税金先延ばし?事業再構築補助金で圧縮記帳を活用するメリット・デメリット

今回のコラムでは、事業再構築補助金と圧縮記帳の基本的な仕組みから、具体的な活用方法までを詳しく解説しています!
中本 明日香

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事業再構築圧縮記帳のアイキャッチ画像

事業再構築補助金の圧縮記帳とは

事業再構築補助金の圧縮記帳とは、補助金を受け取った際に、圧縮記帳を活用することで、当年の税負担を軽減できる制度のことを言います。
圧縮記帳は、税金を控除するものではなく、繰り越しを行う制度であるため、メリット・デメリットがあり、活用の際には十分検討する必要があります。


事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症拡大により厳しい状況にある事業者を支援するために創設された補助金です。
ポストコロナ時代に向けて、新しい市場への参入や事業形態の変更、事業再編成を行う中小企業などが対象となります。
2024年の事業再構築補助金の具体的な内容・変更点は以下のコラムで解説しています!

【2024年最新】事業再構築補助金とは?2024年から見直しされた点をわかりやすく!


事業再構築補助金を受けた企業の課題

事業再構築補助金を受け取ると、その金額が収益として計上され、税務負担が増加します。
この税務負担をどうやって軽減するかが大きな課題です。

事業再構築補助金の圧縮記帳は認められている

事業再構築補助金における圧縮記帳の公式認可

事業再構築補助金では、圧縮記帳が認められています。以下は公式の引用文です。

中小企業等事業再構築促進補助金は、独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助対象者に交付されるものであり、直接的には国から補助対象者に補助金が交付されるものではないため、圧縮記帳等の適用可否について、中小企業庁を通じて国税庁に確認を行っておりました。
その結果、今般、本補助金については、所得税法第42条又は法人税法第42条に規定する国庫補助金等に該当し、本補助金のうち固定資産の取得に充てるための補助金については、圧縮記帳等の適用が認められる旨の回答を受領致しましたので、ご案内申し上げます
※本補助金のうち、技術導入費、専門家経費等の固定資産の取得以外に充てられた部分の金額については、所得税法第42条又は法人税法第42条の規定の対象外のため、圧縮記帳等の適用は認められませんので、ご注意願います。
引用:中小企業等事業再構築促進補助金における圧縮記帳等の適用について


この認可により、事業再構築補助金を受け取った際に圧縮記帳を利用し、その年の税負担を軽減することができます。
なお、上記のとおり、技術導入費、専門家経費等の固定資産の取得以外に充てられた部分の金額については、圧縮記帳等の適用は認められません

圧縮記帳の基本的な仕組み

1.圧縮記帳とは何か

そもそも圧縮記帳とは、特定の固定資産を購入する際に、その取得に関連する保険金や補助金などを受け取った場合に、その金額を固定資産の購入価格から控除する(圧縮する)会計処理の方法です。

この処理を行うことで、企業は一時的に税金の支払いを先延ばしにすることができます

どのような場合に適用される?

圧縮記帳の主な目的は、補助金や保険金等、売却益に対する法人税の支払いを将来に繰り延べることです。
これは税金を免除するものではなく、支払いを一時的に先延ばしにする手段です。

事業再構築補助金受給時に圧縮記帳を活用すると…?

[業状が厳しい事業者が事業再構築補助金を申請し受け取る]

[圧縮記帳を活用し、補助金に伴う税金の支払いを先延ばしにする]

[新規事業が効果を発揮し、事業者は税金を支払う準備が整う]

たとえば業状が厳しい事業者が「事業再構築」のために事業再構築補助金に申請を行い、受け取った年に補助金額に伴う高額な税金を支払うことが困難な場合に、この圧縮記帳を活用することで、当年支払わなければならない税金を先延ばしにし、事業再構築補助金で支援される新規事業の効果が出たころに支払うことができる仕組みになっています。

具体例

会社Aが新しい生産設備を購入する際、補助金を受け取りました。
生産設備の購入価格は100万円であり、補助金額は20万円でした。この場合、圧縮記帳を適用することで税金の支払いを先延ばしにします。
生産設備の購入価格から補助金額を差し引いた額を計算します。

購入価格: 100万円 補助金額: 20万円 圧縮記帳の限度額 = 100万円 - 20万円 = 80万円
したがって、会社Aは生産設備の購入価格から補助金額を差し引いた額の20%、つまり16万円までの圧縮記帳が可能です。

この処理により、会社Aは補助金を受け取った分の税金の支払いを一時的に先延ばしにすることができます。
具体的な計算方法については、後ほど説明します。

圧縮記帳を使わなかった場合、せっかく補助金を受給してもその年に、法人の場合は3割以上の法人税、個人事業主の場合は5割以上を所得税や住民税で支払わなければならないことがあります

事業再構築補助金で圧縮記帳を活用するメリット

1.税負担軽減の具体的なメリット

事業再構築補助金を利用して固定資産を取得する際に圧縮記帳を行うことには、以下のようなメリットがあります。

メリット【1】税負担の一時的な軽減ができる
圧縮記帳を行うことで、補助金を取得費から除外し、固定資産の取得費を実質的に減らすことができます。
これにより、企業の所得税負担が一時的に軽減されます。
ただし、これは税金の免除ではなく、あくまで税金の支払いを将来に先延ばしするものです。
メリット【2】経営資源の最適活用
圧縮記帳を行うことで、補助金を取得費に算入しないことができます。
これにより、企業はより多くの経営資源を他の目的に割り当てることができます。結果として、当年の事業再構築や成長のための資金を確保することが可能になります。
メリット【3】経営計画の強化
圧縮記帳を行うことで、補助金を取得費から除外することができます。このため、企業の経営計画をより柔軟に調整することができます。必要な投資を最適化し、将来の成長を見据えた経営戦略を立てることができます。
メリット【4】税務リスクの軽減
圧縮記帳を行うことで、補助金を適切に取り扱うことができます。これにより、税務リスクを軽減し、税務当局からの問題や紛争の可能性を低減させることができます。

2.デメリットと注意点

デメリット:後年度に税負担が増加する可能性がある
圧縮記帳を利用することで、当年度の税負担が軽減される場合がありますが、その一方で、繰越し控除の形で後年度に税負担が増加する可能性があります
つまり、税金の支払いが一時的に軽減されるが、後に繰越し控除の影響で増加することがありますので、活用する際は、十分に検討することが必要です。
注意点
注意点としては、圧縮記帳を行う際には適切な手続きや申告が必要であり、税務法規に則った適切な控除を行うことが重要です。
また、税務当局からの監査や調査に備えるため、関連する文書や記録を適切に保管しておくことも重要です。

3.圧縮記帳を使った場合と使わなかった場合の違い

圧縮記帳を使った場合、補助金の金額を資産として計上し、翌年以降に繰り越すことで税負担を軽減できます。

一方、使わなかった場合、補助金が収益としてそのまま計上され、当年の税負担が増加します。

圧縮記帳を使用した場合と使用しなかった場合の当年の税負担の比較

項目圧縮記帳を使用した場合圧縮記帳を使用しなかった場合
当年の税負担軽減増加
翌年以降の税負担増加変化なし(当年のみ考慮)


圧縮記帳の経理方法

圧縮記帳を適用するための経理方法は以下の通りです。

1.適用方法

圧縮記帳の経理方法は以下の3つがあります。
※一部の対象には選択肢2と3が適用できない場合があります。

  1. 直接減額方式:損金経理により買換資産の帳簿価額を減額する方法
  2. 積立金方式:確定した決算において積立金として積み立てる方法
  3. 剰余金積立方式: 剰余金の処分により積立金として積み立てる方法です。ただし、この方法を選択する場合は、圧縮積立金の額を申告書別表四に記載し、所得金額から減算する必要があります。

2.計算方法・計算式

固定資産の取得や改良に国庫補助金等を受け取った場合、その取得費の額は以下の計算式に基づきます。
実際に固定資産の取得や改良に要した金額から、総収入金額に算入されなかった国庫補助金等の額を控除します。

計算式

圧縮限度額=(補助金等の交付を受けた時の帳簿価額-特別償却準備金残額)×補助金等の額(分母の金額が限度)/固定資産の取得に要した金額


例えば、会社Aが補助金として100万円を受け取り、新しい機械を取得した場合の計算は以下のとおりです。
この機械の帳簿価額は300万円で、特別償却準備金残額は50万円です。また、この機械の取得に要した金額は500万円です。
この場合、圧縮限度額を計算すると次のようになります。

圧縮限度額=(300万円 - 50万円) × (100万円 ÷ 500万円) = 250万円 × (0.2) = 50万円

したがって、この会社Aは機械の帳簿価額から特別償却準備金残額を引いた額の20%、つまり50万円までの圧縮記帳が可能です。

3. 手続き方法

この取り扱いを受けるためには、確定申告書において以下の手続きを行う必要があります。

  1. 確定申告書に、固定資産の取得や改良に充てた国庫補助金等の金額を記載する。
  2. 国庫補助金等の交付を受け、その交付の目的に適合した固定資産の取得や改良を行ったことを証明する書類を添付する。

これにより、国庫補助金等を総収入金額に算入しない扱いが適用されます。
詳細な手続きや書類の提出方法については、国税庁の指示に従ってください。
国税庁「第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」

圧縮記帳の詳細

1.圧縮記帳の期ずれの対応方法

補助金や保険金を受け取った年に圧縮記帳を行いますが、場合によっては補助金の支給や固定資産の取得が異なる年度になることがあります
このような場合、圧縮記帳における期ずれが生じます

期ずれとは、補助金や保険金を受け取った年度と固定資産を取得した年度が異なることによって生じる差異を指します。
期ずれの解決方法として、以下の対応方法があります。

  1. 補正計上: 圧縮記帳を行った年度と補助金や保険金を実際に受け取った年度が異なる場合、補正計上を行います。具体的には、受け取った年度に補助金や保険金を受け取ったことを記録し、その金額を圧縮記帳の対象となる固定資産の帳簿価額から控除します。これにより、圧縮記帳を正確に適用し、期ずれを解消することができます。
  2. 期ずれ調整: 圧縮記帳を行った年度と補助金や保険金を実際に受け取った年度が異なる場合、期ずれ調整を行います。これは、圧縮記帳を行った年度と補助金や保険金を受け取った年度の差額を、後続の会計年度で補正することです。具体的には、圧縮記帳を行った年度にはその年度の金額を控除し、補正する年度には期ずれの分を加算することで、正確な資産の帳簿価額を反映させます。


2.資産を先行取得した後補助金を受給した場合の圧縮記帳

先行取得とは、補助金の入金よりも先に資産を取得することをいいます。
過去の圧縮記帳が適用されていたのは、補助金を受けた後に資産を取得する場合が想定されていました。

しかし、現在の補助金は、先に自己負担で資産を取得し、実績報告を行った後にやっと補助金を受け取るというパターンがオーソドックスです。
そこで、そういった場合の考慮もあり、令和4年度に法改正が行われ資産を「先行取得」をした場合の圧縮記帳も適用されるというものになりました。
参考:国税庁資料
固定資産の取得後に国庫補助金等を受ける場合の圧縮記帳について、次の規定があります。

  • 連結法人が国庫補助金等の交付を受けた日の前の事業年度に、その交付の目的に適合する固定資産の取得等を行った場合、受け取った国庫補助金等に対して、法人税法の規定に基づいて圧縮記帳を適用することができます。
  • 圧縮限度額は、法律で定められる方法に従って計算されます。連結法人の場合は、令第82条の規定に従います。

注釈:

  1. 特別償却不足額がある場合、その特別償却不足額が生じた事業年度において圧縮記帳を適用した場合の特別償却限度額を基礎として修正します。

この規定により、固定資産の取得後に国庫補助金等を受けた場合の圧縮記帳の取扱いが明確化されます。

3.圧縮記帳の適用条件と制約

圧縮記帳を適用するためには、特定の条件を満たす必要があります。
例えば、資産の取得から一定期間内にその資産を事業で使用する予定があることや、適用に関する税務署への届出などが該当します。
また、一部の資産や業種には圧縮記帳の適用が制限される場合がありますので、これらの条件や制約を理解し適切に対処する必要があります。
補助金を取得した場合に圧縮記帳を適用する条件は以下のとおりです。

  1. 資産の先行取得:
    • 補助金を受け取る前に固定資産を取得する場合、受け取った補助金額で資産価格を調整することができます。
    • 資産の取得から1年以内に事業で使用する予定がある必要があります。
  2. 申告書の提出:
    • 買換え資産を取得した事業年度終了の翌日から2か月以内に、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を所轄税務署に提出する必要があります。
  3. 資産の特定:
    • 圧縮記帳の対象となる資産は、「特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳の対象となる資産」に詳細に記載されています。これに該当する資産であることを確認する必要があります。

以上の条件を満たす場合に、補助金を取得した倍の圧縮記帳を適用することができます。
参考:国税庁「第2節 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」

まとめ

事業再構築補助金の活用により、新しい取り組みや成長への支援を受けられる一方で、圧縮記帳を使うことで税務負担を軽減することが可能です。
しかし、適切に活用するためには、法規や手続きを正確に理解し、慎重に計画を立てる必要があります

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この記事を監修した専門家


井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。