新事業進出補助金で始める民泊事業のポイント・活用法を解説
新事業進出補助金を活用して民泊事業に挑戦するための具体的な方法や注意点を解説。
補助金の申請条件や対象経費、成功事例、民泊ならではの法規制への対応まで幅広く紹介します。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
新事業進出補助金で民泊が補助対象となる可能性
結論として、新事業進出補助金で民泊事業が補助対象となる可能性は高いといえます。
これは次の3つの理由からいえます。
- 補助対象経費と民泊事業の関係
- 民泊事業の成長市場としての背景
- 事業再構築補助金での民泊支援の実績
この3点を順に説明します。
補助対象経費と民泊事業の関係
新事業進出補助金の対象経費は幅広く、民泊事業の初期投資に必要な多くの費用が該当します。
建物費
民泊運営に必須の施設改修費や内装工事費。
既存の建物を宿泊施設へ転用するための工事費用が大きな割合を占めます。
設備投資費用
家具、家電、Wi-Fi環境、セキュリティシステムなど、宿泊者の快適性と安全性を高めるための設備も対象となるでしょう。
システム導入費用
予約管理システムや顧客対応ツールなどのIT投資も補助対象となり、業務の効率化を支援します。
広告宣伝費
民泊施設の認知拡大のための広告宣伝費用も補助対象に含まれます。
人件費
一定条件を満たす場合は、新規雇用者の給与なども対象になるため、事業拡大時の負担軽減に貢献します。
民泊事業の成長市場としての背景
近年、訪日外国人観光客数はコロナ禍を乗り越え、2024年には過去最高水準にまで回復しています。
日本政府観光局の統計では、2024年11月の訪日外国人数は318万人を超え、前年同月比で30%以上増加しました。累計数も過去最高を記録しています。
こうした背景のもと、宿泊需要は急増しているものの、ホテルや旅館の供給は追いついていません。
特に地方や観光地以外の地域では宿泊施設不足が顕著で、民泊は重要な受け皿となっています。
地域ごとに特色のある民泊施設が整備されることで、観光の多様化と地域経済の活性化が期待されているのです。
事業再構築補助金での民泊支援の実績
2020年代初頭に実施された事業再構築補助金においても、民泊事業は多くの採択例がありました。
特に外国人観光客の急激な回復を見込んだ成長枠では、民泊や体験型観光施設の整備、運営体制構築が補助対象となったのです。
当時、多くの中小企業や個人事業主が施設のリノベーション、予約システムの導入、顧客サービスの向上に取り組み、補助金の恩恵を受けています。
これらの事例は、新事業進出補助金においても類似の支援が期待できる根拠になります。
新事業進出補助金とは
新事業進出補助金は、中小企業が新たな事業に挑戦する際の資金を補助する制度です。
この補助金は、企業の成長を促進し、雇用の創出や賃上げにつなげることが目的です。
企業が新たな製品やサービスを開発したり、異なる顧客層にアプローチしたりする際に必要な経費を補助します。
参考:新事業進出補助金
補助率と補助金額はいくら?
新事業進出補助金の補助率は、補助対象経費の1/2であり、補助上限額は従業員数に応じて異なります。
具体的には、以下のように設定されています。
- 従業員数21~50人→ 補助上限4,000万円
- 従業員数51~100人→ 補助上限5,500万円
- 従業員数101人以上→ 補助上限7,000万円
- 従業員数20人以下→ 補助上限2,500万円(大幅賃上げ特例適用時は3,000万円)
このように、従業員数が多い企業ほど高額な補助金を受け取ることが可能です。
特に大規模な設備投資を行う企業にとっては、大きな支援となるでしょう。
また、補助下限が750万円に設定されているため、申請者は補助金額をシミュレーションしやすいといえます。
参考:新事業進出補助金
対象経費には何が含まれる?
新事業進出補助金の対象経費は多岐にわたります。具体的には以下のような経費が補助対象となります。
- 運搬費→ 商品や材料の運搬にかかる費用。
- 技術導入費→新しい技術を導入するための費用。
- 知的財産権等関連経費→ 特許や商標などの取得にかかる費用。
- 専門家経費→専門家に依頼する際の費用(補助上限額は100万円)。
- クラウドサービス利用費→ クラウドサービスを利用するための費用。
- 建物費→ 新たな事業のために必要な建物の建設や改修にかかる費用。
- 機械装置・システム構築費→ 新たな機械やシステムの導入にかかる費用。
- 外注費→検査や加工、設計などの外注にかかる費用(補助上限額は全体の10%)。
- 広告宣伝・販売促進費→新たな市場に向けた広告や販売促進にかかる費用(補助上限額は売上高見込み額の5%)。
これらの経費は、事業の新規性や市場性を示すために大切です。
特に、補助対象外の経費についても公募要領に明記されているため、事前に確認しておきましょう。
参考:新事業進出補助金(公募要領)
新事業進出補助金の申請要件
新事業進出補助金を申請するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。具体的には、以下のような要件が求められます。
- 事業所内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上→ 従業員の待遇改善を図ることが必須
- 給与支給総額の年平均成長率が+2.5%以上→ 従業員の給与を引き上げる計画が求められる
- 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の公表→ 社会的責任を果たすための計画が必要
- 付加価値額の年平均成長率が+4.0%以上→ 事業計画において、付加価値の成長を示す必要がある
これらの要件を満たすことで、補助金の申請が可能です。
参考:新事業進出補助金(公募要領)
申請に向けた準備と無料相談がおすすめ!
補助金申請にあたっては、書類作成や事業計画の立案が必要です。
民泊事業の場合は、地域の条例や法規制も加味しながら、投資計画や収益予測を具体的に示しましょう。
専門家に相談すれば、補助金の提案から申請支援まで一貫して行ってもらえる場合があります。
補助金申請に不安がある方も、まずは無料相談で専門家のアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
【無料】御社に合った補助金・助成金を診断! なぜ補助金が民泊事業に有効か
補助金が民泊事業に有効な理由は、主に資金調達の面でのメリットと、事業の成長を促進するための支援があるからです。
以下にその詳細を解説します。
- 競争力を強化できる
- 資金調達の負担が減る
- 地域活性化に貢献できる
- 幅広い用途に対応している
- 法律や規制に対応しやすい
競争力を強化できる
補助金を利用することで、民泊事業者は競争力を高めることができます。
たとえば、最新のITシステムを導入することで、予約管理や顧客対応の効率を向上させることが可能です。
また、広告宣伝費を補助金で賄うことで、より多くの顧客にアプローチできるでしょう。
これによって集客力が上がり、収益の増加につながります。
資金調達の負担が減る
民泊事業を始める際には、初期投資や運営費用がかかるものです。
これには、物件の購入や改装、家具や設備の導入、広告宣伝費などが含まれます。
自己資金だけでこれらの費用を賄うのは難しい場合が多いでしょう。融資を受けるのも手ですが、返済の負担が生じます。
その点補助金は返済不要な資金であるため、民泊事業者にとって大きなメリットです。
補助金を活用することで、金利や返済の負担を軽減し、資金繰りが楽になるでしょう。これにより、経営の安定化が図れるのです。
地域活性化に貢献できる
民泊事業は、地域の観光振興や経済活性化にも良い影響をもたらします。
補助金を活用することで、地域の観光資源を活かした民泊施設を整備し、観光客を呼び込めるでしょう。
これにより、地域全体の経済が活性化し、雇用の創出にもつながるのです。
幅広い用途に対応している
民泊関連の補助金は、設備投資や改修、IT導入、広告宣伝など、さまざまな用途に活用できます。
たとえば、家具や家電の購入、Wi-Fi環境の整備、バリアフリー化の工事、内装フォームなどが対象です。
これにより、民泊事業者は自らのニーズに応じた資金使途を選択でき、事業の質を向上させることができます。
法律や規制に対応しやすい
民泊事業は法律や規制が意外に厳しいため、適切な許可や基準を満たす必要があります。
補助金を利用することで、必要な設備投資や改修を行い、法律に準拠した運営が可能です。
特に、消防設備や安全基準を満たすための投資は、補助金を活用することで負担を軽減できるでしょう。
新事業進出補助金を活用した民泊ビジネスのメリット
新事業進出補助金を活用することで、民泊事業者は多くのメリットを享受できます。

競争力が高まる
最新設備やサービスを提供することで顧客満足度が高まり、競合との差別化を図れます。
業務が効率的になる
ITシステム導入による予約管理や顧客対応の効率化は、運営の質を向上させつつ人手不足の問題解決にもつながるでしょう。
事業の持続性アップ
補助金を活用した投資は、将来的な収益性向上と事業の安定化に貢献します。
初期投資の負担が減る
建物改修や設備導入にかかる大規模な費用を補助金で賄うことで、資金負担が大幅に軽減されるでしょう。
民泊ビジネスの市場動向と成長性
近年、民泊ビジネスは国内外で急速に拡大しており、旅行や観光産業の新たな柱として注目されています。
特に日本では、2020年代に入ってからの訪日外国人客が増加しています。
地域活性化のニーズ、多様化する宿泊ニーズなどを背景に、民泊市場は成長を続けているのです。
ここでは、民泊ビジネスの現状市場動向、成長性、そして今後の展望について、最新データや具体的事例を交えながら詳しく解説していきます。
民泊ビジネスの定義
民泊ビジネスとは、一般の住宅や空き家、アパート・マンションの一室などを宿泊施設として活用し、宿泊サービスを提供する事業形態です。
ホテルや旅館とは異なり、地域住民が自身の所有物件を活用して運営できるため、宿泊業への新規参入のハードルが比較的低いことが特徴です。
また、民泊は観光客にとっても、ホテルにはない地域の暮らしや文化を体験できるというメリットがあり、特にインバウンド観光客から高い支持を受けています。
日本の民泊市場の現状
日本国内の民泊市場は、2018年の住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行を契機に急速に拡大しました。
これにより、合法的に住宅を短期宿泊施設として提供できる基盤が整い、多くの物件が登録されました。
宿泊可能日数が制限された
年間180日以内と定められました。一部では運用の制約もありますが、それでも都市部や観光地を中心に物件数は増加傾向にあります。
インバウンド需要との相乗効果
訪日外国人旅行者の増加に伴い、ホテルが満室となる日も多く、民泊は代替的な宿泊手段として注目されてきています。
世界の民泊市場動向
世界的にはAirbnbやHomeAwayなどのプラットフォームを中心に民泊市場が拡大しています。
特に欧米やアジアの主要観光都市での利用が増え、多様なタイプの宿泊施設が提供されているのです。
2023年のグローバル市場は年率10%前後で成長し続けており、2025年には数十兆円規模の市場に達すると予測されています。
インバウンド観光の増加
訪日外国人旅行者数は2019年に約3,188万人を記録しています。2020年のコロナ禍で一時停滞したものの、2023年以降は回復傾向です。
政府はインバウンド誘致を国家戦略の柱に据えており、2030年までに6,000万人の訪日を目指す計画を掲げています。
民泊はホテルの供給不足を補い、多様なニーズに応える形で需要増加に対応できるため、注目度が高まっているのです。
宿泊施設不足と供給のギャップ
特に都市部や観光地ではホテルや旅館の不足が深刻で、ピーク時には予約が困難な状況が続いています。
建設コストの高騰や人手不足により新規施設の供給が追いつかず、民泊の存在価値が高まっているのです。
ライフスタイルの多様化と新しい旅行スタイル
近年では、体験型観光やワーケーションなどの新しい旅行スタイルの浸透により、民泊のニーズが広がってきています。
地域の生活に溶け込む宿泊体験を求める旅行者が増加し、家族旅行や長期滞在の増加も成長を後押ししているのです。
民泊市場の部門別動向
民泊の種類によっても同行は変わってきます。
都市型民泊
東京・大阪・京都などの大都市圏では、短期滞在やビジネス利用が中心で、利便性の高い立地が求められています。
都市型民泊は高稼働率が期待できる一方で、規制強化や近隣住民とのトラブル対策が課題です。
地方・観光地型民泊
地方の温泉地や自然豊かな観光地では、古民家や空き家を改修した民泊施設が増えています。
観光の多様化や滞在期間の長期化に対応した施設づくりが進み、地域活性化に寄与しているのです。
民泊が抱える法規制と課題
民泊事業の成長を支える一方で、法的な規制や社会的な課題も存在します。
人手不足と運営効率化が必至
清掃や予約管理の負担が大きく、人手不足の影響もあり効率的な運営体制構築が求められています。
住宅宿泊事業法を遵守しなければならない
年間宿泊可能日数の上限設定、消防法令や衛生基準の遵守、周辺住民への配慮などが義務付けられています。
適正な運営が求められ、違反事例には行政処分もあります。
近隣トラブル・地域社会との調和が求められる
騒音やゴミ問題、コミュニケーション不足によるトラブルが多発したケースもあり、地域社会との共生が課題です。
民泊ビジネスの収益性
収益構造
民泊事業の収益は、宿泊料金と稼働率に大きく関係してきます。
物件の立地、設備の充実度、運営の効率性によって収益性は大きく異なるのです。
初期投資と運用コスト
建物の改修費用、家具家電の購入費、プラットフォーム手数料、清掃コスト、人件費が主なコストです。
これらを適切にコントロールし、高い稼働率を維持することが求められます。
テクノロジーの活用と今後の展望
IT技術とスマート運営
自動チェックインシステム、IoTセキュリティ、清掃ロボット、予約管理ソフトなどの導入により運営効率化が進み、人手不足の解消が進んでいます。
今後の成長予測と市場機会
政府の訪日観光促進政策、地域創生の推進、民泊規制の見直しが進む中で、民泊市場は今後も成長が予想されます。
特に地方の空き家活用や長期滞在向け民泊、企業向け宿泊サービスなど、新たな市場セグメントが拡大するでしょう。
サステナビリティと環境配慮
環境負荷低減やエコフレンドリーな運営は、今後の市場競争力アップのための要素です。
省エネ設備や地域資源の活用が期待されています。
中小企業省力化投資補助金との違いと併用の可能性

民泊事業においては、新事業進出補助金だけでなく、中小企業省力化投資補助金も検討の価値があります。
この補助金は主に業務効率化や省力化を目的としており、以下のような設備投資に適しています。
- 清掃ロボット
- 自動チェックイン機
- スマートロックシステム
- スチームコンベクションオーブン(調理機器)
すでに民泊事業を運営している事業者がさらなる省力化やIT化を目指す際には、中小企業省力化投資補助金を活用するとよいです。
両補助金の趣旨は異なりますが、段階的に活用することで事業拡大と効率化を両立できます。
参考:中小企業省力化投資補助金
おわりに
新事業進出補助金を活用した民泊ビジネスは、近年の観光需要の回復と宿泊施設不足の問題を背景に、注目度が高まっています。
特に民泊事業では、建物の改修費や家具家電の購入、ITシステム導入、広告宣伝費など幅広い経費が補助対象となるため、新規参入者や既存事業者の事業拡大にとって強力なサポートとなるでしょう。
民泊ビジネスは、訪日外国人観光客の増加や国内の宿泊施設不足を背景に急成長しています。
都市部だけでなく、地方の観光地や過疎地域においても地域活性化の手段とされているのです。
また、民泊運営における法令遵守や地域住民との調和といった課題に対応するための設備投資も、補助対象に含まれています。
監修者からのワンポイントアドバイス
民泊はインバウンド外国人などの増加もあり、大変注目されている事業です。
新事業新種補助金は建物費を計上できることから申請をご検討される事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
民泊は行政の許可を頂く必要がある点に注意しましょう。