ものづくり補助金の専門家経費を徹底解説

ものづくり補助金で使える専門家経費の内容や上限、対象範囲、旅費の扱いをわかりやすく解説。申請時に誤りや無駄を出さないための注意点も紹介します。
菱谷 里沙子

更新日:

ものづくり補助金 専門家経費

この記事を監修した専門家

監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

このコラムのポイント

  • 旅費は支給対象だが、規定に沿った計算と書類準備が必要
  • 税理士・弁護士なども対象だが、税務申告など一部業務は対象外
  • 専門家経費は事業に必要な助言・コンサル料で、一日上限5万円・複数見積が必須

ものづくり補助金の専門家経費って何のこと?

ものづくり補助金 専門家経費
ものづくり補助金の補助対象経費には、専門家経費があります。たとえば謝礼は専門家経費になります。

しかし、専門家経費についてはさまざまな疑問が生じるでしょう。

例)

  • 専門家経費の上限はどのくらいか
  • どこまでが専門家に含まれるのか
  • 税理士や公認会計士は対象になるのか
  • 見積もりが必要なときはどんなときか


ここでは、ものづくり補助金における専門家経費の詳細を解説していきます。

専門家経費の概要

専門家経費とは、ものづくり補助金で実施する事業に関連して、専門家に支払う費用のことです。

例)

  • 助言
  • コンサルティングや技術指導

経費の最大半分が対象として認められます。専門家に支払うコンサルティング業務や国内旅費も認められるでしょう。

ただし、一日あたりの謝金は5万円が上限(消費税抜き)で、複数の見積書を取得し、妥当性を証明する必要があります。

専門家の範囲は?税理士や公認会計士は対象?

ものづくり補助金の公募要領では、広範囲にわたる専門家が対象とされています。

以下はその一例です。

  • 学識経験者
  • フリーランスや兼業・副業の専門家
  • 大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師

税理士や公認会計士も専門家として認められますが、税務申告や決算書作成に関連する経費は対象外です。

補助対象経費の上限

専門家経費には上限が設けられています。

具体的には、以下の通りです。

  • 技術士や中小企業診断士など…一日4万円以下
  • 大学教授や弁護士、公認会計士などの難関資格を持つ専門家…一日5万円以下

これら複数の見積もりを提出することで、通常の専門家でも一日5万円まで引き上げることが可能です。

専門家経費の旅費はいくら?

専門家経費には、旅費も含まれます。

ただし、国内外の旅費支給に関する基準に従ってください。

たとえば、出張先が遠方の場合や海外出張が必要な場合は、具体的な規定に基づいて計算し、適切に処理することが求められます。

まとめ

ものづくり補助金における専門家経費は、事業に関連する専門家への支払いを補助対象とする経費です。

税理士公認会計士も対象ですが、税務申告や決算書作成に関する経費は含まれません。

補助対象経費の上限や旅費の範囲も定められているので、申請の際には注意しましょう。
参考:【経済産業省】事例から学ぶ「ものづくり補助金」

ものづくり補助金の専門家経費についてのFAQ

Q1. 専門家経費はいつ支払われる?

A1. 多くの場合、補助金交付後に実績報告を行い、その内容が認められてから支払いが確定します。

Q2. オンライン指導でも専門家経費になる?

A2. 事業に必要な助言であれば、オンライン形式でも専門家経費として認められることがあります。

Q3. 同じ専門家へ複数日の依頼は可能?

A3. 可能ですが、一日あたりの上限額を超えないようにしましょう。

Q4. 見積もりは何社必要?

A4. 補助金の妥当性判断のため、原則2~3社の相見積もりが必要です。
参考:ものづくり補助金のご案内

ものづくり補助金って何?


出典:【2025年】ものづくり補助金の概要が公表されました
ものづくり補助金は、日本の中小企業にとって大切な支援策のひとつです。経営革新を進めるための設備投資や、技術導入を後押しするために国から支給される補助金といえます。

製造業だけでなく、飲食業やサービス業など、幅広い業種の中小企業が利用可能です。企業活動における革新や改善の支援として、重要な役割を果たしています。

ものづくり補助金は、経営革新を実現するために設備投資や技術導入などを支援する目的で設立された補助金です。

最大の特徴は、補助金の上限額が750万円から5000万円高額で、補助率が1/2または2/3と高いことです。

これにより、企業は経営を革新するための資金調達がしやすくなり、新たな設備の導入や技術の開発が加速します。

また、ものづくり補助金は製造業だけでなく、さまざまな業種に対応しています。

  • 印刷業
  • 飲食業
  • 食品加工業
  • サービス業

なども対象です。業種を問わず企業の革新に必要な経費を支援しています。

機械装置だけでなく、ソフトウェアやシステム構築のための費用も対象となるため、幅広い活用が可能です。
参考:【公式】ものづくり補助金総合サイト
みんなの補助金コンシェルジュでは、ものづくり補助金の専門家経費についてもサポートしています!「専門家に申請書作成を依頼したい」「経費計上できる範囲を確認したい」などのご相談は、ぜひお気軽にどうぞ。
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ものづくり補助金の対象経費

ものづくり補助金の対象経費は、特にいくつかのカテゴリにわかれており、各カテゴリには特定の条件や制限があります。

まずは、対象経費の区分について理解しておきましょう。

機械装置・システム構築費


出典:総務省|令和元年版 情報通信白書
機械装置・システム構築費は、ものづくり補助金の中心となる経費のひとつです。これには、設備投資としての機械や装置、またはITシステムの導入にかかる費用が含まれます。

主なポイントとして、機械装置は単価が50万円以上でなければならないという条件があります。

たとえば、複数の機械を購入して合計額が50万円を超えても、単価が50万円未満であれば、対象外です。

さらに、設備購入に加えて、設備の

  • 改良
  • 修繕
  • 据付け

にかかる費用も対象です。

ただし、設備の設置に関する基礎工事や整備工事など、軽微でないものは対象外です。また、ソフトウェアやシステムに関する費用も含まれます。

ここで大切なのは、構築借用の違いです。構築とは、カスタマイズや特別な開発が行われる費用であり、これには外注費用が含まれます。自社で行った場合、その人件費は対象外です。

借用とはリースやレンタル契約に基づく費用であり、これも補助金の対象です。

技術導入費

技術導入費も重要な対象経費のひとつです。新しい技術を導入するための費用や、これに関連する研究開発活動が含まれます。

企業が競争力を高めるために必要な技術や、ノウハウを取り入れるための投資として、とても重要な位置付けです。

専門家経費

専門家の助言指導を受けるための費用も補助対象です。たとえば、外部のコンサルタントや専門家を雇い、技術導入や事業運営の改善を図る場合、その費用も補助金を通じて支援してもらえるでしょう。

これにより、企業は自社の技術的な課題を解決するために必要なサポートを受けられます。

運搬費

新たに導入した機械装置やシステムの運搬にかかる費用も補助対象に含まれます。ただし、運搬のための費用があくまで合理的かつ必要なものでなければなりません。

無駄な運搬費用を申請しても対象外となるため、必要な分だけを申請してください。

クラウドサービス利用費


出典:クラウドサービスの仕組み
最近では、多くの企業がクラウドサービスを利用してシステムを構築しています。このようなクラウドサービスにかかる費用も、ものづくり補助金の対象経費です。

クラウドを利用することで、システム運用の効率化コスト削減を実現可能です。これを活用した企業にとっては、大きなメリットとなるでしょう。

原材料費、外注費

ものづくりに直接必要な原材料費や、外注にかかる費用も補助金の対象です。製品やサービスの開発改良のために必要な素材や部品、または外部の専門業者に委託する作業の費用も支援してもらえます。

知的財産権等関連経費

新たに開発した技術や製品に関して、知的財産権の取得費用登録にかかる費用も補助対象です。

特に特許や商標の取得は企業にとって大事な資産となるため、これをサポートする費用も補助されます。

海外旅費

グローバル展開を目指す企業では、海外市場開拓に関連する費用も補助の対象です。海外の展示会や商談会に参加するための旅費が支援されるため、海外進出を考える企業にとっては、有効な支援策になるはずです。

対象外となる経費

一方で、すべての経費が補助対象となるわけではありません。対象外になる経費も存在します。

対象外となる経費の代表例として、

  • プリンタ
  • パソコン
  • スマートフォン
  • タブレット端末

など、汎用的な設備や機器があります。

これらは他の業務にも利用できるため、補助事業の目的外使用とみなされています。

また、

  • 車両
  • 構築物
  • 工場建屋
  • 不動産の購入

なども対象外です。

これらは補助金の趣旨に反するものとして、支援対象から外れてしまいます。申請時にはこれらの費用を申請しないよう注意してください。

ものづくり補助金申請の注意点

ものづくり補助金を申請する際には、事前にしっかりと準備をすることが求められます。

まずは、対象経費が自社の投資に該当するかどうかを確認してください。また、補助金の申請には一定の要件や申請期間が設けられているため、最新の公募要領を確認し、必要書類を整えましょう。

申請内容に対して審査が行われるため、どの経費が補助対象となるか、申請の詳細について十分に理解しておいてください。

特に、補助対象経費に関する誤解や不明点がないよう、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

まとめ

ものづくり補助金は、中小企業にとって大切な支援策です。設備投資や技術導入を通じて、企業の経営革新を促進するために大いに活用できるでしょう。

補助対象経費には、機械装置やシステム構築費、技術導入費、専門家経費など多岐にわたる項目が含まれますが、同時に対象外となる経費もあります。

申請をスムーズに進めるためには事前にしっかりと計画を立て、補助金の活用方法を理解してください。
参考:【公式】公募要領
ものづくり補助金の専門家経費に関するご相談は、みんなの補助金コンシェルジュにお任せください。「申請書の作成を専門家に頼みたい」「どの経費が認められるか知りたい」といった方も、下記フォームからお気軽にお問い合わせください。
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ものづくり補助金における専門家経費の具体例

専門家経費の具体例を紹介します。

中小企業診断士への依頼


出典:ブルーオーシャン診断士の特徴
ものづくり補助金の対象となる経費には、中小企業診断士に依頼し、新規事業に関する助言を受ける費用が含まれます。

たとえば、事業計画の立案や収支計画、オペレーションや販売計画に関するアドバイスを求めた場合、その費用は専門家経費として認められます。

ただし、会社全体の経営に関する助言や既存事業に対する支援は対象外です。

大学教授への技術的な助言

製造業が新しい商品を開発する際には、専門的な技術や知識が求められます。たとえば、新しい製品の開発に関する技術的な助言を大学教授に依頼する場合、そのコンサルティング費用も専門家経費として計上可能です。

こうした専門家からの知見は、製品開発の進行に有効であり、補助金を活用して支払うことができます。

ものづくり補助金の専門家経費の注意点

専門家にかかった費用も経費として認められるものの、注意点があります。

専門家経費には上限がある

専門家経費には、補助金で認められる上限が設けられています。具体的には、専門家経費の総額は、補助対象経費総額の2分の1以下であることです。

これは、ものづくり補助金のメインの経費である機械装置や、システム構築費用に多くの予算が割り当てられるためです。また、専門家への謝礼単価にも上限が設けられています。

以下を参考にしてください(消費税抜き)。

  • 大学教授、弁護士、公認会計士、医師…一日5万円以下
  • 大学准教授、技術士、中小企業診断士、ITコーディネータ…一日4万円以下

これらの上限額を守る必要があります。過剰な報酬設定は補助金の対象にならないので、十分に注意してください。

申請支援費用は対象外

ものづくり補助金の申請を支援してくれる専門家への依頼費は、専門家経費には含まれません。

たとえば、申請書作成や申請手続きに関する支援を受けた費用は補助対象外です。これには着手金や成功報酬も含まれるため、専門家に申請支援を依頼する場合はその費用を補助金でカバーできません。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金の概要対象条件を確認していきましょう。

対象となる事業者は誰?

ものづくり補助金は、主に中小企業個人事業主が対象です。

出典:個人事業主とは?
具体的には、資本金額や従業員数が一定の基準を満たす事業者が申請可能です。対象となる事業者は、製造業を中心に多岐にわたりますが、特定のNPO法人や組合なども補助金を受けられる場合があります。

受け取れる金額はいくらくらい?

ものづくり補助金の受け取れる金額は、応募する枠や従業員数によって異なります。たとえば通常枠に応募する場合、従業員数が21人以上の事業者は、最大1,250万円を受け取ることが可能です。

事業規模に応じた支援がされるため、規模の大きな企業ほど多くの補助金を受け取ることができます。

まとめ

専門家経費は、事業に必要な専門知識を持つ専門家に依頼したコンサルティング費用を賄える経費項目です。

新規事業に関する助言や、技術的な支援を受ける際に活用することで、事業を有利に進めることが可能です。

前述したように専門家経費には上限が設けられており、補助対象外の経費もあるため、気を付けてください。ものづくり補助金をうまく活用し、事業を成長させましょう。

それぞれの経費のポイント

ものづくり補助金 専門家経費事業に使う機械類も経費として認められますが、それ以外の項目も経費として認められます。

その中でも、ここでは技術導入費、専門家経費、外注費について、さらに詳しく解説していきます。これらは、補助金を活用するために重要な経費項目です。

それぞれの経費がどのような内容を含むか、申請時には何に注意すべきかについても触れていきます。

技術導入費のポイント

技術導入費とは、本事業の実施に必要な知的財産権の導入にかかる費用を指します。

  • 意匠権
  • 著作権
  • 商標権
  • 特許権
  • 実用新案権

上記は知的財産に関わる費用です。

出典:意匠権とは?身近な例をもとにわかりやすく説明して使い道も解説|弁理士が図解で解説
これらは知的財産に関する経費が対象ですが、公募要領には知的財産に関する経費の範囲が明示されていません。

一般的には、上記のような権利を取得するための費用が、対象経費として認められています。

たとえば、他者の知的財産権を取得する場合、その契約には書面での契約締結が必要とされています。

契約書の作成や法的手続きなどにかかる費用も対象となり、事前に適切な書類を準備しておくことが求められます。

知的財産権を取得することで新しい技術や製品開発につながる恐れがあるため、事業の競争力を高めるためにも大切です。

専門家経費のポイント

前述した専門家経費は、事業の実施に必要な専門的な支援を受けるために支払われる費用です。

具体的には、コンサルタント料や専門家に依頼した場合の報酬、旅費などが該当します。

専門家に依頼することで、より専門的な知識や経験を事業に反映させることができ、効率的な事業運営が可能です。

専門家には、

  • 弁護士
  • 弁理士
  • 公認会計士
  • 学識経験者
  • フリーランス
  • 大学教授・准教授

など、幅広い分野の専門家が含まれます。特に、補助金の活用においては、専門家からのアドバイスや支援が重要な役割を果たします。

ただし、専門家への支払いには日当の上限があります。前述したように、最大でも一日あたり5万円が上限です。

また、税理士や会計士への報酬に関しては、決算書や税務申告の作成にかかる費用は対象外です。専門家のアドバイスが補助事業に直接関連する場合にのみ、経費として認められることに留意してください。

外注費のポイント


出典:個人事業主の外注工賃とは?外注費との違い・消費税区分・仕訳方法など
外注費とは、外部に業務を委託する際にかかる費用です。製品の開発やサービスの設計・検査などの業務を外部の企業や専門家に委託する場合に、その費用が外注費として認められます。

ただし、外注費にはいくつかの制限があり、注意しなければならないポイントがあります。たとえば、機械装置の製作やシステムの構築にかかる費用は外注費ではありません。

機械装置・システム構築費として計上されます。また、外注先の企業にも制限があります。

同一の代表者や役員が含まれている事業者や、過去に補助金を受けた企業への外注費は対象外となるでしょう。

そのため、外注先を選定する際には、事前に相手企業の状況を確認してください。さらに、外注契約には書面での契約締結が求められます。

契約内容をしっかりと整備し、双方が合意する形で進めることが必要です。これによって、補助金を適切に活用できることが保証されます。

技術導入費、専門家経費、外注費に共通する注意事項

これらの経費には共通していくつかの大事な注意点があります。まず、技術導入費、専門家経費、外注費は、同一の取引先に併せて支払うことはできないという制約です。

一社に全ての専門家経費や外注費をまとめて支払うことはできません。それぞれの経費項目は、異なる取引先に分けて支払う必要があるため、計画的に進めてください。

また、補助金には補助事業期間が定められています。その期間内に事業を完了させ、支払いも終わらせなければ、補助金は交付されません。

特に、技術導入や専門家の支援を受ける場合、時間がかかる場合もあるでしょう。事業を進める際には十分に余裕を持って計画を立て、期間内に完了できるように準備を整えてください。

まとめ

ものづくり補助金の対象経費として、

  • 外注費
  • 技術導入費
  • 専門家経費

について詳しく解説してきました。

これらの経費は、自社のリソースだけではカバーできない部分を、他者の協力で補うことが可能です。事業の成長を加速させるために必要な経費なので、対象として認められています。

補助金を効果的に活用するためには、こうした経費項目を上手に活用し、計画的に事業を進めましょう。

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人物

監修者からのワンポイントアドバイス

ものづくり補助金の外注費、専門家経費などは自社では出来ない助言などのサポートに対して発生する経費項目となります。これらは同一の取引先に対してまとめて支払うことはできません。また補助金の申請支援手数料は除外されることに注意しましょう。