担保付き融資は無担保融資に比べて信用に大きな差が出ます

担保のある融資は無担保融資に比べて信用力に差が出て、融資審査に有利に働きます。 今回は担保付き融資について、無担保融資との違いを比べながらどのようなメリットがあるのかを解説します。
井上 雅也

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監修専門家: 井上卓也行政書士

井上 卓也

代表・行政書士

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。

慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。

融資における担保とは?

融資における担保とは、借入をする際に金融機関へ提供する保証のことを指します。

担保を設定することで、万が一返済が滞った場合でも金融機関は担保を処分することで貸し付けた資金を回収できるため、融資を受けやすくなるという特徴があります。

担保を提供することで、融資の条件が有利になったり、借入可能額が増えたりすることもあります。

担保には大きく分けて「物的担保」と「人的担保」の2種類があります。

物的担保は、不動産や自動車預金有価証券など、具体的な資産を担保として差し入れるものです。

一方、人的担保は、保証人を立てることで返済を保証する方法であり、特に経営者の個人保証が求められることもあります。

どちらの担保を選ぶかは、融資の種類や借入額、金融機関の方針によって異なります。

担保を設定することで、金融機関としてはリスクを軽減できるため、無担保融資に比べて金利が低くなる傾向があります。

ただし、担保を提供するには手続きが必要であり、万が一返済できなくなった場合には担保を失う可能性があるため、慎重に判断することが重要です。

担保付き融資と無担保融資の違い

担保がある融資とそうでない融資には、どんな違いがあるのかをご紹介します。
【担保付き融資場合】
借り入れる人の信用力と担保を用いて審査を行う

審査期間金利利用目的
3週間〜4週間1%〜9%低金利で高額融資を受ける場合

【無担保融資の場合】
借り入れる人の信用力のみで審査を行う

審査期間金利利用目的
2週間〜3週間2%〜15%迅速に少額を借りたい場合

上記の表を踏まえると、担保がある融資を受けると金利は低くなりますが、審査期間が長くなる傾向にあります。

一方で担保が無い場合は、審査が早い代わりに金利が高くなるのでご自身の目的に沿って選ぶようにしましょう。

融資で使える担保一覧

先ほども触れましたが、融資で使える担保の種類は、主に2つあります。

  • 物的担保
  • 人的担保

物的担保

物的担保とは、不動産や動産、有価証券などの具体的な資産を担保として差し入れる方法です。

金融機関が融資のリスクを抑えるために設定されるものであり、借入金の返済が滞った場合には、担保となる資産を処分することで債務の回収が行われます。

物的担保は価値が客観的に評価しやすく、比較的高額な融資を受ける際に利用されることが多いです。

代表的な物的担保として、不動産が挙げられます。

土地や建物は比較的安定した価値を持ち、金融機関において信頼性の高い担保とされているのです。

そのため、住宅ローンや事業資金の融資などで頻繁に活用されたり、預金や有価証券を担保にしたりする方法もあります。

預金を担保とする場合は「預金担保貸付」となり、万が一の際には金融機関が預金を差し押さえることで回収を行います。

有価証券では、株式や債券などが対象となり、市場価格に基づいて評価が行われます。

そのほか、動産を担保とするケースもあります。

たとえば、工場の機械や農業機器、商品在庫などが担保として利用されるのです。

ただし、動産は不動産に比べて価値が変動しやすいため、金融機関によっては担保としての評価が厳しくなることもあるでしょう。

物的担保を活用することで、融資の審査が通りやすくなったり金利が低く抑えられたりするメリットがあります。

しかし、担保の評価額によっては希望する融資額を確保できない場合もあるため、事前に金融機関の条件を確認し、適切な資産を担保として準備することが重要です。

人的担保

人的担保とは、借入をする際に保証人や連帯保証人を立てることで、返済を保証する担保のことを指します。

物的担保のように具体的な資産を提供するのではなく、第三者が返済の責任を負うことで金融機関のリスクを軽減する仕組みです。

特に事業融資では、経営者が個人保証を求められるケースが多く、人的担保が重要な役割を果たします。

人的担保には「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。

保証人は、借主が返済できなくなった場合に金融機関から返済を求められますが、まずは借主本人に請求が行われ、保証人は最終的な責任を負います。

一方、連帯保証人は、借主と同等の責任を持ち、借主が返済不能になった場合、金融機関は連帯保証人に直接請求できる仕組みです。

連帯保証人の負担は大きいため、慎重に判断する必要があります。

また、法人向け融資では「代表者保証」が求められることが一般的です。

これは、会社の経営者が個人として保証人となる制度であり、万が一会社が返済できなくなった場合、経営者自身が個人資産を用いて返済する義務を負います。

代表者保証を回避するためには、会社の財務状況を健全に保ち、金融機関からの信用を高めることが重要です。

人的担保を活用することで、物的担保が不要となる場合や、審査が有利に進む可能性があります。

しかし、保証人や連帯保証人には大きな責任が伴うため、安易に引き受けることは避けるべきでしょう。

人的担保を検討する際には、契約内容を十分に理解し、リスクを慎重に判断してください。

融資で担保を用いるメリット

先ほど触れましたが、融資で担保を用いることでどんなメリットがあるのかを具体的に解説します。主なメリットは3つです。

  • 金利が低くなる
  • 審査が有利に働く
  • 高額な融資を受けられる

金利が低くなる

1つ目は金利が低くなることです。担保は借り手側が返済できなくなった場合の救済措置なので、一般的に担保がある融資では金利が低くなると言われます。

無担保の融資は個人の信用情報のみを元に判断するので、金融機関側はリスクが高く、そのリスクに応じて金利を高くするといったような仕組みとなっています。

担保がある融資では、担保の価値が借入額を上回ることで金融機関側はプラスとなるので、通常よりも低い金利で貸せるのです。

審査が有利に働く

2つ目は審査がスムーズになることです。借り手の信用情報だけでなく担保も審査の対象になるので、審査基準が緩やかになることがあります。

担保の価値を決める手続き等はありますが、一度担保を設定できると審査を有利にできるので、しっかりと把握しておきましょう。

高額な融資を受けられる

3つ目は高額な融資を受けられることです。担保があることにより、借り手が返済不可能となっても担保を売却することで貸したお金を回収できる可能性が高まります。

回収できる可能性が高いと、金融機関側はより多くの金額を貸せるので、担保を設定することで高額な融資を受けれるのです。

融資で担保を用いるデメリット

一方で、融資で担保を用いる際のデメリットも存在します。これから紹介する3つのデメリットを知っておきましょう。

  • 手続きが複雑
  • 財産を失う可能性
  • 評価額が低い可能性

手続きが複雑

デメリットの1つ目は、手続きが複雑であることです。担保を設定する際には、さまざまな手続きが必要です。主にこのような手続きが発生します。

  • 不動産登記
  • 担保評価額の算定
  • 契約書の締結

これが理由で、担保のある融資は審査に時間がかかると言われています。

複雑で分かりづらくなりかちな手続きですが、融資を受ける予定の担当者に分からないところはしっかりと聞いておくようにしましょう。

財産を失う可能性

2つ目は財産を失う可能性があることです。返済が滞ってしまうと、金融機関は担保を売却するために競売にかけることがあります。

また競売での売却額が借入額より下回ってしまうと、借り手側はその差額を支払わなくてはなりません。

住宅ローンで住宅を担保にした場合や、事業用の不動産や設備等を担保にしていると大きな損失となってしまうので注意してください。

評価額が低い可能性

3つ目は評価額が低い可能性があることです。担保の金額や価値は、必ずしも市場の相場通りに評価されないケースがあります。

金融機関によって評価基準が異なる場合があるため、同じ資産でも価格や価値が変わってくるのです。

不動産などは価格の変動が激しいので、担保の設定は慎重に決定しましょう。

融資における担保の評価方法

担保の評価方法をある程度知った上で設定することで、想定外のケースに陥るリスクは下がります。表にまとめてみたので参考にしてください。

担保の種類評価ポイント
不動産時価の60%〜80%で評価
車種、年式、走行距離、車両状態を評価
有価証券前日の価格の60%〜70%で評価

評価額に関しては、不動産や有価証券は前日までの時価総額の60%〜80%の間で評価されることが一般的です。

また車は車両の状態や年式、走行距離といった項目が評価対象となるので、それぞれの項目を踏まえてどれを担保に設定するかを決めていきましょう。

融資で担保を準備する際の手続き

実際に融資で担保を準備する際の手続きについてまとめました。

  • 担保にするものを選ぶ
  • 担保の確認、評価
  • 担保契約の締結
  • 担保の設定
  • 担保の管理、解除

担保にするものを選ぶ

まずは担保に設定するものを選びます。融資を受ける金額や返済能力に合わせて、適切な担保を選びましょう。

また、物的担保が準備できない場合は人的担保の設定も検討しましょう。人的担保を設定するときはよく相談して決めるようにすると、トラブルにならずに済みます。

担保の確認、評価

担保にするものを選んだら、次は金融機関で物的担保、人的担保の確認を行います。

物的担保ではその価値を評価し、人的担保の場合はその方の信用情報を元に評価するので、間違いがないかよく確認した上で評価を受けましょう。

担保契約の締結

担保の評価が決まると、担保契約の締結に入ります。金融機関と借り手側が契約書を交わし、両者が署名と捺印をします。

この時に交わされる契約の内容をしっかりと確認すること、契約を交わすにあたり必要なものの確認を忘れずにしておくのが大切です。

担保の設定

担保契約を交わしたら、正式に担保として設定されます。

設定がなされた後、やっと融資が受けられるので、入金を待ちましょう。

担保の管理、解除

融資の返済中にも、担保の状態や価値を保ち続けなければなりません。価値を保つために、現状確認や管理を適切に行いましょう。

また返済が終わり担保が必要なくなった場合は、担保を解除します。解除の時にも手続きが必要となるので、きちんと把握しておくと良いです。

担保融資の3つの選び方

  • 担保の種類で選ぶ
  • 金融機関の実績で選ぶ
  • 受ける融資の金額で選ぶ
  • 複数の金融機関の特徴を比較・検討する

担保の種類で選ぶ

担保融資を選ぶ際には、提供する担保の種類を適切に選ぶことが大切です。

担保は主に「物的担保」と「人的担保」に分類され、用途や融資額によって適した選択肢が異なります。

物的担保は不動産や有価証券などの具体的な財産を指し、高額な融資に適しています。

一方、人的担保は保証人を立てる形式で、資産を持たない場合でも利用可能です。

たとえば、不動産を担保とする場合、資産の評価額が高いほど有利な条件で融資を受けられます。

ただし、評価額が低い場合や、すぐに売却しにくい資産の場合、融資の条件が制限されることがあります。

そのため、自分の資産状況を正確に把握し、担保として適切なものを選ぶことが大切です。

融資を検討する際には、自分が提供できる担保の種類を確認し、その価値が融資条件にどのような影響を及ぼすのかを金融機関に相談するべきです。

適切な担保を選ぶことで、融資条件の改善が期待できます。

金融機関の実績で選ぶ

担保融資を選ぶ際には、金融機関の実績も重要な判断基準となります。

各金融機関は融資において異なるポリシーや基準を持っており、それが審査の通りやすさや金利条件に影響します。

過去の取引実績や顧客対応の評判を確認することで、信頼できる金融機関を選ぶことが可能です。

たとえば、地域密着型の信用金庫は中小企業や個人事業主向けに柔軟な融資を行う場合が多いです。

一方、大手銀行は高額な融資や優良企業向けの融資条件に優れていることがあります。

このような違いを理解し、自分の目的に合った金融機関を選択することで条件面でのメリットを享受できます。

金融機関の選択に迷った場合は、複数の金融機関で事前相談を行い、それぞれの条件や対応を比較することをおすすめします。

実績に基づいた選択が、融資の成功を左右します。

受ける融資の金額で選ぶ

融資の金額に応じて、選ぶべき担保の種類や金融機関が異なる点も見逃せません。

高額な融資を希望する場合、資産価値の高い担保が必要になるため不動産や大企業の保証を求められることが多いです。

逆に少額の融資であれば、車両や貴金属といった比較的簡易な担保で済む場合もあります。

たとえば、500万円以上の高額融資では、不動産の担保設定が一般的ですが、100万円程度の融資では保証人や有価証券で十分な場合があります。

このように、融資額に応じて必要な担保や手続きが変わるため計画段階で条件を整理することが大切です。

自分の融資希望額を明確にし、それに見合った担保を用意することで、スムーズな審査と有利な条件の設定が期待できます。

事前に金融機関と相談し、融資額に最適な選択をすることが成功への鍵となります。

複数の金融機関の特徴を比較・検討する

担保融資を選ぶ際には、複数の金融機関の特徴を比較・検討することが重要です。

一つの金融機関だけで決めてしまうと、条件や金利が最適でない場合があるためです。

それぞれの金融機関が提供する融資商品やサービスの違いを把握し自分にとって最も有利な条件を見つけることが大切です。

地方銀行や信用金庫は地域の特性に応じた融資プランを提供することが多い一方で、大手銀行はより高額な融資や幅広い資産を担保とするケースに強みがあります。

また、ネット銀行は迅速な審査や手続きの簡便さをアピールポイントとする場合が多いです。

このように、金融機関ごとの特色を比較することで自分の状況やニーズに最適な選択が可能になります。

比較検討の際には、金利や手数料だけでなく、審査のスピードや融資後のサポート体制についても確認することが大切です。

また、事前に複数の金融機関に相談を行い各機関が提示する条件を見比べることで、最適な選択ができる可能性が高まります。

時間をかけて比較検討することで、より良い条件で担保融資を利用できるでしょう。

融資の担保設定に困ったときの対処法

融資の担保設定では、スムーズにいかなかったり困ったりするケースもあります。そんな困った時の対処法をご紹介します。

初めて融資担保を利用する方や、担保にするのが難しいという方もいるかもしれません。具体的な状況として、以下のケースが考えられます。

  • 担保にできる資産がない
  • 担保の設定に抵抗がある
  • 複数の金融機関から融資を受けていて、追加の担保設定が難しい

このようなケースの場合、自分だけで解決するのはなかなか難しいです。これらのケースに該当する場合は、別の選択肢も考慮しましょう。

たとえば金融機関や専門家に相談する補助金や助成金を活用してみる、国が運営している金融機関(日本政策金融公庫等)の利用など、担保が設定できない場合でも別の選択肢は多岐に渡ります。

自分一人でうまくいかなかったら、誰かに相談すると安心できるので、状況に応じて対応して行くのが重要です。

新しい融資担保の形態

担保は主に有形のものが対象となりますが、近年新たな担保の形態があることをご存知でしょうか。

最近は暗号資産やNFT、知的財産権などの無形のものを担保にするケースがあるのです。

まだ評価基準が確立されていなかったり、価格変動が激しかったりなど、課題はありますが、覚えておくと利用できる機会があるかもしれません。

【まとめ】担保を正しく設定して融資審査を有利にしよう!

今回は融資における担保について、利用できる担保の種類や手続き等を解説しました。

担保は当然リスクもありますが、その分低金利で融資を受けられたりより多くの金額を借りれたりするので、有効に活用できます。

また分からないことや不安なことをそのままにしておくと、後からトラブルになりかねないので、なるべくその場での解決を心がけましょう。

この記事の内容を踏まえて、担保にできるものがあるか調べてみてください。

担保設定に不安がある方は補助金・助成金の活用も!

補助金・助成金は原則返済がありません。担保設定に不安のある方や抵抗のある方は、まず自分が受けることができる補助金や助成金を調べておくと良いです。

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