新規事業には「ものづくり補助金」がおすすめ|理由や注意点を解説
ものづくり補助金は、新規事業者でも利用できるものです。
本記事では、新規事業者にとってなぜものづくり補助金がおすすめなのか、そして利用する際に注意すべきポイントをわかりやすくまとめています。

この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
新規事業も「ものづくり補助金」の対象?
新規事業を始めたばかりのスタートアップでも、ものづくり補助金に申請し、受けることができます。
スタートアップとは、新しいアイデアや商品を使い、まだ小規模な会社を始めたばかりのビジネスのことです。
今後成長し、大きな会社になろうとしており、将来性が期待できる会社といえます。
たとえば、便利なアプリや新しいおもちゃを作る会社などはスタートアップです。
ものづくり補助金は中小企業が利用するイメージが強いですが、新規事業者でも利用できる制度なので、ぜひ利用してみましょう。
今まさに新規事業を検討している、あるいは進行している事業者はぜひ注目してみてください。
ものづくり補助金を活用することで、自社の経済力では導入が難しい機械や設備を購入できます。
特に、会社を立ち上げてから5年以内の企業には申請時に特別な優遇措置があります。
創業したばかりの新規事業者にとって、ものづくり補助金はとても役立つ支援となるでしょう。
参考:ものづくり補助金
新規事業の定義とは?
ものづくり補助金の対象となる新規事業には、以下のような特徴がみられます。
- 革新性がある
- 市場で需要が見込まれる
- 補助することで生産性が向上する
革新性がある
新事業は、すでにある製品やサービスに対して、新しいアイディアや技術が加わっていることが求められます。
技術的な革新や新しいビジネスモデルを取り入れていることが期待されているのです。
市場で需要が見込まれる
開発する製品やサービスは、市場で競争力があり、需要が期待できるものでなければなりません。
事業計画書ではどんな市場をターゲットにし、どんな顧客のニーズに応えることができるのか、具体的に分析する必要があるでしょう。
補助することで生産性が向上する
新事業は、企業の生産性を高めることが期待されています。
たとえば、生産プロセスの効率化やコスト削減などが生産性の向上に関係してきます。
ものづくり補助金には2つの枠があります
ものづくり補助金の申請には、2つの枠があるので、ここでそれぞれの特徴を事前に把握しておきましょう。
製品・サービス高付加価値化枠
この枠の中でもまたさらに2種類に分かれてきます。
通常類型
新しい商品やサービスを作るための必要設備を導入するお金を支援します。
補助上限額は、従業員数が5人以下で750万円、6~20人で1,000万円、21人以上で1,250万円です。
また、補助率は中小企業が1/2、小規模・再生事業者2/3となっています。
成長分野進出類型
今後成長が期待される分野(デジタル技術や環境に配慮した技術など)に投資するための支援です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、IT技術を使って企業を強くすることを指します。
一方で、グリーントランスフォーメーション(GX)は、環境を守るために温室効果ガスを減らすことを目指します。
補助金額も従業員数によって異なり、たとえば、5人以下の企業は最大750万円まで、100人以上の企業には最大2,500万円までと決まっています。
グローバル枠
海外進出を支援するための枠です。
新たに海外市場を開拓したり、海外の企業と共同ビジネスを行ったりする費用を補助してくれます。
上限は最大3,000万円までです。賃上げに取り組む企業は補助金額が増えることもあります。
これらの枠を利用すれば、新たなチャンスをつかむことができるでしょう。
それぞれの枠に必要な条件や計画がありますので、専門家に相談しながら申請を進めることをおすすめします。
参考:ものづくり補助金21次公募要領

【無料】御社に合った補助金・助成金を診断! 創業間もない企業が「ものづくり補助金」を受けるための条件
新規事業者にとってものづくり補助金はおすすめですが、条件を満たしていなければ利用できず、意味がありません。
申請前に条件を確認しておきましょう。
資本金や従業員の数
会社の資本金(会社が持っているお金の量)や、従業員数が一定の基準以下であることが求められます。
基準は、どの枠に申し込むかによって変わってきます。
新規事業を始めたばかりの小さな会社やスタートアップも、資本金や従業員数が少なければ、ものづくり補助金をもらえます。
事業計画書が必要
ただ申請するだけでなく、事業計画書が必要です。この作成には場合によって非常に時間がかかります。
補助金が採択されるかどうかは、事業計画書の中身にかかっているといっても過言ではないでしょう。
それほど重要な書類になるため、専門家に依頼して作成してもらう企業も多いです。
事業計画書とは、会社が今後どのように成長していくかを示す計画です。
事業計画書には何を書き込めばいいのかというと、
などについて、実現可能な目標やプランを記入します。
従業員の給料を毎年少しずつ上げることや、仕事の効率をアップさせることなどを盛り込み、それが実現可能で合理的なものだと評価される必要があるのです。
ちなみに、創業後の経過年数に関する規定はありません。
創業後の経過年数がどれくらいまででなければいけないという条件はないため、気にする必要はありません。
ですから、創業したばかりの企業から10年以上続いている老舗企業まで、経過年数に関係なく補助金をもらうチャンスはあるということです。
むしろ新しければ新しい会社ほど、特別に優遇されることもあるので、創業後すぐでも申請する価値があります。
新規事業を始めたばかりの企業が気をつけるべき注意点
新規事業を始める企業には、ものづくり補助金制度がおすすめですが、気を付けなければならないポイントもあります。
特に下記に注意が必要です。
それでは、それぞれの注意点についてひとつずつ解説します。
提出書類が他の企業と異なる
新規事業を始めるということは、まだ創業間もないでしょう。
創業間もないとなると、申請時に提出する書類が、通常の企業とは異なる場合があります。
たとえば、ものづくり補助金申請時には、直近2年間の決算書(貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書)などを提出します。
しかし、創業から2年未満の企業はこの決算書を提出できません。
その代わり、次の書類を提出することになります。
- 創業から1年以上2年未満…1期分の決算書
- 設立したばかりで決算書がない…事業計画書と収支予算書
事前に自社の創業年数に応じた書類を用意してくださいね。
従業員数が少ないと補助金額の上限が変わる
従業員数が5人以下の場合、補助金の上限額は750万円までです。
反対に、従業員数が増えると補助金の上限額も上がります。この場合、最大で8,000万円となるでしょう。
創業間もない企業やスタートアップは従業員数が限られることが多いため、この点を踏まえて計画を立てましょう。
つなぎ融資が難しいことがある
つなぎ融資とは、企業の資金が不足している時、一時的に銀行などからお金を借りることです。
ものづくり補助金をはじめとする補助金は、基本的に後払いです。
申請が通ったとしても、購入費用はいったん自社で立て替える必要があります。
ものづくり補助金の交付までに発生する経費を、つなぎ融資でカバーする企業も多いでしょう。
ですが、創業したばかりの企業だと事業実績が不足しており、金融機関から思うように融資が受けられない可能性があります。
この問題に対応するためには、日本政策金融公庫などの創業支援融資の利用がおすすめです。
採択率を高めるためのポイント

せっかく新規事業にものづくり補助金を生かすなら、申請が通ってほしいですよね。
ものづくり補助金を受けるためには、事業計画書の質が最重要です。
適切な計画を立てるために、必要に応じて専門家の助けを借りながら、
などの面で優れていることを示してください。これを重視することで、最も採択に近づきます。
特に注意が必要なのは、オンラインで実施される口頭審査です。
法人代表者が一人で参加しなければならないため、事前準備が問われます。
経営コンサルタントのサポートを受けることは可能ですが、経営者自身が事業計画について主体的に考え、検討することが重要です。
事業計画書の審査項目を振り返った上で臨みましょう。
補助対象事業としての適格性
- 公募要領に書かれた対象事業や申請要件を満たしているか?
- 3~5年の計画で年平均成長率が3%以上の増加を見込んでいるか?
技術面
- 製品やサービスの開発における技術革新性と具体性はあるか?
革新性が乏しい場合、評価が低くなります。
おわりに
ものづくり補助金は、特に創業してから5年以内の新規事業を始めるスタートアップ企業にとって非常に有利な制度です。
設備投資に対して高い補助率が適用されるでしょう。
さらに、会社設立から5年以内の企業は加点が受けられます。
資金調達が難しいスタートアップは、ぜひ利用すべきです。
ものづくり補助金を利用することで、より早く新規事業を成長させることができます。
監修者からのワンポイントアドバイス
ものづくり補助金は設備投資を考える際にはまず検討したい補助金の一つです。
金額規模が大きいため新たな機械装置などを導入して革新的なサービスを提供したい事業者の方にとっては大きな追い風となることでしょう。