ビニールハウス導入を支援する補助金制度のガイド
ビニールハウスの設置に利用できる補助金制度があります。本記事を読めば、各種補助金の種類、申請方法、成功事例を紹介し、農業経営の効率化を図るための情報がわかります。
この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
ビニールハウスはなぜ必要?

出典:大型多目的ビニールハウス
ビニールハウスは、農業の大きな支えになるため、必要です。
私たちの身近な農作物は、季節や天候に大きく左右されます。春や夏だけでなく、冬でも新鮮な野菜を食べられるのは、農家が工夫して栽培環境を整えているからです。
その中で、特に注目されるのがビニールハウスです。
ビニールハウスは、農家にとって大事な役割を果たしており、農作物の生産や品質に直接関わっています。
そもそもビニールハウスとは?
ビニールハウスとは、簡単にいえば、透明なビニールで覆われた小さな建物のことです。
形はハウス型やドーム型などさまざまで、内部は太陽の光を取り入れやすく、外の寒さや雨風から作物を守ることができます。
ビニールハウスの中では、気温や湿度をある程度コントロールできるため、天候に左右されずに農作物を育てることが可能です。
ビニールハウスの役割4つ
ビニールハウスには、次の4つの大事な役割が期待できます。
季節や天候に関係なく栽培できるようにする
通常、野菜や果物は季節ごとにしか育ちません。
しかし、ビニールハウスを使うことで、夏にしか育たない野菜を冬に育て、春に収穫する作物を早く作ることが可能です。
たとえば、トマトやイチゴはビニールハウスを使うことで、冬でも甘くて新鮮なものを出荷できるでしょう。
気温や湿度の管理で品質を安定させる
ビニールハウスは、気温や湿度をコントロールできます。
外の天気が寒くても暖房で温めることができ、湿度が高すぎるなら、換気で調整が可能です。
これにより、作物が病気にかかりにくくなり、見た目も味も安定したものを育てられるでしょう。
たとえば、同じハウスで育てたトマトは、甘さや形がそろい、消費者にとっても安心です。
害虫や自然災害から作物を守る
外で育てる作物は、風や雨、雹などの自然災害や、虫による被害を受けやすいです。
しかしビニールハウスを使えば、外からの害虫をある程度防ぎ、風や雨の影響も減少します。
特に日本のように台風や大雨が多い地域では、ビニールハウスの存在は、作物を守るためにも欠かせません。
効率的な作業ができる
ビニールハウスの中で栽培していれば、農作業を効率的にできます。
例)
- 苗を植える作業や水やり
- 収穫などをハウスの中で集中して行う
移動時間が減り、作業の負担が軽くなるでしょう。
また、ハウス内での作業は天候に左右されにくいので、雨の日でも作業が可能です。
ビニールハウスにも課題があります
もちろん、ビニールハウスにも課題があります。
建設費や維持費が高いことです。
大きなハウスを作るには、何百万円もかかることがあります。
ビニールが破れたり劣化したりしたなら、交換や修理が必要です。
また、電気や暖房を使う場合は光熱費もかかります。
これらの費用は、小さな農家にとって大きな負担となるでしょう。
ビニールハウス導入に使える補助金制度の概要
農家がビニールハウスを導入する際に助けとなるのが、補助金制度です。
補助金とは、国や地方自治体から出されるお金の支援で、条件に合う農家が使うことが可能です。
補助金を活用すれば、自己資金の負担を減らし、ビニールハウスや農機具を導入しやすくなるでしょう。
補助金とはそもそも何か
補助金は、農家の負担を減らすために国や自治体がお金を出す制度です。
農業は天候や市場価格に左右されやすく、設備投資にも大きな費用がかかります。
しかし、補助金を使えば、農家は必要な設備や施設を導入しやすくなり、経営を安定させることが可能です。
ビニールハウスや倉庫、温室設備などを建設・改修する費用の一部を補助してもらえる制度を使えば、初期費用の負担を減らし、高性能なハウスや施設を導入しやすくなるでしょう。
農業に活かせる補助金にはいくつか種類があるので、次から説明していきます。
補助金の種類には何がある?
スマート農業技術導入の補助金
最近では、ドローンやIoTセンサーなどを使ったスマート農業が注目されています。

出典:IoTセンサの役割や種類・選び方を解説|活用事例も紹介
作物の生育状況をデータで管理し、農薬散布を自動化する技術です。
これらの技術の導入費用も、補助金で支援されることがあります。
環境保全型農業の補助金
環境保全型農業の補助金は、農薬や化学肥料を減らした農法を行う農家に対して、支給されます。
持続可能で環境にやさしい農業を推進することが目的です。
たとえば、有機栽培や減農薬栽培を行う場合に適用されます。
参考:【公式】農林水産省
補助金申請の5つのステップ

補助金を受け取るには、一定の手続きが必要です。
基本的な流れは次の通りです。
①情報収集
国や自治体のwebサイト、JAなどで、自分の農業に合う補助金を探しましょう。
②申請書類を準備する
補助金ごとに、
などが必要です。
どのように設備を使うか、どのくらい効果があるかを具体的に明記しましょう。
③申請書を提出する
通常、オンラインシステムで提出しましょう。
④審査
提出書類をもとに、自治体や国の担当者が審査します。
場合によっては、追加資料を求められます。
⑤交付決定・実際に活用する
審査に通ると補助金の交付が決まります。
設備を購入・設置し、その後に使用状況を報告します。
参考:補助金活用ナビ
補助金を活用するメリット4選
補助金を活用すると、次の4つのメリットが期待できます。
初期費用の負担を軽減できる
高額なビニールハウスの建設費用の一部を補助してもらえます。
作業効率が上がる
スマート農業機器の導入で、少人数でも効率的に作業ができるでしょう。
収量や品質が安定する
設備投資で作物の管理がしやすくなり、安定した収穫が可能です。
災害対策になる
ハウスや倉庫の整備で、台風や大雨などから作物を守ることができます。
実際の活用例をみてみよう
たとえば、北海道のある農家では、補助金を使って大きなビニールハウスと自動田植え機を導入。
収穫物の品質を安定させながらも、作業時間を半分に減らすことができました。
結果、高齢の農家でも効率的に農業を続けられるようになりました。
また、スマート農業の技術を取り入れた農家は、センサーで水や肥料の量を自動管理し、野菜の生育状態をリアルタイムで確認できるように。
病気や成長不良を早く見つけて対処できるようになりました。
参考:【公式も】のづくり補助金総合サイト
ビニールハウスに関する主要な補助金制度
ビニールハウスに関連する主要な補助金制度について、特に、強い農業・担い手づくり総合支援交付金という制度に焦点を当てて詳しく解説します。
この制度は、農業経営の発展を支援するために設けられました。
特にビニールハウスの導入や整備において、大きな役割を果たしています。
ビニールハウスはなぜ重要か
ビニールハウスは、農業において作物の生育環境を最適化するための施設といえるため、重要です。
特に、温度や湿度を管理することで、季節に関係なく安定した生産が可能です。
これにより、農家は収穫量を増やし、品質の高い作物を市場に提供できるでしょう。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金の基本知識
強い農業・担い手づくり総合支援交付金の、制度の目的は何でしょうか。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金は、農業経営体が地域の農業を活性化させるための取り組みを支援することが目的です。
農業の生産性向上や経営の安定化を図るために、農業用機械や施設の導入に対する補助金を提供します。
対象となる事業
この交付金は、以下のような事業に対して支給されます。
ビニールハウスの新設・増設
新たにビニールハウスを設置する場合や、既存のハウスを拡張する場合に利用可能です。
設備の更新
古くなったビニールハウスの改修や、最新の環境制御装置の導入に対する支援も含まれます。
条件不利地域での営農支援
農業が行いにくい地域での営農を支援するための、特別な補助も用意。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金の種類
強い農業・担い手づくり総合支援交付金には、主に以下の2つのタイプがあります。
地域担い手育成支援タイプ
地域の農業を支えるための基盤を強化することを目的とした支援です。
特に、地域の農業経営体が中心となり、共同で取り組むプロジェクトに対して補助が行われます。
先進的農業経営確立支援タイプ
新しい技術や手法を導入することで、農業の効率化や生産性向上を目指す事業に対する支援です。
特に、スマート農業や環境制御技術の導入が対象です。
補助金の申請方法
事業計画を策定する
申請するためには、まず具体的な事業計画を策定する必要があります。
この計画には、
などを明記しましょう。
必要書類を準備する
申請には、以下のような書類が必要です。
- 申請書
- 事業計画書
- 収支計画書
- その他、必要に応じた証明書類
申請書を提出する
オンラインで提出しましょう。
提出先は、地域の農業関連機関や自治体の農業課などです。
審査と交付決定
提出された書類は審査され、問題がなければ補助金の交付が決定。
申請時の注意点
下記の2点に注意しましょう。
申請期限
補助金には申請期限が設けられているため、早めに準備を進めましょう。
条件を確認しておく
各補助金には特定の条件があるため、事前に確認しておいてください。
強い農業・担い手づくり総合支援交付金の活用事例2つ
実際に、強い農業・担い手づくり総合支援交付金を活用し、ビニールハウスを導入した農家を2つ紹介します。
事例1
A県の農家は、補助金を利用して新たにビニールハウスを設置しました。
これにより、収穫量が大幅に増加し、品質も向上。
特に、冬季でも安定した生産が可能となり、収入が増加しました。
事例2
B市の農家は、古いビニールハウスを改修するために補助金を活用。
改修後は環境制御装置を導入し、それによって温度や湿度の管理が容易になりました。
作物の生育が改善され、販売価格も上昇。
今後の展望
今後、農業を取り巻く環境は変化し続けるため、補助金制度もそれに応じて進化することが期待されます。
特に、環境への配慮や、持続可能な農業の実現に向けた支援が強化されるでしょう。
ビニールハウスの導入は、農業の生産性向上に寄与するだけでなく、地域経済の活性化にもつながります。
補助金制度を上手に活用することで、農家は安定した経営を実現し、持続可能な農業を推進することが可能です。
小規模事業者持続化補助金の概要と目的

小規模事業者持続化補助金とは、日本の中小企業や小規模事業者が、
などを行う際に利用可能な、国の支援制度です。
ここでいう小規模事業者とは、従業員数が一定以下の事業者で、業種によってその数は異なります。
具体的には、下記が目安です。
- 商業・サービス業→5人以下
- 製造業・建設業・運輸業→従業員20人以下
小規模事業者持続化補助金の目的は、単に資金を提供することではありません。
事業者が自らの経営計画を立て、持続的に成長する力をつけることにあります。
例)
- 店舗や施設の改装
- 販売促進のための広告活動
- 新しい商品やサービスの開発
このように、事業の拡大や改善につながる取り組みに利用可能です。
補助金を活用することで、小規模事業者は自分たちの事業に必要な設備投資や、販路開拓がしやすくなるでしょう。
特に、地方で営業している小規模事業者にとっては、広告や販促の費用は大きな負担になるでしょう。
そんなとき、小規模事業者持続化補助金はその負担を軽減し、地域経済の活性化にもつながります。
小規模事業者持続化補助金は単年度で支給されるため、毎年公募が行われています。
事業者は自分の経営計画に沿った形で補助金の申請書を作成しましょう。
計画の実現可能性や効果が審査されます。
審査に通ると、申請した内容に基づいて実際に支援金が支給され、その分を計画を実行するための費用に充てられます。
具体的な活用例は?
小規模な農家が新しい野菜のブランド化を行った例が考えられるでしょう。
新しいパッケージデザインや販促用のチラシ制作に補助金を使うことで、販売力を高め、収益を増やすことが可能です。
また、店舗を改装して来店しやすい環境を整える場合も、活用できます。
資金の支援だけでなく、計画書を作る過程で自分の事業を見直すきっかけにもなるでしょう。
小規模事業者持続化補助金の申請方法と支給額
小規模事業者持続化補助金の申請方法は、まず商工会議所や商工会に相談するところから始まります。
こうした団体では、申請書の作成方法や、必要な書類についてアドバイスをしてくれるでしょう。
補助金の公募期間は年度によって異なりますが、毎年1回以上の募集があります。
申請書には、事業について、
- 現状
- 課題
- 補助金を使ってどのような改善や成長を目指すか
などを具体的に書いてください。
さらに、補助金を使う費用の見積書や計画書も添付しましょう。
提出された申請書は、専門家や審査員によって評価され、支給の可否が決定されます。
支給額は、原則として補助対象となる経費の2/3以内です。
たとえば、100万円の費用がかかる計画であれば、最大で約66万円までが補助金として支給されるでしょう。
補助金の上限額は、一般的に50万円から100万円程度です。
しかし、特定の条件を満たす場合には上限が引き上げられることもあります。
対象となる経費には、
- 改装費
- 設備購入費
- 広告宣伝費
- 展示会出展費
- ホームページ制作費
などが含まれます。
ただし、補助金は経費全額をまかなうわけではありません。
残りの費用は、事業者自身で負担します。
また、申請書の内容と計画通りに実施することが求められるため、適切に計画し、実行しましょう。
産地生産基盤パワーアップ事業
産地生産基盤パワーアップ事業は、農業分野に特化した国の支援制度です。
農作物を効率的に安定して生産できるよう、農地や生産設備の整備を支援することが狙いです。
特に、地域の農家や農業法人が共同で取り組むことを想定しており、地域全体での生産力や品質向上を目指しています。
具体的な目的は、大きくわけて2つあります。
農産物の供給を安定化させる
1つは、農産物の安定供給を確保することです。
自然災害や気候変動の影響で、農作物の生産は不安定になりがち。
産地生産基盤パワーアップ事業で生産基盤を強化することで、災害時でも被害を最小限に抑え、安定的な供給を目指します。
競争力を高める
もう1つは、地域農業の競争力を高めることです。
効率的な生産や高品質化を実現することで、国内外の市場での販売力を向上させることが可能です。
活用例
たとえば、トマトやイチゴなどを栽培する地域で、
するなどしたい場合に、こ産地生産基盤パワーアップ事業の補助金を活用できます。
また、収穫作業を効率化するためのコンベアや洗浄機の導入なども対象です。
農家単独では導入が難しい設備も、共同で行うことで経済的負担を分散できるでしょう。
対象経費と支給条件
産地生産基盤パワーアップ事業で補助される経費は、主に農作物の生産効率や品質向上に直接関わる費用です。
具体的には次のようなものがあります。
- 農地の整備や土壌改良費
- 灌漑設備や排水設備の整備費
- ビニールハウスや温室の建設・更新費
- 生産作業を効率化する機械や器具の購入費
支給条件として、次のポイントがあります。
地域の農家や法人が計画的に取り組む
単独の農家よりも、複数の農家や団体が共同で行う計画が対象となることが多いです。
事業計画が具体的

出典:新規業を始める際に欠かせない「事業計画書」の解説・基礎知識・作成のポイント
補助金を使って何を改善し、どのような効果を期待するのかが明確でなくてはなりません。
補助対象経費に当てはまる
土地の購入費や個人的な費用は対象外であり、生産基盤の整備に直接関わる費用が対象です。
支給額は事業規模や計画内容によって異なりますが、一般的には、整備費の2/3程度が補助される場合が多いです。
また、上限額も設定されており、大規模な整備でも一定額以上は補助されないことがあります。
地方自治体の独自補助金

出典:地方自治体等との知財支援協定
地方自治体の補助金の具体例(長野県、広島県など)
地方自治体は、国の補助金制度に加えて、独自に補助金を設けていることがあります。
これは地域の特色や課題に合わせた支援を行うためです。農業や小規模事業者向けの制度も含まれます。
長野県の例
長野県には、農業者向けに、農業生産設備導入支援事業を用意。
施設園芸や畜産設備の導入、改修に対して費用の一部を支援します。
補助率は、おおむね対象経費の1/2以内、上限額は300万円程度が目安です。
これにより、地域の農業者は新しい栽培設備を導入しやすくなり、品質の高い農作物を安定的に生産できるでしょう。
広島県の例
広島県では、地域の小規模事業者向けに販路拡大支援事業補助金を実施。
などに対して支給されます。
補助率はおおむね、対象経費の2/3以内で、上限額は100万円から200万円程度です。
地元の特産品やサービスを広く知ってもらうための活動に活用できるでしょう。
補助率と上限額はどのくらい?
地方自治体の独自補助金では、国の制度と同様に補助率と上限額が決まっています。
補助率は、一般的には対象経費の1/2から2/3程度です。
事業者が負担する自己資金と、補助金のバランスを考えた設定になっています。
上限額は制度によって異なります。
- 大規模な農業整備向けの補助金→数百万円
- 小規模な事業者向けの補助金→100万円程度
まで支給されるでしょう。
補助金を受ける際は、自分の事業に合った制度を選び、補助率や上限額を確認して計画を立ててください。
おわりに
ビニールハウスの導入や事業改善に関わる補助金制度を、有効活用しましょう。
国や自治体が提供する多様な支援策を上手に活用すれば、農業や小規模事業者の経営は安定し、大幅な効率化が望めます。
初期費用の負担を軽減し、生産性や品質の向上を実現するためにも、制度の内容や申請条件を正しく理解し、計画的に取り組んでください。
補助金を活用して設備や事業を整備することで、地域の活性化にもつながり、持続可能な経営の基盤を築くことが可能です。
監修者からのワンポイントアドバイス
農林水産省のHPにも国の農業関係の補助金や支援金の情報が掲載されています。申請する計画内容は複雑なものとなっており申請には専門家の伴走支援が不可欠です。ビニールハウスの導入は高額になりますので是非余裕を持ったスケジュールを立てて申請を検討されると良いでしょう。