ポイント
- 耐震補強に使える補助金の多くは、市区町村が独自に実施
- 補助対象は昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された旧耐震住宅が中心
- 診断・補強・再診断費用まで補助される場合があり、地域によって上限額・補助率が異なる
免震補強に使える個人が使える補助金の仕組みをわかりやすく解説。診断費や工事費も対象になる自治体制度の条件や申請手順を紹介します。

カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
家の耐震補強(耐震診断や補強工事)に使える補助金は、主に都道府県や市区町村などの自治体が実施しています。国が定めた「建築物耐震対策緊急促進事業」という制度をもとに、各自治体が地域の実情に合わせて補助金制度を運営しているからです。
国は制度の枠組みや財源を提供し、実際の申請の受付や審査、交付の判断は、自治体が担当しています。
そのため、耐震補強の補助金を利用したい場合は、まず自分の住んでいる地域の自治体がどのような制度を設けているのかを確認することが大切です。自治体によって補助金の上限額や対象となる住宅の条件、申請期間が異なるため、必ず最新の情報を公式サイトで確認しましょう。
耐震補強の補助金は、主に「旧耐震基準(1981年5月31日以前に建築された住宅)」を対象としています。これらの住宅は現在の耐震基準を満たしておらず、地震の揺れに弱い構造が多いため、被害を防ぐ目的で自治体が補助金を用意しています。
多くの自治体で共通している主な条件は次のとおりです。
これらの条件に該当する住宅は、自治体が実施する耐震診断や補強工事に関する補助を受けられる可能性があります。
多くは昭和56年以前の古い住宅が、耐震補助金の対象ですが、最近では、「新耐震グレーゾーン住宅」(1981年6月以降から2000年頃までに建てられた住宅)と呼ばれる建物も、自治体によっては補助金の対象に含まれるようになっています。
この時期の建物は新しい耐震基準に基づいて建てられてはいるものの、当時は基準の運用が完全ではなかったため、実際には耐震性能が不十分なケースがあるからです。
例えば、東京都や神奈川県、大阪府などでは、こうした住宅も補強を促進するために、補助金の対象範囲を広げる取り組みが始まっています。神奈川県横浜市の場合、「新耐震グレーゾーン住宅」の耐震改修工事費用に対して最大155万円の補助が受けられます。
補助額や条件は自治体によって異なりますが、1981年以降の住宅でも耐震診断の結果によって補助を受けられる場合があるため、まずは自治体の公式サイトで対象範囲を確認するとよいでしょう。
参考:国土交通省 建築物耐震対策緊急促進事業
耐震補助金では、診断から補強工事、事後の再診断までを支援する自治体が多くあります。以下は、主な補助対象経費の例です。
| 区分 | 内容 | 補足 |
| 耐震診断 | 建物の耐震性を確認するための診断 | 診断費は3~30万円程度 |
| 補強工事 | 耐力壁追加・基礎補強・屋根軽量化など | 工事費100~200万円程度が目安 |
| 再診断(完了確認) | 改修後の性能確認 | 一部自治体で対象 |
補助率や上限額は自治体によって異なります。例えば、横浜市では上限115万円(非課税世帯は155万円)、助成率は最大90%です。
参考:横浜市 耐震改修促進事業
多くの自治体では耐震診断・耐震改修等に要する費用を補助しています。ここでは、一例を紹介します。
高齢者等が居住する木造住宅の耐震診断・耐震改修等に要する費用を助成します。
耐震改修
| 項目 | 内容 |
| 助成上限 | 最大120万円 |
| 補助率 | 10/10 |
耐震シェルター・ベッドの設置
| 項目 | 内容 |
| 助成上限 | 最大40万円 |
| 補助率 | 10/10 |
除却
| 項目 | 内容 |
| 助成上限 | 最大80万円 |
| 補助率 | 2/3 |
帯広市では、地震による木造住宅の倒壊被害を未然に防止し、耐震性の向上を図るため、昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅の耐震診断や改修・建替えなどについて補助を行います。
居住しているまたは居住予定の所有者が、耐震診断をおこなうときは一定の規準を満たすと費用の一部を補助します。
| 項目 | 内容 |
| 助成上限 | 最大50万円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 募集件数 | 3件 |
居住している又は居住予定の所有者が、耐震診断をおこなうときは一定の規準を満たすと費用の一部を補助します。
| 項目 | 内容 |
| 助成上限/補助率 | 耐震改修工事費が 20万円未満の場合:その費用の額 20万円以上、200万円以下の場合:20万円 200万円超える場合:耐震改修工事費の10% 上限30万円 |
| 募集件数 | 1件 |
耐震診断により「倒壊する可能性がある」と診断され、居住している又は居住予定の所有者が、耐震改修工事を行うときは一定の規準を満たすと費用の一部を補助します。
| 項目 | 内容 |
| 助成上限 | 20万円未満の場合:その費用の額 20万円以上、200万円以下の場合:20万円 200万円超える場合:耐震改修工事費の10% 上限30万円 |
| 応募件数 | 1件 |
横須賀市では、古くなり老朽化した空き家の解体工事費用に対する補助を行っています。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 旧耐震基準(昭和56年5月以前)により建築されていること。 過去3年以上使用していない空き家であること 等 |
| 助成上限 | 最大35万円 |
| 補助率 | 1/2 |
耐震補強の補助金を利用する際は、申請から工事完了までにいくつかの手順があります。特に気をつけたいのは、補助金の交付決定前に工事を始めると対象外になるという点です。
申請から補助金受け取りまでの一般的な流れ
このように、申請から受け取りまでには複数の手続きが必要です。自治体によって細かな流れや提出書類が異なるため、事前に相談窓口で確認しておくと安心です。
耐震補強工事を行うと、補助金だけでなく税金の面でも優遇を受けられる場合があります。補助金と税制優遇を併用すれば、実際の自己負担額をさらに減らすことが可能です。
なぜなら、国や自治体は住宅の耐震化を進めるために、経済的な支援策を複数用意しているからです。補助金は工事費の一部を直接支援し、税制優遇は工事後に税負担を軽くしてくれる仕組みです。
代表的な制度には次の2つがあります。
耐震補強の工事費用の一部を、確定申告で所得税から控除できます。対象となる工事内容や上限額は年によって異なりますが、耐震改修証明書などの提出が必要です。
耐震補強を行った住宅は、翌年度分の固定資産税が最大で半額(1/2)に軽減されます。工事完了後、自治体へ減額申請を行うことで適用されます。これらの制度は、国土交通省や各自治体が公式に案内しているものです。
参考:東京都耐震ポータルサイト
このように、耐震補強にかかる費用をできるだけ抑えるには、補助金と税制優遇の両方を上手に活用することが大切です。工事を検討する際は、施工前に自治体や税務署の窓口で利用できる制度を確認しておきましょう。
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耐震補強の補助金は自治体の管轄の補助金となっています。大きく二つに分けることができ、耐震の診断の場合と改修工事に活用する場合です。旧耐震基準の住宅に住んでいる場合や空き家が対象となっている場合など自治体により申請要件が異なっています。事前に自治体に確認の上、進められると良いでしょう。