「補助金適正化法」という言葉を聞いたことはありますか?
一言でいうと、「補助金を適正に活用するための法律」です。
この法律は、補助金の不正な受給や不正な使用を防ぎ、補助金の適正化を図る目的があります。
補助金は、上手く活用すればとても有効的な制度ですが、「返済不要でもらえる」という認識を持っている方が多いのではないでしょうか。
間違いではないのですが、単純に「もらえるお金」だと考えているのは、少々危険です。
そんなつもりがなくても、認識不足で補助金適正化法にそむき、「不正受給」扱いとなり、厳しい罰則をうけるケースも珍しくありません。
罰金だけではなく、最悪の場合、刑事業の告発をされる可能性もあるのです。
無意識のうちに、不正受給となり、取り返しのつかないことになってしまわないために、「補助金適正化法」がどんなものなのか知っておく必要があります。
1. 補助金適正化法とは?
補助金適正化法とは、簡単に言うと、「補助金を適正に活用するための補助金」のこと。
補助金適正化法の正式名称は「昭和三十年法律第百七十九号
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」
この第一条を見てみましょう。
補助金の交付の不正な申請や補助金の不正な使用の防止し、補助金の交付の決定の適正化を図る目的があると記載されていますね。
第一条 この法律は、補助金等の交付の申請、決定等に関する事項その他補助金等に係る予算の執行に関する基本的事項を規定することにより、補助金等の交付の不正な申請及び補助金等の不正な使用の防止その他補助金等に係る予算の執行並びに補助金等の交付の決定の適正化を図ることを目的とする。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第一条より
2. 補助事業の交付について
補助金交付の条件について、補助金適正化法の第七条に記載されています。
これは、「補助事業の変更や中止などが必要になった場合は、勝手に行わず、必ず事前に各省各庁に報告をし、承認を受ける必要がある」といった内容となっています。
(補助金等の交付の条件)第七条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定をする場合において、法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要があるときは、次に掲げる事項につき条件を附するものとする。
一 補助事業等に要する経費の配分の変更(各省各庁の長の定める軽微な変更を除く。)をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。二 補助事業等を行うため締結する契約に関する事項その他補助事業等に要する経費の使用方法に関する事項三補助事業等の内容の変更(各省各庁の長の定める軽微な変更を除く。)をする場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。四 補助事業等を中止し、又は廃止する場合においては、各省各庁の長の承認を受けるべきこと。五 補助事業等が予定の期間内に完了しない場合又は補助事業等の遂行が困難となつた場合においては、すみやかに各省各庁の長に報告してその指示を受けるべきこと。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第七条より
この中から、補助金を申請するもの(補助事業者)に定められている内容は、以下の4点です。
- (1)補助事業の経費の配分の変更をする場合は、各省各庁の承認をうけること
- (2)補助金事業の内容の変更をする場合は、各省各庁の承認を受けること
- (3)補助事業を中止、または廃止する場合は、各省各庁の承認を受けること
- (4)補助事業が予定の期間内に完了しない場合や、補助事業の遂行が困難になった場合は、すみやかに各省各庁に報告をし、指示を受けること
3. 補助事業の遂行について
続いて、補助事業を遂行するにあたって厳守すべき点が第十一条から第十四条に記載されています。
これは、「各補助金の定めどおりに補助事業を進めていき、申請した内容以外の用途に使わないこと。
必ず補助事業遂行の状況、補助事業の実績の報告をすること」
といった内容になっています。
(補助事業等及び間接補助事業等の遂行)
第十一条 補助事業者等は、法令の定並びに補助金等の交付の決定の内容及びこれに附した条件その他法令に基く各省各庁の長の処分に従い、善良な管理者の注意をもつて補助事業等を行わなければならず、いやしくも補助金等の他の用途への使用(利子補給金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより、補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
2 間接補助事業者等は、法令の定及び間接補助金等の交付又は融通の目的に従い、善良な管理者の注意をもつて間接補助事業等を行わなければならず、いやしくも間接補助金等の他の用途への使用(利子の軽減を目的とする第二条第四項第一号の給付金にあつては、その交付の目的となつている融資又は利子の軽減をしないことにより間接補助金等の交付の目的に反してその交付を受けたことになることをいい、同項第二号の資金にあつては、その融通の目的に従つて使用しないことにより不当に利子の軽減を受けたことになることをいう。以下同じ。)をしてはならない。
(状況報告)
第十二条 補助事業者等は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業等の遂行の状況に関し、各省各庁の長に報告しなければならない。
(補助事業等の遂行等の命令)
第十三条 各省各庁の長は、補助事業者等が提出する報告等により、その者の補助事業等が補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件に従つて遂行されていないと認めるときは、その者に対し、これらに従つて当該補助事業等を遂行すべきことを命ずることができる。
2 各省各庁の長は、補助事業者等が前項の命令に違反したときは、その者に対し、当該補助事業等の遂行の一時停止を命ずることができる。
(実績報告)
第十四条 補助事業者等は、各省各庁の長の定めるところにより、補助事業等が完了したとき(補助事業等の廃止の承認を受けたときを含む。)は、補助事業等の成果を記載した補助事業等実績報告書に各省各庁の長の定める書類を添えて各省各庁の長に報告しなければならない。補助金等の交付の決定に係る国の会計年度が終了した場合も、また同様とする。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第十一条~第十四条より
この中から、補助金を申請するもの(補助事業者)に定められている内容は、以下の4点です。
- (1)補助事業者は、各補助金の交付の決定の内容や条件をもとに善良な管理者の注意をもって補助事業を行うこと
- (2)補助金を他の用途への使用をしないこと
- (3)補助事業者は、各省各庁の定めどおりに、補助事業遂行の状況の報告をすること
- (4)補助事業が完了したときは、補助事業の成果を記載した実績報告書を定めどおりに書類の提出、報告をすること
4.違反した場合はどうなる?
上で説明したように、補助金を活用するにあたり、
・補助金を申請した事業内容以外の目的で使わないこと。
・補助事業の変更や中止をする必要がある場合は、必ず事前に報告相談を行い、承認されてから行うこと。
・補助事業遂行の状況報告、完了報告を必ず行うこと。
など、厳しく定められています。
では、それらを違反した場合はどうなるのでしょう。
補助金適正化法によると、以下の4つのことが考えられます。
- (1)補助金決定の取消
- (2)補助金の返還
- (3)補助金の加算金および延滞金の納付
- (4)他の補助金の一時停止
(1)補助金決定の取消
補助金適正化法に違反した場合、以下の第十七条に記載のとおり、せっかく採択された補助金の決定を取り消しされてしまう可能性があります。
(決定の取消)第十七条 各省各庁の長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに附した条件その他法令又はこれに基く各省各庁の長の処分に違反したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。2 各省各庁の長は、間接補助事業者等が、間接補助金等の他の用途への使用をし、その他間接補助事業等に関して法令に違反したときは、補助事業者等に対し、当該間接補助金等に係る補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。3 前二項の規定は、補助事業等について交付すべき補助金等の額の確定があつた後においても適用があるものとする。4 第八条の規定は、第一項又は第二項の規定による取消をした場合について準用する。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第十七条より
(2)補助金の返還
さらに、補助金の取消をされた場合、すでに補助金が支払われている場合、補助金の返還を求められ可能性があります。
(補助金等の返還)第十八条 各省各庁の長は、補助金等の交付の決定を取り消した場合において、補助事業等の当該取消に係る部分に関し、すでに補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。2 各省各庁の長は、補助事業者等に交付すべき補助金等の額を確定した場合において、すでにその額をこえる補助金等が交付されているときは、期限を定めて、その返還を命じなければならない。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第十八条より
(3)補助金の返還
補助金の返還を求められた際、補助金の受け取りの日から納付の日までの日数に応じて、加算金、さらに納期日までに納付しなかった場合は延滞金を国に納付しなければなりません。
(加算金及び延滞金)第十九条 補助事業者等は、第十七条第一項の規定又はこれに準ずる他の法律の規定による処分に関し、補助金等の返還を命ぜられたときは、政令で定めるところにより、その命令に係る補助金等の受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(その一部を納付した場合におけるその後の期間については、既納額を控除した額)につき年十・九五パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならない。2 補助事業者等は、補助金等の返還を命ぜられ、これを納期日までに納付しなかつたときは、政令で定めるところにより、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、その未納付額につき年十・九五パーセントの割合で計算した延滞金を国に納付しなければならない。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第十九条より
(4)他の補助金の一時停止
そして、求められている補助金の返還、加算金、延滞金の納付をしなかった場合は、申請している他の補助金を一時停止、または他の補助金と返還すべき補助金の未納額とを相殺される可能性があります。
第二十条 各省各庁の長は、補助事業者等が補助金等の返還を命ぜられ、当該補助金等、加算金又は延滞金の全部又は一部を納付しない場合において、その者に対して、同種の事務又は事業について交付すべき補助金等があるときは、相当の限度においてその交付を一時停止し、又は当該補助金等と未納付額とを相殺することができる。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第二十条より
5.補助金を不正に受給した場合は刑事上の罪に問われる
では、意図的に偽った報告、書類の提出などを行い、不正に補助金を受給した場合は、どうでしょう?
第二十九条に記載があるように、五年以下の懲役または百万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられる可能性があります……。
第二十九条 偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受け、又は間接補助金等の交付若しくは融通を受けた者は、五年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
引用:昭和三十年法律第百七十九号 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律 第二十九条より
さらに悪質な不正受給である場合、刑事告発されることもあります。
過去にも、補助金の不正受給で、詐欺罪などに問われてしまったというケースが実際にあります。
6.まとめ
補助金適正化法についてお話ししました。
故意に不正を働き、補助金を受給することは当然犯罪ですが、補助金適正化法を理解していないと、無意識のうちに違反をしてしまう可能性があります。
せっかく時間をさいて申請した補助金が中止となり、さらに返還まで求められ、苦労が水の泡……さらに会社の信用問題にも傷がつく。
なんて事態になりかねません。
補助金を申請する際は、しっかりと「補助金適正化法」の規定に従い、有効的に補助金を活用したいものですね。