コラムのポイント
- 個人事業主のクリニックや歯科医院は、ものづくり補助金に申請可能
- 個人事業主が、補助金利用後に医療法人化すると、返還が必要になる可能性がある
- 申請には革新的取り組みや生産性向上を示す事業計画が求められ、医療業界でも活用のチャンスがある
医療法人は、ものづくり補助金が利用できません。その理由や注意点を知りましょう。ものづくり補助金自体は、毎年多くの事業者が注目し、申請する制度です。詳しくみていきましょう。

カミーユ行政書士事務所代表・行政書士
補助金・助成金を専門とする行政書士として、補助金申請サポート実績300社以上を有する。
慶應義塾大学卒業後、大手製薬会社での経験を積んだ後、栃木県・兵庫県に行政書士事務所を開業。 『事業再構築補助金』、『ものづくり補助金』、『IT導入補助金』をはじめ、地方自治体を含む幅広いジャンルの補助金に精通。 リモートを中心に全国の事業者の補助金申請サポートを行っている。
出典:MS法人の活用
クリニックや歯医者など開業医もものづくり補助金を利用できます。
しかし、医療法人の場合は利用できないので注意が必要です。
出典:個人事業主とは?会社員や法人との違いから「個人事業主」を考える
ものづくり補助金は、医療法人は申請できない制度です。
以下にその関連情報を詳しく説明します。
ものづくり補助金の公募要領に明記されている通り、医療法人や社団法人、財団法人などは補助金の申請対象外です。医療法人が営む病院や歯科医院がこの補助金を利用できません。
一方で、個人事業主として開業している医師や歯科医師は、ものづくり補助金の申請が可能です。
たとえば、個人経営のクリニックや歯科医院であれば補助金の対象です。
参考:医療法人設立の手引
出典:【楽天市場】電子印鑑 法人丸印タイプ
もし個人事業主がものづくり補助金を利用して設備を導入した後に医療法人化した場合、補助金の一部を返還しなければならない可能性があります。
具体的には、導入した設備の残存簿価に基づいて返金が求められるでしょう。
出典:担当者に聞く「ものづくり補助金」
ものづくり補助金を申請する際は、事業計画書の作成や審査基準を満たす必要があります。
特に、革新的な取り組みや生産性向上に寄与する設備投資が求められるでしょう。
結論として、医療法人はものづくり補助金の申請対象外ですが、個人事業主として運営されているクリニックや歯科医院は申請可能です。
医療法人化を考えている場合は、補助金の利用に関する注意点を十分に理解しておきましょう。
参考:【公式】公募要領
出典:【公募開始】ものづくり補助金(最大4,000万円)第21回公募が開始されました
ものづくり補助金といえば、中小企業や小規模事業者が、
などを行うための、設備投資を支援する制度です。
ものづくり補助金の正式名称は、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金といいます。
出典:ものづくり補助金のご案内
この補助金を活用することで、企業は生産性の向上や業務の効率化を目指せるでしょう。
ものづくり補助金は、通常は製造業に利用されることが多いです。
しかし、実は医療業界でも活用が可能です。
クリニックを経営している事業者にもぜひ注目してみましょう。
特に自由診療を行っているクリニックや歯医者にとって、大きなチャンスとなるはずです。
出典:TMS治療の「保険診療」「自由診療」の違いとは?
ものづくり補助金は中小企業や個人事業主に支給されるもので、医療法人や社団法人は、残念ながら補助対象外です。
したがって、個人事業主としてクリニックや歯医者を開業している場合は申請が可能ですが、医療法人名義では申請できません。
また、補助金はあくまで自由診療に関連した機械設備などの投資に対する支援となるため、医療保険が適用される診療は補助対象外です。
つまり、診療に使う機器や設備が自由診療に該当する場合にのみ補助を受けられます。
参考:ものづくり補助金のご案内
ものづくり補助金は、革新的なサービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を目的としています。
特にクリニックや歯医者にとっては、自由診療に関連する革新的な機器や技術への投資に活用できるため、有益です。
申請枠には通常枠やデジタル枠などいくつかの種類があります。
クリニックや歯医者の場合は、通常枠やデジタル枠を活用することが多いでしょう。
以下に、実際にクリニックや歯医者で採択された事例を紹介します。
実際にものづくり補助金に申請し、採択された事例があります。
従来の歯科治療よりも短期間で高精度な治療を可能にするため、デジタル歯科技工装置を導入しました。
診察から人工歯の装着までの時間が1時間から1時間半程度に短縮され、1日で治療が完了する新たなサービスを提供。
これにより、従来よりも低価格での提供が実現しました。
自社の整体技術と香川大学との産学連携により、O脚矯正器具ASIOを開発。
機能性だけでなくデザイン性も高めたこの器具は、O脚に悩む女性のために特化した商品として市場に流通させることができました。
製造設備への投資も行い、商品化を実現。
マイクロスコープを活用して、肉眼では確認しにくい歯垢や歯周病の原因菌を高精度で取り除く、新たなクリーニングサービスを開発。
患者さんに治療過程を映像で見せられるシステムを導入し、より効果的に治療の成果が確認できるように。
この技術を導入することにより、従来よりも高い精度での歯石除去が可能になりました。
注意点としては、採択後、事業開始までに時間がかかることです。
ものづくり補助金の採択を受けた後、実際に事業を開始するまでには時間がかかる場合があります。
特に機械設備やシステムの導入には、事前の計画や準備が必要となるため、採択後すぐに事業を開始できるわけではありません。
事業の開始までの期間を十分に見積もっておきましょう。
ものづくり補助金は、医療業界でも活用できる貴重な補助金制度です。
特に自由診療を行っているクリニックや歯医者にとって、大きな支援といえるでしょう。
開業医(個人事業主)は申請が可能ですが、医療法人となると対象外です。
申請要件や申請枠をよく理解し、自身の事業に最も適した枠を選ぶことが成功のポイントです。
具体的な採択事例を参考にし、革新的なサービスや技術への投資を進めることで、補助金を最大限に活用できるでしょう。
もし申請を検討している場合は、事業計画をしっかりと立て、適切な設備投資を行うことをおすすめします。
また、申請手続きには時間がかかることもあるため、早めに準備してください。
参考:【経済産業省】事例から学ぶ「ものづくり補助金」
出典:ものづくり補助金の第19回公募要領を公開しました
ものづくり補助金の申請にあたり、対象となる事業にはいくつかの条件があります。
採択率を少しでも高めるためにも、以下の要件を満たしたうえで申請しましょう。
こうした要件を満たした事業であれば、ものづくり補助金の対象となるでしょう。
申請者は毎年公募される公募要領に基づき、補助金の詳細や申請方法を確認し、準備を行ってください。
ものづくり補助金で受け取ることができる金額は、事業規模や申請枠によって異なります。
補助金額は、対象事業の規模に応じて設定されており、一般的には補助対象経費の1/2以内で、上限額は最大8,000万円です。
ただし、金額は申請内容により変動することがありますので、申請前に必ず確認してください。
これらの補助額は、申請する事業の目的や規模、使用する技術などに基づいて決まります。
なお、補助金は事業終了後に支払われるため、途中で進捗報告が求められる場合があります。
出典:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(第21次公募)の公募要領が公開されました
ものづくり補助金の採択率は毎年変動し、申請数や審査基準によって変わってきます。
一般的には、40%〜60%程度です。
審査は厳格で、事業について、
などが評価されます。
そのため、採択されるためには高い品質と独創性が求められるでしょう。
前述したように、医療法人は補助対象外です。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者が新しい製品やサービスを開発するための支援制度ですが、医療法人は対象外です。
医療法人は、医療法に基づき設立された法人であり、事業目的が製造業や技術革新に直結しません。
ものづくり補助金の対象には含まれません。
したがって、病院や歯科医院などの医療法人が運営する施設は、ものづくり補助金を活用することはできません。
一方で、医療法人ではなく、個人で開業しているクリニックや歯科医院などは、ものづくり補助金に申請可能です。
特に新しい医療機器の導入や、患者さんへのサービスを向上させるための新たなシステム導入などに対して、支援してもらえるでしょう。
クリニックがものづくり補助金を活用する場合、いくつかの注意点があります。
ものづくり補助金は医療法人だけでなく、保険収入を得ている事業にも適用されません。
公的医療保険・介護保険からの診療報酬や介護報酬を受けている事業は、補助金の対象外です。
単に診療機器を増やすだけでは、ものづくり補助金の対象にはなりません。
新しいサービスの提供や、既存のサービスを改善する取り組みが求められるでしょう。
購入済みの設備には補助金を適用できません。
申請する際には、新たな設備やシステムの導入計画が必要です。
クリニックでものづくり補助金を利用し、事業に生かしたケースはたくさんあります。ここでは、その一部を紹介します。
出典:櫻場デンタルクリニック
櫻場デンタルクリニックでは、新型高精度スキャンシステムを導入することで治療時間を大幅に短縮しました。
従来の治療法では来院回数が多く、治療時間も長かったため、患者さんにとって負担が大きいことが課題でした。
しかし、新型スキャンシステムにより、即日治療が可能となり、より多くの患者さんに質の高い治療を提供できるように。
出典:株式会社アイ・ティ・エス
アイ・ティ・エス株式会社は、問診票をクラウド経由で簡単に入力できる仕組みを開発。
これによって、患者さんはクリニックに来院する前に問診票を記入でき、待ち時間が大幅に短縮。
これにより、患者さんにとっても医療サービスの向上が実現しました。
出典:電制コムテック株式会社
株式会社電制は、高照度の光を目に当てて体内時計を整える装置を開発。
夜間勤務や時差ぼけなど、体内時計の乱れが問題となる現代社会において、注目されている装置です。
特に高齢者や介護業界での活用が進んでおり、介護施設での導入が進んでいます。
出典:株式会社レナテック
株式会社レナテックは、血清中の微量金属イオンを自動で測定する装置を開発。
この装置により、わずかな採血でさまざまな種類のガンを検査できるようになり、検診の負担が軽減!
結果、年間1万人以上の患者さんが検診を受けるようになりました。
エルマテック株式会社は、患者さんの状態をリアルタイムで監視し、薬剤を投与するタイミングを最適化するシステムを開発。
このシステムが医師の判断を補助してくれるため、患者さんの治療におけるリスクを最小限に抑えることに成功しました。
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者を対象に、新しい製品やサービスを開発するための資金支援を提供してくれます。
とはいえ、医療法人は対象外であり、個人で開業したクリニックや歯科医院が対象です。
クリニックがものづくり補助金を活用するためには、既存のサービスを改善する新しい技術や、システムの導入が求められるでしょう。
クリニックがこの補助金を活用すれば、患者さんの利便性や治療精度を向上させ、経営の効率化を実現できる可能性があります。
個人事業主として医療業を営む方々は、ものづくり補助金の対象に含まれ、申請が可能です。
個人事業主には、
などの職業が含まれます。
ものづくり補助金を活用することで医療業の発展を支援し、設備投資やサービス改善を促進することが可能です。
もし、
といったお悩みがあれば、コンサルタントに相談するのもおすすめです。
ものづくり補助金には、複数の申請枠があり、補助上限額や補助率は申請内容や従業員数によって異なります。
たとえば、省力化(オーダーメイド)枠では、従業員数に応じて最大750万円から8000万円までの補助金が支給されます。
製品・サービス高付加価値化枠や成長分野進出類型(DX・GX)など、他にもいくつかの枠が存在。
それぞれに異なる補助金額と補助率が設定されています。
病院や診療所内で使用する医療機器や設備は、ものづくり補助金の対象です。
これには、
なども含まれます。
特に、単価が50万円(税抜き)以上の設備投資が補助対象です。
ものづくり補助金を活用して医療業界が導入した設備には、以下のようなものがあります。
これらの設備は、診療の効率化や精度向上、患者さんへのサービスの質の向上に貢献するでしょう。
2025年問題に象徴されるように、医療業界は高齢化による大きな課題に直面しています。
2025年には、75歳以上の後期高齢者が2000万人を超えました。これは日本人口の約18%を占めます。
超高齢化に伴い、医療や福祉、社会保障に対する負担が急激に増大することが確実視されています。
これを受けて、医療従事者の不足も深刻な問題となっており、過重労働や人手不足が続いているのが現状です。
出典:スケジュール管理表の活用方法|おすすめのテンプレートや作成方法を紹介
申請のスケジュールについては、毎年定められています。
たとえば、2024年の申請締切は3月27日(水)17時でした。採択発表は6月下旬、実施期間は12月10日までです。
申請締切日を過ぎると次回の申請まで待たなければいけないため、計画的に準備をしましょう。
申請には、事業計画書や決算書、従業員数確認資料など、いくつかの書類が必要です。
任意書類も提出することで、審査で有利になることがあります。
提出書類に不備があると申請が通らない場合もあるため、十分に確認して提出しましょう。
購入済みの設備については、補助金を適用できません。
補助事業として認められるのは、交付決定日から最大10カ月以内に支出された経費のみです。
また、原則後払いであるため、まずは自己資金で事業を実施しましょう。
その後、補助金が支給されます。
ものづくり補助金を利用することで、医療業界は設備投資や業務の効率化に対して支援を受けられます。
これにより、診療の質向上やサービスの向上が期待できるでしょう。
とはいえ、申請の手続きや要件について十分に理解し、適切な書類を整えて申請しなければなりません。
個人事業主として医療業を営む方々は、ものづくり補助金を有効に活用し、事業の発展や革新を目指してください。
ものづくり補助金は、中小企業や個人事業主が革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスの改善などを目的に行う設備投資を支援する制度です。
特に、製造業に関連した事業者に利用されることが多いですが、医療業界においても活用できる可能性があります。
しかし、医療法人がものづくり補助金を利用できるかどうかには、十分注意してください。
というのも、ものづくり補助金では、
などは対象外としています。
こうした法人が運営する病院や歯科医院は、補助金を申請できません。
医療法人化されているクリニックや歯科医院は、補助金の対象にはなりません。
それでも、開業医として個人事業主で運営している場合は、ものづくり補助金の申請が可能です。
個人経営のクリニックや歯科医院にとっては、補助金を利用する大きなチャンスです。
医療法人化した後に設備投資を行い、その後、医療法人として運営を開始した場合、補助金の一部を返還する必要がある場合も。
補助金の一部返還が、導入した設備の残存簿価に基づいて求められる場合があるため、医療法人化のタイミングには十分注意してください。
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ものづくり補助金は医療法人では申請を行うことはできません。保険診療に関わる治療で行う場合も申請できないので注意しましょう。個人のクリニックで自費診療に関わる部分に関してはものづくり補助金を活用できますので是非、有効活用されると良いでしょう。