ものづくり補助金とは?企業を支援する補助金の仕組みを解説
ものづくり補助金とは、中小企業の設備投資や生産性向上をサポートする制度です。
その概要から申請方法、活用事例までをわかりやすく解説します。
補助金のメリットを最大限に活かし、ビジネスを成長させましょう!
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この記事を監修した専門家

補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者を対象とした補助金の一つです。
革新的な製品やサービスの開発や、省エネルギーを目的とした設備投資を支援するためにあります。
とはいえ、ものづくり補助金について初めて聞いた方もいるでしょう。
あるいは、聞いたことはあっても、具体的にどのように活用できるかについては分かりにくいと感じている方もいるはずです。
ここでは、ものづくり補助金制度の概要やその特徴を解説していきます。
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(第19次公募)
ものづくり補助金の補助対象者
ものづくり補助金には、業種や企業規模によって対象者が決まっています。
- 製造業や建設業の上限→資本金3億円、常勤従業員数300人まで
- 小規模事業者→製造業で20人以下、商業・サービス業では5人以下
このように、業種によって対象の条件が異なるため確認しておきましょう。
ものづくり補助金の2つの枠

ものづくり補助金の申請枠には、以下の2つがあります。
1.製品・サービス高付加価値化枠
製品・サービス開発の取り組みを支援し、企業の生産性向上と競争力強化を促進します
2.グローバル枠
海外市場開拓や海外企業との共同事業を支援し、国内生産性向上に繋がる設備やシステムへの投資を補助します
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(第19次公募)
申請には事業計画が必要
ものづくり補助金の申請をするには、3~5年の事業計画を提出しなければなりません。
この計画書は、新製品やサービスの売上高が全体の10%を占めるように設定する必要があります。
一から全部自分一人で作るのは大変なので、初めてなら特に専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
たとえば、信用金庫などの協力を得て、具体的な改善点を盛り込んだ事業計画が作成できるでしょう。
補助金の上限額
補助金の上限額は3,000万円(大幅賃上げ特例を適用した場合、最大4,000万円)です。
補助率は通常1/2以内、小規模企業者や再生事業者は2/3以内です。
とはいえ、厳密には、補助率は申請枠と申請者の属性に基づいて異なります。
したがって、自分に適用される補助率を確認しておきましょう。
ものづくり補助金の補助率
製品・サービス高付加価値化枠の補助率は、原則として1/2です。
しかし、最低賃金引き上げ特例が適用される場合、2/3となります。小規模事業者や再生事業者の場合は、補助率は2/3です。
グローバル枠の補助率は原則として1/2ですが、小規模事業者の場合、補助率は2/3に引き上げられます。再生事業者の補助率は、1/2です。
なお、再生事業者に該当するかどうかについては、ものづくり補助金の公式サイトで提供されている「参考情報別紙4」で確認しましょう。
再生事業者として申請できる可能性がある事業者は、その定義をチェックしておくと安心です。
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(第19次公募)
対象要件を確認しよう
製造業、サービス業、IT関連事業など幅広い分野でものづくり補助金が利用できます。
では、具体的にどのような事業者が対象となるのでしょうか。
ここでは、ものづくり補助金の対象となる事業者の条件について、詳しく解説します。
中小事業者(組合関連以外)
ものづくり補助金は、業種ごとに企業の規模に基づいた上限が設けられ、それぞれに対象となる事業者の定義が設けられています。
具体的には、以下の条件に当てはまる事業者が対象となります。
【ものづくり補助金の対象となる中小事業者の定義】
下記では業種、金額、人数についてまとめています。
- 卸売業:1億円以下・100人以下
- 小売業 5,000万円以下・50人以下
- 旅館業:5,000万円以下・200人以下
- サービス業:5,000万円以下・100人以下
- ゴム製品製造業:3億円以下・900人以下
- 製造業、建設業、運輸業、旅行業:3億円以下・300人以下
- ソフトウェア業または情報処理サービス業:3億円以下・300人以下
- その他の業種(上記以外):3億円以下・300人以下
なお、サービス業にはソフトウェア業や情報処理サービス業、旅館業は含まれません。
また、ゴム製品製造業に関しては、特定の製品群(自動車や航空機用タイヤ、工業用ベルトなど)の製造業は対象外です。
製造業やソフトウェア業、情報処理サービス業などの事業者は、下記の条件が対象に入ります。
この条件は、スモールビジネスを営む多くの事業者に適用されるため、対象となる事業者は多岐にわたるでしょう。
中小事業者(組合・法人関連)
ものづくり補助金では、企業の組合や商工組合といった団体も対象です。
特定非営利活動法人(NPO法人)や社会福祉法人なども、一定の要件を満たせば対象に入ります。
しかし、公益財団法人や一般社団法人、医療法人、法人格のない任意団体は対象外です。
ものづくり補助金で対象となる経費
ものづくり補助金を申請する際、すべての経費が対象となるわけではありません。
補助金が適用される経費は、厳密に制限されています。
以下は、ものづくり補助金で対象となる主な経費です。
- 運搬費:設備などの輸送にかかる費用
- 技術導入費:新技術の導入や開発に必要な経費
- 専門家経費:コンサルタントや専門家への支払い
- 原材料費:製品やサービスに必要な原材料の調達費用
- クラウドサービス利用費:クラウド技術を利用するための費用
- 外注費(上限は補助対象経費総額の2分の1):外部に委託する際の費用
- 機械装置・システム構築費:新しい設備やシステムの導入にかかる費用
- 知的財産権等関連経費(上限は補助対象経費総額の3分の1):特許や商標、その他知的財産に関連する経費
また、「グローバル市場開拓枠」では、海外市場の開拓に関連する以下の経費も補助対象となります。
- 海外旅費
- 通訳・翻訳費
- 対象外となる経費
- 広告宣伝・販売促進費
一方で、いくつかの経費は対象外となるケースがあります。
たとえば、事業者が新たに工場建屋や簡易建物を取得し、その後機械を設置した場合は注意が必要です。
機械の取得費は対象ですが、工場建屋の取得費用や、既存の建物に新たな機械を設置するために行った基礎工事費用は対象外です。
また、貨物自動車やパソコンなど、ものづくり補助金の本来の目的に関連しない設備の取得費用も補助対象外です。
後で「こんなはずじゃなかった!」を防ぐためにも、申請時にはどの経費が対象となるのかを正確に理解しておきましょう。
ものづくり補助金は、対象となる事業者にとって大きな支援となりますが、対象となる経費の範囲や条件は細かく決められています。
申請するなら条件を十分に理解した上で、申請書類を準備しておきましょう。
特定の経費が補助対象外となることを理解し、無駄な申請を避けることも成功のポイントです。
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(第19次公募)
最新!ものづくり補助金の申請法と申請期限
一般的に、ものづくり補助金申請の流れは以下の通りです。
1.事前準備(GビズIDの取得)
申請には、事前にGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。
2.公募・申請受付開始
申請の受付が始まったら、申請を始めます。
3.審査(書面審査→口頭審査)
申請書の書面審査が行われ、その後、口頭審査に進みます。
4.補助金交付候補者決定
補助金の交付候補者が決定されます。
5.交付申請・決定
交付申請を行うと、その結果が確定されます。
6.補助事業実施(事業実施→中間検査→実績報告)
補助事業を実施し、中間検査を受け、実績報告を提出します。
7.確定検査(交付額の決定)
実績報告が審査され、最終的に交付額が確定します。
8.補助金の請求
補助金交付が決定しても、請求手続きしなければもらえません。請求手続きをすれば受け取れます。
9.補助金の支払
補助金が指定口座に振り込まれます。
10.事業化状況報告・知的財産権報告(毎年4月)
毎年4月に事業化状況や知的財産権に関する報告が求められるので、注意しましょう。補助金が振り込まれたらすべて完了というわけではありません。
上記の手続きはすべてオンラインで行われ、申請は専用の電子申請システムを通じてのみ受け付けられます。
電子申請を行うためには、GビズIDプライムアカウントが必要な点にご留意ください。
なお、GビズIDの作成には約2週間から3週間の期間がかかるため、申請締切直前にIDを作成すると間に合わない可能性があります。早めに準備を進めましょう。
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金電子申請システム操作マニュアル
ものづくり補助金の採択ポイント
ものづくり補助金の採択に最も重要な要素は、何と言っても事業計画書の内容です。
申請者は、事業計画における適格性、革新性、優位性、実現可能性などをしっかりと反映させる必要があります。
心配であれば専門家の支援を受け、質の高い事業計画を作成してもらいましょう。
計画書は通常、3〜5年間の期間を見通して設定し、計画に沿って革新的な取り組みを行い、成果を上げることが求められます。
もし計画通りに進まず目標が達成できなかった場合、天災などやむを得ない理由がある場合を除いては、補助金を一部返還しなければなりません。
ここでは、ものづくり補助金を受給した事業者が達成すべき3つの成果を説明します。

営業利益・人件費・減価償却費を足した付加価値額を年平均3%以上増加させる
ものづくり補助金では、営業利益、人件費、減価償却費を合計した「付加価値額」を指標として設定しています。
付加価値額は、企業の生産性や付加価値の向上を示す重要な指標です。
補助金を受けた事業者は、この付加価値額を事業計画期間中に年平均3%以上増加させることを目指さなければなりません。
効率的な経営と生産性の向上を目指し、経営改善に取り組む必要があるのです。
全従業員の給与支給総額を年平均1.5%以上増加させる
ものづくり補助金を受けた事業者は、全従業員の給与支給総額を年平均1.5%以上増加させることが求められます。
これによって従業員の待遇を改善し、企業全体のモチベーションを高めることが狙いです。
人材の確保や定着を図るため、給与や福利厚生の向上にも積極的に取り組むことが求められるでしょう。
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くする
ものづくり補助金の事業計画期間中、事業場内の最低賃金は、地域別最低賃金より30円以上高く設定する必要があります。
この事業場内最低賃金とは、補助対象となる事業を実施する事業場内で最も低い賃金です。
つまり、補助金を受けた事業者は、地域の最低賃金を上回る賃金水準をキープし、従業員に適切な報酬を支給しなければならないのです。
この賃金引き上げの計画は、補助金申請時にあらかじめ立てておくことが大前提です。
申請中や申請後に計画してはいけません。万が一それが判明した場合、補助金の返還を求められる恐れがあります。
以上のように、ものづくり補助金を受けたら終わりではなく、企業は革新的な取り組みを進めなければならないのです。
成果として下記のような要素が求められます。
これらの成果達成は、補助金を最大限に活用し、企業の成長を支えるためのポイントとなるでしょう。
監修者からのワンポイントアドバイス
ものづくり補助金は50万円以上(税抜)の機械装置費やシステム構築費などの設備投資は必須となっています。
製造業だけではなく、様々な業種で活用できます。
今年で最後となる事業再構築補助金に代わり、事業者の皆様が注目されている人気の補助金です。