「進出していない地域や海外での展示会を行い、販路の拡大を狙いたい」
「組合業務管理システムのクラウド化のための業績分析、調査研究を行いたい」
「課題解決につなげるための研修を実施したい」
など中小企業組合が単独で行うには困難が生じる、さまざまな取組みを支援してもらえる補助金があります。
今回紹介する中小企業組合等課題対応支援事業をご存知でしょうか。
中小企業組合等課題対応支援事業は、「中小企業組合等活路開拓事業(展示会等出展・開催を含む)」、「組合等情報ネットワークシステム等開発事業」、「連合会(全国組合)等研修事業」と目的に応じた3つの事業パターンがあり、中小企業組合のさまざまな課題の解決を支援してもらえます。
では、今回は中小企業組合等課題対応支援事業の概要や、補助額、採択率までくわしく解説していきます。
※中小企業組合等課題対応支援事業の令和3年度で予定されている募集は終了しています。
令和4年度以降の公募については、公表されましたら、本コラム等でご紹介する予定です。
1.中小企業組合等課題対応支援事業とは
中小企業組合等課題対応支援事業は、中小企業組合が単独で行うには困難が生じる、さまざまな取組みを支援してもらえる補助金です。
対象となるのは、活路開拓のための展示会への出展、IT活用による経営改新、課題解決につなげる研修実施など……
本事業は、目的に応じた以下の3つの支援事業にわかれています。
中小企業組合等活路開拓事業(展示会等出展・開催を含む
中小企業組合等活路開拓事業(展示会等出展・開催を含む)は、組合などを中心に共同して調査研究、将来ビジョンの策定、試作品の開発など、さまざまな取り組みに対して支援する「活路開拓事業」、展示会の開催および出展をとおして組合などの商品、製品を試供求評、㏚する取組みを支援する「展示会等出展・開催」の2つの支援事業があります。
活路開拓事業
専門家を招いた委員会で検討を行い、市場の調査、試作品の開発、ビジョンの策定、成果を発表するなどして、課題を解決、成果を共有する取組みを補助してもらえます。
●取組みのイメージ
- 組合印の意識や経営環境を調査したい
- 他業界で成功している手法を学びたい
- 新製品・新サービスを開発して新たな販路を拡大したい
- 厳しい環境規制に対応する方策を検討したい
- SDGsを学び、業界を挙げて実践したい
展示会等出展・開催
国内外の展示会への出展や展示会の自主開催を補助してもらえます
※商品などの販売をともなう出展・開催は不可となります。
●取組みのイメージ
- 進出していない地域で展示会を開催して販路拡大の可能性を調査したい
- バーチャル展示会に出展して幅広くニーズを確認したい
- 海外の展示会に出展して海外取引拡大の足掛かりとしたい
組合等情報ネットワークシステム等開発事業
組合等情報ネットワークシステム等開発事業は、情報ネットワークシステムを構築する前提となる組合事業などの業務分析や、提案依頼書の策定などの調査研究などを支援する「基本計画策定事業」、情報ネットワークの構築、業務用アプリケーションの開発、普及などを支援する「情報システム構築事業」があります。
基本計画策定事業
組合が情報ネットワークシステムなどの構築を目指し、組合の事業の業績分析、計画立案RFP(提案依頼書を策定する取組みを補助してもらえます。
●取組みのイメージ
- WEBシステムを活用した組合員間ネットワーク構築のための基本計画策定
- 災害などのリスク対応のための組合員の在庫・文書など管理システム整備のための研究
- 組合業務管理システムのクラウド化のための業務分析、調査研究
情報システム構築事業
組合を基盤とした情報ネットワークシステムの構築や、組合員などの業務効率化に向けたアプリケーションシステムの開発におけるシステムの設計、開発、稼働、運用テストなどや組合員に対するシステム普及のための講習会開催などの取組みを補助してもらえます。
- 組合員の発注業務効率化のためのメーカー・卸間のEDIシステムの開発
- 組合員のローコストオペレーションを可能にする店舗販売管理システムの開発と普及
- WEBサイトを活用した組合員の取扱う製品の共同販売システムの構築
- クラウドを活用した組合員の取扱う製品などの管理システムの構築
連合会(全国組合)等研修事業
全国筑の連合会などが自ら企画し、その会員及び組合員などを対象として、抱えている具体的な課題解決や活路開拓の実現につながる検討などを内容とする研修事業を支援してもらえます。
研修は座学で行う講義のほか、パネルディスカッション、ワークショップ、グループ演習、視察、技術指導など研修の効果が出やすい方法を組み合わせて実践します。
●研修テーマのイメージ
- 業界等の環境変化に対応
- 組合員などの生産、販売、財務、労務などに関する新たな取組みを検討
- 新製品開発、新技術導入、新分野進出など直面した課題の解決
- 業種別の専門的知識または技術等の習得
2. 募集期間
中小企業組合等課題対応支援事業の令和3年度で予定されている募集は終了しています。
令和4年度以降の公募については、公表されましたら、本コラム等でご紹介する予定です。
令和3年度の募集期間:令和3年3月1日(月)~8月13日(金)
(1) 第1次募集:令和3年3月 1日(月)~3月31日(水)(必着)
(2)第2次募集:令和3年4月 1日(木)~5月28日(金)(必着)
(3)第3次募集:令和3年7月16日(金)~8月13日(金)(必着)
3.対象者
補助の対象者は、中小企業組合、一般社団法人、共同出資組織、任意グループ等です。
本事業の補助対象となる組合等は、次の種類及び要件を満たす必要があります。
補助対象となる組合等の種類及び要件 | ||
---|---|---|
〔種類〕1. 中小企業団体の組織に関する法律に規定する中小企業団体
(1)事業協同組合(連合会を含む) (2)事業協同小組合(連合会を含む) (3)信用協同組合(連合会を含む) (4)企業組合 (5)協業組合 (6)商工組合(連合会を含む) | ||
〔要件〕 ・令和 3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 | ||
〔種類〕 2. 商店街振興組合法の規定に基づく商店街振興組合(連合会を含む) | ||
〔要件〕 ・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 | ||
〔種類〕3. 生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律の規定に基づく生活衛生同業組合(連合会を含む) 4. 酒類の保全及び酒類業組合等に関する法律の規定に基づく酒造組合(連合会を含む)、酒販組合(連合会を含む) 5. 内航海運組合法の規定に基づく内航海運組合(連合会を含む) 6. 技術研究組合法の規定に基づく技術研究組合 7.水産業協同組合法の規定に基づく水産加工業協同組合(連合会を含む) 8.一般社団法人 9. 一般財団法人 | ||
〔要件〕 ・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 ・直接又は間接の構成員たる事業者の3分の2以上が中小企業基本法第2条に規定する中小企業者であること。 ・一般財団法人は設立に際して拠出された財産の価額の3分の2以上が中小企業基本法第2条に規定する中小企業者により拠出されていること。 | ||
〔種類〕10. 3者以上の中小企業者が共同出資する会社組織 会社法の規定に基づく株式会社、合名会社、合資会社及び合同会社 | ||
〔要件〕 ・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 ・3者以上の中小企業者が出資等する中小企業者であって、その出資総額等の3分の2以上を中小企業者が出資等していること。 ・構成員たる中小企業者の利益となる事業をその目的とするものであること。 | ||
〔種類〕11.有限責任事業組合契約に関する法律に基づく有限責任事業組合(LLP) | ||
〔要件〕 ・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 ・存続期間が令和9年3月31日以降であること(事業終了後5年間の報告義務等があるため)。 ・3者以上の中小企業者が出資等する中小企業者であって、その出資総額等の3分の2以上を中小企業者が出資等していること。 ・構成員たる中小企業者の利益となる事業をその目的とするものであること。 | ||
〔種類〕12.任意グループ(組織化された団体として活動しているもの又は組織化を図ろうとして連携の途上にあり、組織を運営するための具体的な活動を始めているもの) | ||
〔要件〕・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、2年以上経過していること。 ・幹事会等で承認された事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・幹事会等で承認された事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 (注)事業報告書等については直近年度及び直近前年度の2年度分 ・存続期間が令和9年3月31日以降であること(事業終了後5年間の報告義務等があるため)。 ・3者以上の中小企業者で構成し、構成員のうち3分の2以上を占める中小企業者であって、幹事会等を設置して組織運営をしていること、かつ、規約等及び実施している事業に関する事業報告書・決算書等が2年度分整備されていること(補助金交付申請時には任意グループの代表以外の役員又は構成員全員からの委任状を徴収する必要がある)。 |
また、以下の(13)~(15)については、(1)~(12)が事業主体となって行う事業の連携先として、共同で申請することができます。
※単独で申請することはできません。
補助対象となる組合等の種類及び要件 | ||
---|---|---|
〔種類〕 (13) 農業協同組合法の規定に基づく農業協同組合(連合会を含む)、農事組合法人 (14)水産業協同組合法の規定に基づく漁業協同組合(連合会を含む) (15) 森林組合法の規定に基づく森林組合(連合会を含む) | ||
〔要件〕 ・令和3年4月1日現在、設立(結成)後、原則、1年以上経過していること。 ・総会等で承認された直近年度の事業報告書及び決算関係書類が整備されていること。 ・総会等で承認された直近年度の事業計画書及び収支予算書が整備されていること。 |
※対象要件の詳細は、以下、全国中小企業団体中央会公式サイトの中小企業組合等課題対応支援事業募集要綱をご覧ください。
4.補助対象経費
補助の対象となる経費は、各事業ごとに異なります。
中小企業組合等活路開拓事業(活路開拓事業)
- 謝金
- ・委員手当
- ・専門家謝金
- ・講師謝金
- 旅費
- ・委員旅費
- ・専門家旅費
- ・調査旅費
- ・講師旅費
- ・職員等旅費
- 会議費
- 会場借料
- 賃料費
- 印刷費
- 借損料
- 車両借上費
- 原稿料
- 通信運搬費
- 雑役務費
- 外注費
- ・集計費
- ・会場経営費
- ・広告宣伝費
- ・試作費
- ・加工費
- ・実験費
- ・製造・改良・据付費
- ・集計費
- 委託費
- 原材料費
- 燃料費
- 機械装置等購入費
- 光熱費
中小企業組合等活路開拓事業(展示会等出店・開催)
- 謝金
- ・委員手当
- ・専門家謝金
- 旅費
- ・委員旅費
- ・専門家旅費
- ・調査旅費
- ・職員等旅費
- 会議費
- 会場借料
- 賃料費
- 印刷費
- 借損料
- 原稿料
- 通信運搬費
- 雑役務費
- 光熱費
- 外注費
- ・集計費
- ・会場経営費
- ・広告宣伝費
- 委託費
組合等情報ネットワークシステム等開発事業
- 謝金
- ・委員手当
- ・専門家謝金
- ・講師謝金
- 旅費
- ・委員旅費
- ・専門家旅費
- ・講師旅費
- ・職員等旅費
- 会議費
- 会場借料
- 賃料費
- 印刷費
- 原稿料
- 通信運搬費
- 委託費
連合会(全国組合)等研修事業
- 謝金
- ・委員手当
- ・専門家謝金
- ・講師謝金
- 旅費
- ・委員旅費
- ・専門家旅費
- ・調査旅費
- ・講師旅費
- ・受講生旅費
- ・職員等旅費
- 会議費
- 会場借料
- 賃料費
- 印刷費
- 借損料
- 車両借上費
- 通信運搬費
- 雑役務費
- 原材料費
- 委託費
※各事業ごとに対象経費内容が異なり、それぞれ支出基準が定められています。
補助対象経費の詳細については、募集要網をご覧ください。
5 .補助率・補助額
気になる補助額ですが、最大で2,000万円の補助額、補助率は全事業共通で、補助対象経費の 10分の6の範囲内となっています。
ただし、事業や規模によって補助上限額などが異なります。
くわしい補助率、補助上限額については、以下の表をご覧ください。
事業内容 | 補助上限額 | 補助下限額 | 補助率 |
---|---|---|---|
(1)中小企業組合等活路開拓事業 | 補助対象経費の 10分の6の範囲内 | ||
(大規模・高度型) | 2,000万円 | 100万円 | |
(通常型) | 1,200万円 | 100万円 | |
(2) 組合等情報ネットワークシステム等開発事業 | |||
(大規模・高度型) | 2,000万円 | 100万円 | |
(通常型) | 1,200万円 | 100万円 | |
(3)連合会(全国組合)等研修事業 | |||
300万円 | なし |
6.採択率は?
中小企業組合等課題対応支援事業は、過去3年間の採択結果を見ると、80%以上とかなりの確率で、採択されています。
ただ、下の表を見てわかるように、他の中小企業などが対象の補助金に比べて、申請数自体も少ない傾向にあります。
詳しい採択結果は以下の表をご覧ください。
年度 | 申請数 | 採択率 |
---|---|---|
令和元年度 | 第1次:申請数39件/採択数35件 第2次:申請数25件/採択数22件 第3次:申請数4件/採択数1件 | 第1次:約90% 第2次:88% 第3次:25% |
令和2年度 | 第1次:申請数26件/採択数21件 第2次:申請数20件/採択数19件 第3次:申請数8件/採択数7件 | 第1次:約81% 第2次:約95% 第3次:約88% |
令和3年度 | 第1次:申請数18件/採択数16件 第2次:申請数22件/採択数21件 | 第1次:約89% 第2次:約95% |
7.お問い合わせ
本事業に関するお問い合わせや、申請に関しては「全国中小企業団体中央会 振興部」の下記サイトをご確認ください。
全国中小企業団体中央会
振興部
〒104-0033
東京都中央区新川1-26-19 全中・全味ビル
全国中小企業団体中央会 振興部
☎03-3523-4905
8.まとめ
中小企業組合等課題対応支援事業について、解説しました。
さまざまな課題や取組み内容に対応しているこの補助金を、ぜひご活用ください。
参考:全国中小企業団体中央会