支援してもらえる補助金制度です。近年、ITの需要は高まっています。ITツールを導入することにより、これまで手作業でしていて人件費がかかっていたことも、自動化によってより効率的に業務が進んできています。
ITの導入には費用がかかりますが、IT導入補助金を利用すれば少ない負担額で導入できます。ITツールを取り入れ、業務をよりスムーズにしたり、無駄な人件費や時間を抑えることが可能です。

IT導入補助金が導入された背景とは?

IT導入補助金は、企業やお店が仕事をもっと効率的にするために必要なITツールを導入しやすくすることが目的です。小規模な企業やお店となると、「ITツールを導入したいものの、十分な資金がないから見送ろう…」と諦めることがあるでしょう。しかし、自己資金だけではカバーできなくても、補助金があったら前向きに検討する事業者も多いはず。ITツールを諦めずに積極的に導入してほしいという思いで、IT導入補助金の制度が生まれました。
ITツールは労働生産性を向上するためのツールとも言われています。ITツールの例としては、ソフトウェアやサービス、パソコンで使うプログラムが挙げられます。もちろんそのほかにも多種多様なITツールが出ていますよね。これからはITの時代だとも言われているため、今後ますます需要は高まるでしょう。すべての事業者が、ITツールを導入していて当たり前の時代がやってきそうですよね。これらを活用することで、これまでの仕事がより一層早く終わったり、人的ミスを減らしたりできます。仕事の質を高めることができ、それが結果的に売上アップや顧客増加につながることが考えられます。
ただし、どの事業者もIT導入補助金制度に申請できるわけではありません。申請できる対象者は制限されています。
IT導入補助金は、小規模な会社やお店が申請するものと想定されています。なぜなら、小規模事業者は、大企業と比べて資金力が乏しく、新しいツールをたくさん導入するための十分なお金や時間がないからです。IT導入補助金を利用すれば、全額自己負担しなくてもITツールを導入できるでしょう。

対象となるITツールも指定されている

IT導入補助金とはいっても、どんなITツールに対しても補助金が支払われるわけではありません。
補助金の対象にならないものがあるので気を付けましょう。
IT導入補助金で申請できるITツールについては、ホームページでリストアップされています。
事前にそのリストをチェックして、使いたいツールが該当するか確認してから申し込んでくださいね。
たとえば、クラウドサービス(インターネット上でデータ保存、アプリ使用などできるサービス)を使うための費用や、外部の専門家に相談を受ける場合の費用もIT導入補助金の対象です。
参考:IT導入補助金2025

IT導入補助金2025について詳しく理解しよう

IT導入補助金をもらうには、いくつかのプロセスをクリアしなければなりません。

IT導入補助金に申請するには何が必要?

まず、IT導入補助金の申請においては、必ずIT導入支援事業者という専門機関の人と協力します。これは任意ではなく必須条件ですので、必ず協力して申請手続きを進めましょう。
IT導入支援事業者は、ITツールの使用法や導入の仕方をサポートしてくれるパートナーのことです。IT導入支援事業者と一緒に補助金を申請し、必要な書類を揃えて事務局に提出することが条件の一つです。
それでは、ここで出てきたIT導入支援事業者についてもっと詳しくみていきましょう。

IT導入支援事業者って何?

IT導入支援事業者は、ITツールの使用法を説明するだけでなく、「どのように使えば最も効率的か」といった相談にのってくれる専門家です。
たとえば、事業者がどんなソフトウェアを使えばいいか迷っている時、どのソフトが最もその会社に適しているかアドバイスをしてくれます。もしまだIT導入支援事業者がいない場合、事務局に登録申請をして審査を受け、承認してもらわなければなりません。
このように、信頼できる事業者だけがIT導入支援の支援ができるような仕組みができています。
参考:IT導入支援事業者とは

IT導入支援事業者の対象である中小企業・小規模事業者とは?

企業といってもさまざまな規模の企業があります。その中でも、中小企業や小規模事業者という言葉を聞いたことがあるでしょう。中小企業や小規模事業者は、日本で活動している小さな会社やお店のことです。
たとえば、個人でお店を営業している個人事業主や、少人数で仕事をしている会社などは、中小企業や小規模事業者といえます。中小企業や小規模事業者は、大企業に比べて予算が少ないため、新しいITツールを使いたくてもなかなか難しいでしょう。そんな時にこのIT導入補助金を活用すれば、経済的に支援してもらいながら新しいITツールを導入できるのです。
IT導入補助金は、こうした小規模な会社やお店が、自分たちの業務をより効率的に進めるため、ITをうまく使えるようにするための制度です。
参考:中小企業庁担当者に聞く「IT導入補助金2025

IT導入補助金のインボイス枠とは

IT導入補助金には、インボイス枠というのがあります。インボイス枠という言葉を初めて聞いた方も多いでしょう。このインボイス枠について詳しく解説するので、参考にしてください。

インボイス枠ってどんな枠?

インボイス枠の中でも、2種類に分かれています。

  • 電子取引類型
  • インボイス対応類型

それぞれ種類によって、申請できる事業者や使えるITツールが異なってくるので気を付けましょう。

電子取引類型

電子取引類型は、大企業が、中小企業と取引する時に使う仕組み作りを支援する枠です。電子取引に必要なソフトウェアを導入するために使われますが、ハードウェアは対象外です。

インボイス対応類型

インボイス対応類型は、小規模な会社やお店を助けるための枠です。特に、インボイス制度に対応するためのツールを導入するのを助けてくれます。ソフトウェアはもちろん、関連するハードウェア(パソコンやプリンターなど)も使えるのが特徴です。

どちらの種類を選ぶべきか?

IT導入補助金のインボイス枠には2種類あって迷いますよね。何を基準にして選べばいいのでしょうか。
これについては、申請者や使いたいITツールによって選ぶべき種類が変わってきます。
たとえば、多くの機能を備えたソフトウェアハードウェアを導入したいならインボイス対応類型がおすすめです。
その一方で、電子取引に関するシンプルな仕組みだけを求めているなら、電子取引類型が良いでしょう。

インボイス枠で使えるソフトウェアの機能とは

インボイス枠で導入できるソフトウェアには、3つの機能があります。

  • 会計機能…お金の出入りを管理する
  • 決済機能…お金のやり取りをスムーズにする
  • 受発注機能…商品やサービスの注文を管理する機能

たとえば、会計機能と受発注機能の2つ備えたソフトウェアを導入したいなら、インボイス対応類型を選ぶと良いでしょう。
反対に、受発注だけのシンプルな機能が欲しいだけなら電子取引類型を選びます。
参考:インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス対応類型で使えるITツールとは

インボイス対応類型において、導入できるツールは次の4つです。

ハードウェア

ソフトウェアを使うために必須の道具です。たとえば、パソコンタブレットプリンターがハードウェアにあたります。

ソフトウェア

たとえば、会計受発注を管理するシステムはソフトウェアです。

拡張機能

オプションとも呼ばれるものです。
ソフトウェアに追加でつけられる便利な機能です。たとえば、セキュリティを強化するために拡張機能を追加することがあるでしょう。

サポートサービス

ソフトウェアを使い始める時に役立つ設定サポートマニュアル作成が、サポートサービスです。

インボイス対応類型で申請する時のポイント

インボイス枠の中でも、インボイス対応類型を選んで申請することに決めたとしたら、次のようなポイントを押さえて申請しましょう。

ソフトウェアを導入することが必須

インボイス対応型で申請したいなら、必ず一つ以上ソフトウェアを導入しなければなりません。
拡張機能やハードウェアについては、導入するソフトウェアに関連しているものなら追加可能です。

新たに購入するツールが対象

既存のソフトウェアやツールをIT導入補助金でカバーしてもらうことはできません。
まだ持っていない、これから購入する新しいツールが対象です。

ハードウェアは必要なものだけが対象

インボイス対応類型ではハードウェアも補助金の対象ですが、あくまでソフトウェアを使うためにどうしても必要な時だけ対象です。
たとえば、受発注ソフトウェアを使うためにどうしてもパソコンが必要だったり、決済ソフトウェアを動かすためにタブレットが必要だったりした場合、パソコンやタブレットなどのハードウェアは対象として認められます。
ただ、そのITツールの価格が市場価格よりも高価すぎると認められない場合があるため、気を付けてください。
また、ハードウェアを購入する際は、ソフトウェアを提供しているIT導入支援事業者から買う必要があります。
ですから、購入前に一度、IT導入支援事業者がハードウェアを取り扱っているかを確認しましょう。
このように、ハードウェアを購入する時は比較的注意点が増えることになるため、あらかじめ確認しておきましょう。
【まとめ】
インボイス枠は、事業者がインボイス制度に対応するための手助けとなる制度です。
インボイス枠の中でも2つの類型があり、それぞれに使えるツールや条件が異なります。
自社に合った枠を選び、必要なソフトウェアや道具を導入することで、業務の効率化やデジタル化を進められるでしょう。
それでもどちらを選べばいいか迷ってしまう事業者は、公式サイトで詳しい情報を確認してください。

インボイス枠でもらえる補助金は最大380万円

IT導入補助金 インボイス枠
インボイス枠で受け取れる補助金の上限額は、最大で380万円です。
下記の3つが対象経費となり、それぞれで上限額が設定されています。
補助金を出してほしいツールの上限額を事前に確認しておきましょうね。

  • ソフトウェア
  • レジ・券売機
  • パソコン・タブレットなど

仮に3つ全部申請したとすれば、最大380万円の補助金を受け取れることになります。
それでは、これから各対象経費ごとの補助額や補助率、具体的な申請条件を解説していきます。

ソフトウェアを導入した場合の補助率、上限額

導入するソフトウェアの機能の数種類によって、補助率や上限額が変わってきます。
特に、補助金額が50万円以上になる場合は、導入するソフトウェアが2機能以上でなければ
なりません。
では、ソフトウェアの機能には何が含まれているかというと、前述した会計機能、決済機能、受発注機能です。
たとえば、会計機能と受発注機能の2機能を備えたソフトウェアを導入したい場合、最大で350万円の補助金を申請できます。
その一方で、1機能のみのソフトウェア導入で申請する場合は、補助金の上限額が50万円までに制限されます。
さらに、小規模事業者かどうかによって補助率も変わってくるのです。
具体的にいえば、小規模事業者であれば補助率が優遇され、1機能の場合は経費の4/5、2機能以上の場合は経費の2/3が補助されます。
ソフトウェアの補助金申請を行う際は、導入予定のソフトウェアが

  • 複数機能を備えているか
  • 機能が重複していないか

を確認しておきましょう。
機能が重複していた場合、それらは一つの機能としてカウントされるため、補助金の申請額が減少するリスクがあります。

レジや券売機を導入する場合の上補助率、上限額

レジや券売機の購入についても、ソフトウェア導入が条件です。
具体的には、決済機能を持ったソフトウェアを導入すれば、最大20万円の補助金を申請できます。
この場合の補助率は、パソコンやタブレット同様、半分です。
たとえば、補助対象となるレジや券売機の購入費用が40万円の場合、その半分にあたる20万円が補助金として振り込まれます。
なお、ソフトウェアを提供する事業者からレジや券売機の購入をする必要があります。
これにより、ソフトウェアとハードウェアの互換性が確保され、システム全体のスムーズな運用ができるでしょう。

パソコンやタブレットなどの導入に関する補助率、上限額

パソコンやタブレットなどのハードウェア導入に関しては、ソフトウェアを導入することが必須条件です。
たとえば、会計、受発注、決済のいずれかのソフトウェアを導入した時のみ、パソコンあるいはタブレットの購入費用を補助してもらえます。
ただし、上限額は10万円までと決まっており、補助率は1/2以内です。
パソコンやタブレットについても、ソフトウェアを提供する事業者から購入しなければなりません。
ですから、購入前に事業者が対象機器を取り扱っているかどうかを確認しておきましょう。
また、補助金申請をする際は、購入するパソコンやタブレットが、ソフトウェアの使用に不可欠だと証明する必要があります。
たとえば、受発注ソフトウェアを運用するためにタブレットを買う場合、そのタブレットがソフトウェアの機能を十分に活用できる機能を有している必要があります。

補助金額が50万円を超える場合はどうなる?

ソフトウェアの購入費用が50万円以上になってくると、補助金の計算法が複雑になります。
ソフトウェア購入費用が50万円以下であれば、補助率3/4(小規模事業者は4/5)が適用されます。しかし50万円を超える部分は補助率2/3に変わります。
たとえば、ソフトウェアの購入代金が100万円だった場合で考えてみましょう。

  • 最初の50万円分には補助率3/4適用→補助金額は50万円
  • 残りの50万円分には補助率2/3適用→補助金額は約33万円

結果として、このケースで受け取れる補助金額の合計は約83万円です。
このように、補助金額が50万円以上になる場合は補助率が変わる部分があるので、事前にシミュレーションしておくと良いでしょう。

インボイス枠の審査項目には何がある?

インボイス枠の審査項目は、ビジネス面政策面に分かれています。
申請すると、専門家で構成された審査委員会が審査を実施します。
審査項目には何があるかみていきましょう。

ビジネス面の審査項目

  • 会社の経営に問題を感じ、改善しようと努力しているか
  • インボイスに対応するために、生産性を高める効果的なツールを導入しているか

ビジネス面では、たとえば、自社がインボイスに対応するためにソフトウェアを導入し、それが生産性アップにつながる計画があるかがみられます。

政策面の審査項目

  • 従業員の賃上げをしているか
  • 国が推進するセキュリティサービスを選んでいるか
  • 生産性アップや働き方改革を目指し、国の関連事業に取り組んでいるか

政策面では、導入するソフトウェアが国の推進するセキュリティサービスを使っているかも評価されます。
審査項目は、ビジネス面が2つ、政策面が3つ、合計5つです。
IT導入補助金の審査は、申請した内容に基づいて行われるため、内容に間違いや不足がないか確認しておきましょう。
もし申請内容を間違えていたことに気づいても、提出後は原則として修正できません。

インボイス枠の加点項目について

インボイス枠の審査項目には、加点項目があります。
加点項目とは、特定の取り組みを行うと審査で加点される項目です。
絶対に加点項目がなくてはいけないわけではなく、任意です。加点項目がまったくなくてもいいですが、審査を通りやすくするためにも加点項目はあったほうが有利です。その分得点が高くなり、採択率が上がるからです。
それでは、加点項目にはどんなものがあるかみていきましょう。

  • 企業の目標を提出している
  • 健康経営優良法人に認定されている
  • 地域経済牽引事業計画を取得している
  • 事業計画に基づいて給与の引き上げを行う
  • サイバーセキュリティお助け隊サービスを選んでいる

これらの取り組みを実施すると、審査で有利になります。

どういう場合に減点される?

加点とは反対に、減点されてしまうケースもあります。
インボイス枠には減点措置があり、特に下記の条件に当てはまっていると減点されてしまうのです。

  • 賃金引き上げ計画が達成できなかった
  • 過去にIT導入補助金を受けたことがある

これらの条件に該当してしまうと、審査の結果に悪影響が及ぶため、事前に解消しておきましょう。

おわりに

IT導入補助金や、インボイス枠について解説してきました。
IT導入補助金は、小規模事業者がITツールを導入し、業務の効率化やデジタル化を促進するための支援制度です。
特に、インボイス枠を活用することにより、インボイス制度に対応するための必要なソフトウェアハードウェアを導入できるでしょう。
IT導入補助金を賢く活用すれば、業務の生産性アップにつながり、企業はますます成長していけます。
インボイス枠は、インボイスに対応した活動や、企業間の取引のデジタル化に向けた支援をするための枠です。
審査ではビジネス面と政策面が評価され、加点項目や減点項目も結果に影響してくるでしょう。
これらの項目を確認しておくことが重要です。
事業者は、申請要件や対象ツールに注意し、専門のIT導入支援事業者と連携して申請を進めてくださいね。

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監修者からのワンポイントアドバイス

IT導入補助金の申請枠の中でインボイス枠のみがパソコンやタブレット、レジなどのハードウェアも対象となっています。インボイス枠でのご申請をされる方は魅力的な選択肢の一つとして検討されることが多いです。生産性向上や賃上げなど所定の項目をクリアする必要があります。